長寿ちょうじゅ化かのコスト

企業きぎょう年金ねんきんの制度せいどでは、当初とうしょ想定そうていした前提ぜんてい（基礎きそ率りつ）と異ことなる事象じしょうが発生はっせいした場合ばあい、掛金かけきんを見直みなおす仕組しくみが採とられている。例たとえば、予定よてい利率りりつ・死亡しぼう率りつ・脱退だったい率りつなどが、その前提ぜんていに該当がいとうする。

同様どうようの事ことを、個々人ここじんの年金ねんきんのための貯蓄ちょちくに置おき換かえてみると、生涯しょうがいにわたって毎年まいとし、一定いってい額がくの年金ねんきんを受うけ取とるには、当初とうしょ必要ひつようとされる貯蓄ちょちく額がくが変化へんかすることを意味いみする。例たとえば1年間ねんかん寿命じゅみょうが延のびることは、1年ねん分ぶんの年金ねんきん額がくの現げん価あたい（年金ねんきん額がくを予定よてい利率りりつにて現在げんざい価値かちに割わり引びいたもの）が増ふえることを意味いみする。

図ずは、国勢調査こくせいちょうさの確定かくてい人口じんこう及および人口じんこう動態どうたい統計とうけいの確定かくていデータをもとに計算けいさんされた平均へいきん寿命じゅみょうと、国立こくりつ社会しゃかい保障ほしょう人口じんこう問題もんだい研究所けんきゅうじょが予測よそくした2050年ねんの平均へいきん寿命じゅみょうである。（研究けんきゅう機関きかんによっては、2050年ねんにおける女性じょせいの平均へいきん寿命じゅみょうは90歳さいを超こえるとする意見いけんもある）

1950-2000年ねんで、平均へいきん寿命じゅみょうは男性だんせいで19.7歳さい、女性じょせいで23.1歳さい延のびている。同どう予測よそくによれば、次つぎの50年ねんで平均へいきん寿命じゅみょうはそれぞれ、3.2歳さい、4.6歳さい延のびることになるが、これまでも医療いりょう技術ぎじゅつの発達はったつ等とうにより、平均へいきん寿命じゅみょうは当初とうしょの予測よそくを上回うわまわるペースで延のびてきており、大おおきく上うえぶれしても誰だれも驚おどろかないことであろう。

さて、60歳さい支払しはらい開始かいしの男性だんせいの終身しゅうしん年金ねんきんを前提ぜんていとして、年金ねんきんの現げん価あたい計算けいさん（予定よてい利率りりつ2%、60歳さい期初きしょ）を行おこなうと、1960年ねんに100だったものが、1980年ねんは107.6、2000年ねんには110.8と無視むしできない増加ぞうかをもたらした。これがいわば長寿ちょうじゅ化かのコストであると言いえる。

翻ひるがえって年金ねんきん基金ききんの運営うんえいについて考かんがえてみると、受給じゅきゅう待まち期き者しゃ・受給じゅきゅう者しゃの同どうコストは、加入かにゅう期間きかん中ちゅうに手当てあてできない（予測よそく困難こんなんな）ものであり、制度せいどの成熟せいじゅく化かが進すすみ、受給じゅきゅう待まち期き者しゃ・受給じゅきゅう者しゃの割合わりあいが高たかくなると、その負担ふたんが大おおきくなることが懸念けねんされる。

社会しゃかいの一層いっそうの成熟せいじゅく化かが進すすむ中なか、同どうコストの管理かんりと個々人ここじんの年金ねんきん設計せっけいの自由じゆう度どを増ますことを目的もくてきに、税制ぜいせいの変更へんこう等とうにより、脱退だったい後ごは無税むぜいにて他たの年金ねんきん制度せいど（個人こじん年金ねんきん等とう）に資産しさんを移うつすことを許容きょようする等ひとし、思おもい切きった施策しさくを考かんがえても良よい時期じきに来きているのではないだろうか。