利上りあげを足あしがかりに高値たかね更新こうしん中ちゅうの豪ごうドル

豪州ごうしゅうでは11月5日にち、世界せかいに先駆さきがけて25bpの利上りあげが実施じっしされた。英国えいこくでも11月6日にちに25bp利上りあげされている。豪州ごうしゅうで金利きんりが引ひき上あげられた背景はいけいには、低てい金利きんり下かで過熱かねつ感かんが薄うすれない住宅じゅうたく市場いちばへの警戒けいかいがある。与信よしんは6月がつ以来いらい前年ぜんねん比ひ14％程度ていどで推移すいい、中なかでも住宅じゅうたく向むけ与信よしんは前月ぜんげつ比ひ+1％台だい後半こうはんから8月がつは前月ぜんげつ比ひ+2.1％へ、個人こじん向むけ与信よしんも7月がつの+0.8％から8月がつは前月ぜんげつ比ひ+2.2％へ加速かそくした。住宅じゅうたく価格かかくは4-6月がつ期きも前年ぜんねん比ひ17.3％上昇じょうしょうし90年代ねんだい初はじめの約やく2.5倍ばいへ跳はね上あがっている。「金融きんゆう引締ひきしめが遅おくれた場合ばあい、拡大かくだいしすぎた与信よしんが景気けいきを急激きゅうげきに悪化あっかさせる」リスクを早はやい段階だんかいで軽減けいげんしたいとの意図いとが働はたらいたと思おもわれる。

では、豪州ごうしゅうの住宅じゅうたく市場いちばはバブルなのだろうか？－住宅じゅうたく市場いちばはバブルではない、というのが豪州ごうしゅう国内こくないにおける大方おおかたの見方みかたである。移民いみんの純じゅん流入りゅうにゅうによる人口じんこう増ぞう（年間ねんかん約やく11万まん人にんで総そう人口じんこうを約やく0.5％増加ぞうか）や、核かく家族かぞく化か（一いち世帯せたいあたり人数にんずうは90年代ねんだい初はじめの3.3人にんから2002年ねんは2.8人にんへ）、ライフスタイルの変化へんかによる都心としん回帰かいきなど、実需じつじゅそのものが住宅じゅうたく投資とうしの増加ぞうかを牽引けんいんしているためである。また、オーストラリア人じんは一生いっしょうのうち平均へいきん7回かいは住宅じゅうたくを買かい替かえるといわれており、住宅じゅうたく市場いちばの流動りゅうどう性せいは非常ひじょうに高たかい。

もし、バブルというならばそれは賃貸ちんたい不動産ふどうさん市場いちばだ、というのがもっぱらの見方みかただ。2000年ねん以降いこうの株式かぶしき市場いちばの低ていパフォーマンスを背景はいけいに、個人こじん投資とうし家かの資金しきんが株式かぶしきから不動産ふどうさんへシフトされており、銀行ぎんこうの住宅じゅうたく向むけ融資ゆうし残高ざんだかに占しめる投資とうし目的もくてきの割合わりあいは97年ねんの20％から足元あしもとでは33％へ上昇じょうしょうしている。このため、賃貸ちんたい不動産ふどうさん価格かかくが上うえ振ふれしている可能かのう性せいは否定ひていできない。しかし、同期どうき間あいだで賃貸ちんたい住宅じゅうたくの空室くうしつ率りつが2％程度ていどから5％近ちかくへ上昇じょうしょうした一方いっぽう、賃貸ちんたい収益しゅうえき率りつは5～6％から3％程度ていどへ低下ていかしており、すでに投資とうし収益しゅうえきは悪化あっかし始はじめている。投資とうし目的もくてきの住宅じゅうたく投資とうしについても、金利きんりの小幅こはば上昇じょうしょうでその過熱かねつ感かんが沈静ちんせい化かされる公算こうさんが高たかい。

ただし、CPI上昇じょうしょう率りつは7-9月がつ期きに前年ぜんねん比ひ+2.6％と中ちゅう銀ぎんのインフレ・ターゲット内ないに収おさまっているうえ、中期ちゅうき的てきにも急激きゅうげきなインフレ懸念けねんは小ちいさく、早急そうきゅうな利上りあげの必要ひつよう性せいは感かんじられない。それにもかかわらず利上りあげが必要ひつようであるのは、住宅じゅうたく融資ゆうしを変動へんどう金利きんりで受うける豪州ごうしゅうで住宅じゅうたく融資ゆうし金利きんりが90年代ねんだい初はじめの17.5％から6.0％へ下さがった効果こうかが大おおきく、現げん段階だんかいでは金融きんゆう政策せいさくが「緩和かんわ寄より」と判断はんだんされるためである。中ちゅう銀ぎんは豪州ごうしゅう経済けいざいの持続じぞく的てき成長せいちょうをもたらすために一般いっぱん財ざい価格かかくの変動へんどうに加くわえ、金融きんゆう資産しさん価格かかくをも政策せいさく決定けってい上じょうの判断はんだん材料ざいりょうに入いれ始はじめている。04年央ねんおうまでにあと50bp程度ていどの利上りあげが想定そうていされよう。

世界せかいで最もっとも高たかい金利きんり水準すいじゅんと急速きゅうそくに強つよまっている利上りあげ観測かんそくを足あしがかりに、豪ごうドルは11月18日にちに72.45米めーとるセントと6年来ねんらいの高値たかねへ上昇じょうしょうした。豪ごうドルはしばらくのところ、強含つよふくみで推移すいいしよう。だが、利上りあげ局面きょくめんへの移行いこうは予想よそうよりも早はやく、これに伴ともなって豪ごうドルがピークをつけるタイミングも想定そうていしていたより早はやまってきている。世界せかい景気けいきの回復かいふく局面きょくめん入いりを背景はいけいに、豪州ごうしゅう以外いがいの国くににおいても早晩そうばん利上りあげ観測かんそくが台頭たいとうしてくる公算こうさんは高たかく、豪州ごうしゅうの利上りあげ打うち止どめ観かんとともに豪州ごうしゅうの対外たいがい金利きんり差さの拡大かくだい期待きたいも後退こうたいすることになろう。豪州ごうしゅうの利上りあげ打うち止どめ感かんが市場いちばに織おり込こまれた時ときこそ、豪ごうドルのピークになる可能かのう性せいが高たかい。