2019年にアイスランド北部に開通したドライブルート「アークティック・コースト・ウェイ」は、ドラマチックな風景で旅人を魅了する。(PHOTOGRAPH BY FILIPPO BIANCHI, GETTY IMAGES)
厳しい自然と、多彩な歴史、伝説、民話に彩られた国アイスランド。
2019年、この国の北部を走る既存の自動車道路をつないだ「アークティック・コースト・ウェイ」が開通した。今はまだ訪れる人も少ないこの宝石のようなルートでは、幻想的な玄武岩の断崖、アザラシがひなたぼっこをする丸石のビーチ、そして完全な孤独に浸れる自然に出会える。
5月から9月までは、レンタカーを借りて、全長約900キロのルートを数日かけて走ることができる。冬の旅も可能だが、降雪などの天候状況によっては迂回を余儀なくされる場合もある。
アークティック・コースト・ウェイはクバンムスタンギ村を起点として、7つの半島の複雑に入り組んだ海岸線に沿って走り、終点のバッカフィヨルズル村に到達する。
まだ知られていない美しさと中世の戦い
この地域にはまだ観光業が根付いておらず、砂利道を走るには四輪駆動車が必須だ。クバンムスタンギは首都レイキャビクから車でわずか半日の距離だが、このひとけのない海岸にいると、首都からも、南部にある人気の観光地からも、はるか遠いところに来たかのように感じられる。
「北部は変わりません。決してレイキャビクのようにはならないのです」と、クバンムスタンギの北東約80キロに位置する村スカーガストロントにある予言博物館のオーナー、ダグニー・マリーン・セグマルスドッティル氏は言う。この博物館は10世紀の伝説的な占い師の歴史を扱っており、オーナー自身が手相を見てくれる。「もっとたくさんの旅行者が来て、ここの美しさを知ってもらいたいですね」
ソイザウルクロウクルの人々も、同じく旅人を歓迎してくれる。最初の2つの半島、バッツネスとスカーイを走っていけば、ドラマチックな景色が広がるスカーガフィヨルドにある絵のように美しいこの港町にたどり着く。アークティック・コースト・ウェイ沿いにある多くの集落と比べると、この街には明らかに都会的な雰囲気が漂っている。夜遅くまで営業しているパブもあれば、塩漬けの馬肉や羊の燻製といった北部料理を提供するレストランもある。
通称シグロゥと呼ばれるシグルフィヨルズルは、旅行者に人気の漁村。温泉、地元の海洋文化に特化した博物館のほか、レストランも数軒ある。(PHOTOGRAPH BY CHRISTOPHE VANDER EECKEN, LAIF/REDUX)
ティンダストールはアイスランド最古のホテルで、狭い階段、曲がりくねった天井の梁があり、暖炉脇の椅子には毛皮のブランケットが置かれている。一部の部屋には、かつてここを利用した女優マレーネ・ディートリッヒの写真が置かれ、魅力的な雰囲気をさらに盛り立てている。
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