財務ざいむ担当たんとうからのメッセージ

　5年間ねんかんの中期ちゅうき経営けいえい計画けいかくの中なか間あいだ年度ねんどである2023年度ねんどは、コロナの負まけの影響えいきょうを克服こくふくした前年度ぜんねんどのモメンタムを維持いじし、成長せいちょうを加速かそくしたいと考かんがえています。

　中期ちゅうき経営けいえい計画けいかくで掲かかげた5つの変革へんかくを実践じっせんしていくためには、スケールメリットを活いかした経営けいえいが必須ひっすです。スケールメリット実現じつげんの手段しゅだんとして、M&Aにも積極せっきょく的てきに取とり組くんでおり、対象たいしょう会社かいしゃの選定せんていにおいては、既存きそん事業じぎょうの補完ほかん、事業じぎょうポートフォリオへの貢献こうけんを前提ぜんていとしています。最近さいきんでは、成長せいちょう性せいの高たかいドラッグストア・調剤ちょうざい薬局やっきょくの（株）かぶしきがいしゃププレひまわり、（株）かぶしきがいしゃコクミン、当社とうしゃグループの市場いちばシェアが十分じゅうぶんではなかった中ちゅう四国しこくを基盤きばんとする食品しょくひんスーパーの（株）かぶしきがいしゃフジ、高たかいMD力りょくを持もつ100円えんショップの（株）かぶしきがいしゃキャンドゥを子会社こがいしゃ化かしました。2023年ねん4月がつには、首都しゅと圏けんに展開てんかいする食品しょくひんスーパー（株）かぶしきがいしゃいなげやの子会社こがいしゃ化かを発表はっぴょうしています。

　2019年ねんより進すすめているSM事業じぎょうの再編さいへんでは、各かく地域ちいきで売上うりあげ5,000億おく円えん規模きぼの会社かいしゃ群ぐんを形成けいせいし、仕入しいれの集約しゅうやく、ローカルブランドの開発かいはつ、DX・物流ぶつりゅう投資とうしなど、を必要ひつようとする価値かち創出そうしゅつに取とり組くんでいます。今後こんごもスケールメリットを追求ついきゅうしながら、事業じぎょう間あいだの有機ゆうき的てきな連携れんけいを図はかり、グループシナジーを最大さいだい化かすることにより、コングロマリット・プレミアムを実現じつげんし、株主かぶぬしの皆みなさまの期待きたいに応こたえていきます。

　長期ちょうき的てきな企業きぎょう価値かち向上こうじょうのためのCF（キャッシュ・フロー）の配分はいぶんについては、成長せいちょう投資とうしを優先ゆうせんしつつ、安定あんてい的てきな株主かぶぬし還元かんげんを行おこなう方針ほうしんです。2022年度ねんどの簡易かんい営業えいぎょうCF^※1約やく4,700億おく円えんに対たいし、簡易かんい投資とうしCF^※2約やく▲4,000億おく円えん、リース債務さいむの返済へんさい約やく▲700億おく円えん、配当はいとう金きんの支払しはらい約やく▲550億おく円えん（非ひ支配しはい株主かぶぬしへの配当はいとう金きん含ふくむ）と、グループで獲得かくとくしたCFの大半たいはんを成長せいちょう投資とうしに充当じゅうとうしています。投資とうし配分はいぶんの中心ちゅうしんを国内こくない店舗てんぽからアジア、DX、物流ぶつりゅうにシフトすることにより、持続じぞく的てきな企業きぎょう価値かち向上こうじょうを目指めざしています。2023年度ねんどは中期ちゅうき経営けいえい計画けいかく期間きかん中ちゅうの平均へいきんの4,000～4,500億おく円えん程度ていど、うち海外かいがいに約やく20％、DX・物流ぶつりゅうに約やく30％を傾斜けいしゃ配分はいぶんする計画けいかくです。

　株主かぶぬし還元かんげんについては、中長期ちゅうちょうき的てきな成長せいちょうによる企業きぎょう価値かち向上こうじょうと利益りえき還元かんげんのバランスの最適さいてき化かを重点じゅうてん施策しさくと位置いちづけ、前年ぜんねん水準すいじゅんを維持いじする安定あんてい配当はいとうの方針ほうしんを取とっています。前年ぜんねん以上いじょうを維持いじすることで、投資とうし家かへの安定あんていした還元かんげんを意識いしきした運営うんえいを行おこなっています。また、「店舗てんぽをご利用りよういただくお客きゃくさまに株主かぶぬしとして“笑顔えがおが咲さく未来みらい”づくりに参画さんかくしていただきたい」という「お客きゃくさま株主かぶぬし」の考かんがえ方かたに基もとづき、お買かい上あげ金額きんがくに対たいして、持株もちかぶ数すうに応おうじた一定いっていの率りつ（3～7％）を乗じょうじた額がくを返金へんきんする株主かぶぬし優待ゆうたい制度せいどを導入どうにゅうしています。その結果けっか、株主かぶぬし数すうは日本にっぽん企業きぎょうの中なかでトップクラスの90万まん人にん規模きぼに上のぼり、多おおくの「お客きゃくさま株主かぶぬし」から当社とうしゃグループを事業じぎょう面めんでも応援おうえんいただいています。

　成長せいちょう戦略せんりゃくを優先ゆうせんしつつ、安定あんてい配当はいとうと株主かぶぬし優待ゆうたい制度せいどにより、「売上うりあげ・利益りえき拡大かくだい→株式かぶしき価値かち向上こうじょう→株主かぶぬし数すう増加ぞうか→売上うりあげ・利益りえき拡大かくだい」の正せいのスパイラルが生うまれ、持続じぞく的てきな株主かぶぬし還元かんげんが実現じつげんされると考かんがえています。

※1 営業えいぎょう利益りえき+減価げんか償却しょうきゃく費ひ・のれん償却しょうきゃく額がく－法人ほうじん税ぜい等とう

※2 設備せつび投資とうし（差入さしいれ保証ほしょう金きんの差入さしいれ含ふくむ）＋連結れんけつの範囲はんいの変更へんこうを伴ともなう子会社こがいしゃ株式かぶしきの取得しゅとく

　財務ざいむ・経営けいえい管理かんり担当たんとうとして重視じゅうしする財務ざいむ指標しひょうは、ROE、ROIC、Debt/EBITDA倍率ばいりつ^※3（金融きんゆう除のぞく）の3つです。これらの財務ざいむ指標しひょうを中心ちゅうしんに財務ざいむ運営うんえいを行おこない、中長期ちゅうちょうき的てきな企業きぎょう価値かち向上こうじょうを実現じつげんします。

　2022年度ねんどに2.2％だったROEは、中期ちゅうき経営けいえい計画けいかくでは7％を目標もくひょうとしています。トップバリュをはじめとする商品しょうひん・サプライチェーン改革かいかくによる荒あら利益りえきの拡大かくだい、DXを軸じくとした生産せいさん性せい向上こうじょうなどによる小売こうり事業じぎょうの収益しゅうえき性せい向上こうじょうを図はかり、グループポートフォリオにおける小売こうりのシェアを高たかめることに加くわえ、効率こうりつ的てきな事業じぎょうポートフォリオへの組くみ替かえにより、連結れんけつ当期とうき純じゅん利益りえきの底上そこあげを図はかり、株主かぶぬし利益りえきの最大さいだい化かに努つとめます。

　レバレッジの高たかい当社とうしゃグループにおいては、ROICをより重要じゅうよう視しすべきと考かんがえています。2022年度ねんどのROICは3.4％と当社とうしゃ試算しさんのWACC（3％弱じゃく）を上回うわまわっていますが、連結れんけつ有利子ゆうりし負債ふさいは3兆ちょう4,831億おく円えんまで増加ぞうかしており、改善かいぜんすべき課題かだいと認識にんしきしています。収益しゅうえき性せい向上こうじょうに加くわえ、投資とうし配分はいぶんの見直みなおしやグループの資金しきん効率こうりつ向上こうじょうを通つうじ、バランスシート、有利子ゆうりし負債ふさいの効率こうりつ化か・圧縮あっしゅくを図はかることにより、資産しさん効率こうりつを高たかめていきます。

　Debt/EBITDA倍率ばいりつは、持続じぞく的てきな資金しきん調達ちょうたつを行おこなううえで最もっとも重要じゅうような指標しひょうであり、中期ちゅうき経営けいえい計画けいかくでは2.5倍ばい以下いかを目標もくひょうとしています。2022年度ねんどは3.7倍ばいに留とまりましたが、2021年度ねんどの4.1倍ばいから改善かいぜんし、S&Pのアウトルック（格付かくづけの方向ほうこう性せい）が3年ねんぶりに「安定あんてい的てき」に戻もどるなど^※4、財務ざいむ改善かいぜんが進すすんでいます。引ひき続つづき、EBITDA成長せいちょうによる改善かいぜんを軸じくとしつつ、有利子ゆうりし負債ふさいをコントロールし、財務ざいむ健全けんぜん性せいを高たかめていきます。

※3 ハイブリッド社債しゃさい・ハイブリッドローンの資本しほん性せいを考慮こうりょ。現げん預あずか⾦と相殺そうさい

※4 当社とうしゃ発行はっこう体格たいかく付づけは、JCR（日本にっぽん格付かくづけ研究所けんきゅうじょ）A、R&I（格付かくづけ投資とうし情報じょうほうセンター）A-、S&P BBB

　当社とうしゃグループは、地域ちいき社会しゃかいへの貢献こうけんを使命しめいとし、国内外こくないがい約やく200の金融きんゆう機関きかんと地方ちほう創そう生せいやイオン生活せいかつ圏けんの創造そうぞうなどで協きょう働はたらけするとともに、資金しきん調達ちょうたつ先さきの多様たよう化か・分散ぶんさん化かを図はかっています。これまで、本邦ほんぽう初はつのSPCを活用かつようした不動産ふどうさんの開発かいはつ型がた証券しょうけん化か（2000年ねん）、小売こうり業ぎょう初はつの超ちょう長期ちょうき債さい（2005年ねん）、事業じぎょう会社かいしゃ初はつのハイブリッド社債しゃさい（2006年ねん）など、先駆せんく的てきな資金しきん調達ちょうたつ手法しゅほうを導入どうにゅうしてきました。

　ESGの観点かんてんでは、当社とうしゃグループは、1960年代ねんだいから環境かんきょう問題もんだいに注目ちゅうもくし、持続じぞく可能かのうな社会しゃかいの実現じつげんに向むけ、植樹しょくじゅや環境かんきょう配慮はいりょ型がた商品しょうひんの開発かいはつ、省しょう資源しげん・資源しげん循環じゅんかんの促進そくしんなど、時代じだいに先行せんこうする取とり組くみを行おこなってきました。財務ざいむ面めんにおいても、グリーンやサステナブル経営けいえいの考かんがえを取とり入いれており、2021年ねん11月に、グループとして初はじめてイオンモール（株）かぶしきがいしゃが、サステナビリティ目標もくひょうの達成たっせい度合どあいに応おうじて条件じょうけんが変動へんどうする機関きかん投資とうし家か・個人こじん投資とうし家か向むけのサステナビリティ・リンク・ボンドを発行はっこうしました。2023年ねん8月がつにイオン（株）かぶしきがいしゃが小売こうり業ぎょうとして初はじめて発行はっこうした際さいは、一般いっぱん的てきな「CO₂排出はいしゅつ量りょう削減さくげん」に「使つかい捨すてプラスチック使用しよう量りょう削減さくげん」と「食品しょくひん廃棄はいき物ぶつ発生はっせい量りょう削減さくげん」を加くわえ、併あわせて3点てんの野心やしん的てきな目標もくひょう項目こうもくを設定せっていしました。これらは、当社とうしゃグループの持続じぞく可能かのうな社会しゃかいの実現じつげんに対たいするコミットメントを表あらわすものと考かんがえています。当社とうしゃの取とり組くみに対たいし幅広はばひろくご理解りかい・ご賛同さんどういただき、投資とうし表明ひょうめいをされた投資とうし家かは84件けんに上のぼり、資金しきん調達ちょうたつ手段しゅだんとしてのポテンシャルも確認かくにんすることができました。今後こんごも財務ざいむ面めんから、サステナビリティ・ESGの視座しざに立たった経営けいえいを推進すいしんしていきます。

　グループCFOとして優先ゆうせんすべき課題かだいは、足下あしもとの環境かんきょう変化へんかや各かく事業じぎょう・各社かくしゃの状況じょうきょう・見通みとおしを踏ふまえ、着実ちゃくじつに利益りえき成長せいちょうを遂とげながら事業じぎょうポートフォリオの入いれ替かえを実施じっしし、キャッシュの創出そうしゅつ、有利子ゆうりし負債ふさいのコントロールを強化きょうかすることで、より強固きょうこな財務ざいむ基盤きばんを確立かくりつすることと考かんがえています。そのために「グループ経営けいえいへの提言ていげん」「財務ざいむリスクコントロール」「IR活動かつどうの高度こうど化か」に取とり組くんでいきます。

　当社とうしゃグループでは、グループシナジーを追求ついきゅうしながらの各社かくしゃの自主じしゅ自立じりつ経営けいえいの推進すいしんがこれまでの成長せいちょうの原動力げんどうりょくでもありました。一方いっぽう、環境かんきょうが激変げきへんするなか、個こ社しゃ最適さいてきだけでは非ひ効率こうりつとなる課題かだいが生しょうじかねず、結果けっかとしてグループの成長せいちょうを阻害そがいするリスクとなりえます。各社かくしゃの自主じしゅ自立じりつを尊重そんちょうしつつ、全体ぜんたい最適さいてきの視点してんでグループ経営けいえいに提言ていげんすることが重要じゅうようと考かんがえています。

　財務ざいむリスクコントロールについては、当社とうしゃグループのCF創出そうしゅつ力りょくはコロナ下かから順調じゅんちょうに拡大かくだいしているものの、さらなる財務ざいむ体質たいしつの強化きょうかが必要ひつようと認識にんしきしています。グループ各社かくしゃの業績ぎょうせき・バランスシート・CFをモニタリングし、効率こうりつ性せい指標しひょう・財務ざいむ健全けんぜん指標しひょうが改善かいぜんするよう財務ざいむ規律きりつを強化きょうかします。また、リスクの増大ぞうだいを回避かいひするため、適切てきせつに財務ざいむ・資金しきんの安全あんぜん性せいを確保かくほする施策しさくを講こうじていきます。

　資本しほん市場いちばに対たいしては、持続じぞく的てきな資金しきん調達ちょうたつのために、市場いちば・投資とうし家かの理解りかいを深ふかめるとともに、当社とうしゃグループの事業じぎょう・財務ざいむ活動かつどう及および成長せいちょう性せい・安全あんぜん性せいを機動きどう的てきに発信はっしんしていきます。当社とうしゃグループは、当社とうしゃ自身じしんが上場じょうじょう会社かいしゃであるとともに、上場じょうじょう子会社こがいしゃも数多かずおおくあるため、株主かぶぬし・投資とうし家かの皆みなさまとの適切てきせつなエンゲージメントの必要ひつよう性せいはより高たかいと考かんがえています。当社とうしゃの方針ほうしん・戦略せんりゃくやガバナンスなどを理解りかいいただけるようIR活動かつどうを一層いっそう充実じゅうじつさせ、株式かぶしき価値かちを向上こうじょうさせていきます。

　今後こんごもグループCFOとして、イオンのDNAである自主じしゅ自立じりつ経営けいえいを尊重そんちょうしながら、成長せいちょう市場いちばへの資源しげん配分はいぶんや各かく事業じぎょうの成長せいちょう戦略せんりゃく・変革へんかくを支ささえる財務ざいむ基盤きばんを確立かくりつし、グループの長期ちょうき的てきな企業きぎょう価値かち向上こうじょうを目指めざします。

執行しっこう役やく

財務ざいむ・経営けいえい管理かんり担当たんとう

江川えがわ 敬明もりあき