目次もくじ

  1. 1. 法定ほうてい後見こうけん任意にんい後見こうけんちがいとは
  2. 2. 成年せいねん後見こうけん制度せいど種類しゅるい
    1. 2-1. 法定ほうてい後見こうけんとは 判断はんだんりょく低下ていかしたひと法的ほうてき権利けんりまも制度せいど
    2. 2-2. 任意にんい後見こうけんとは 判断はんだんりょく十分じゅうぶんあるうちに後見こうけん契約けいやくむす制度せいど
  3. 3. 法定ほうてい後見こうけん任意にんい後見こうけんちがいを一覧いちらんひょうでチェック
  4. 4. 法定ほうてい後見人こうけんにん任意にんい後見人こうけんにん権限けんげんちがいに注意ちゅうい
    1. 4-1. 任意にんい後見こうけんには取消とりけしけんがない
  5. 5. まとめ:後見こうけん制度せいど活用かつようして、大事だいじ財産ざいさん権利けんりまも

認知にんちしょう知的ちてき障害しょうがい精神せいしん障害しょうがいなどにより、判断はんだん能力のうりょく低下ていかしたひと法律ほうりつめんささえるのが後見こうけん制度せいどです。この後見こうけん制度せいどには、おおきくけて「法定ほうてい後見こうけん」と「任意にんい後見こうけん」の2種類しゅるいがあります。いずれも判断はんだん能力のうりょく低下ていかした本人ほんにん利益りえきのために、後見人こうけんにんとうがサポートするてんでは共通きょうつうしています。

しかし法定ほうてい後見こうけん任意にんい後見こうけんではいくつかのちがいがありますので、解説かいせつします。

法定ほうてい後見こうけんとは、本人ほんにん判断はんだん能力のうりょく低下ていかしてから親族しんぞくとう家庭かてい裁判所さいばんしょもうて、本人ほんにんをサポートする制度せいどです。

一方いっぽう任意にんい後見こうけん本人ほんにんと、本人ほんにん判断はんだん能力のうりょく低下ていかしたときに契約けいやく内容ないようしたがい、本人ほんにん財産ざいさん管理かんりおこな制度せいどです。本人ほんにんえらんだ後見人こうけんにん受任じゅにんしゃ」とのあいだ任意にんい後見こうけん契約けいやく締結ていけつします。

ここでは成年せいねん後見こうけん制度せいどについて、「法定ほうてい後見こうけん」「任意にんい後見こうけん」それぞれをくわしく説明せつめいします。

たとえば認知にんちしょう進行しんこうして判断はんだん能力のうりょくおとろえたひとは、悪徳あくとく商法しょうほうなどの詐欺さぎ被害ひがいけやすくなったり、預貯金よちょきんしや契約けいやくができなくなったりするなど、不利益ふりえきこうむ可能かのうせいたかまります。そのような状況じょうきょうひとを、法的ほうてき保護ほごする制度せいどが「法定ほうてい後見こうけん」です。

法定ほうてい後見こうけんによる保護ほごけるには、家庭かてい裁判所さいばんしょ後見人こうけんにんとう選任せんにん申立もうしたてをします。
その申立もうしたてにより家庭かてい裁判所さいばんしょ審判しんぱん確定かくていし、家庭かてい裁判所さいばんしょ後見人こうけんにんとう選任せんにんしたら、法定ほうてい後見こうけん開始かいしします。そして特別とくべつ事情じじょうがないかぎり、本人ほんにん死亡しぼうするまでつづきます。

法定ほうてい後見こうけんは、本人ほんにん判断はんだん能力のうりょく程度ていどにより「後見こうけん」「」「補助ほじょ」の3つにかれます。

どれにてはまるか、また判断はんだん後見人こうけんにんとう後見人こうけんにんじんまた補助ほじょじん)をだれにするかは、申立もうしたての理由りゆう医師いし診断しんだんしょ本人ほんにんとの面談めんだんなどを総合そうごうてき検討けんとうして家庭かてい裁判所さいばんしょ決定けっていします。

家庭かてい裁判所さいばんしょから選任せんにんされた後見人こうけんにんとうには、類型るいけいによって「代理だいりけん」「同意どういけん」「取消とりけしけん」があたえられ、本人ほんにん利益りえきのためのみ、あたえられた範囲はんいない権限けんげん使つかいます。なお、かくタイプごとの権利けんりについては後述こうじゅつ一覧いちらんひょう説明せつめいします。

任意にんい後見こうけんは、本人ほんにん判断はんだん能力のうりょく十分じゅうぶんなうちに、将来しょうらいてき任意にんい後見人こうけんにんになるひととのあいだで、公正こうせい証書しょうしょ任意にんい後見こうけん契約けいやく締結ていけつするところからはじまります。

やがて本人ほんにん判断はんだん能力のうりょく低下ていかし、任意にんい後見人こうけんにん後見こうけん事務じむ監督かんとくする「任意にんい後見こうけん監督かんとくじん」が選任せんにんされたら、任意にんい後見こうけんがスタートします。
つまり任意にんい後見こうけん契約けいやくは、将来しょうらい判断はんだん能力のうりょく低下ていかしたときのそなえとしてむす契約けいやくです。

任意にんい後見こうけんには法的ほうてき分類ぶんるいはありませんが、利用りよう形態けいたいとして「将来しょうらいがた」「移行いこうがた」「即効そっこうがた」にかれます。
(1)将来しょうらいがた
将来しょうらい判断はんだん能力のうりょく低下ていかしたら任意にんい後見こうけん開始かいしする。

(2)移行いこうがた
本人ほんにん判断はんだん能力のうりょく十分じゅうぶんなときは、第三者だいさんしゃ委任いにん契約けいやくによって本人ほんにん財産ざいさん管理かんりする任意にんい財産ざいさん管理かんりおこない、判断はんだん能力のうりょく低下ていかすれば任意にんい後見こうけん移行いこうする。

(3)即効そっこうがた
任意にんい後見こうけん契約けいやく締結ていけつし、すぐに任意にんい後見こうけんをスタートする

ではここで、法定ほうてい後見こうけん任意にんい後見こうけんちがいを一覧いちらんひょう説明せつめいします。

法定ほうてい後見こうけん任意にんい後見こうけんちがいにつく

なお、ひょう説明せつめいしている「民法みんぽう13じょう1こう各号かくごう内容ないよう以下いかのとおりです。

だいじゅうさんじょう じんつぎかかげる行為こういをするには、そのじん同意どういなければならない。ただし、だい九条くじょうただししょ規定きていする行為こういについては、このかぎりでない。
いち 元本がんぽん領収りょうしゅうし、また利用りようすること。
 借財しゃくざいまた保証ほしょうをすること。
さん 不動産ふどうさんその重要じゅうよう財産ざいさんかんする権利けんり得喪とくそう目的もくてきとする行為こういをすること。
よん 訴訟そしょう行為こういをすること。
 贈与ぞうよ和解わかいまた仲裁ちゅうさい合意ごうい仲裁ちゅうさいほう平成へいせいじゅうねん法律ほうりつだいひゃくさんじゅうはちごうだいじょうだいいちこう規定きていする仲裁ちゅうさい合意ごういをいう。)をすること。
ろく 相続そうぞく承認しょうにんしくは放棄ほうきまた遺産いさん分割ぶんかつをすること。
なな 贈与ぞうよ申込もうしこみを拒絶きょぜつし、遺贈いぞう放棄ほうきし、負担ふたんづけ贈与ぞうよ申込もうしこみを承諾しょうだくし、また負担ふたんづけ遺贈いぞう承認しょうにんすること。
はち 新築しんちく改築かいちく増築ぞうちくまただい修繕しゅうぜんをすること。
きゅう だいろくひゃくじょうさだめる期間きかんえる賃貸借ちんたいしゃくをすること。
じゅう ぜん各号かくごうかかげる行為こうい制限せいげん行為こうい能力のうりょくしゃ未成年みせいねんしゃ成年せいねん後見人こうけんにんじんおよだいじゅうななじょうだいいちこう審判しんぱんけた補助ほじょじんをいう。以下いかおなじ。)の法定ほうてい代理人だいりにんとしてすること

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後見人こうけんにんとうは、本人ほんにん利益りえきになることのみに、その権限けんげん使つかいます。したがって、相続そうぞくぜい対策たいさく目的もくてきとした生前せいぜん贈与ぞうよや、遺産いさん放棄ほうきといった本人ほんにん財産ざいさんうしなわれかねない積極せっきょくてき資産しさん運用うんようはできません。

一方いっぽう任意にんい後見こうけん場合ばあいは、あらかじめ任意にんい後見こうけん契約けいやくしょ運用うんようについてしるしておけば、積極せっきょくてき資産しさん運用うんよう可能かのうです。

このちがいは、法定ほうてい後見こうけん任意にんい後見こうけんはじまりからしょうじます。
法定ほうてい後見こうけんは、判断はんだん能力のうりょく低下ていかした状態じょうたいからはじまるため本人ほんにん明確めいかく意思いし確認かくにんできません。

任意にんい後見こうけん本人ほんにん判断はんだん能力のうりょく十分じゅうぶんなうちに、自身じしん意思いしによって任意にんい後見こうけん契約けいやくむすびます。したがって受任じゅにんしゃ同意どうい必須ひっすであるものの、違法いほう場合ばあいのぞき、自由じゆう契約けいやく内容ないようめることができます。

任意にんい後見こうけんは、財産ざいさん管理かんり方法ほうほう自由じゆう選択せんたくできる反面はんめん、デメリットもあります。

それは、任意にんい後見人こうけんにん権限けんげん任意にんい後見こうけん契約けいやくしょさだめた代理だいりけん範囲はんい限定げんていされるため、任意にんい後見人こうけんにんには、本人ほんにん行為こういせないてんにあります。

本人ほんにんがした行為こうい場合ばあいや、任意にんい後見こうけん契約けいやくしょさだめた代理だいりけん範囲はんい拡張かくちょうする必要ひつようがある場合ばあいには、任意にんい後見こうけん契約けいやく終了しゅうりょうし、法定ほうてい後見こうけん移行いこうします。

ただし、任意にんい後見こうけん発効はっこうしている最中さいちゅう任意にんい後見こうけん終了しゅうりょうするには、本人ほんにん利益りえきまもるため、とく必要ひつようがある場合ばあいかぎられます。

おわりかつ”という言葉ことばまれてながくなりますが、おわりかつといっても相続そうぞくぜい対策たいさく遺言ゆいごんしょといった死後しご注目ちゅうもくあつまりがちで、生前せいぜん時間じかん意識いしきしていないひとおおいようです。後見こうけん制度せいどは、生前せいぜんごしかた直結ちょっけつする制度せいどです。とく任意にんい契約けいやくは、本人ほんにん意思いしつよ反映はんえいさせることも可能かのうです。制度せいど理解りかいし、自分じぶん自身じしん大切たいせつ権利けんり財産ざいさんをどのようにまもっていくかをかんがえてみましょう。

記事きじは2020ねんがつにち現在げんざい情報じょうほうもとづきます)