40歳さいで起業きぎょう　1人ひとりで育そだてたブランドが年商ねんしょう2億おくへ成長せいちょう

新あたらしい一いち歩ほを踏ふみ出だしたARIA世代せだいの起業きぎょう家かに話はなしを聞きくこの連載れんさい。今回こんかいは、産業さんぎょう用ようの特殊とくしゅ素材そざいを使つかった個性こせい的てきなバッグやアクセサリーのブランド「acrylic（アクリリック）」を立たち上あげた坂さか雅子まさこさん。40歳さいで「天職てんしょく」を見みつけた坂さかさんは、ニューヨーク近代きんだい美術館びじゅつかん（MoMA）をはじめ海外かいがいでも評価ひょうかされるまでに、ブランドを育そだて上あげました。今いまも1人ひとりでアクリリックを運営うんえいする坂さかさんに、ものづくりで大切たいせつにしていることを聞ききました。

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（下した）「夫おっとは有名ゆうめい建築けんちく家か」の重圧じゅうあつ　ロンドンで見みつけた自分じぶんの道みち

編集へんしゅう部ぶ（以下いか、略りゃく）　年商ねんしょう2億おく円えんを目前もくぜんにしていたアクリリックですが、新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうで、製品せいひんを販売はんばいする美術館びじゅつかんや百貨店ひゃっかてんなどが休業きゅうぎょうし、2020年ねんは大おおきなダメージを受うけたそうですね。

坂さか雅子まさこさん（以下いか、坂さか）　ちょうど3年ねん前まえの今いまごろ、在庫ざいこの山やまに囲かこまれてどうしようかと途方とほうにくれていました。製品せいひんを販売はんばいしていたクライアントがどんどん休業きゅうぎょうに追おい込こまれ、特とくに売うり上あげの大おおきかった国立こくりつ新しん美術館びじゅつかんのミュージアムショップは休業きゅうぎょうも長引ながびいていました。2019年ねんは過去かこ最高さいこうの売うり上あげだったこともあり、製品せいひんも大量たいりょうに発注はっちゅうしていて。収入しゅうにゅうはゼロなのに、外注がいちゅう費ひは莫大ばくだい。本当ほんとうに大だい打撃だげきでした。

坂さか雅子まさこ　アクリリック代表だいひょう取締役とりしまりやく

ばん・まさこ／63年ねん、東京とうきょう生うまれ。大学だいがく卒業そつぎょう後ご、大手おおてゼネコン、建築けんちく設計せっけい事務所じむしょ、デザイン事務所じむしょなどを経へて、グラフィックデザイナーとして独立どくりつ。独学どくがくでアクセサリーデザインを学まなび、2003年ねんに自身じしんのブランド「acrylic（アクリリック）」を設立せつりつ。国内外こくないがいのセレクトショップで販売はんばいするほか、オンラインショップも運営うんえい。著書ちょしょに『「好すき」を仕事しごとにする勇気ゆうき』（主婦しゅふの友社ともしゃ）

――　アクリリックは、委託いたく販売はんばいではなく、買かい取とりを基本きほんにしているのですよね？

坂さか　そうです。ブランドを気きに入いって信頼しんらいしていただいたクライアントに製品せいひんを卸おろして買かい取とっていただいていました。コロナ禍かで売うり上あげがほぼゼロになったとき、この在庫ざいこの山やまをなんとかしなくてはと、手探てさぐりでECサイトを自分じぶんで立たち上あげました。忙いそがしかったこともあり、これまでオンラインでは販売はんばいしていなかったので。

　サイトに載のせる写真しゃしんも自分じぶんで撮とり、説明せつめい文ぶんも書かいています。素人しろうとが撮とるので、実物じつぶつより良よく見みえて買かった方ほうをがっかりさせることもないでしょ。オンラインショップを立たち上あげて6日にち目めに、見みず知しらずの方ほうがポンと買かってくれて。感動かんどうしましたね。始はじめたら、どんどん買かい手てが現あらわれて、これは新あたらしい道みちになると感かんじました。

　オンラインショップは小ちいさな画面がめんでもたくさんの商品しょうひんを掲載けいさいできるし、新作しんさくを上あげるとバイヤーさんからすぐ注文ちゅうもんが入はいる。カタログ代かわりになっています。

「アクリリックのバッグは素材そざいありき」という坂さかさん。特殊とくしゅメッシュ生地きじやソファの張はり地ちといった産業さんぎょう素材そざいは、見みる角度かくどや光ひかりによって色いろや風合ふうあいが変化へんかする。シンプルなデザインと特徴とくちょう的てきな素材そざいの組くみ合あわせがブランドならではの個性こせいに

――　15年ねん続つづけた東京とうきょう・広尾ひろおの直営店ちょくえいてんを閉しめるのは苦くるしい決断けつだんでしたよね。