一極いっきょく集中しゅうちゅうから新あらたなステージへの兆きざし

東京とうきょう都との人口じんこうの社会しゃかい増減ぞうげんをもう少すこし長ながい期間きかんに広ひろげて見みると（日本人にっぽんじんのみ）、1960年代ねんだい後半こうはんから90年代ねんだい半なかばにかけては社会しゃかい減げんの状態じょうたいが珍めずらしくなかったことが分わかる（図表ずひょう２）（※２）。東京とうきょう都とに隣接りんせつする3県けん（埼玉さいたま、千葉ちば、神奈川かながわ）との間あいだの増減ぞうげんをこれに重かさねて見みると、戦後せんごの経済けいざい成長せいちょうなどに伴ともなって東京とうきょう都とに集中しゅうちゅうした人口じんこうが、次第しだいに東京とうきょう圏けん全体ぜんたいに広ひろがっていった様子ようすがうかがえる。その後ご、バブル経済けいざい崩壊ほうかい後ごの停滞ていたいが長引ながびく中なかで、東京とうきょう都とと隣接りんせつ3県けんとの間あいだの増減ぞうげんはほぼ均衡きんこうし、主おもに隣接りんせつ3県けん以外いがいからの転入てんにゅう超過ちょうかが東京とうきょう都との人口じんこうを押おし上あげてきた。しかし、2020年ねん以降いこう、隣接りんせつ3県けんへの転出てんしゅつ者しゃ数すうが増加ぞうかし、東京とうきょう都とへの転入てんにゅう者しゃ数すうは減少げんしょうしている。

転入てんにゅうと転出てんしゅつの状況じょうきょうを年齢ねんれい層そうに分わけて見みると（日本人にっぽんじんのみ）、進学しんがくや就職しゅうしょくに関かかわる移動いどうが多おおい「15～24歳さい」の年齢ねんれい層そうで転入てんにゅう者しゃ数すうが転出てんしゅつ者しゃ数すうを大おおきく上回うわまわっている（図表ずひょう３）（※３）。新型しんがたコロナウイルス感染かんせんが拡大かくだいした2020年ねんと21年ねんには、幅広はばひろい年齢ねんれい層そうで転入てんにゅう者しゃ数すうの減少げんしょうや転出てんしゅつ者しゃ数すうの増加ぞうかが見みられ、移動いどう者しゃ数すうが多おおい「25～34歳さい」の年齢ねんれい層そうも21年ねんは転出てんしゅつ超過ちょうかに転てんじている。一方いっぽう、各かく年齢ねんれい層そうの移動いどう者しゃ数すうの推移すいいに目めを向むけると、いくつかの年齢ねんれい層そうで2015年ねん前後ぜんこうから転入てんにゅう者しゃ数すうの減少げんしょうや転出てんしゅつ者しゃ数すうの増加ぞうかが見みられていた点てんに特徴とくちょうがある。一極いっきょく集中しゅうちゅうから新あらたなステージに向むけた動うごきは、コロナ禍かが広ひろがる以前いぜんから始はじまっていた可能かのう性せいもある。

情報じょうほう通信つうしん機能きのうや物流ぶつりゅう網もうの発達はったつなどに伴ともなって、働はたらく場所ばしょや暮くらす場所ばしょを制約せいやくする要因よういんは少すくなくなっている。内閣ないかく府ふが公表こうひょうしている「新型しんがたコロナウイルス感染かんせん症しょうの影響えいきょう下かにおける生活せいかつ意識いしき・行動こうどうの変化へんかに関かんする調査ちょうさ（※４）」を見みると、東京とうきょう23区くの20歳さい代だいを中心ちゅうしんに地方ちほう移住いじゅうへの関心かんしんが高たかまり、その関心かんしんは東京とうきょう圏けん全体ぜんたいにも一定いっていの広ひろがりがあると推察すいさつされる（図表ずひょう４）。コロナ禍かが働はたらき方かたや暮くらし方かたを見みつめ直なおすきっかけとなり、自然しぜん豊ゆたかな環境かんきょうや生活せいかつ重視じゅうしのライフスタイルを望のぞむ人々ひとびとが増ふえているとすれば、高度こうど成長せいちょう期きや停滞ていたい期きの延長線えんちょうせん上じょうにある発想はっそうや価値かち観かんを変かえ、新あらたなステージに向むけた政策せいさくや戦略せんりゃくを展開てんかいしていくことも必要ひつようであろう。