クラムボンというバンドの“特異とくいせい” 徳澤とくさわあおつるカルテットとつむいだビルボード公演こうえん

ビルボード公演に見たクラムボンの“特異性”

 クラムボンと徳澤とくさわあおつるカルテットによるスペシャルライブが、12月3にちと6にちにビルボードライブ東京とうきょうで、12月8にちにビルボードライブ大阪おおさかでそれぞれおこなわれた。

 コトリンゴやくるり、RADWIMPSなどじつ多岐たきにわたるアーティストのレコーディングやライブに参加さんかしてきた徳澤とくさわと、トリオ編成へんせい基調きちょうとしつつもアダム・ピアース(Mice Parade)や亀田かめだ誠治せいじ菅野かんのよう様々さまざまなプロデューサー/クリエーターと共演きょうえんし、みずからの音楽おんがくせい拡張かくちょうしてきたクラムボンのいはふるく、クラムボンの通算つうさん8まいのアルバム『2010』(2010ねん)で共演きょうえんして以来いらい最新さいしんさく『モメント e.p. 2』まで度々どど一緒いっしょ作品さくひんつくってきた間柄あいだがらである。さらに徳澤とくさわは、クラムボンのメンバーそれぞれの課外かがい活動かつどうでも共演きょうえんすることもおおく、バンドにとって(プライベートでの交流こうりゅうふくめ)「だい4のメンバー」とっても過言かごんではない存在そんざいだろう。

ひだりから、押鐘しどう貴之たかゆき(1stバイオリン)、須原すはらあんず(2ndバイオリン)、梶谷かじたに裕子ゆうこ(ビオラ)、徳澤とくさわあおつる(チェロ)

 そんな両者りょうしゃ今回こんかい、ビルボードライブのためにリアレンジ〜リビルドしたクラムボンの楽曲がっきょく演奏えんそうするとあって、会場かいじょうにはおおくのファンが連日れんじつけた。

 筆者ひっしゃたのは、6にちの2ndステージ。21まわってきゃくでんえると、まずは徳澤とくさわひきいるカルテットがあらわれ、おもむろにチューニングをはじめた。メンバーは押鐘しどう貴之たかゆき(1stバイオリン)、須原すはらあんず(2ndバイオリン)、梶谷かじたに裕子ゆうこ(ビオラ)、そして徳澤とくさわ(チェロ)である。

 ほどなくしてクラムボンの3にんがステージに登場とうじょうしろ衣装いしょうつつんだカルテットとは対照たいしょうてきに、くろ統一とういつした3にん楽器がっきをセッティングすると、まずは2ndアルバム『まちわび まちさび』(2000ねん収録しゅうろくの「シカゴ」からスタートした。オリジナル音源おんげんはハネるリズムと、そのあいだうようにうねるベースラインが印象いんしょうてきなポップナンバーだが、今宵こよいはミトのくボサノヴァのようなアコギのストロークと、原田はらだ郁子いくこのボーカルからはじまるアレンジで、『Re-clammbon 2』の「Re-Re-シカゴ」を彷彿ほうふつとさせるものだった。が、バイオリンによるカラフルなピチカートと、メロディにうようなチェロの演奏えんそうかさなると、これまでいたことのなかったあらたな「シカゴ」が会場かいじょうないひびわたる。おもわずハンドクラップでこたえるオーディエンス。すると、1かいのサビがわったと同時どうじ伊藤いとう大助だいすけ力強ちからづよいドラムがくわわり、サウンドスケープが一気いっきひろがった。

原田はらだ郁子いくこ

 つづく「希節きせつ」は、IV-V-IIIm-IVという鉄壁てっぺきのコード進行しんこうを、アコギのアルペジオと拍子木ひょうしぎのシンプルなリズムがかえしながら、みだれるカルテットによってリハモナイズしていく。反復はんぷく気持きもちよさにまかせ、めまぐるしくわるひびきのバリエーションにおどろきながら、原田はらだ唯一ゆいいつ無二むに歌声うたごえいていると、クラムボンというバンドの特異とくいせいあらためておもらされる。音楽おんがくへのプリミティブな衝動しょうどうと、知的ちてき興奮こうふんてるアカデミックなチャレンジ、そして人懐ひとなつっこくあいすべきキャラクター。そうした要素ようそ絶妙ぜつみょうなバランスが、かれらをクラムボンたらしめているといえよう。

ミト

 そんなかれらのあじが、このもっと如実にょじつあらわれていたのが「はなれ ばなれ」と「ララバイ サラバイ」だ。まず、1999ねんのメジャーデビューきょくであり、そういう意味いみでもいのながい「はなれ ばなれ」が、ミトがMCでもはなしていたように「もはや原曲げんきょくをとどめない」くらいリアレンジ〜リビルドされていた。黒板こくばんつめいたような、バイオリンの耳障みみざわりなイントロはまるでホラー映画えいが彷彿ほうふつとさせ、きずるようなドラミングと足踏あしぶみオルガンのひなびた音色ねいろ粒立つぶだちのいコントラバスの低音ていおんは、PortisheadやTrickyと同様どうよう不穏ふおんさをたたえている(ホラーとトリップホップは相性あいしょうがいい)。中盤ちゅうばん、カルテットがトレモロ奏法そうほうで、倍音ばいおん増幅ぞうふくおんかべ構築こうちくしていく。さらにミトが、グロッケンシュピールようのマレットをコントラバスのつるたたきつけ、パーカッションのようなリズムをきざはじめると、いままでいたことのないようなサウンドスケープがあらわれた。演奏えんそうえ、たしかな手応てごたえをかんじたミトが、れつつもやや自嘲じちょう気味ぎみにこのきょくを「はなれ ばなれ〜ビルボードの悲劇ひげきバージョン〜」と紹介しょうかいすると、会場かいじょうからはわらいがきた。

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