抵当ていとう権けん抹消まっしょうの手続てつづきを自分じぶんでする方法ほうほう 手順てじゅんや必要ひつよう書類しょるい、費用ひようをわかりやすく解説かいせつ

1. 抵当ていとう権けんとは？ 抵当ていとう権けん抹消まっしょう手続てつづきが必要ひつようなケース

金融きんゆう機関きかんは融資ゆうしにあたって、お金かねを借かりる人ひとから担保たんぽを取とります。担保たんぽには大おおきく２種類しゅるいがあり、人的じんてき担保たんぽと物的ぶってき担保たんぽに分わかれます。

このうち、お金かねを貸かすときに家いえや土地とちなどの不動産ふどうさんを担保たんぽする権利けんりのことを「抵当ていとう権けん」と呼よびます。

1-1. 人的じんてき担保たんぽと物的ぶってき担保たんぽ

人的じんてき担保たんぽとは、対象たいしょうの債務さいむについて、債務さいむ者しゃ以外いがいの第三者だいさんしゃが責任せきにんを負おう担保たんぽです。代表だいひょう的てきな人的じんてき担保たんぽは保証ほしょう契約けいやくです。単たんなる保証ほしょう契約けいやくでは、主しゅたる債務さいむ者しゃに先さきに請求せいきゅうするように求もとめる「催告さいこくの抗弁こうべん権けん」、主しゅたる債務さいむ者しゃが債務さいむを履行りこうできるだけの資力しりょくを有ゆうしており、かつ執行しっこうが容易よういであることを証明しょうめいした場合ばあいに、債権さいけん者しゃからの請求せいきゅうを拒こばむことができる「検索けんさくの抗弁こうべん権けん」が保証人ほしょうにんに認みとめられているため、実務じつむ上じょうはそれらがない連帯れんたい保証ほしょう契約けいやくが用もちいられることが多おおいです。

それに対たいし、物的ぶってき担保たんぽとは、簡単かんたんにいえば物ものを担保たんぽとして取とるということです。 代表だいひょう的てきなものとして、抵当ていとう権けんや質しつ権けんがあげられます。返済へんさいが滞とどこおった場合ばあいは、担保たんぽとして提供ていきょうされた物ものの競売きょうばい代金だいきんなどから、優先ゆうせん的てきに債権さいけんを回収かいしゅうすることができます。

例たとえば、抵当ていとう権けんが設定せっていされても、所有しょゆう者しゃは担保たんぽにした不動産ふどうさんを使用しようできます。ただし、返済へんさいが滞とどこおった場合ばあいは、金融きんゆう機関きかんなどの抵当ていとう権けん者しゃは担保たんぽ不動産ふどうさんを競売きょうばいにかけて売却ばいきゃくし、その代金だいきんから他たの債権さいけん者しゃに先立さきだって優先ゆうせん的てきに弁済べんさいを受うけることができます。

1-2. なぜ抵当ていとう権けんは登記とうきされるのか？

そもそも、抵当ていとう権けんはなぜ登記とうきをするのでしょうか。民法みんぽうの条文じょうぶんを参照さんしょうしましょう。

不動産ふどうさんに関かんする物権ぶっけんの得喪とくそう及および変更へんこうは、不動産ふどうさん登記とうき法ほうその他たの登記とうきに関かんする法律ほうりつの定さだめるところに従したがいその登記とうきをしなければ、第三者だいさんしゃに対抗たいこうすることができない。 （第だい百ひゃく七なな十じゅう七なな条じょう 不動産ふどうさんに関かんする物権ぶっけんの変動へんどうの対抗たいこう要件ようけん）

抵当ていとう権けんを含ふくむ不動産ふどうさんの権利けんりは、登記とうきをしなければ第三者だいさんしゃに主張しゅちょうできないと定さだめられています。そのため、金融きんゆう機関きかんなどは抵当ていとう権けんを設定せっていした時ときは登記とうきをします。

なお、抵当ていとう権けんの登記とうきにおいては、債権さいけん額がく、債務さいむ者しゃの氏名しめいまたは名称めいしょうおよび住所じゅうしょ、利息りそくなどが登記とうき事項じこうとなります。返済へんさいが滞とどこおった場合ばあいに抵当ていとう権けんが実行じっこうされることはありますが、多おおくの抵当ていとう権けんは実行じっこうされず、債務さいむの弁済べんさいをもって消滅しょうめつします。ところが、債務さいむを弁済べんさいしても、登記とうきされた抵当ていとう権けんは自動的じどうてきに抹消まっしょうされることはありません。抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうきを申請しんせいし、登記とうきが完了かんりょうして初はじめて、土地とちや建物たてものに設定せっていされていた抵当ていとう権けんが登記とうき簿ぼから消滅しょうめつします。

1-3. 抵当ていとう権けんつき不動産ふどうさんの売却ばいきゃくは難むずかしい

登記とうき簿ぼ上じょうの抵当ていとう権けんをそのままにしておいても、売買ばいばい契約けいやくを結むすぶことも、所有しょゆう権けん移転いてん登記とうきを行おこなうことも法的ほうてきには可能かのうです。とはいっても、売却ばいきゃくは事実じじつ上じょうとても難むずかしいでしょう。

買主かいぬしの立場たちばに立たって考かんがえてみましょう。売主うりぬしの債務さいむを担保たんぽするために金融きんゆう機関きかんなどの抵当ていとう権けんが設定せっていされた不動産ふどうさんを買かいたいと思おもうでしょうか。もし債務さいむ返済へんさいが滞とどこおった場合ばあいは、せっかく買かった不動産ふどうさんを競売きょうばいされてしまう危険きけんがあります。

そのため、一般いっぱん的てきには抵当ていとう権けんが抹消まっしょうされていなければ、不動産ふどうさんを売却ばいきゃくすることはできません。たとえ、債務さいむを完済かんさいしているとしても、登記とうき上じょうはそれがわからないためです。

ただし、売却ばいきゃく代金だいきんでローンを完済かんさいし、所有しょゆう権けん移転いてんと同時どうじに抵当ていとう権けん抹消まっしょうを行おこなうことは可能かのうです。この場合ばあいは司法しほう書士しょしが銀行ぎんこうで売買ばいばいと債務さいむの弁済べんさいに立たち合あい、登記とうきに関かんする書類しょるいをすべて預あずかって、ただちに関連かんれんする登記とうきを申請しんせいします。

2. 抵当ていとう権けんつきの不動産ふどうさんを相続そうぞくしたときの対処たいしょ法ほう

では、相続そうぞくした不動産ふどうさんに抵当ていとう権けんが設定せっていされていた場合ばあいはどうしたらよいでしょうか。まず、抵当ていとう権けんが設定せっていされているかは、登記とうき事項じこう証明しょうめい書しょを取得しゅとくすると確認かくにんできます。登記とうき事項じこう証明しょうめい書しょは法務局ほうむきょくで所定しょていの登録とうろく免許めんきょ税ぜいを支払しはらえば、誰だれでも取得しゅとく可能かのうです。

不動産ふどうさんに抵当ていとう権けんが設定せっていされていたら、抵当ていとう権けんの内容ないようを調しらべる必要ひつようがあります。債務さいむを完済かんさい後ごに抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうきを行おこなっていないのか、債務さいむが残存ざんそんしているかで対応たいおうが変かわります。

2-1. 債務さいむが残のこっていない場合ばあい｜抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうきを申請しんせい

債務さいむが残のこっていない場合ばあいは、抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうきを申請しんせいしましょう。まず、被ひ相続そうぞく人じん（亡なくなった人ひと）の死亡しぼう前まえに債務さいむが弁済べんさいされている場合ばあいは、相続そうぞくが開始かいしした時点じてんで抵当ていとう権けんも消滅しょうめつしています。そのケースでは、相続そうぞく登記とうきを行おこなわなくとも、不動産ふどうさんの名義めいぎはそのままで、相続そうぞく人じんの一人ひとりが代表だいひょうとなって抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうきを行おこなうことができます。

2-2. 債務さいむが残のこっている場合ばあい｜相続そうぞく放棄ほうき検討けんとうの余地よち

債務さいむが弁済べんさいされておらず、残存ざんそんする金額きんがくが不動産ふどうさんの価値かちより高たかい場合ばあいには相続そうぞく放棄ほうきを検討けんとうする余地よちがあります。注意ちゅういすべき点てんとしては、抵当ていとう権けんの登記とうき事項じこうである債権さいけん額がくは設定せってい当時とうじの債務さいむ額がくであり、残存ざんそんする債務さいむの金額きんがくとは異ことなることが挙あげられます。抵当ていとう権けん者しゃの多おおくは金融きんゆう機関きかんですので、残高ざんだか証明しょうめい書しょを取得しゅとくして債務さいむ残高ざんだかを確認かくにんするとよいでしょう。抵当ていとう権けん者しゃが金融きんゆう機関きかん以外いがいで対応たいおうが難むずかしい場合ばあいは、弁護士べんごしや司法しほう書士しょしなどの専門せんもん家かに相談そうだんすることをお勧すすめします。

3. 抵当ていとう権けん抹消まっしょうに必要ひつような書類しょるい

抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうきに必要ひつような書類しょるいは、一般いっぱん的てきに、債務さいむの弁済べんさいなどで抵当ていとう権けんが消滅しょうめつした段階だんかいで、金融きんゆう機関きかんから受うけ取とることができます。以下いか、必要ひつような書類しょるいを解説かいせつします。

3-1. 登記とうき原因げんいん証明しょうめい情報じょうほう

「登記とうき原因げんいん証明しょうめい情報じょうほう」は、抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうき申請しんせいをする際さいに、抵当ていとう権けんを抹消まっしょうする原因げんいん（ローンの返済へんさい完了かんりょうなど）を証明しょうめいする書類しょるいで金融きんゆう機関きかんから受領じゅりょうできます。金融きんゆう機関きかんによって名称めいしょうが異ことなり、「抵当ていとう解除かいじょ証書しょうしょ」「弁済べんさい証書しょうしょ」「抵当ていとう権けん放棄ほうき証書しょうしょ」などと記載きさいされます。

3-2. 金融きんゆう機関きかんからの委任いにん状じょう

抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうきは、登記とうき権利けんり者しゃ（不動産ふどうさんの所有しょゆう者しゃなど）と登記とうき義務ぎむ者しゃ（金融きんゆう機関きかんなど）が共同きょうどうで申請しんせいします。自分じぶんで申請しんせいする場合ばあいは、銀行ぎんこうなどの金融きんゆう機関きかんが発行はっこうする抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうき申請しんせいの委任いにん状じょうが必要ひつようになります。法務局ほうむきょくのオフィシャルサイトでは、「代理だいり権限けんげん証明しょうめい情報じょうほう」と記載きさいされています。

3-3. 抵当ていとう権けんの登記とうき識別しきべつ情報じょうほう（登記とうき済ずみ証しょう）

金融きんゆう機関きかんが抵当ていとう権けんを設定せっていした際さいに発行はっこうされる書類しょるいで、平成へいせい18年ねん以前いぜんに発行はっこうされたものは「登記とうき済ずみ証しょう」、それ以降いこうに発行はっこうされたものは登記とうき識別しきべつ情報じょうほうといいます。

3-4. 資格しかく証明しょうめい情報じょうほう

以前いぜんまでは「資格しかく証明しょうめい情報じょうほう」の添付てんぷが必要ひつようでしたが、平成へいせい27年ねん11月2日にちからは「会社かいしゃ法人ほうじん等とう番号ばんごう」があれば「資格しかく証明しょうめい情報じょうほう」の添付てんぷは必要ひつようなくなりました。具体ぐたい的てきには、金融きんゆう機関きかんなどの登記とうき事項じこう証明しょうめい情報じょうほう（発行はっこうから三さんヵ月かげつ以内いない）が、「資格しかく証明しょうめい情報じょうほう」となります。「会社かいしゃ法人ほうじん等とう番号ばんごう」は金融きんゆう機関きかんから受うけ取とった書類しょるいに記載きさいされていることもあります。従来じゅうらい通どおりに「資格しかく証明しょうめい情報じょうほう」をそのまま添付てんぷしても問題もんだいありません。

3-5.  書類しょるいを紛失ふんしつした場合ばあい

書類しょるいを紛失ふんしつした場合ばあい、登記とうき原因げんいん証明しょうめい情報じょうほうや委任いにん状じょうは、故意こいや重過失じゅうかしつがなければ、一般いっぱん的てきに金融きんゆう機関きかんから再さい発行はっこうを受うけられる可能かのう性せいが高たかいです。ただし、登記とうき識別しきべつ情報じょうほうや登記とうき済ずみ証しょうは再さい発行はっこうできないため、紛失ふんしつしないように注意ちゅういしましょう。万まんが一いち、紛失ふんしつした場合ばあいは、非常ひじょうに手続てつづきが煩雑はんざつとなるため、司法しほう書士しょしに相談そうだんすることをおすすめします。

4. 手続てつづきを自分じぶんで行おこなう手順てじゅんと費用ひよう

自分じぶんで抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうき手続てつづきを行おこなう場合ばあいの手順てじゅん・流ながれについて解説かいせつします。基本きほん的てきには下記かきの流ながれが一般いっぱん的てきです。

【抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうきの流ながれ】

1. 必要ひつよう書類しょるいを準備じゅんびする
2. 抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうき申請しんせい書しょを作成さくせいする
3. 管轄かんかつの法務局ほうむきょくを調しらべ、申請しんせいを行おこなう
4. 申請しんせいの完了かんりょう

各かくステップを詳くわしく解説かいせつします。

4-1. 必要ひつよう書類しょるいを準備じゅんびする

先述せんじゅつした抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうき申請しんせいに必要ひつような書類しょるいを準備じゅんびします。

4-2. 抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうき申請しんせい書しょを作成さくせいする

法務局ほうむきょくのオフィシャルサイトでダウンロードが可能かのうで、記載きさい例れいもあるので参考さんこうにしてください（こちらの（15）抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうき申請しんせい書しょを参照さんしょう）。

4-3. 管轄かんかつの法務局ほうむきょくに申請しんせいする

不動産ふどうさんの所在地しょざいちを管轄かんかつする法務局ほうむきょくに提出ていしゅつします。オンライン申請しんせいは現実げんじつ的てきではないので、書類しょるいを持参じさんするか、郵送ゆうそうで提出ていしゅつしましょう。司法しほう書士しょしに依頼いらいせず、自分じぶんで登記とうきを申請しんせいする場合ばあいは、記載きさい不備ふびや書類しょるいの添付てんぷ漏もれが発生はっせいする可能かのう性せいが高たかいです。オンラインや郵送ゆうそうによる申請しんせいも可能かのうですが、補正ほせいがあることを考かんがえると、窓口まどぐちでの申請しんせいが望のぞましいでしょう。遠方えんぽうの法務局ほうむきょくに申請しんせいする場合ばあいは、補正ほせいに対応たいおうするための交通こうつう費ひが司法しほう書士しょしへの報酬ほうしゅうを上回うわまわる可能かのう性せいがありますので注意ちゅういしましょう。

4-4. 申請しんせい完了かんりょう

書類しょるいに不備ふびや誤あやまりがあると、法務局ほうむきょくから補正ほせいの連絡れんらくがありますが、何なにも問題もんだいがなければ申請しんせいが完了かんりょうします。

4-5. 抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうきにかかる費用ひよう

抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうきにかかる登録とうろく免許めんきょ税ぜいは、一ひとつの不動産ふどうさんにつき1000円えんです。一戸建いっこだてに設定せっていされた抵当ていとう権けんを抹消まっしょうする場合ばあいは、土地とちと建物たてものでそれぞれ1000円えんがかかるため、合計ごうけいで2000円えんを納付のうふすることになります。

5. まとめ 抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうきは司法しほう書士しょしに依頼いらいできる

抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうきにあたって、書類しょるいが不足ふそくしていたり、記載きさいが誤あやまったりしていれば、登記とうき官かんから補正ほせいを求もとめられることがあります。場合ばあいによっては申請しんせいが却下きゃっかされます。抵当ていとう権けん抹消まっしょう登記とうきは司法しほう書士しょしに依頼いらいすることができ、報酬ほうしゅうは1万まん円えんほどの場合ばあいが多おおいです。自分じぶんでの申請しんせいが難むずかしいと感かんじた場合ばあいは、お近ちかくの司法しほう書士しょしに相談そうだんするとよいでしょう。

（記事きじは2022年ねん11月1日にち時点じてんの情報じょうほうに基もとづいています）

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