「寝ても取れない疲れ」の原因は朝? 自律神経が整う“起きてすぐの3つの習慣”
小林弘幸(順天堂大学医学部教授)
「よく眠れない」「たくさん寝たのに疲れが取れない」多くの人が睡眠に関して悩みを抱えています。順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏によれば、こういった問題の原因は自律神経のバランスの乱れにあるそう。そこで、今回は自律神経を整える3つの習慣を紹介します。
※本稿は、小林弘幸著『名医が実践する「疲れない」健康法』(PHP新書)より、一部抜粋・編集したものです。
「疲れているのに眠れない」のは危険信号
50歳を過ぎたころから、睡眠が浅くなり、ぐっすり眠れた感覚を得られない人も多くなります。夜中、トイレに起きるのも、睡眠が浅くなっている証です。
睡眠の質が悪化するのも、自律神経の働きが低下しているために起こる症状です。とくに、「疲れているのに眠れない」というのは、心身からの危険信号と考えてください。
疲れているのに眠れない。眠っても疲れがとれない。明日は大事な予定があるのに眠れない。夜中に目が覚めると、心配ごとが浮かんで眠れない。
こうした状態は、精神的なストレスによって悪い疲れがたまってくると起こる睡眠障害です。ほぼ100パーセント、ストレスによる自律神経の乱れが原因といえるでしょう。
裏を返せば、自律神経の働きを正せば、ぐっすり眠れるようになるということです。なお、疲れているといつまでも眠っていたい気持ちになりますが、睡眠時間が長いほど「よく眠れた」ということにはなりません。
アメリカで約110万人を対象とした睡眠時間と健康に関する大規模な調査が行われています。結果、もっとも死亡率の低い睡眠時間は、「6.5~7.4時間」という結果が出ています。
つまり、健康的な睡眠時間とは、だいたい7時間前後ということです。また、日本でも約11万人を対象とした同様の調査が行われています。ここでも「7時間前後の睡眠が最適」と報告されています。
もっとも、これは調査における平均的な数字で、最適な睡眠時間には、個人差があります。7時間前後というのは、1つの目安として考えてください。
覚えておいてほしいのは、「眠れば眠るほど疲れがとれる」というわけではないこと。長時間眠ることで、かえって自律神経のバランスが崩れ、睡眠の質が悪くなる、ということもあるのです。
重要なのは、「ぐっすり眠れた」という自分の感覚。良質な睡眠は、自律神経のバランスを整えていくことで、必ずとれるようになっていきます。
朝を変えれば、自律神経も変わる
ぜひ見直してほしいことがあります。朝の過ごし方です。自律神経にとっていちばん重要な時間帯が、朝だからです。朝を変えれば、自律神経はさらによい状態へと確実に変わっていきます。
なぜでしょうか。朝は、自律神経が切り替わる時間帯だからです。人が眠っている間、通常、副交感神経が優位になっています。
そして、朝日が昇っていくのにあわせるように、交感神経が優位の状態へとだんだん切り替わっていきます。このスイッチが切り替わる時間帯である朝は、自律神経が乱れやすい状態にあるのです。
それにもかかわらず、ギリギリに起きて慌ただしく朝の時間を過ごしてしまうと、どうなるでしょうか。
交感神経を叩き起こすような形になり、切り替えがうまくいかなくなります。こうなると、一日中、自律神経のバランスが乱れ、疲れやすくなります。しかも、意欲が湧かず、集中力も欠け、イライラしやすくなってしまうのです。
これでは、今日という日を楽しめなくなります。この状態を防ぐことが必要です。そのためには、自律神経の切り替えがうまくいくよう、朝の時間をゆっくりと過ごすこと。すると、そのあとの活動もスムーズで、心身ともによい状態で一日を過ごせるようになります。
つまり、朝の過ごし方には、自律神経の切り替えのスイッチの役目があるのです。