2020.11.14 12:00

藤井ふじい隆たかし主宰しゅさい＜SLENDERIE RECORD＞が届とどけた“笑わらい”と“ダンスミュージック”　『SLENDERIE ideal』発売はつばい記念きねんライブを観みて

　＜SLENDERIE RECORD＞主宰しゅさいの藤井ふじい隆たかし全面ぜんめんプロデュースによる『SLENDERIE ideal』が本当ほんとうに素晴すばらしい。この作品さくひんには、椿つばき鬼おに奴やつ、レイザーラモンRG、麒麟きりん・川島かわしま明あきら、フットボールアワー・後藤ごとう輝あきら基もと……などがゲストとして歌唱かしょう参加さんか（川島かわしまはサックスも担当たんとう）。すでに濃こいキャラクター性せいを持もつ顔かおぶれであるはずなのに、このアルバムを聴きいていると「え、この人ひとにこんな一いち面めんも……！？」と思おもわずにはいられない。さらに、本ほん作さくのコンセプトは“レコード会社かいしゃのシングル曲きょくを集あつめたサンプル盤ばん”ということもあり、全曲ぜんきょく表題ひょうだい曲きょくばりの強度きょうどを持もつ。一貫いっかんして藤井ふじいのダンスミュージックへの愛あいは感かんじるものの、それぞれ異ことなる魅力みりょくを見みせていて面白おもしろい。まるで次々つぎつぎと新あらたな扉とびらが開ひらいていくような感覚かんかくにさせられる。

　そんな『SLENDERIE ideal』の発売はつばい記念きねんライブが11月7日にちに開催かいさいされた。果はたして、この作品さくひんがライブとしてどのように消化しょうかされるのだろうか。筆者ひっしゃは昼ひるの部ぶに足あしを運はこんだ。

　開催かいさい場所ばしょはサンリオピューロランド。華はなやかで可愛かわいらしいパーク内ないをしばらく歩あるき、会場かいじょうに入はいると、BGMとしてTOKiMONSTA feat. Drew Love, Dumbfoundeadの「Get Me Some」が流ながれていて、一気いっきにクラブ空間くうかんに様変さまがわり。その後ごも、KIRINJI「Pizza VS Hamburger」、RHYME SO「Fashion Blogger」、Chara+YUKI「You! You! You!」など重じゅうめのビートが効きいたダンストラックが続つづき、会場かいじょうを温あたためていく。

　そんなBGMに観客かんきゃくのボルテージが上あがっていくなか暗転あんてん。プロジェクターから出演しゅつえんアーティストの紹介しょうかい映像えいぞうが流ながれ、アルバム冒頭ぼうとうを飾かざる「ideal」が始はじまった。同どう曲きょくはこれまで藤井ふじいの楽曲がっきょくを何なん度ども手掛てがけてきた冨田とみた謙けんによるもの。光ひかりが差さしたようなクリアなアレンジで、＜SLENDERIE RECORD＞のレーベルカラーを示しめした楽曲がっきょくだ。ステージにはピラミッド型がたの照明しょうめいが設置せっちされており、音おとに合あわせてきらびやかに点滅てんめつを繰くり返かえす。このライブがどんなステージになるのか、想像そうぞうを掻かき立たてられるような演出えんしゅつだった。

　ステージが明あかるくなると、今回こんかいの出演しゅつえん者しゃたちがサンリオキャラクター（ポチャッコ、アグレッシブ烈子れつこ、リトルツインスターズ（キキ＆ララ））とともに登場とうじょう。クラブ的てき演出えんしゅつがされていたさっきとは打うって変かわり、「ideal」のリズムループの中なかで、藤井ふじいを中心ちゅうしんに「YU HAYAMI！」「TERUKIN！」（後藤ごとう輝あきら基もと）と呼よびかけ該当がいとうしたメンバーが踊おどってみせる、という約やく7分ぶんのオープニングで会場かいじょうを盛もり上あげた。

（©2015, 2020 SANRIO CO., LTD. S/T・F ©1976, 1989, 1990, 2020 SANRIO CO., LTD.）

　その後ご、RGは「アクアマリンのままでいて」（カルロス・トシキ&オメガトライブの同どう名曲めいきょくのカバー／編曲へんきょく：ONIGAWARA 斉藤さいとう伸也しんや）と「いただきます」（作詞さくし：m.c.A・T、レイザーラモンRG、作曲さっきょく：m.c.A・T）、とくこは「T.T.S」、暗黒あんこく天使てんしは「Dirty Angel」（作詞さくし：暗黒あんこく天使てんし、ニンドリ、作曲さっきょく・編曲へんきょく：ニンドリ）を披露ひろうしていく。

　その場ばにいるだけで特別とくべつな輝かがやきを放はなつRGの存在そんざい感かんはしかり、とくこと暗黒あんこく天使てんしの美うつくしく伸のびがいい歌唱かしょうにも驚おどろかされる。個人こじん的てきにはとくこの「T.T.S」が白眉はくび。彼女かのじょの濁にごりのない歌唱かしょう、そして突つき刺さすようでいて時折ときおり陰かげりも見みせる緻密ちみつなサウンドメイクは、ライブ会場かいじょうで聴きくことでより際立きわだつのだと気きづかされた。

　続つづいては鬼おに奴やつによる「運命うんめいのリビルド」（架空かくうテレビアニメ『超ちょう空そらのギンガイアン』オープニングテーマ／作詞さくし作曲さっきょく：堂島孝平どうじまこうへい）と、「Love's Moment」（『超ちょう空そらのギンガイアン』のスピンオフアニメ OVA『宇宙うちゅう孤児こじイブキ』」エンディングテーマ／作詞さくし：椿つばき鬼おに奴やつ、作曲さっきょく：堂島どうじま孝たかし、編曲へんきょく：冨田とみた謙けん）だ。“とにかくフェイクがしたい！”と鬼おに奴やつが希望きぼうしたという「Love's Moment」では、アウトロで「みなさんそれぞれ自分じぶんたちの足あしで歩あるいてきたと思おもうけど〜」「ここからまたそれぞれ多摩たまセンターまで歩あるく〜車くるまの人ひともいるかな」と独自どくじのフェイクを展開てんかい（ちなみに原曲げんきょくでは「孤独こどく〜」と歌うたわれている）。また、ステージ上じょうで聴きいていたアグレッシブ烈子れつこにちなんで「アグレッシブ！　アグレッシブ！」とエモーショナルに歌うたう場面ばめんも。観客かんきゃくを一気いっきにさらっていく鬼おに奴やつらしさ全開ぜんかいのパフォーマンスだ。

　今回こんかいのライブで一番いちばん気きになっていたのは、後藤ごとうによる「悲かなしみSWING」（本田ほんだ美奈子みなこの同どう名曲めいきょくのカバー／編曲へんきょく：スカート澤部さわべ渡わたり）。「悲かなしみSWING」は、ロックなイメージが強つよい後藤ごとうの艶あでやかな側面そくめんが引ひき出だされた楽曲がっきょくだ。ライブでは作品さくひんで聴きく以上いじょうに一ひとつ一ひとつのフレーズをじっくり丁寧ていねいに歌うたう姿すがたが印象いんしょう的てきで、この曲きょくにおける後藤ごとう独特どくとくの色気いろけはこうした歌唱かしょうによるものなのかと新あらたな発見はっけんだった。