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欧州の消費者マインドを冷え込ませる「経験のない物価高」 2022年08月04日 | 大和総研 | 山崎 加津子

欧州おうしゅう消費しょうひしゃマインドをませる「経験けいけんのない物価高ぶっかだか

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2022ねん08がつ04にち

欧州おうしゅう消費しょうひしゃマインドの悪化あっか歯止はどめがかからない。EUの直近ちょっきん7がつ消費しょうひしゃ信頼しんらいかん指数しすう出所しゅっしょ欧州おうしゅう委員いいんかい)は、新型しんがたコロナウイルス感染かんせん世界せかい伝播でんぱするなか景況けいきょうかん急速きゅうそく悪化あっかした2020ねんはる水準すいじゅん下回したまわり、1985ねん統計とうけい開始かいし以来いらい最低さいてい更新こうしんした。

消費しょうひしゃ信頼しんらいかん指数しすう構成こうせい項目こうもく注目ちゅうもくすると、「今後こんご12カ月かげつ家計かけい見通みとおし」と「今後こんご12カ月かげつ景気けいき見通みとおし」が、ロシアがウクライナに侵攻しんこうした直後ちょくごの2022ねん3がつ一気いっき悪化あっかした。その数カ月すうかげつで「過去かこ12カ月かげつ家計かけい状況じょうきょう判断はんだん」と「今後こんご12カ月かげつ大型おおがた耐久たいきゅうざい消費しょうひ見通みとおし」も悪化あっか傾向けいこうをたどっている。2020ねんはる比較ひかくすると「過去かこ12カ月かげつ家計かけい状況じょうきょう判断はんだん」がとりわけ悪化あっかしており、「今後こんご12カ月かげつ家計かけい見通みとおし」ともども7がつ統計とうけい開始かいし以来いらい最低さいてい更新こうしんした。

家計かけい状況じょうきょう悪化あっかさせているのは、急速きゅうそくなインフレの進行しんこうである。2020ねん4がつ当時とうじのEUの消費しょうひしゃ物価ぶっか上昇じょうしょうりつ出所しゅっしょ欧州おうしゅう委員いいんかい)は前年ぜんねん+0.6%とていインフレが問題もんだいだったが、直近ちょっきんの6がつどう+9.6%となり、2001ねん統計とうけい開始かいし以来いらい最高さいこう更新こうしんした。エネルギー価格かかく上昇じょうしょう、サプライチェーンの混乱こんらん人手ひとで不足ふそくともな人件じんけん上昇じょうしょう通貨つうかやすなどがふくあいてき作用さようして、光熱こうねつ交通こうつうだけでなく食品しょくひん価格かかくどうけたびとなっている。

もっとも、EU加盟かめいの27カ国かこくごとにると、インフレりつたかくにほど消費しょうひしゃ信頼しんらいかん悪化あっかしているという関係かんけいかならずしもっていない。消費しょうひしゃ信頼しんらいかん悪化あっか目立めだつオーストリア、ドイツ、フランスの消費しょうひしゃ物価ぶっか上昇じょうしょうりつは27カ国かこくちゅうでは相対そうたいてきひくい。一方いっぽう消費しょうひしゃ物価ぶっか上昇じょうしょうりつたかくになかでも、リトアニアやスロバキアの消費しょうひしゃ信頼しんらいかん悪化あっか度合どあいは比較的ひかくてきちいさい。このようなちがいがしょうじる理由りゆうひとつは経験けいけんちがいとかんがえられる。オーストリア、ドイツ、フランスでは足元あしもとのインフレりつは、オイルショックの影響えいきょうのこっていた1980年代ねんだいなかばまではともかく、1990年代ねんだい以降いこう経験けいけんしたことのないたかりつである。これにたいして、1990年代ねんだい社会しゃかい主義しゅぎ経済けいざいから資本しほん主義しゅぎ経済けいざいへの移行いこう経験けいけんしたリトアニアやスロバキアでは、それにともな物価高ぶっかだかがまだ記憶きおくのこっている。

経験けいけんのない(記憶きおくうすれている)物価高ぶっかだか消費しょうひしゃマインドを悪化あっかさせる度合どあいがおおきくなっていると見受みうけられるなか今後こんご注目ちゅうもくてん消費しょうひしゃマインドの明確めいかく悪化あっかが、消費しょうひみに直結ちょっけつするかどうかであるとかんがえる。急速きゅうそくなインフレりつ上昇じょうしょうによる実質じっしつ所得しょとく目減めべりは消費しょうひませるはずだが、消費しょうひしゃマインドの悪化あっかほどには消費しょうひまない可能かのうせいがあるとみている。その理由りゆうは、雇用こよう関連かんれん指標しひょう比較的ひかくてき堅調けんちょうで、雇用こようかんする消費しょうひしゃ見通みとおしの悪化あっかもかなり限定げんていされていることにある。EUの直近ちょっきん6がつ失業しつぎょうりつ出所しゅっしょ欧州おうしゅう委員いいんかい)は6.0%で2000ねん統計とうけい開始かいし以来いらい最低さいてい水準すいじゅんにある。また、消費しょうひしゃの「今後こんご12カ月かげつ失業しつぎょう懸念けねん」は2020ねんはるには急速きゅうそくたかまったのとは対照たいしょうてきに、この7がつまでほとんど悪化あっかしていない。ちなみに各国かっこく失業しつぎょうりつ水準すいじゅんにはばらつきがあるものの、足元あしもと失業しつぎょうりつがコロナショックまえ水準すいじゅん下回したまわっているくにおおい。

ユーロけん金融きんゆう政策せいさくになうECBはこの7がつにインフレ退治たいじのために11ねんぶりの利上りあげにった。消費しょうひしゃ信頼しんらいかん指数しすう低下ていか元凶げんきょうとなっている物価ぶっか上昇じょうしょう今後こんごピークアウトにかうのかが注目ちゅうもくされるところだが、一方いっぽう景気けいき減速げんそくかんつよまるなかでの金融きんゆうめは景気けいき悪化あっかにつながり、失業しつぎょうりつ上昇じょうしょうするリスクもはらむ。ECBのさじ加減かげん非常ひじょう重要じゅうようとなろう。

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山崎 加津子
執筆しっぴつしゃ紹介しょうかい

金融きんゆう調査ちょうさ

金融きんゆう調査ちょうさ部長ぶちょう 山崎やまざき 加津子かつこ

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