米国中西部で話題のリバーサーフィン。地域経済の活性化が期待され、急流公園の整備が進む。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN NAFZGER/SHUTTERSTOCK)
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ハンナ・レイ・Jさんの生活は常に川と共にあった。子どもの頃は、アイオワ州マンチェスターにある実家の農場にほど近い川で、釣りやカヤックを楽しんだものだ。ある日のこと、ハンナさんはアイオワ州シーダーフォールズにある川の真ん中でサーフボードに乗っている人を見かけた。
「すごく楽しそうで、やってみたい、と思いました」とハンナさんは言う。この偶然の出会いをきっかけに、米国の川でサーフィンをすることがその後の人生の楽しみとなった。そんな人はハンナさんだけではない。リバーサーフィンは、米国中西部のアウトドア・レクリエーションの次のトレンドとして急上昇中だ。
ネブラスカ州ノーフォークでは最近、都市型の急流公園がオープンした。アイオワ州シーダーフォールズでも、河川レクリエーション拡大プロジェクトの一環としてサーフィン・エリアが計画されている。オハイオ州ウェストキャロルトンでは、マイアミ川沿いの新たな急流河川公園を軸に大規模な開発が進められているし、オクラホマ州タルサでも同様のプロジェクトが進行中だ。
こうした施設が新たにできれば、川遊びを楽しみたい人々が大勢やってきて、お金を落としてくれるかもしれない。それは内陸の小さな街の多くにとっては経済発展の助けになる。人気の急速な高まりを見て、リバーサーフィンは「サーフィンの未来だ」と言う専門家もいるほどだ。
コロラド州に拠点を置く会社バッドフィッシュによると、同社のサーフボードの売り上げは、コロナ禍以降、急激に増えたという。
「今年は過去最高の年です」と共同経営者のマイク・ハービー氏は言う。「私がこれまで関わってきた河川のアクティビティで、これほどの盛り上がりは見たことがありません」。同社では、リバーサーフィンが行われる地域に暮らし、環境作りをしてくれる人々に敬意を表して、自社のサーフボード製品の1つに「ウェーブ・ファーマー」と名付けたほどだ。
高まるリバーサーフィン人気と、それが地域社会に与える影響を詳しく見ていこう。
マイナーなスポーツからメインストリームに
さかのぼること1970年代、リバーサーフィンというニッチなスポーツは、ドイツのミュンヘンを流れるアイスバッハ川で始まった。もともとは密かに楽しまれていた遊びだったが、海のない地域でサーフィンの代わりになるアクティビティを求める人々の中で人気を獲得していった。
海のサーフィンでは「セット」と呼ばれる数本続く大きめのうねりを待つが、川では波が途切れないので波待ちをする必要がない。繰り返し練習でき、スキルを磨くことができる。
川の波は、岩や構造物などの障害物の上を水が流れるときに安定して形成され、リバーサーフィンでは冒頭の写真のように、流れに向かって波を滑り降りるように乗る。波と同じ方向に進む海のサーフィンとは対照的だ。(参考記事:「ハワイ 波と生きる」)
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