加藤和樹

ミュージカルのはなしをしよう だい18かい [バックナンバー]

加藤かとう和樹かずき期待きたい裏切うらぎらないために、はしつづける(後編こうへん

“ライブ”であることをライフワークに

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きるためのたたかいから、1人ひとり人物じんぶつ生涯しょうがいえるようなこいときめてしまうほどの喪失そうしつ日常にちじょう風景ふうけいまで、さまざまなストーリーをドラマチックな楽曲がっきょくげ、ものしんげき世界せかいへとはこんでくれるミュージカル。そのきない魅力みりょくを、つくしゅとなるアーティストやクリエイターたちはどんなところにかんじているのだろうか。

このコラムでは、毎回まいかい1にんのアーティストにフィーチャーし、ミュージカルとの出会であいやこれまでの転機てんきのエピソードから、なぜミュージカルにかれ、かかわりつづけているのかをき、その奥深おくふかさをひもといていく。

だい18かいには加藤かとう和樹かずき登場とうじょう前編ぜんぺんでは、“うたちから”に感銘かんめいけて活動かつどうをスタートさせた加藤かとうが、「ミュージカル『テニスの王子おうじさま』 / The Imperial Match ごおりみかど学園がくえん」で華々はなばなしく舞台ぶたいデビューしてから、そのやくづくりで挫折ざせつ経験けいけんするまでをかたった。後編こうへんでは、15周年しゅうねんむかえたアーティスト活動かつどう俳優はいゆう活動かつどうへのおもいをかす。

取材しゅざいぶん / 大滝おおたき知里ちさと

ミュージカル、ストレートプレイ、ライブ活動かつどうでまんべんなくきたえる

──加藤かとうさんはアーティスト、俳優はいゆう声優せいゆうと、ジャンルで活動かつどうたれています。舞台ぶたいかんしては、ストレートプレイ、ミュージカルにバランス出演しゅつえんされている印象いんしょうがありますが、舞台ぶたい出演しゅつえんについてどんなポリシーがあるのでしょうか?

ぼくはライブがきなので、舞台ぶたいかんしてはミュージカルにも、ストレートプレイにもこだわらずに出演しゅつえんしているっていうだけです。“ライブ”という形態けいたいをライフワークにしたいというおもいがあるので、ここすうねんは、1ねんすうほん舞台ぶたいて、そのあいだ音楽おんがくをやってというバランスで生活せいかつしています。それに、ミュージカルにぎてしまうと、お芝居しばいはだかんというか、言葉ことばでかけいをする感覚かんかくうすれてしまうがするんです。ストレートプレイではお芝居しばいの“あいだ”がきたえられるので、役者やくしゃ同志どうしのぶつかりいや自分じぶん身体しんたいこえだけでたたかっているかんじがするんですよ。

──ストレートプレイで“あいだ”がきたえられるとしたら、ミュージカル、アーティスト活動かつどうではそれぞれなにきたえられるのですか?

ミュージカルは、楽曲がっきょくたいするアプローチの仕方しかたやくとしてうたうことのむずかしさというてんきたえられるとおもいます。お芝居しばいでは成立せいりつしていたやくが、うたのシーンになると“さっきまでのひとちがう”とものかんじさせてしまうことがある。なので、ミュージカルに出演しゅつえんするときは、うたを“うたわない”ようにしています。歌詞かしはセリフであり言葉ことばなので、なるべくセリフをうときとどうじ(声帯せいたいの)場所ばしょで、“はなすようにうたう”ことを意識いしきしています。

──うたうたえるひとならではの視点してんですね。

アーティストとしてのライブは自分じぶん居場所いばしょ原点げんてんなので、なにかがきたえられるわけではないけど、開放かいほうかんがあります。舞台ぶたいやくえんじているときは、いかにそのやくしばられてないようにせるかっていうのが自分じぶんにとってポイントなんですが、ありのままの自分じぶんでステージじょうられるのは、ライブしかない。ライブのまえはいまだに緊張きんちょうしますけど、会場かいじょうにはライブをたのしみにしてくださっているおきゃくさましかいないですし、アプローチ次第しだいでおきゃくさまの反応はんのうわってくるので、“空間くうかんまれる”感覚かんかくあじわえるのは、ライブだけなんです。

帝劇ていげきつなんて、ありえないとおもった

ミュージカル「レディ・ベス」(2014年公演)より。(写真提供:東宝演劇部)

ミュージカル「レディ・ベス」(2014ねん公演こうえん)より。(写真しゃしん提供ていきょう東宝とうほう演劇えんげき

──加藤かとうさんがこれまで出演しゅつえんされたミュージカル作品さくひんについてもおきしたいのですが、これまでをかえって、加藤かとうさんにとっておおきかったとかんじた作品さくひん転機てんきとなった作品さくひんなにですか?

どの作品さくひん自分じぶんにとっては転機てんき……というとアレなんですけど(笑)、ミュージカル「コーヒープリンス1ごうてん」(2012ねん)で山崎やまざきいく三郎さぶろうくんと出会であって、ミュージカルにすすむきっかけになったという意味いみでは、わすれられない作品さくひんです。テニミュ以来いらい城田しろたゆうとの共演きょうえんとなったミュージカル「ロミオ&ジュリエット」(2013ねん / 以下いか、ロミジュリ)も、どう世代せだいつくはじめてのグランドミュージカルで、自分じぶんにとってはかけがえのないもの。そのあと、はじめての東宝とうほう作品さくひんで、はじめて帝国ていこく劇場げきじょうたせてもらったミュージカル「レディ・ベス」(2014ねん)ではくやしいおもいをしましたね。

──どのようなくやしいおもいをされたんですか?

それまでグランドミュージカルを1ほんしかやっていないのに、帝劇ていげきつなんてことは、自分じぶんなかではありえなかったんですよ。もちろんオーディションをけてやくをいただいたのですが、りていない、できないということは自分じぶん一番いちばんわかっていたし、周囲しゅういにも自分じぶんよりキャリアのあるひとしかいなかった。そういう意味いみでは挫折ざせつあじわい、くやしいおもいもして。自分じぶん出演しゅつえんするからには、なにのこさなきゃ!っていうおもいもすごくありましたから。

──そのあと出演しゅつえんされたミュージカル「タイタニック」(2015ねん)が、はじめてのミュージカル主演しゅえんさくです。加藤かとうさんが一糸いっしまとわぬ姿すがたうつっていたチラシが衝撃しょうげきてきでしたが、はつ主演しゅえん気負きおいはありましたか?

あれね(笑)。いや、じつはそれはあまりなかったんです。あの作品さくひんもオーディションで、演出えんしゅつのトム・サザーランドにうたいてもらう機会きかいがあったんですが、ぼく当時とうじ、ロミジュリの楽曲がっきょくしかうたえるきょくがなかったんです。それで、ティボルトのきょくうたったんですけど、そのときは何役なんやくかもらされてなくて、ふたをけたてみたら主役しゅやくのアンドリュースだった。でも作品さくひん群像ぐんぞうげきで、みんなに物語ものがたりがあるので、主演しゅえんという感覚かんかくはあまりなかったですね。ぎゃく主演しゅえん意識いしきしたのは、ミュージカル「1789-バスティーユの恋人こいびとたち-」(2016ねん)。主演しゅえんで、帝劇ていげきで、小池こいけとおるひらたくんとのWキャストではありましたけど、かれがいてくれて心強こころづよかったですし、いつも以上いじょうにカンパニーをっていこうという気持きもちでした。

ミュージカル「タイタニック」(2015年公演)より。(撮影:宮川舞子)

ミュージカル「タイタニック」(2015ねん公演こうえん)より。(撮影さつえい宮川みやがわ舞子まいこ

ミュージカル「1789-バスティーユの恋人たち-」(2016年公演)より。(写真提供:東宝演劇部)

ミュージカル「1789-バスティーユの恋人こいびとたち-」(2016ねん公演こうえん)より。(写真しゃしん提供ていきょう東宝とうほう演劇えんげき

──「1789-バスティーユの恋人こいびとたち-」でえんじられた農夫のうふロナンは、革命かくめいとうじるやくで、小池こいけさんとの個性こせいちがいも際立きわだってえた作品さくひんでした。加藤かとうさんはゴツっとしたおとこっぽいやく似合にあいますよね。

あははは(笑)。なにでしょうね、ざつかんじというか。貴族きぞくやく絶対ぜったいできないとおもいます。やくでスーツをることもありますが、王子おうじさま皇太子こうたいしみたいなやくはやったことがない。それは、ミュージカルの世界せかいすすんできた生粋きっすいかんじではないというか、雑草ざっそうてき雰囲気ふんいきがあるんだろうし、キャスティングされるほうぼく本質ほんしつ見抜みぬいてるんだとおもいます(笑)。けて自分じぶんとかけはなれたやくえんじるのは、やりがいはありますが、自分じぶんなかにないものだから根本こんぽんてきわないんじゃないかな。

──ではたとえば、うたっておどって“みんなでハッピーエンド!”みたいな作品さくひんに、俳優はいゆうとしてあこがれがあったりしますか?

うーん、でも、コメディはやりたいなとはおもいます。コメディはめちゃくちゃむずかしいんですよ。わらわせようとするとへんになるし、脚本きゃくほんであれば、そのとおりにやれば絶対ぜったい面白おもしろいのに、自分じぶんであれこれしゅくわはじめると作品さくひん破綻はたんするので。ただ、もうちょっとぼく自身じしんやわらかくなってからかな(笑)。むかしくらべたらずいぶんまるくなったんですけど、「こわい」「いつもおこってる」というだいいち印象いんしょうたれることがおおいので。もう年齢ねんれいですし、ぼく先輩せんぱいにしてもらったように、年下としした後輩こうはいには自分じぶんからあゆって、みちびいていく役割やくわりになえたらと。

挑戦ちょうせんつづける姿すがたせたいから、停滞ていたいはしない

「Kazuki Kato Live “GIG” Tour 2021-REbirth-」より。

「Kazuki Kato Live “GIG” Tour 2021-REbirth-」より。

「Kazuki Kato Live “GIG” Tour 2021-REbirth-」より。

「Kazuki Kato Live “GIG” Tour 2021-REbirth-」より。

──加藤かとうさんの活動かつどうじくはアーティストになるのでしょうか?

そうですね。ミュージカルでぼくってくれたほうからすると、「音楽おんがくもやってるんだ」とかんじられるとおもいます。でもぼくはそれでいとおもいますし、くちがどこであれ、加藤かとう和樹かずきという存在そんざいがおきゃくさんのなかにいればい。もし興味きょうみってもらえたら、ぜひライブにも1ていただいて、アーティスト加藤かとう和樹かずきあじわっていただければ。確実かくじつにミュージカルの舞台ぶたいではられない表情ひょうじょう姿すがたがそこにあるので。はじめてられたほうにはけっこうおどろかれます。「アグレッシブなんですね」って。

──2021ねんはピアノコンサートにもはじめて挑戦ちょうせんされました。

むかし自分じぶんうたとピアノ1ほんかせるのは絶対ぜったい無理むりだとかんがえていたんです。でも役者やくしゃでいろいろな表情ひょうじょうせられるのなら、アーティストのほうでもせるんじゃないかなとおもって。ミュージカルをやって自信じしんいたのと、ミュージカルのおきゃくさんがぼく音楽おんがく活動かつどう応援おうえんしてくださるようになって、「ゆったりした空間くうかんきたい」というリクエストをいただいたりしていたので、自分じぶんでも可能かのうせいいどみたくて、ピアニストの吹野ふきのクワガタとのピアノコンサートにりました。

「Kazuki Kato Piano Live Tour 2021」より。

「Kazuki Kato Piano Live Tour 2021」より。

──アーティスト活動かつどう専念せんねんするわけではなく、舞台ぶたいのジャンルにいどつづけている原動力げんどうりょくなにですか?

自分じぶんがやりたいという気持きもちはもちろん、たのしみにしてくれているおきゃくさんがいるということですね。役者やくしゃやタレントは素材そざいでしかないので、監督かんとく演出えんしゅつがそれをいかに料理りょうりしてくれるかで、いろいろな表情ひょうじょうせることができる。声優せいゆうも、こえだけでえんけて作品さくひん世界せかいかんものませるというむずかしさがありますので音響おんきょう監督かんとくはなしをしてやくつくります。でも、それとはべつに、アーティストは自分じぶん自分じぶんをプロデュースしなくてはいけないし、そこではまったくべつかおがあるんです。基本きほんてきには加藤かとう和樹かずき期待きたいするひと退屈たいくつしてほしくないし、挑戦ちょうせんつづける姿すがたせたいんです。だから、おな場所ばしょ停滞ていたいしていたくないんですよね。

──なるほど。

もちろん自分じぶんあま性格せいかくなので、躊躇ちゅうちょすることもあるんですが、基本きほんはおこえがかかったものを、自分じぶん選択せんたくしてすすんできました。だから、ツアー期間きかんちゅうのミュージカル「フィスト・オブ・ノーススター~北斗ほくとこぶし~」(以下いか北斗ほくとこぶし出演しゅつえんめたのも、どっちもあきらめたくなかったから。やらないで後悔こうかいするよりも、やってみてかんがえたらいかって。北斗ほくとこぶし稽古けいこ後半こうはん参加さんかできず、稽古けいこ不足ふそく自分じぶんでもかんじていたし、演出えんしゅつから指摘してきされたことではあったんですが、本番ほんばんまでにはかなら仕上しあげるという決意けつい自分じぶんなかにありました。ぼくにお仕事しごとってくださるほうには期待きたい以上いじょうのものをおかえししたいですし、アーティストも役者やくしゃも、ぼくにとってはどちらも100%でやらないと成立せいりつしません。

──この15ねんかえって、どのようなみちのりだったとかんじますか?

15ねんやりつづけるってむずかしいことだとおもいますし、1人ひとり上京じょうきょうした自分じぶんがいろいろなひと出会であってささえられてここまでられたので、本当ほんとうに、ひととの出会であいに感謝かんしゃする15ねんでした。まわりにたよることの大切たいせつさや、1人ひとりではないと自覚じかくすることができたのはおおきいことだったとおもいます。それに、自分じぶんのがんばり具合ぐあいだれかがはかれることではないけど、がんばっていたらかならだれかはてくれているので。それは自分じぶんわすれちゃいけないなとおもいます。

──加藤かとうさんがこれまでのご経験けいけんなかかんじた、ミュージカルの魅力みりょくなにだとおもいますか?

ぼくはミュージカルをることも大好だいすきなんですが、エンタテインメントのすべてがそこにあるとおもっていて。ミュージカルのなかにあるドラマせいは、人間にんげん関係かんけい日常にちじょう生活せいかつってかえれるものなんですよね。それは映画えいがやテレビドラマもおなじですが、やはり舞台ぶたいは、劇場げきじょう空間くうかん体感たいかんして、より身近みぢかかんじることができる。役者やくしゃさんたちがきて、うごいて、うたっておどってお芝居しばいをして、ぼくなんかは画面がめんを1つとおしてしまうと客観きゃっかんてきになってしまうことがあるんですが、なま感情かんじょううごかされる瞬間しゅんかんって、一生いっしょうなかでどれほどあるんだろうとおもうんですよね。海外かいがいくと、おきゃくさんのリアクションがおおきくて、日本にっぽんのおきゃくさんはどちらかというとおとなしいとかんじられますが、でも、しんなかでは絶対ぜったいがってしまうくらいの、あつ感情かんじょうがあるはず。そうやってしんゆたかにしてくれるのが、ぼくはミュージカルの魅力みりょくだとおもっています。

今後も“ライブ”を追求していく加藤和樹。

今後こんごも“ライブ”を追求ついきゅうしていく加藤かとう和樹かずき

プロフィール

1984ねん愛知あいちけんまれ。だい15かいジュノン・スーパーボーイ・コンテストのファイナリスト。2005ねん、「ミュージカル『しんテニスの王子おうじさま』The Imperial Match ごおりみかど学園がくえん」で初舞台はつぶたい。2006ねんにアーティストデビューし、9月には15周年しゅうねん記念きねん「K.KベストセラーズII」発表はっぴょうした。現在げんざいも、ライブを中心ちゅうしん精力せいりょくてきなアーティスト活動かつどうつづける。おも出演しゅつえんミュージカルに「タイタニック」「1789 -バスティーユの恋人こいびとたち-」「フランケンシュタイン」「BARNUM」「フィスト・オブ・ノーススター~北斗ほくとこぶし~」など。1月28にち「Japan Musical Festival 2022」、2がつふゆのライオン」ひかえるほか、4がつ2にちには13ねんぶりの東京とうきょう日比谷ひびや野外やがいだい音楽おんがくどうライブとなる「Kazuki Kato 15th Anniversary Special Live ~fun-filled day~」開催かいさいする。

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読者どくしゃ反応はんのう

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佐幕さばく @backkkrykym

1がつには「コメディやりたいけどまださきかな(意訳いやく)」とおはなしされてたけど、裸足はだし散歩さんぽはいつごろまってたのだろう。
やりたいこと着実ちゃくじつかなえていこうとするざま本当ほんとうにかっこよい

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