根強ねづよい「不景気ふけいきマインド」

日本にっぽんの経済けいざい状況じょうきょうについて、ニュース等とうで話題わだいとなる度たびに取とり上あげられるのが、「今いまは景気けいきが悪わるいので・・・」「もっと景気けいきが良よくなれば・・・」といった不景気ふけいきを憂うれえる“一般いっぱん庶民しょみんの声こえ”だ。五輪ごりんや万博ばんぱく、選挙せんきょといった国家こっか的てきイベントをはじめ、連休れんきゅうや旅行りょこう等とうの季き節ぶしの話題わだいにもこれらが付つきまとう。まして、値上ねあげや増税ぞうぜい等とうで家計かけい負担ふたんが増加ぞうかするニュースならなおさらだ。

出でる杭くいは打うたれることへの恐おそれのためか、今いまの日本にっぽんでは個人こじんレベルで景気けいきの良よい話はなしをする人ひとが少すくないように思おもう。また、ＳＮＳの時代じだいにおいて、ネガティブな声こえは宣伝せんでんを目的もくてきとした発信はっしんではなく本音ほんねであるとみなされ、それに追随ついずいする動うごきも目立めだちやすい。多おおくの人ひとにとって、世間せけんへの不満ふまんを発信はっしんすることが、他者たしゃの共感きょうかんを得える近道ちかみちとなっているのだろう。経済けいざい状況じょうきょうに関かんしては、不景気ふけいきの方ほうがネタになりやすいことから、結果けっか的てきに「不景気ふけいきマインド」も蔓延まんえんしやすいのではないか。

このような「不景気ふけいきマインド」は、景気けいき指標しひょうにも垣間見かいまみられる。「街角まちかど景気けいき」を表あらわすとされる内閣ないかく府ふの景気けいきウォッチャー調査ちょうさを見みると、直近ちょっきん（2022年ねん7月がつ分ぶん）まで比較ひかく可能かのうな2002年ねん以降いこうの季き節ぶし調整ちょうせい値ちのデータにおいて、現状げんじょう判断はんだんＤＩ（合計ごうけい）が景気けいき下向したむきを示しめす50未満みまんとなった確かく率りつは約やく73％にのぼる。さらに、分野ぶんや別べつのデータで家計かけい動向どうこうに関かかわる同どうＤＩに至いたっては、景気けいき下向したむきの確かく率りつが約やく85％に達たっする。過去かこ20年ねんのうち17年ねんほどは不景気ふけいきだった（と感かんじられていた）という計算けいさんになる。これをそのまま受うけとめれば、大だい恐慌きょうこうでも足たりないほどの悲惨ひさんな状況じょうきょうである。

一方いっぽう、同おなじ内ない閣かく府ふ発表はっぴょうでマクロ的てきに景気けいきを捉とらえる景気動向指数けいきどうこうしすうを見みると、様相ようそうは大おおきく変かわる。上記じょうきと同おなじ2002年ねん以降いこうのデータでは、一致いっち指数しすうＤＩが50未満みまんとなった確かく率りつは約やく29％にとどまる。“声こえなき声こえ”を含ふくむ全員ぜんいんの行動こうどう結果けっかを反映はんえいするマクロ統計とうけいからは、過去かこ20年間ねんかんにおいて景気けいきは拡大かくだい期間きかんの方ほうが長ながかったと解釈かいしゃくできる。これは、同どう時期じきにみられた企業きぎょう収益しゅうえきの拡大かくだいや株価かぶか上昇じょうしょうなどとは整合せいごう的てきである。ただし、近年きんねんの日本にっぽんでは企業きぎょう収益しゅうえきの伸のびに対たいして賃上ちんあげが不十分ふじゅうぶんと指摘してきされている。このことが二ふたつの統計とうけいの乖離かいりの一因いちいんといえようが、それでも極端きょくたんな差さが出でていることからは、マインド把握はあくの難むずかしさが感かんじられる。

最近さいきんまで、日本にっぽんでは「デフレマインド」が問題もんだいとされてきた。しかし、足元あしもとの物価ぶっか上昇じょうしょうも手伝てつだい、やや不本意ふほんいなかたちとはいえ「デフレマインド」は解消かいしょうしつつあるといえる。物価ぶっかのように変化へんかを半なかば強制きょうせいされるわけではない分ぶん、困難こんなんな道みちではあろうが、今後こんごは「不景気ふけいきマインド」の解消かいしょうを目指めざすべきではないだろうか。これは人ひとを重視じゅうしする「新あたらしい資本しほん主義しゅぎ」推進すいしんへの一ひとつのカギとなるかもしれない。

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