ドイツ新しん政権せいけん発足ほっそく：2006年ねんが正念場しょうねんば

ドイツでは11月22日にちにようやく新しん政権せいけんが発足ほっそくする運はこびとなった。9月18日にちに実施じっしされた総そう選挙せんきょでは与野党よやとうとも過半数かはんすうの議席ぎせきを獲得かくとくできず、野党やとう第だい1党とうのキリスト教きりすときょう民主みんしゅ/社会しゃかい同盟どうめい（CDU/CSU）と与党よとう第だい1党とうの社会しゃかい民主党みんしゅとう（SPD）から成なる大だい連立れんりつ政権せいけんが、ほぼ40年ねんぶりに結成けっせいされる。11月11日にちには今後こんご4年間ねんかんの基本きほん的てきな政策せいさく方針ほうしんをまとめた「連立れんりつ協定きょうてい」が発表はっぴょうされた。同どう協定きょうていは雇用こよう創出そうしゅつと財政ざいせい赤字あかじ削減さくげんを最さい重要じゅうよう目標もくひょうとしている。雇用こよう創出そうしゅつ支援しえんのため、失業しつぎょう保険ほけんへの拠出きょしゅつ負担ふたんを軽減けいげんし、解雇かいこ保護ほご規定きていを一部いちぶ緩和かんわすることが盛もり込こまれた。一方いっぽうで、ユーロ圏けんの一員いちいんでありながら2002年ねん以降いこう財政ざいせい赤字あかじがGDP比ひ3％を超過ちょうかしている現状げんじょうを放置ほうちできないため、税制ぜいせい上じょうの優遇ゆうぐう措置そちや補助ほじょ金きんの廃止はいし、増税ぞうぜい、年金ねんきん保険ほけん料りょう引ひき上あげなどの財政ざいせい健全けんぜん化かのための方策ほうさくも並ならんでいる。

ドイツ経済けいざいは2005年ねん前半ぜんはんまでの景気けいき低迷ていめいから、夏なつ以降いこう持もち直なおしの兆きざしをみせているが、牽引けんいん役やくは輸出ゆしゅつであり、内需ないじゅ、殊ことに個人こじん消費しょうひは停滞ていたいが続つづいている。景気けいき回復かいふくの初期しょきに、家計かけいに一段いちだんの負担ふたん増ぞうを求もとめるような新しん政権せいけんの政策せいさくは無謀むぼうと映うつる。「国民こくみんいじめ」との批判ひはんの声こえも強つよい。実じつは、景気けいき回復かいふくと財政ざいせい健全けんぜん化かという両立りょうりつが難むずかしい政策せいさくを迫せまられたドイツ新しん政府せいふが出だした結論けつろんは、財政ざいせい健全けんぜん化かの目標もくひょう年次ねんじを2007年ねんに1年ねん繰くり延のべることであった。消費しょうひ税率ぜいりつ引ひき上あげ（16％→19％）、通勤つうきん費ひ補助ほじょの削減さくげん、年収ねんしゅう25万まんユーロ以上いじょうの富裕ふゆう者しゃを対象たいしょうとする所得しょとく税率ぜいりつ引ひき上あげ（42％→45％）はいずれも2007年ねん年初ねんしょに実施じっしされる。一方いっぽう、2006年ねんから実施じっしされる政策せいさくでは、研究けんきゅう開発かいはつ費ひの増額ぞうがく（2010年ねんまでにGDP比ひ3％規模きぼに増額ぞうがく）、減価げんか償却しょうきゃく率りつの引ひき上あげ、解雇かいこ保護ほごが適用てきようされない試用しよう期間きかんの延長えんちょう（6ヶ月かげつ→2年ねん）など、投資とうしや雇用こようをバックアップしようとする政策せいさくが並ならぶ。2006年ねん末まつには増税ぞうぜい直前ちょくぜんの駆かけ込こみ需要じゅようも予想よそうされ、新しん政権せいけんの経済けいざい政策せいさくは2006年ねんに関かんしては景気けいき刺激しげきを重視じゅうししているといえる。

加盟かめい国こくの財政ざいせい健全けんぜん化かを監視かんしする欧州おうしゅう委員いいん会かいは、ドイツの財政ざいせい健全けんぜん化かの時期じきを2007年ねんとすることを了解りょうかいした。1年ねんの猶予ゆうよをもらった新しん政権せいけんは、2006年ねんのうちに雇用こよう創出そうしゅつで成果せいかを上あげることが最大さいだいの課題かだいである。また、実施じっし時期じきが2007年ねんから2008年ねんに先送さきおくりされてしまった法人ほうじん税ぜいの抜本ばっぽん的てきな改革かいかくも、早はやい段階だんかいから具体ぐたい的てきな議論ぎろんを進すすめることで、将来しょうらいの見通みとおしを晴はらすことが肝要かんようである。2007年ねんには増税ぞうぜいに加くわえ、税制ぜいせい優遇ゆうぐう措置そちの廃止はいし、年金ねんきん保険ほけん料りょう負担ふたん増ぞう（所得しょとくの19.5％→19.9％）が計画けいかくされているため、消費しょうひが大おおきく減退げんたいする可能かのう性せいが高たかい。失業しつぎょう保険ほけん料りょう負担ふたんの軽減けいげん（所得しょとくの6.5％→4.5％）も予定よていされているが、マイナスの影響えいきょうを相殺そうさいするには力不足ちからぶそくであろう。妥協だきょうの産物さんぶつと評価ひょうかの低ひくい大だい連立れんりつ政権せいけんが、ドイツ経済けいざいを立たて直なおすことができるか否ひか、最初さいしょの1年ねんが重要じゅうようになる。