ブログが改あらためて問とい掛かけるインターネット時代じだいの情報じょうほう発信はっしんのあり方かた

米国べいこくで昨年さくねん最もっとも注目ちゅうもくされた単語たんご(※1)として取とり上あげられた『ブログ（Blog）』が、日本にっぽんでも普及ふきゅうしつつあると聞きく。Web-logが略りゃくされたブログは、「インターネットに公開こうかいしている個人こじんの日ひ記帳きちょう」が原点げんてんであり、言葉ことば通どおりの公開こうかい日記にっきもあれば、ジャーナリストや自称じしょうジャーナリストが身みの回まわりの出来事できごとを報道ほうどうし、意見いけんを述のべる手段しゅだんとしても広ひろく用もちいられている。

従来じゅうらいのウェブ日記にっきと異ことなるのは、技術ぎじゅつに詳くわしくなくとも誰だれでも容易よういに開設かいせつでき、情報じょうほう更新こうしんに面倒めんどうな手間てまが要いらず、他たのブログや読者どくしゃとの意見いけん交換こうかんや情報じょうほう共有きょうゆうが促進そくしんされやすい点てんと言いえる。簡便かんべんなコンテンツ管理かんり性能せいのうと洗練せんれんされた情報じょうほう連係れんけい機能きのうが、インターネット空間くうかん上じょうにおける情報じょうほう発信はっしんの強力きょうりょくなツールとなっている。

このような特徴とくちょうを追おい風かぜに、米国べいこくでは既すでに800万まん人にんがブログを立たち上あげているそうだ。ある非ひ営利えいり調査ちょうさ機関きかんの発表はっぴょう(※2)によれば、米国べいこくにおける1億おく2千せん万まん人にんもの成年せいねんインターネット・ユーザのうち、14人にんに1人ひとりがブログの書かき手て(ブロガー)に、4人にんに1人ひとりがその読者どくしゃとなっている。このことからも、もはやブログは単たんなる個人こじん的てき意見いけんの発信はっしん手段しゅだんという範疇はんちゅうを超こえ、大おおきな社会しゃかい的てき影響えいきょう力りょくを持もち始はじめていることがうかがわれる。

ブログが持もつ潜在せんざい力りょくに注目ちゅうもくする企業きぎょうも多おおく、社員しゃいんにブログ環境かんきょうを提供ていきょうすることや、経営けいえい理念りねんの理解りかい促進そくしんと知名度ちめいど向上こうじょうのため上級じょうきゅう役員やくいん自みずからがブロガーとなり社外しゃがいに発信はっしんする事例じれいも見みられる。また、新あたらしい情報じょうほう技術ぎじゅつの取とり込こみに積極せっきょく的てきなウォうぉール街るがいでも、コンテンツ管理かんりを重要じゅうよう視しすることから、イントラネットにブログ機能きのうを採用さいようし、社内しゃない情報じょうほう共有きょうゆうのテコ入てこいれを図はかる動うごきもある。

その反面はんめん、社員しゃいんが社内しゃない事情じじょうを不用意ふよういに漏もらしたり、企業きぎょう方針ほうしんに対たいする個人こじん的てき見解けんかいを書かいた理由りゆうで処分しょぶんされる事例じれいも少すくなくない。また、企業きぎょうマーケティングに応用おうようされるようになり、個人こじんの趣味しゅみ的てき活動かつどうとビジネスの境界きょうかいが曖昧あいまいになってきている。広告こうこく収入しゅうにゅうや商品しょうひんの紹介しょうかい手数料てすうりょうを得えることも可能かのうなため、個人こじん意見いけんの自由じゆうな発信はっしんというよりは、広告こうこく記事きじ的てき色合いろあいが濃こいサイトも多おおいようだ。

このような状況じょうきょう下か、ハーバード大学だいがくで今年ことし１月がつに『ブログ、ジャーナリズム、信頼しんらい性せい』と題だいする会議かいぎ(※3)が開催かいさいされた。ジャーナリストとブロガーの活動かつどう内容ないようを対比たいひしながら、情報じょうほう発信はっしんのあり方かた（「倫理りんり性せい」）がもたらす「信頼しんらい性せい」を考かんがえようというのが会議かいぎの趣旨しゅしである。読者どくしゃの信頼しんらいを得えるために、ジャーナリストに第一義だいいちぎに求もとめられるものが情報じょうほうの正確せいかく性せいや公平こうへい性せいとすれば、個人こじん的てき意見いけんを表明ひょうめいするブログに求もとめられるものは発信はっしん側がわの主義しゅぎ主張しゅちょうや立場たちばの明示めいじであることを示唆しさしている。さらに、事実じじつの伝達でんたつや意見いけんの交換こうかんを介かいして読者どくしゃの信頼しんらいを得えるためには、情報じょうほう発信はっしんに至いたるプロセスの「透明とうめい性せい」が重要じゅうようとも言及げんきゅうしている。

例れいを挙あげるならば、ある個人こじんブログが特定とくていの商品しょうひんを絶賛ぜっさんした場合ばあい、その絶賛ぜっさんがどのような価値かち判断はんだん基準きじゅんによるものか明あきらかにしておかないと、読者どくしゃの信頼しんらいを得えるどころか反動はんどうすら生うみかねないということである。どのような趣味しゅみ、嗜好しこう、環境かんきょう下かの人ひとが該当がいとう商品しょうひんを前向まえむき評価ひょうかするに至いたったのか。また、ブログの記載きさい内容ないようは純粋じゅんすいな個人こじん的てき見解けんかいなのか、もしくは企業きぎょうから対価たいかを得えた上うえでの情報じょうほう発信はっしんなのか。読者どくしゃから見みて、書かき手てが同おなじ価値かち観かんに立たっていると分わかれば、その内容ないようが独断どくだん的てきな批評ひひょうであっても同調どうちょうすることができるだろう。対価たいかを得えた上うえでの商品しょうひん紹介しょうかいだと予あらかじめ気きが付つけば、参考さんこうにする／しないは読者どくしゃの判断はんだんに委ゆだねられる。

それに対たいし、立場たちばを明あきらかにせず読よみ手て側がわを誤認ごにんさせる情報じょうほう発信はっしんは、発信はっしんされた内容ないようとブログの存在そんざい自体じたいの信頼しんらい性せい低下ていかにつながりかねない。これまでは、ジャーナリスト的てきな役割やくわりを担になっている個人こじんサイトの影響えいきょう力りょくはさほど大おおきく無なかったため、このような問題もんだいが直視ちょくしされることは少すくなかった。しかし、ブログの爆発ばくはつ的てき普及ふきゅうと強力きょうりょくな情報じょうほう伝播でんぱ力りょくゆえ、ネット時代じだいとなり約やく10年ねん経たった今いま、改あらためて問題もんだい提起ていきされるに至いたったのである。

ハーバード大学だいがくでの会議かいぎ開催かいさいに関かんしては、仮想かそう空間くうかんで草くさの根ね的てきに発生はっせいしたブログ・コミュニティーのあり方かたについて現実げんじつ空間くうかんの象徴しょうちょう的てき学府がくふが介入かいにゅうする形かたちとなったため、コミュニティーからの反発はんぱつも見みられたようだ。しかし、意思いし表現ひょうげんと事実じじつ報道ほうどう、個人こじんと企業きぎょうの境界きょうかい線せんが曖昧あいまいになっている事実じじつを踏ふまえ、インターネットにおける情報じょうほう発信はっしんのあり方かたに一いち石せきを投とうじる試こころみとなったのは確たしかであろう。販売はんばい促進そくしんなどにブログ活用かつようを検討けんとうしている企業きぎょうは、活用かつように際さいしての倫理りんり性せい、透明とうめい性せいに充分じゅうぶん注意ちゅういを払はらう必要ひつようがある。

(※1)" Word of the Year 2004", 大手おおて辞書じしょ会社かいしゃMerriam-Webster Inc.
http://www.m-w.com/info/04words.htm
(※2) "The state of blogging", Pew Internet & American Life Project, 2005年ねん1月がつ
http://www.pewinternet.org/pdfs/PIP_blogging_data.pdf
(※3) "Blogging, Journalism & Credibility", Harvard Law School, American Library Association's Office, Harvard's Kennedy School of Government
会議かいぎの公式こうしきサイトはブログによって運営うんえいされている。
http://cyber.law.harvard.edu/webcred/