電子でんしメール保管ほかん管理かんりのベスト・プラクティスとは

業務ぎょうむ上じょうの様々さまざまな場面ばめんでやり取とりされる書類しょるいが、紙かみベースから電子でんし媒体ばいたいへ急速きゅうそくに移行いこうしている。電子でんし媒体ばいたいの大々的だいだいてきな活用かつようによって、書類しょるい手続てつづきの効率こうりつ化かやナレッジ共有きょうゆうの実現じつげん等とう、企業きぎょう各社かくしゃは様々さまざまな恩恵おんけいを享受きょうじゅするようになった。電子でんし媒体ばいたいに代表だいひょうされる電子でんしメールも、もはや業務ぎょうむ上じょうで必要ひつよう不可欠ふかけつなツールになって久ひさしい。

しかし一方いっぽうで、企業きぎょうが電子でんしメールの危険きけん性せいを理解りかいしないあまり、様々さまざまなトラブルが発生はっせいしているのも事実じじつである。例たとえば情報じょうほう漏洩ろうえいの観点かんてんからみると、残念ざんねんながら電子でんしメールが個人こじん情報じょうほうのみならず技術ぎじゅつ情報じょうほうや営業えいぎょう機密きみつを外部がいぶに漏洩ろうえいさせる最大さいだい要因よういんの１ひとつになっている。さらに調査ちょうさ会社かいしゃのGartnerによると、米国べいこくの訴訟そしょうにおいて証拠しょうこ物件ぶっけんの3/4は電子でんし媒体ばいたいで占しめられているとしている。このように法的ほうてきに十分じゅうぶんな証拠しょうこ能力のうりょくがあると認定にんていされた現在げんざい、法律ほうりつによる規制きせいが存在そんざいしない業種ぎょうしゅにおいても、社内しゃない規定きていを制定せいていした上うえで監視かんし体制たいせいを敷しくことは必須ひっすと言いえる。この他ほかにも、電子でんしメールは業務ぎょうむ活動かつどうのキラー・アプリケーションの位置付いちづけから、BCP（事業じぎょう継続けいぞく計画けいかく）としてメールのバックアップが重要じゅうよう課題かだいとなっている等ひとし、企業きぎょうはリスク管理かんりの一環いっかんとして、電子でんしメールを中心ちゅうしんとした電子でんし媒体ばいたいの保存ほぞん管理かんり体制たいせいの確立かくりつが求もとめられている。

保管ほかん管理かんり体制たいせいの構築こうちくにあたり、まずは自社じしゃにおける電子でんしメールのライフサイクルを調査ちょうさ・分析ぶんせきすることが重要じゅうようとなる。ライフサイクルに従したがう形かたちで、保管ほかん対象たいしょう基準きじゅんと保管ほかん期間きかんを設定せっていすると同時どうじに、保管ほかんデータ量りょうを予測よそくするキャパシティ・プランニングを実施じっしすることとなる。一方いっぽう、保管ほかんデータの完全かんぜん性せいを保証ほしょうすべく、データの消去しょうきょ・改かいざんを防止ぼうししなければならない。具体ぐたい的てきには記憶きおく媒体ばいたいとして、初回しょかいの書かき込こみ以降いこう、データ消去しょうきょや再さい書かき込こみが不可能ふかのうなWORM(※1)を採用さいようし、添付てんぷファイルはPDFやTIFF(※2)ファイルに変換へんかんすることが挙あげられる。

続つづいて規制きせい監督かんとく機関きかんの要請ようせいや自主じしゅ監査かんさにて情報じょうほう供出きょうしゅつが必要ひつようなケースを想定そうていして、保管ほかんデータから迅速じんそくに検索けんさく・検出けんしゅつ可能かのうな環境かんきょうを整備せいびする。これには効率こうりつ的てきな検索けんさく機能きのうを付加ふかする、あるいは検索けんさく用ようとして別途べっとDBを分離ぶんりすることが想定そうていされる。また業務ぎょうむ特性とくせいに応おうじて、電子でんしメールの記述きじゅつ内容ないようについてスキャンニング機能きのうを設もうけることも考慮こうりょすべきである。

全ぜん受信じゅしんメールを保管ほかん対象たいしょうとし、高性能こうせいのうで大だい容量ようりょうのストレージを導入どうにゅうすれば容易よういに管理かんり体制たいせいは確立かくりつされるものの、コスト面めんで立たち行ゆかなくなる恐おそれが生しょうじる。例たとえばスパム防止ぼうしツールやポリシー・マネジメント・ツール、さらにメール内容ないようやタイトルを基もととしたフィルタリング/分類ぶんるい機能きのうを導入どうにゅうすることで、保存ほぞん価値かちの無ないメールが整理せいりされ、ストレージにかかる負担ふたんが緩和かんわされる。このように幾いくつか工夫くふうを加くわえることで、ROI（費用ひよう対たい効果こうか）の高たかい管理かんり体制たいせいを敷しくことは十分じゅうぶん可能かのうであると考かんがえる。

(※1) WORM（Write Once Read Many）： 文字通もじどおりデータを一いち度どだけ書かき込こむことが可能かのうで、以降いこうの消去しょうきょや変更へんこうが不可能ふかのうな記憶きおくメディアの総称そうしょうを意味いみする。
(※2) TIFF（Tagged Image File Format）： Aldus社しゃとMicrosoft社しゃが共同きょうどうで開発かいはつした画像がぞうデータのフォーマット形式けいしきを表あらわす。