システムトラブルに備そなえて

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2005年ねん12月15日にち

大村おおむら岳たけし雄ゆう

11月1日にち、東京とうきょう証券しょうけん取引とりひき所しょは、システム障害しょうがいで午前ごぜん中ちゅうの取引とりひきを全面ぜんめん停止ていしという事態じたいに見みまわれた。原因げんいんは、10月がつ中旬ちゅうじゅんに導入どうにゅうしたシステム増強ぞうきょうのプログラムの不具合ふぐあいであった。今年ことしになって発生はっせいしたシステムトラブルとその原因げんいんをみてみると、2月がつにジャスダック証券しょうけん取引とりひき所しょで売買ばいばいシステムに障害しょうがいが発生はっせいし、1時じ間あいだ20分ふんにわたって全ぜん銘柄めいがらの売買ばいばいが停止ていしとなった。この原因げんいんは、短時間たんじかんに特定とくていの証券しょうけん会社かいしゃから大量たいりょうのデータが入力にゅうりょくされたことで処理しょりに時間じかんを要ようし、監視かんし時間じかんを超こえたため異常いじょうが生しょうじたためであった。同月どうげつ下旬げじゅんには、大手おおて都銀とぎんの東京とうきょう・大阪おおさか地区ちくを中心ちゅうしんとした一部いちぶの現金げんきん自動じどう預あづけ払ばらい機きにシステム障害しょうがいが発生はっせい、現金げんきんの入にゅう出金しゅっきんや振込ふりこみなどの取扱とりあつかいが出来できなくなった。これは、早朝そうちょうから他行たぎょうあての振込ふりこみ作業さぎょうが集中しゅうちゅうしたのが原因げんいんであった。4月には、高速こうそく道路どうろのＥＴＣシステムで障害しょうがいが発生はっせいし、料金りょうきん所しょにあるＥＴＣレーンの開閉かいへいバーに車くるまが接触せっしょくするトラブルが全国ぜんこくで多発たはつした。この原因げんいんは、カード番号ばんごうの情報じょうほうを一気いっきに登録とうろくしたために、設定せっていを超こえたデータ登録とうろくがなされ料金りょうきん所しょの機器ききが異常いじょう停止ていししたためであった。

システムトラブルの事例じれいは、枚挙まいきょに暇ひまがない。では、なぜこのようにトラブルが頻発ひんぱつするのであろうか。その要因よういんは、(1)システムの大型おおがた化か・複雑ふくざつ化か、(2)システムの複ふく合ごう化か、(3)テスト不足ふそくなどが指摘してきされている。まず、(1)については、かつて70年代ねんだいの情報処理じょうほうしょりは大型おおがた汎用はんよう機きによる一括いっかつ大量たいりょう処理しょりが中心ちゅうしんであったが、80年代ねんだいから経費けいひ削減さくげんが叫さけばれ、分散ぶんさん処理しょりの方向ほうこうに進すすみ、これに90年代ねんだいのハードの低廉ていれん化かと処理しょり能力のうりょくの向上こうじょうが重かさなって、システムが大型おおがた化かし、システム構成こうせいが複雑ふくざつ化かするようになったのである。それに加くわえリストラなどにより人員じんいん削減さくげんが行おこなわれ、システム全体ぜんたいを鳥瞰ちょうかんできる人材じんざいが少すくなくなったと言いわれている。(2)に関かんしては、分散ぶんさん処理しょりと共ともにインターネットが普及ふきゅうしたことで、ハードやアプリケーションだけでなくネットワークも含ふくめ様々さまざまなベンダーが登場とうじょうしてきたことや、企業きぎょうの買収ばいしゅう・合併がっぺいなどによりシステム統合とうごうが行おこなわれる場面ばめんが増ふえたことなどから、システム全体ぜんたいが複ふく合ごう化かしてきて、そのチューニングに苦労くろうするようになったのである。さらに、(3)については、設計せっけいやプログラミングに注力ちゅうりょくしテストを軽視けいしする、テストは外注がいちゅうなどに任まかせてしまう、システム開発かいはつ期間きかんが短縮たんしゅくされテスト時間じかんが十分じゅうぶんに取とられないなどの事情じじょうが挙あげられる。

システムトラブルに関かんしては、十分じゅうぶんなテストを行おこなうような社内しゃない制度せいどや環境かんきょうを整ととのえることが重要じゅうようだが、不幸ふこうにもトラブルが発生はっせいしてしまった場合ばあいに備そなえて、表ひょう１のような点てんに留意りゅういしておく必要ひつようがあろう。

表ひょう１．システムトラブル・障害しょうがいへの対応たいおうに関かんする留意りゅうい点てん

1	システムトラブルに対たいする組織そしき体制たいせいや障害しょうがい別べつの担当たんとう組織そしきが明確めいかくになっているか。
2	トラブルの発生はっせいの可能かのう性せいを把握はあくし、影響えいきょうの重大じゅうだいさを分析ぶんせきしているか。
3	トラブル対策たいさくの内容ないよう、担当たんとう責任せきにん部署ぶしょ、実施じっしスケジュール等とうが文書ぶんしょ化かされているか。
4	平常へいじょう時じに、システムの品質ひんしつ監視かんしや点検てんけん、内部ないぶ監査かんさが行おこなわれているか。
5	トラブルに際さいし、マスコミ対策たいさくが必要ひつようとなった場合ばあいの緊急きんきゅう時じの対応たいおう手順てじゅんが定さだめられているか。

昨年さくねんは、台風たいふうや地震じしんなどの天災てんさいが多おおかったことから、ＢＣＰ（事業じぎょう継続けいぞく計画けいかく）策定さくていの重要じゅうよう性せいが問とわれ、天災てんさいなどを想定そうていしたＢＣＰ策定さくていに乗のり出だし始はじめた企業きぎょうもある。また、この4月がつに施行しこうされた個人こじん情報じょうほう保護ほご法ほうへの対策たいさくでは、社内しゃない規定きていの整備せいび、役職やくしょく員いんからの誓約せいやく書しょの聴取ちょうしゅ、プライバシーマークやＩＳＭＳ（情報じょうほうセキュリティーマネジメントシステム）などセキュリティー関連かんれんの認証にんしょう資格しかくを取得しゅとくするなどの企業きぎょうが多おおかった。天災てんさいや情報じょうほう漏洩ろうえいなどのリスクへの対策たいさくを取とることはとても重要じゅうようだが、その前まえに、自社じしゃの基幹きかん業務ぎょうむで大おおきくシステムに依存いぞんしているものがあるのか、そのシステムのバックアップシステムが準備じゅんびされているか、障害しょうがい復旧ふっきゅうマニュアルは整備せいびされ使つかえるものとなっているかなど、再考さいこうする必要ひつようがあろう。

（出典しゅってん）フジサンケイビジネスアイ　2005.11.14（22面めん）掲載けいさい

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