末満健一

すえまんけんいちのうない雑談ざつだん部屋へや だい4かい [バックナンバー]

対談たいだんしゃ / 青木あおきつよし劇作げきさく演出えんしゅつ

物書ものかきの孤独こどくかばれるとき

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あたまなかをのぞいてみたい」とは、時折ときおりかれる、観客かんきゃくから創作そうさくしゃらへの賛辞さんじ言葉ことばれい演劇えんげきかいにおいて、長期ちょうきてき視点してんから綿密めんみつ物語ものがたりむことのできるクリエイターの1人ひとり劇作げきさく演出えんしゅつすえまん健一けんいちは、ダークで独創どくそうてき世界せかいかんからつむされるオリジナル作品さくひんをはじめ、アニメやマンガ、ゲームといった人気にんきコンテンツを原作げんさくとする2.5次元じげん作品さくひん翻訳ほんやくミュージカルと、縦横無尽じゅうおうむじん舞台ぶたいかいまわり、才能さいのう発揮はっきしている。そんなすえまん対談たいだん企画きかくのうない雑談ざつだん部屋へや」では、すえまんが“ってはなしたい人物じんぶつ”とクリエイティブにまつわるトークを展開てんかいし、すえまんの“あたまなか”をのぞきすることをこころみる。

だい4かいは、劇作げきさく演出えんしゅつ青木あおきつよし登場とうじょうする。1967ねん神奈川かながわけん横須賀よこすかまれの青木あおきは、すえまんより10さい年上としうえつくしゅ演劇えんげき集団しゅうだん えん演劇えんげき研究所けんきゅうじょて、自身じしんさく演出えんしゅつつとめたユニット・劇団げきだんグリング(2014ねん解散かいさん)では、日常にちじょうひそ人間にんげんしんのひだを丁寧ていねいにすくいげる作風さくふうで、しょう劇場げきじょう中心ちゅうしん活動かつどうした。現在げんざいは、インドの叙事詩じょじし「マハーバーラタ」をもとにした新作しんさく歌舞伎かぶき極付きわめつき印度いんどでん マハーバーラタ戦記せんき)、劇団四季げきだんしき海外かいがいストレートプレイやオリジナルミュージカルをがけるほか、劇団げきだんしんかんせんなど数々かずかず商業しょうぎょう演劇えんげき幅広はばひろ才能さいのう発揮はっきしている。すえまん青木あおきはこれまで、おたがいの舞台ぶたいかんき、ロビーで挨拶あいさつをするなかではあったものの、こしえてはなすのは今回こんかいはじめて。ことなる作家さっかせい2人ふたりが、“物語ものがたりつくかた”やたがいのなやみをった。

カンパニー形成けいせいには正解せいかいがないけれど…

青木豪

青木あおきつよし

すえまん健一けんいち 今回こんかいげき作家さっかほうをゲストにおまねきしたかったのですが、げき作家さっかいがあまりにもすくなかったので、ぼく舞台ぶたいてくださっているという青木あおきつよしさんにていただきました。

青木あおきつよし うれしいです(笑)。すえみつるさんの作品さくひんは、昨年さくねんの「LILIUM -リリウム」の再演さいえん参照さんしょうTRUMPシリーズ15周年しゅうねん幕開まくあけをかざる、“新約しんやく”「LILIUM」スタート)と、田村たむらみのるさんがていた「Equal-イコール-」(参照さんしょういましかないこのかがやきをしい”、田村たむらみのる&めがね「Equal」開幕かいまく)を配信はいしんたり、「舞台ぶたい刀剣とうけん乱舞らんぶ』維伝 おぼろ志士ししたち」(参照さんしょうかたなステ「維伝」幕開まくあけ、陸奥むつまもる吉行よしゆきやくあおじん未来みらいにつながる作品さくひんに」)をたりしていました。このまえの「イザボー」(参照さんしょう最悪さいあく王妃おうひえんじるもち海風かいふうのキュートさがこぼれちる、ミュージカル「イザボー」開幕かいまく)は配信はいしん期間きかんわなくて、いところで時間じかんてしまって。最後さいごのちょっとまえまでました。

すえみつる ありがとうございます(笑)。ぼくは、青木あおきさんの舞台ぶたいをそんなにたくさんさせていただいているわけじゃないんですけど、最近さいきんのものでは「じゅう」(参照さんしょう青木あおきつよし演出えんしゅつじゅう東京とうきょう公演こうえん幕開まくあけ、主演しゅえん前山まえやま剛久たけひさ本当ほんとうしあわせ」と感慨かんがい)とか、だいぶむかし大阪おおさかでグリングの公演こうえん拝見はいけんさせていただきました。あとは青木あおきさんが脚本きゃくほんかれた劇団げきだんしんかんせん「鉈まる」など。なので、なにからいたらいかな……つよしさんはげき作家さっかとして先輩せんぱいなので、ぼくなやみをいてもらおうかな?

青木あおき あははは。

すえみつる ぼくはずっと関西かんさいしょう劇場げきじょうでやってきたんですけど、そのころ周囲しゅうい演劇えんげき関係かんけいしゃから「(作風さくふうがマンガてきだったので)あんなものは演劇えんげきじゃない」ってわれていたんですよ。東京とうきょうてきたら「東京とうきょう演劇えんげきじゃない」ってわれて。2.5次元じげん舞台ぶたいでも「2.5じゃない」、最近さいきんやったミュージカルでも「ミュージカルのやりかたじゃない」と、つねに「じゃない」「じゃない」とわれつづけてきたんですよね。つよしさんは劇団四季げきだんしきをはじめ、いろいろなカンパニーやジャンルで仕事しごとをされていて、すごいなとおもうのですが、たとえばカンパニーごとの作品さくひんづくりではなに意識いしきされているんですか?

青木あおき なに意識いしきしてるだろう?(笑) スタッフチームを自分じぶんえらべる作品さくひんと、すでにめられている作品さくひんがあるので、TPOにわせて自分じぶんのスタンスも毎回まいかいえているかな。

すえみつる スタンスをえられるのってすごいですね。スタンスってあるしゅどころでもあるじゃないですか。それをえるのは簡単かんたんなことじゃないです。歌舞伎かぶき宝塚歌劇たからづかかげきもそうですけど劇団四季げきだんしきなが歴史れきしなかつちかわれたものがありますよね。

青木あおき 劇団四季げきだんしき小学生しょうがくせいころからきだったんですよ。歌舞伎かぶき蜷川にながわ幸雄ゆきおさんの舞台ぶたいむかしからきだったし、高校こうこうわりからずっとていた劇団げきだんしんかんせんふくめて、きなひととしか仕事しごとをしていないのかもしれないですね。苦手にがてだとかんじる仕事しごと現場げんば淘汰とうたされていっています。

すえみつる 自然しぜんのこった現場げんばが、つよしさんにうところということですか?

青木あおき うん。劇団四季げきだんしきについても「母音ぼいんほうでセリフのしゃべりかたまってるから大変たいへんだったんじゃない?」って、ぼくから悪口わるぐちそうとするひとたちによくうけど(笑)、もともときだったからすんなりとれられたし、セリフじゅつについての共通きょうつう言語げんご劇団げきだんいんあいだでしっかりできているから、ぼく理解りかいすれば、たとえば「じゅうろくふん音符おんぷしゃべってしい」とか「きゅうれてしい」って提案ていあんするとすぐにできるので、意思いし疎通そつうをするのはむしろらくでした。ぎゃく初舞台はつぶたいひとがいるみのプロデュース公演こうえんで、おたがいに共通きょうつう言語げんごがない状況じょうきょうでは、“さぐる”っていう作業さぎょう一番いちばん大変たいへんですよね。

すえみつる たしかにそのあたりはむずかしいですね。舵取かじとりをあやまれば遭難そうなんしてしまいますし。劇団四季げきだんしきには外部がいぶ演出えんしゅつぶという印象いんしょうがなかったので、「こいにおちたシェイクスピア」でつよしさんが演出えんしゅつをされたときは、すごい事件じけんこっているなとおもいました。

青木あおき 51ねんぶりだったみたいです。福田ふくだひさしそんさん以降いこうはじめてんだ外部がいぶ日本人にっぽんじん演出えんしゅつだといて、歴史れきしだなあとおもいました。

劇団四季「恋におちたシェイクスピア」より、田中彰孝演じるウィル(上)と山本紗衣演じるヴァイオラ(下)。(撮影:山之上雅信)

劇団四季げきだんしきこいにおちたシェイクスピア」より、田中たなかあきらこうえんじるウィル(うえ)と山本やまもとしゃころもえんじるヴァイオラ(した)。(撮影さつえい山之上やまのうえ雅信まさのぶ

47さいすえまん健一けんいちいま劇団げきだんをやりたくてしょうがない

青木あおき 大阪おおさかで「演劇えんげきじゃない」とわれたころはどんな芝居しばいをしていたんですか?

すえみつる もともと惑星わくせいピスタチオという劇団げきだん役者やくしゃとして所属しょぞくしていたんです。2000ねん劇団げきだん解散かいさんしたときに、ぼくには“解散かいさん”という出来事できごとがあまりにもつらくて、解散かいさんをもう二度にど経験けいけんしないですむように自分じぶんのユニットをつくろうと。それでメンバーが自分じぶん1にんだけで公演こうえんごとに出演しゅつえんしゃあつめるプロデュース形式けいしきのユニットであるピースピットをはじめました。作風さくふううと“エンタメけい”とよくわれていました。所属しょぞくしていた劇団げきだん作品さくひんが、“宇宙うちゅうをまたにかけた逃亡とうぼうげき”とか、“音速おんそくはしるランナーたちの物語ものがたり”とか、どうやって演劇えんげきでやるの?という設定せってい身一みひとつで表現ひょうげんするという挑戦ちょうせんてき演劇えんげきでした。その影響えいきょうけていたんだとおもいます。自分じぶん脚本きゃくほん演出えんしゅつをやるようになってから「じゃない」「じゃない」とわれつづけながらもかずだけはたくさんやらせてもらいましたけど(笑)。そういうぼくからすると、つよしさんは多彩たさいなカンパニーで作品さくひんがけられていて、すごくご苦労くろうされているんじゃいなかと。

青木あおき いやいや、劇団げきだんをやっているときより、いまのほうが気持きもちはらくですよ。

すえみつる ぼく今年ことしで48さいなんですけど、つよしさんは47さいのときにグリングを解散かいさんされたんですよね?

青木あおき そう、2014ねん解散かいさんしました。でも、休止きゅうし公演こうえん「Jam」は2009ねんだったので、最後さいご公演こうえんぼくが43さいのときでしたね。だから、結婚けっこんったら「Jam」から解散かいさんまでは“別居べっきょ”。2014ねんにふと、「これはもうもどることはないな」とおもって、すべてをたたんだかんじです。

すえみつる ぼくいまつよしさんがグリングを解散かいさんした年齢ねんれいおなじくらいなんですけど、ぎゃく劇団げきだんをやりたくてしょうがないんです。身辺しんぺん整理せいりをして、劇団げきだん活動かつどうもどろうかとおもうくらい。商業しょうぎょう演劇えんげき出自しゅつじ演劇えんげきたいするかんがかたちがひとたちを、おな方向ほうこうにまとめて作品さくひんつくることも面白おもしろいんですが、「いま劇団げきだんをやったらなにができるんだろう?」とかんがえてしまって。劇団げきだん形式けいしきでしかやれないこともありますし。いざ劇団げきだん旗揚はたあげしておいて2・3ねんわる可能かのうせいもありますけどね(笑)。じつ昨年さくねん執筆しっぴつちゅうだったものもふくめると新作しんさくを7ほんくらいやったんです。どれもすごいボリュームで、そのかえしに疲弊ひへいした……のかな。

青木あおき 全部ぜんぶ新作しんさくで? それは大変たいへんですね。そんなにたくさんの作品さくひんかれているなかで、ぼくがすごいなとおもうのは、1つひとつの物語ものがたり世界せかいかんがすごくしっかりしていること。たとえば「TRUMPシリーズ」にはまゆがあって、その世界せかいなかひときているマップみたいなものの輪郭りんかくがはっきりとしている。ぼくは1つの世界せかいかんがえることがなかなかできないから、すえまん作品さくひんるといつもうらやましいなとおもうんです。執筆しっぴつするときは、ご自身じしんあたまなかえがきたい世界せかいが1つ、確実かくじつにあるようなかんじなんですか?

すえみつる そうですね。でも、世界せかいかんきたいものの根幹こんかんではなく、すすめるうちにぼくは“生死せいしはなし”にいてしまうんですよね。ひんえ、毎回まいかいおなじことをかたっているなというふうにはおもいます。だからせめて外側そとがわだけでもちがうものにしようと世界せかいかんにこだわっているのかもしれません。最近さいきんではそのどうしてもにじてきてしまう思想しそうのようなものを、原作げんさくがある作品さくひん意図いとせずかさねてしまうことがしんどくなってきていて。それに、シリーズばかりをやっていると、たまになに関係かんけいないオリジナルをやったときに、おきゃくさんに見向みむきもされないんですよ。「そんなひまがあったらシリーズのつづきをけ」とわれているようなジレンマはあります。シリーズものは固定こていのおきゃくさんがついてくれてとてもありがたい反面はんめん、そこにしばられてしまうという、諸刃もろはけんなところがあるんです。

青木あおき たしかに、そうですよね。

物語ものがたりつくることが苦手にがて青木あおきつよし執筆しっぴつ動機どうきは“役者やくしゃ

MOJOプロジェクト -Musicals of Japan Origin project- ミュージカル「イザボー」より。

MOJOプロジェクト -Musicals of Japan Origin project- ミュージカル「イザボー」より。

すえみつる つよしさんがてくださった「イザボー」は、ミュージカルきがこうじて、自分じぶん本格ほんかくてきにミュージカルに挑戦ちょうせんしたかったという経緯けいいがあります。日本にっぽんのミュージカルかいだい多数たすう海外かいがいからの輸入ゆにゅうモノなので、まだだれらない歴史れきしじょう人物じんぶつをモチーフにして日本にっぽん世界せかい初演しょえんとなるオリジナルミュージカルをやりたいなと。10ねんほどまえに“ジャンヌ・ダルクがきていた”という実際じっさいにあった詐欺さぎ事件じけん題材だいざいにしたミュージカルをつくったときにイザボーという人物じんぶつったんですが、すごく興味深きょうみぶか人生じんせいおくられたほうだったので、いつかだれかがやりそう、いやだれもやらないでくれ!と10年間ねんかんねがつづけて、結局けっきょくだれもやらなかったからぼくがやることができました(笑)。むずかしい題材だいざいでしたが、公演こうえん直前ちょくぜんにジャンヌ・ダルクを主人公しゅじんこうにした舞台ぶたいおな劇場げきじょう東京建物とうきょうたてもの Brillia HALL(豊島としま区立くりつ芸術げいじゅつ文化ぶんか劇場げきじょう))で上演じょうえんされていたので、おきゃくさんが周辺しゅうへん歴史れきし予習よしゅうしてくれていた状況じょうきょうでした。偶然ぐうぜんたすけられつつ、「イザボー」の数奇すうき物語ものがたりとどけることができました。いまはMOJOというプロジェクトで「オリジナルミュージカルの創作そうさくをがんばりたい」とおもっています。

青木あおき ぼくは、すえみつるさんのように自分じぶんのプロジェクトをってないんですよね。やりたいことの構想こうそう事務所じむしょはなしたりはしますが、「来年らいねん仕事しごと大丈夫だいじょうぶかな? 再来年さらいねん大丈夫だいじょうぶかな?」とおもっていると、ありがたいことに仕事しごとをいただけたりする。それで、仕事しごと必死ひっしでやっていくうちに、時間じかんぎちゃっているんです。ぼく一番いちばん本数ほんすうっていたのは、蜷川にながわさんが「ガラスの仮面かめん」をミュージカルにしたとき(編集へんしゅうちゅう:2008ねん上演じょうえんされたいろどりくにファミリーシアター「音楽おんがくげき ガラスの仮面かめん」。北島きたじまマヤやく大和田おおわだ美帆みほ姫川ひめかわ亜弓あゆみやく奥村おくむら佳恵かえがオーディションでえらばれた)。ぼくにとってのはじめてのミュージカル作品さくひんで、蜷川にながわさんに「青木あおきくん、今年ことしなんほん?」とかれて、翌年よくねんぶんいていたので「9ほんです」とこたえたえら、「すごいね、でもおれ10ほんだから。ったね」とおっしゃられて。そんなことぼく勝負しょうぶしなくてもいんじゃないかなとおもいました(笑)。

すえみつる 演出えんしゅつで10ほん天上てんじょうじん会話かいわですね(笑)。

青木あおき 蜷川にながわさんは70さいぎてもえずとしに10ほん前後ぜんこうやられていましたから、すごいですよね。はなしもどりますけど、ぼくすえみつるさんのげき世界せかいがきちんとあって、それをかれていることがうらやましいんです。ぼく物語ものがたりつくることが苦手にがてなのと、ってしまえば物語ものがたりにあまり興味きょうみがないんですよ。映画えいが結末けつまつもすぐにわすれちゃうし、映画えいが「スター・ウォーズ」をて、「わ、このキャラとあのキャラ、そういう関係かんけいなんだ!」って3かいおどろいたことがある。はなしすじおぼえないから、舞台ぶたい脚本きゃくほんくときも、役者やくしゃさんありきで、そのひとがどうだったら面白おもしろいかと物語ものがたりかんがえていくんです。

すえみつる 役者やくしゃありきのかたというのもいですよね。「TRUMPシリーズ」は有難ありがたいことにおもいもよらずシリーズすることができたので、作品さくひん世界せかいかんなか役者やくしゃをはめむような罪悪ざいあくかんもあって。ただ、後世こうせいのこるようなオリジナル作品さくひんつくりたいというよくがあるから葛藤かっとうしています。役者やくしゃさんありきというくちから戯曲ぎきょくけるのは、正直しょうじきうらやましいです。5ねんくらいまえはじめてブロードウェイにったときに、上演じょうえんされている作品さくひんのクオリティのたかさや、新作しんさく旧作きゅうさくがバンバン上演じょうえんされているという状況じょうきょうにカルチャーショックをけたんですよ。ぼくは20ねんくらいこの業界ぎょうかいにいて、おそらく300ほん以上いじょうつくってきたけど、そのほとんどが1かいわっていく。作品さくひん使つかてにせず、すえなが大事だいじにできるオリジナル作品さくひんつくりたいんです。今年ことしはる上演じょうえんされたつよしさんの「あのよこのよ」(参照さんしょう「あのよこのよ」開幕かいまく安田やすだあきらだいあたまからっぽにしていただける時間じかん提供ていきょう出来できたら」)には、原作げんさくはないですよね?

青木あおき 完全かんぜんオリジナルです。原作げんさく史実しじつもないところからつくったのは、音楽おんがくげき「マニアック」(参照さんしょう「マニアック」東京とうきょう開幕かいまく古田ふるた新太あらた「ちょっといい作品さくひんになっちゃったな」以来いらい、5ねんぶりですね。「マニアック」は、古田ふるた新太あらたさんが「つよしちゃん、おこられる芝居しばいつくろうよ」っておっしゃって、なにをしたらおこられるかをひたすらかんがえてづくりました(笑)。

すえみつる あははは(笑)。

PARCO PRODUCE 2024「あのよこのよ」より。(撮影:田中亜紀)

PARCO PRODUCE 2024「あのよこのよ」より。(撮影さつえい田中たなか亜紀あき

青木あおき すえみつるさんは、執筆しっぴつちゅう気分きぶん転換てんかんなにをしますか?

すえみつる べつ作品さくひんきます。いまやらなくてもいい作品さくひんはじめたりしますね。仕事しごとからの現実げんじつ逃避とうひべつ仕事しごとなんです。

青木あおき そうなんだ(笑)。ぼくいている途中とちゅうべつ作品さくひんすのはむずかしいなあ。こんなことっちゃいけないんだろうけど、なるべくきたくないの。最近さいきん午前ごぜんちゅう映画えいがてインプットするというたのしさをおぼえたんですが、まえはだいたい3か4までおさけみながらいていたんですよ。それで早朝そうちょう事切こときれる。だから午前ごぜんちゅう使つかものにならないことがおおくて。“青木あおきB”にならないとけないんです。

すえみつる そうなんですね、先輩せんぱいがそんなかんじでちょっと安心あんしんしました(笑)。でもぼくは、いつかつよしさんに「TRUMPシリーズ」をいてほしいなともくろんでいるので。コロナのときにぼく以外いがいの6にん作家さっかさんで「くろ世界せかい ~リリーの永遠えいえん記憶きおく探訪たんぼうあるいは、わりなきまゆにまつわる寥々りょうりょうたる考察こうさつについて~」(参照さんしょうshared TRUMP作家さっかじん発表はっぴょう中屋敷なかやしきほうひとし、ハライチ岩井いわい葛木かつらぎえいら6くみ参加さんか)というオムニバスをやったんですが、それがすごくたのしくて。ぜひつよしさんにもいてもらいたいなと。

青木あおき うわ、それめっちゃ緊張きんちょうする。「なるべくきたくない」ってってるのに(笑)。すえみつるさんは脚本きゃくほん演出えんしゅつだったらどちらがきですか?

すえみつる ケースバイケースですけど、ぼく場合ばあいくまでがしんどいんです。かなきゃいけないのに「いまくときじゃない、自分じぶんなかでそこまでたかまっていない」とかおもったりして。だから締切しめきりまもれませんし、ぎゃくたのまれていない台本だいほんがったりします。いこととしては、たのまれていないのにいた台本だいほんにはシリーズものもオリジナルものもあるので、なに緊急きんきゅう事態じたいきたときに「これどうですか?」とせるたまっているということですね。

青木あおき 素晴すばらしいですね(笑)。

「TRUMPシリーズ」の最新作、舞台「マリオネットホテル」のキービジュアル。

「TRUMPシリーズ」の最新さいしんさく舞台ぶたい「マリオネットホテル」のキービジュアル。

げき作家さっか孤独こどく作業さぎょうは、初日しょにちまくひらき、観客かんきゃくかおむくわれる

すえみつる つよしさんはけないときの解決かいけつさくはあるんですか?

青木あおき ひとはなすことかなあ。とあるマンガさんのエッセイのなかに、マンガさんも編集へんしゅうしゃやほかにブレインがたくさんいて、じつこまったときに相談そうだんしているというようなことがいてあって、意外いがい全部ぜんぶ1人ひとりいているわけじゃないんだなっておもいました。そのブレイン、げき作家さっかにもしいなと。

すえみつる しいですね。以前いぜん、MONOの土田つちた英生ひでおさんとおはなしする機会きかいがあって、土田つちたさんもけないときには「だれかにはなす」とおっしゃっていました。てきにボールをてるかべちみたいに、なにかをはなしたらなにかがかえってきて、ラリーのような対話たいわから解決かいけつさくまれるって。ぼく相談そうだんしたいときにちかくに相談そうだんできるじんがいない場合ばあいは、落語らくごみたいに自分じぶん質問しつもんして自分じぶんこたえるっていうやりかたをするようになりました。「おまえこれどうおもう?」「いや、それはね」って。もちろんおなのうみそだから、いキャッチボールにはならないんですけど(笑)。

青木あおき くって孤独こどく作業さぎょうですよね。その孤独こどく作業さぎょうかばれるのにはいろいろな段階だんかいがあるとおもうけど、ぼくは、役者やくしゃじんはじめて本読ほんよみするこえいて「大丈夫だいじょうぶかも」っておもえた瞬間しゅんかんに、すこしだけホッとします。

すえみつる ああ、なるほど。ぼくは、本読ほんよみのときははりのむしろ状態じょうたいで……。チープなセリフいちゃったなとか、成立せいりつしてないなとか、語尾ごびはこれじゃなかったなとか、こまかいことが露呈ろていされてチクチクとさるんです。台本だいほんけた瞬間しゅんかんには開放かいほうかんがあって、提出ていしゅつするときは気持きもちがおもくて、わせでははりのむしろ。だから公演こうえん初日しょにち終演しゅうえんしたときが一番いちばんむくわれるかんじがあります。

青木あおき そうかもしれない。おきゃくさんのかおて、満足まんぞくそうだったら「かったな」とおもいますよね。

すえみつる そうですね。ただ、マンガ映画えいが監督かんとくのドキュメンタリーをていておもいますが、ひとだれしもそれぞれ孤独こどくかかえながらきているけど、作家さっかはそれをネタにほんくから、孤独こどくがより鮮明せんめいになるがします。られないのかなって。結婚けっこんしたり子供こどもができたりして作風さくふうまるくなっていく同業どうぎょうしゃをたくさんてきましたが、自分じぶんなにかがたされたり、充実じゅうじつしてしまったら、面白おもしろいものがけなくなるという自信じしんがあります。不幸ふこう自分じぶんりするっていうといや商売しょうばいのようにおもえますが。そんなことないですか?

青木あおき ぼくはね、結婚けっこんしてからバイトをめて、げき作家さっかとしてえるようになったんです。独身どくしんのときは物書ものかきとしておかねをもらったことがほぼなくて。だから、結婚けっこんしてダメになるのとはぎゃく人間にんげんですね。でも面白おもしろいのが、自分じぶん不幸ふこうだとすごくしあわせな物語ものがたりきたくなって、しあわせだと「こんなはずない」とおもって悲劇ひげききたくなる。

すえみつる ぼくが「これはひどいはなしだなあ」とおもった「鉈まる」をいたときはしあわせでした?

青木あおき しあわせだった(笑)。

すえみつる じゃあその理屈りくつうと「IZO」(「いのうえ歌舞伎かぶきごう『IZO』」)のときもしあわせでしたよね?

青木あおき めっちゃしあわせなときにいた(笑)。いのうえひでのりさんに「映画えいがみたいにもっとアップのようなシーンをいていよ」ってわれたので、相手あいてるというシーンをいたんだけど。それ、しあわ絶頂ぜっちょうのときです。防衛ぼうえい本能ほんのうみたいなかんじなのかな。不幸ふこうなときは本当ほんとう不幸ふこうがやってるから、すこしでもしあわせなことをかんがえようとするのかもしれない。

すえみつる なるほど。ぼくくものに悲劇ひげきおおいんですが、悲劇ひげきくとメンタルがそっちにられちゃうんですよ。だとすると、そうか、いまこそしあわせな物語ものがたりいたらいんだ。しあわせな物語ものがたりいたのは、10ねん以上いじょうまえ最後さいごだもんなあ。

青木あおき (笑)。

劇団☆新感線「IZO」(2008年上演)より。(撮影:田中亜紀)

劇団げきだんしんかんせん「IZO」(2008ねん上演じょうえん)より。(撮影さつえい田中たなか亜紀あき

すえみつる いや、本当ほんとうどう業者ぎょうしゃとの接点せってんがないし、脚本きゃくほんいているひと演出えんしゅつしているひと友達ともだちがいなさすぎて、自分じぶんだけがおかしいのかなとおもっていたんですが、失礼しつれいないいかたかもしれないけど、おかしいのは自分じぶんだけじゃなかったんだと(笑)、おはなしいていておもいました。

青木あおき かった、かった。ぼくどう業者ぎょうしゃとしゃべるのはすごくひさしぶりで。赤堀あかほりみやびあき)くんとはかれ作品さくひんぼくて、そのあとぼく作品さくひん赤堀あかほりくんがてもらってということがあって、おたが劇団げきだんをやってたころわりとしゃべってたし、あと劇団げきだん桟敷さじき童子どうじあずま憲司けんじさんとは、こういう取材しゅざいでおはなししたのがすごくたのしくて、したしくなりました。ひがしさんとは接点せってんがまったくないようで、じつきな芝居しばいていたり、ひがしさんが蜷川にながわさんの「タンゴ・ふゆわりに」を感激かんげきして紙吹雪かみふぶきかえったはなしをしてくれたりして、このひととははなしができる!とおもったんです。紙吹雪かみふぶき演劇えんげききのロマンだから。もうすうねんに1かいくらいになってしまったけど、いまでもこまるとひがしさんに電話でんわして「つらいんですけど」ってうと、ひがしさんは「ぼくもつらいよ」ってかえしてくれる(笑)。ここのところはげき作家さっかさんとだいぶしゃべっていなかったので、今日きょうたのしかったです。

すえみつる コロナのあおりでアフタートークもだいぶりましたしね。ちょっとみそうになったら、つよしさんとのみをセッティングさせてもらおうかな。

青木あおき ぜひどうぞ(笑)。みながらだと余計よけいがるとおもいます。

プロフィール

青木あおきつよし(アオキゴウ)

神奈川かながわけん出身しゅっしん。1997ねん劇団げきだんグリングを旗揚はたあげ。2014ねん解散かいさんまでぜん18公演こうえんさく演出えんしゅつつとめた。現在げんざいはプロデュース公演こうえん劇団げきだんへの脚本きゃくほん提供ていきょう演出えんしゅつがけている。2009ねん、HTBスペシャルドラマ「ミエルヒ」(脚本きゃくほん)でだい47かいギャラクシーしょうテレビ部門ぶもん優秀ゆうしゅうしょう、2010ねんにNHK-FMシアター「リバイバル」(脚本きゃくほん)でABUしょう受賞じゅしょう。2011ねんに「往転-オウテン」(演出えんしゅつ)でだい66かい文化庁ぶんかちょう芸術げいじゅつさい新人しんじんしょう受賞じゅしょう。2012・2013ねん文化庁ぶんかちょう新進しんしん芸術げいじゅつ派遣はけん制度せいどによりロンドンに留学りゅうがくした。近年きんねん作品さくひんに、「あのよこのよ」(脚本きゃくほん演出えんしゅつ)、歌舞伎かぶき極付きわめつき印度いんどでん マハーバーラタ戦記せんき脚本きゃくほん / 2017ねん、2023ねん)、劇団四季げきだんしきこいにおちたシェイクスピア」(演出えんしゅつ)・「バケモノの」(演出えんしゅつ)、劇団げきだんしんかんせん「ミナトまち純情じゅんじょうオセロ~がつがとっても慕情ぼじょうへん」(脚本きゃくほん / 2020ねん、2023ねん)、椿つばきぐみ2024ねんなつ花園はなぞの神社じんじゃ野外やがいげき「かなかぬち~ちちのみのちちはいまさず~」(構成こうせい演出えんしゅつ)、舞台ぶたいりょう国花こっかにしき闘士とうし脚本きゃくほん演出えんしゅつ)など。舞台ぶたいおうてんもん』」演出えんしゅつ)が12月にひかえる。

すえまん健一けんいち(スエミツケンイチ)

1976ねん大阪おおさかまれ。脚本きゃくほん演出えんしゅつ俳優はいゆう関西かんさいしょう劇場げきじょう中心ちゅうしん俳優はいゆうとして活動かつどうしたあと、2002ねん自身じしん脚本きゃくほん演出えんしゅつ作品さくひん発表はっぴょうするとして、演劇えんげきユニット・ピースピットを旗揚はたあげ。2011ねん脚本きゃくほん演出えんしゅつがけたTAKE IT EASY!「せんねん女優じょゆう」の再演さいえん以降いこう活動かつどう東京とうきょうにもひろげる。2019ねんには、自身じしんがけるライフワークてき作品さくひん「TRUMPシリーズ」が10周年しゅうねんむかえた。「TRUMPシリーズ」のもととなった「TRUMP」は現在げんざい「ヤングエース」(KADOKAWA)にてコミカライズ連載れんさいちゅうで、2021ねん6がつには単行本たんこうぼんだい1かん発売はつばいされた。がけた舞台ぶたい作品さくひん浪花節なにわぶしシェイクスピア『富美男ふみおゆう莉子りこ』」脚本きゃくほん演出えんしゅつ)、「ムビ×ステ『漆黒しっこくてん -はじめかたり-』」さく演出えんしゅつ)、「舞台ぶたいおにめつ』」シリーズ(脚本きゃくほん演出えんしゅつ)、「舞台ぶたい刀剣とうけん乱舞らんぶ』」シリーズ(脚本きゃくほん演出えんしゅつ)、ミュージカル「ダーウィン・ヤング あく起源きげん潤色じゅんしょく演出えんしゅつ)、オリジナルミュージカル「イザボー」(さく演出えんしゅつ)など。「TRUMPシリーズ」のテレビアニメばんデリコズ・ナーサリー」(原作げんさく・シリーズ構成こうせい脚本きゃくほん)が2024ねん8がつ7にち放送ほうそう開始かいし。9・10がつに「TRUMPシリーズ」の最新さいしんさく舞台ぶたい『マリオネットホテル』」さく演出えんしゅつ)の上演じょうえんひかえる。

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neji @schneehoppli

劇団四季げきだんしきこいにおちたシェイクスピア』のこともすこかたられています。
(あきらたかしさんウィルとしゃころもさんヴァイオラのお写真しゃしんも) https://t.co/4s24AM2a8Q

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