ペヤンヌマキと南果歩がタッグ、東京文化会館シアター・デビュー・プログラム「木のこと The TREE」

東京文化会館とうきょうぶんかかいかんが2021年度ねんどから展開てんかいしている「シアター・デビュー・プログラム」。このプログラムでは、東京文化会館とうきょうぶんかかいかん幼少ようしょう音楽おんがくワークショップや子供こどもけコンサートにれた子供こどもたちのための“つぎなるステップ”として、多彩たさいなアーティストを起用きようした青少年せいしょうねんけの舞台ぶたい芸術げいじゅつ企画きかく制作せいさくしている。

2024ねん7がつにお目見めみえするしん制作せいさくのこと The TREE」は、脚本きゃくほん演出えんしゅつにブスかい*のペヤンヌマキ、音楽おんがく監督かんとくさく編曲へんきょく・ピアノにはやし正樹まさきむかえた、演劇えんげきとジャズのコラボレーション作品さくひん自身じしんらすまち道路どうろ計画けいかくめぐり、樹木じゅもく伐採ばっさい問題もんだいたりにしたというペヤンヌが“つづけること”や“共生きょうせい”をテーマにろしたほんさくに、たしかな演技えんぎりょく柔軟じゅうなん感性かんせいみなみ果歩かほいどむ。

ステージナタリーではペヤンヌとみなみ対談たいだん実施じっし。ペヤンヌと、彼女かのじょのラブコールをけて「出演しゅつえん即決そっけつした」とわらみなみが、5がつ中旬ちゅうじゅん芽吹めぶきつつある創作そうさく様子ようすかたった。

取材しゅざいぶん / 大滝おおたき知里ちさと

だい駱駝らくだかん全身ぜんしん金粉きんぷん姿すがたおどったペヤンヌマキ、演劇えんげき真理しんりさと

──ペヤンヌマキさんは、2022ねんに「むしめづる姫君ひめぎみ」の台本だいほんで「シアター・デビュー・プログラム」に参加さんかされました。「むしめづる姫君ひめぎみ」は、「のこと The TREE」(以下いかのこと」)にも出演しゅつえんされる舞踏ぶとう我妻あづま恵美子えみこさんが演出えんしゅつ振付ふりつけ舞踏ぶとう担当たんとうし、加藤かとう昌則まさのりさんが音楽おんがく監督かんとくさく編曲へんきょく・ピアノをがけた作品さくひんでしたが、当時とうじ、「シアター・デビュー・プログラム」に参加さんかされてどのような印象いんしょうちましたか?

ペヤンヌマキ 平安へいあん絵巻えまきむしめづる姫君ひめぎみ」を子供こどもけの作品さくひんにするということで、「舞踏ぶとうだけでなく、言葉ことばもほしい」と、台本だいほん依頼いらいをいただきました。毎月まいつき1かい音楽家おんがくか加藤かとうさんと我妻あづまさんとわたしで、セッションをするように1ねんかけて作品さくひんつくげていったのですが、その過程かていがすごく面白おもしろくて。じつむかし我妻あづまさんが所属しょぞくされていただい駱駝らくだかん開催かいさいしている白馬はくばむら合宿がっしゅく参加さんかしたことがあったんです。だい自然しぜんなかぱだか全身ぜんしん金粉きんぷんっておどったのですが、それが、そのわたし人生じんせい左右さゆうするような体験たいけんでした(笑)。そのときにまなんだのが、舞踏ぶとう原点げんてんは“みずかおどるのではなく、からっぽのふくろとして、そとからの影響えいきょうおどらされるものである”ということ。これは演劇えんげきでも大切たいせつにしているものだなとおもって。そういうかんがかた舞踏ぶとう我妻あづまさんと、「むしめづる姫君ひめぎみ」でご一緒いっしょできたことも、とても経験けいけんでした。「むしめづる姫君ひめぎみ」でしていた、“人間にんげんむしもみんなおなじ”というテーマにも共感きょうかんしましたし、そのテーマは「のこと」にもつうそこするとおもっています。人間にんげん生態せいたいけい一部いちぶ特別とくべつではないというかたができる作品さくひんつくれたらと。

ペヤンヌマキ

ペヤンヌマキ

──みなみさんは「のこと」のオファーをけたさい、どのようなおもいがめぐりましたか?

みなみ果歩かほ ペヤンヌさんのさく演出えんしゅつだったので、「やろう」とおもいました(笑)。10ねんくらいまえにペヤンヌさんが主宰しゅさいされているブスかい*の公演こうえんをザ・スズナリへかんったんです。東京とうきょう新聞しんぶん記事きじっていて、「面白おもしろそうだなあ」とおもって、つぎ1人ひとりでふらっと劇場げきじょうったんですよね(笑)。実際じっさいたら「こんなことをかんがえているひとがいるんだ!」と、わたし一方いっぽうてきにペヤンヌさんのファンになりました。以降いこうはいろいろさせていただいています。

ペヤンヌ 「おかあさんが一緒いっしょ」という、2015ねん上演じょうえんしたさん姉妹しまい家族かぞくはなしでしたね。わたしみなみさんを舞台ぶたいでずっと拝見はいけんしていたので、突然とつぜんてくださったことに「まさかみなみ果歩かほさんがかんてくださるとは」とびっくりしました(笑)。みなみさんはどんな年齢ねんれいやくでも変幻へんげん自在じざいえんじていらっしゃる、くもうえ存在そんざいのようにかんじていたのですが、わたしくような半径はんけいすうメートル以内いない物語ものがたりにも興味きょうみしめしてくださったのが意外いがいでしたし、うれしかったです。

みなみ さっきペヤンヌさんが、金粉きんぷん姿すがた大地だいちみしめておどる、そとからの影響えいきょうける状態じょうたいでいるというおはなしをされていて、面白おもしろいなとおもったのが、わたしそとからの影響えいきょうけたいタイプなんです。わーっとのめり人間にんげんられがちなのですが、たぶんからっぽの状態じょうたいでいる時間じかんのほうがながくて。だからお芝居しばいつづけているんだろうとおもいますし、そとからの影響えいきょうほっしているんだと。面白おもしろそうなことにれて、「いつかたらいな」くらいの気持きもちで、自分じぶんなかにストックしているんですよね。今回こんかい出会であいからすうねんってペヤンヌさんからこえをかけていただいて、「た!」とうれしくおもっています(笑)。

少女しょうじょえんじるなんて、演劇えんげきにしかできないこと(みなみ

──ブスかい*「おかあさんが一緒いっしょ」でおいして以来いらい、いつかみなみさんと舞台ぶたいつくりたいというお気持きもちはあったのですか?

ペヤンヌ いつかご一緒いっしょできればとはおもいつつ、ご一緒いっしょするならどういうお芝居しばいいだろうという妄想もうそうは、しん片隅かたすみにありました。わたし自身じしん、このすうねん作風さくふう変化へんかしていて、みなみさんがかんてくださった当時とうじ会話かいわげき一幕ひとまく芝居しばいおおかったのですが、コロナのときにはドキュメンタリーの映像えいぞうったりしました(参照さんしょうペヤンヌマキが岸本きしもとさとこに密着みっちゃくした選挙せんきょドキュメンタリー「○がつにち区長くちょうになるおんな上映じょうえいかい)。20ねんくらい自分じぶんってんでいる杉並すぎなみみどりゆたかな地域ちいきのアパートが、道路どうろ計画けいかくによって立退たちのけ区域くいきにされていることがわかりまして。住民じゅうみんこえかずにすすめている計画けいかくいきどおりをかんじたことがきっかけで、カメラをまわはじめました。そのなか出会であった住民じゅうみんほうが「自分じぶんまれたときにえてくれた絶対ぜったいまもる」とおっしゃるのをいて、退問題もんだい直面ちょくめんした西荻にしおぎくぼゆう空間くうかんがざびぃで都市とし計画けいかく道路どうろについての舞台ぶたいをやったんです(参照さんしょうブスかい*の新作しんさく「The VOICE」開幕かいまく、ペヤンヌマキ「たことのない作品さくひんになりました」)。そこから、“人々ひとびとこえからつむいでいく作品さくひん”をつくりたくなったという経緯けいいがあって、「みなみ果歩かほさんとやるなら、いまだ」とつよおもったんです(笑)。一幕ひとまく芝居しばい会話かいわげきよりもおおきなスケールで、かたりにちからがあってどんな年齢ねんれいやくでもえんじられるみなみさんとぜひご一緒いっしょしたいなとおもいました。

みなみ すごくうれしいです。

──「のこと」では、あるおんなまれたときにえられた1ほんが、おんなふくさん世代せだいにわたって、その土地とち地域ちいききる人々ひとびと姿すがたつめる様子ようすえがかれます。台本だいほんまれた感想かんそうおしえてください。

みなみ めちゃくちゃ面白おもしろいです! だってわたし少女しょうじょえんじるって、そんなの演劇えんげきでしかできませんから(笑)。すこしずつ出来上できあがる台本だいほんむにつれ、ペヤンヌさんの目線めせん人間にんげんファーストではなく、1ほん拠点きょてんに、人間にんげんのエゴや思想しそうだけでは自然しぜんかいまわっていかないというメッセージをつよく、でもやさしくかたりかけてくれていることがわかるんです。今回こんかいは「シアター・デビュー・プログラム」ということで、とくちいさなおさんもかんきたられるとおもいますが、子供こどもたちがたのしめる作品さくひんは、結局けっきょく大人おとな鑑賞かんしょうにもえうるものになります。わたしは、はじめての体験たいけんはやければはやいほうがいとおもっていて。たとえば、修学旅行しゅうがくりょこう京都きょうとって、当時とうじなにもわからずにていた建造けんぞうぶつが、大人おとなになってふたたおとずれたときに“こたわせ”ができる。そういうことってたくさんあるとおもうんです。だからこたわせの機会きかいやすためにも“何事なにごと体験たいけんすること”が大切たいせつで。今回こんかい子供こどもたちが気兼きがねなく観劇かんげきできるで、自然しぜん人間にんげん共存きょうぞん題材だいざいにした作品さくひん上演じょうえんするのは、ぴったりだなとおもいました。

南果歩

みなみ果歩かほ

かたがれていく”昔話むかしばなしちをつくりたい(ペヤンヌ)

──“共生きょうせい”や“ともつづける”というテーマと、少女しょうじょ交流こうりゅう具体ぐたいてきにどのようにせるのか、作品さくひん構想こうそうおしえてください。

ペヤンヌ 時間じかん人間にんげん時間じかんかんがえたときに、からすると人間にんげんうつわりがはげしい、人間にんげん時間じかんはやいということが念頭ねんとうにあったのですが、実際じっさい台本だいほんいてみると、想像そうぞう以上いじょう人間にんげん時間じかんてき感覚かんかくはやかったんです(笑)。するとなおさら、自分じぶんたちとはまったくちが時間じかんじくきるを、人間にんげん街路がいろじゅなどで勝手かってえてはっているという事実じじつ疑問ぎもんもあって。舞台ぶたいじょうでは、だけがわらずにそこにることをせ、さらにやく我妻あづまさんにえんじていただくことで、ものであるというということを、にもわかりやすく提示ていじしようとおもっています。

みなみ 人間にんげん時間じかんって本当ほんとうまばたきのようにぎていくんですよね。わたしえんじる少女しょうじょとしって結婚けっこんし、いろいろな経験けいけんをするんですけど、人間にんげん樹木じゅもくというちがいはあれど、自分じぶんまれたときにえてもらったしんかよわせるときあいだごすんです。さきほどったとおり、少女しょうじょえんじることもたのしいけれど、との対話たいわたのしくて。なにより自分じぶんともそだっていく対話たいわするというシチュエーションが、とても素敵すてきえがかれているんです。

ペヤンヌ 1ほんじくに、周囲しゅういはなし展開てんかいし、みなみさんのかたりがはいって、物語ものがたりとして“かたがれていく”かたちにしたくて、新作しんさくだけど、昔話むかしばなしちみたいなものをかんってもらえるといなとおもっています。最近さいきん人間にんげん生物せいぶつとしての感覚かんかくうしなわれていっているんじゃないかとおもうことがあって。

みなみ こちらがわの?

ペヤンヌ そう。わたしやまかこまれてそだったからかもしれないのですが、もっとんで原始げんしてき生活せいかつをしていたら、簡単かんたんってはいけないとはだでわかるがするんです。都会とかいんでいるとその感覚かんかくうしなわれちゃうから、都市とし開発かいはつ都合つごうすすめられてしまうのではないかなと。演劇えんげきることによって原始げんしてきはだ感覚かんかくすこしでももどしてもらえたらとおもっています。