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対中追加関税の引き下げは米国のインフレをどれだけ抑制するか? 2022年07月06日 | 大和総研 | 橋本 政彦

たいちゅう追加ついか関税かんぜいげは米国べいこくのインフレをどれだけ抑制よくせいするか?

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2022ねん07がつ06にち

米国べいこくでは、歴史れきしてきなインフレが国民こくみんおおきななやみのたねになっている。物価高ぶっかだかたいする不満ふまんはバイデン大統領だいとうりょう政策せいさく運営うんえいにもけられており、バイデン大統領だいとうりょうはガソリンにかかる連邦れんぽうぜい停止ていし議会ぎかい要請ようせいするなど、物価高ぶっかだかへの対応たいおうわれている。

こうしたなか、バイデン政権せいけんによるインフレ抑制よくせいさくの1つとして浮上ふじょうしているのが、トランプぜん政権せいけん実施じっしされた中国ちゅうごくたいする制裁せいさい関税かんぜいげることである。これについてイエレン財務ざいむ長官ちょうかんはとりわけ前向まえむきな発言はつげんをしており、バイデン大統領だいとうりょう見直みなおしの検討けんとうすすめていることをみとめている。

たいちゅう追加ついか関税かんぜいげれば、インフレはどれほど抑制よくせいされるのだろうか。輸入ゆにゅう金額きんがく関税かんぜい収入しゅうにゅうから、簡易かんいてき米国べいこく輸入ゆにゅう全体ぜんたいたいする関税かんぜいりつ計算けいさんすると、トランプぜん政権せいけんによる一連いちれん追加ついか関税かんぜい実施じっしされる以前いぜんは1.5%程度ていど安定あんていして推移すいいしていた。それが、追加ついか関税かんぜい実施じっし急上昇きゅうじょうしょうし、足元あしもとでは3.5%程度ていど推移すいいしている(図表ずひょう)。つまり、追加ついか関税かんぜいげられれば、輸入ゆにゅう価格かかく最大さいだい両者りょうしゃである2.0%程度ていど低下ていかする可能かのうせいがある。

もっとも、この2.0%という数字すうじは、あくまでトランプ政権せいけん以降いこうたいちゅう追加ついか関税かんぜいすべ廃止はいしされた場合ばあい効果こうかであり、現実げんじつてきではないだろう。かりにインフレ対策たいさくという名目めいもくであっても、たいちゅう追加ついか関税かんぜい即時そくじ撤廃てっぱいされたとなれば、中国ちゅうごくたいする譲歩じょうほとらえられ、共和党きょうわとうのみならず民主党みんしゅとう内部ないぶからも批判ひはんたかまる可能かのうせいたかいからだ。実際じっさい通商つうしょう交渉こうしょう実務じつむになうUSTR(米国べいこく通商つうしょう代表だいひょう)のタイ代表だいひょうは、つづ追加ついか関税かんぜい中国ちゅうごくとの交渉こうしょうにおける重要じゅうよう手段しゅだんであるという認識にんしきえていない。また、インフレ対策たいさくとしてのたいちゅう追加ついか関税かんぜいげにたいして否定ひていてき立場たちばをとっている。

したがって、たいちゅう追加ついか関税かんぜいげが実施じっしされるとしても、一部いちぶ品目ひんもくかぎられる可能かのうせいたかく、輸入ゆにゅう価格かかく効果こうか上記じょうきの2.0%を大幅おおはば下回したまわるだろう。商品しょうひん市況しきょう高騰こうとうなどにより足元あしもと輸入ゆにゅう物価ぶっか前年ぜんねん2けた直近ちょっきんデータの2022ねん5がつ前年ぜんねん+11.7%)の上昇じょうしょうつづいていることにかんがみれば、その効果こうかちいさい。

インフレ対策たいさくさい優先ゆうせん課題かだいとしながら、解決かいけつのための有効ゆうこう手段しゅだんたないバイデン政権せいけんにとって、たいちゅう追加ついか関税かんぜいげは、インフレへの対抗たいこう姿勢しせい国民こくみんにアピールする材料ざいりょうになるだろう。しかし、追加ついか関税かんぜいげが実現じつげんしたとしても、インフレにあえ米国べいこく家計かけい負担ふたん劇的げきてき軽減けいげんする効果こうかはないとみられ、低迷ていめいつづくバイデン大統領だいとうりょう支持しじりつ回復かいふくのための起爆きばくざいになるとはかんががたい。

図表:米国の輸入関税率

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橋本 政彦
執筆しっぴつしゃ紹介しょうかい

ロンドンリサーチセンター

シニアエコノミスト(LDN駐在ちゅうざい橋本はしもと 政彦まさひこ

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