壁かべに囲かこまれて、数すう十じゅうの建物たてものが立たっていた。なかには全長ぜんちょうが25メートルもある、かなり大おおきなものもあった。この建造けんぞう物ぶつ群ぐんには敷石しきいしで舗装ほそうした歩道ほどうがあり、石材せきざいには彫刻ちょうこくが施ほどこされていた。建物たてもの正面しょうめんの壁かべは彩色さいしきされ、屋根やねには砂岩さがんを薄うすく削けずった石いしの瓦かわらが用もちいられた。

新しん発見はっけんの「神殿しんでん」が先史せんし時代じだいの通説つうせつを覆くつがえす

　遺跡いせき発掘はっくつの指揮しきを執とるハイランド・アンド・アイランド大学だいがくの考古こうこ学者がくしゃニック・カードは、英国えいこくの先史せんし時代じだいに関かんする通説つうせつを根底こんていから覆くつがえす発見はっけんだと語かたる。
「この遺跡いせきは、ギリシャのアクロポリスなど地中海ちちゅうかいの古代こだい遺跡いせきに迫せまる規模きぼで、しかもそれより約やく2500年ねんも前まえに造つくられています。アクロポリスと同おなじように、人々ひとびとに畏怖いふの念ねんや憧あこがれを抱いだかせ、威圧いあつ感かんを与あたえるために、周囲しゅういを見下みおろす位置いちに建たてられたのです」

　この建造けんぞう物ぶつは通常つうじょう「神殿しんでん」と呼よばれているが、実際じっさいに使用しようされていた約やく1000年ねんの間あいだ、さまざまな機能きのうを果はたしていたと考かんがえられる。季き節ぶしごとの儀式ぎしきや祭祀さいし、交易こうえきのため、ここに多おおくの人々ひとびとが集あつまったことは間違まちがいない。

　二ふたつの湖みずうみにはさまれたこの地ちに立たつと、世界せかい遺産いさんとなった「オークニー諸島しょとうの新しん石器せっき時代じだい遺跡いせき中心ちゅうしん地ち」の核かくとなる遺跡いせき群ぐんを一望いちぼうできる。巨大きょだいな環状かんじょう列石れっせきが二ふたつ。1キロ先さきの荒あれた草地くさちの丘おかに「リング・オブ・ブロッガー」が、南みなみからネスへと向むかう道みちの向むこうには「ストーンズ・オブ・ステネス」が見みえる。そして1.5キロ先さきにある不気味ぶきみな小山こやまが、4500年ねん以上いじょうも前まえに造つくられた巨大きょだい墳墓ふんぼ「メイズハウ」だ。墓はかの入いり口くちは、冬至とうじの前日ぜんじつに夕日ゆうひの光ひかりが差さし込こんで内部ないぶを照てらし出だす方角ほうがくに設もうけられている。

　新あらたにネスで発見はっけんされた神殿しんでんの中心ちゅうしん軸じくや入いり口くちの向むきも、メイズハウと重かさなっている。そのため考古こうこ学者がくしゃたちは、この遺跡いせきの発見はっけんによって、思おもいもよらなかった大おおきな謎なぞが解とけるかもしれないと考かんがえている。

ナショナル ジオグラフィック2014年ねん8月がつ号ごうから一部いちぶ抜粋ばっすいしたものです。