人的じんてき資本しほんの情報じょうほう開示かいじとカッツ理論りろん

企業きぎょうの「人的じんてき資本しほん」の情報じょうほう開示かいじについて様々さまざまな議論ぎろんが行おこなわれている。

これまでの、従業じゅうぎょう員いんは事業じぎょうのコストという考かんがえ方かたから、価値かちを生うみ出だす投資とうし対象たいしょうであるという考かんがえ方かたがでてきたからである。人的じんてき資本しほんへの投資とうしを考かんがえる上うえでは、人材じんざい戦略せんりゃくが必要ひつようであり、先さきに公表こうひょうされた人材じんざい版ばん伊藤いとうレポート（※１）では、人材じんざい戦略せんりゃくに求もとめられる５いつつの要素ようその一ひとつに、「リスキル・学まなび直なおし」を挙あげている。

伊藤いとうレポートでは、「事業じぎょう環境かんきょうの急速きゅうそくな変化へんか、個人こじんの価値かち観かんの多様たよう化かに対応たいおうするためにも、個人こじんのリスキル・スキルシフトの促進そくしん、専門せんもん性せいの向上こうじょうが必要ひつようとなる。」と記述きじゅつされている。

ここ数すう年ねんのDXブームもあり、多おおくの企業きぎょうではデジタル人材じんざいの育成いくせい、ITスキルの向上こうじょうに力点りきてんを置おいている傾向けいこうが強つよい。

この動うごき自体じたいを否定ひていするつもりはないが、筆者ひっしゃはその前まえに、ヒューマンスキルの見直みなおしやレベルアップも図はかるべきではないかと考かんがえている。

企業きぎょう研修けんしゅうの参加さんか者しゃや人事じんじ部門ぶもんのマネージャーの方ほうとお話はなしすると、若手わかて社員しゃいんと上手うまくコミュニケーションが取とれない、入社にゅうしゃ3年ねん目めくらいまでの社員しゃいんはIT機器ききについては速はやく慣なれるが会議かいぎでの発言はつげんや説明せつめいが分わかりにくい、などといった声こえを聞きくことがある。

新入しんにゅう社員しゃいんの導入どうにゅう研修けんしゅうでは、ビジネスマナーやベーシックなビジネススキルの研修けんしゅうは行おこなわれるものの、その後ごはスキル研修けんしゅうが中心ちゅうしんとなる傾向けいこうが高たかい。

そこで参考さんこうになるのが、カッツ理論りろんである。これは、1950年代ねんだい、米国べいこくの経済けいざい学者がくしゃロバート・L・カッツが提唱ていしょうしたマネジメントの各層かくそうとビジネススキルの関係かんけい性せいを明示めいじした理論りろんである。カッツ理論りろんでは、マネジメント層そうを「ローワーマネジメント」「ミドルマネジメント」「トップマネジメント」の３みっつに、マネジメントに必要ひつような３みっつの能力のうりょくとして「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」を定義ていぎしている。

カッツ理論りろんでは、それぞれの階層かいそうにとって、どの能力のうりょくがどの程度ていどの割合わりあいで必要ひつようなのかを図解ずかいしている。「ローワーマネジメント」では、「テクニカルスキル」や「ヒューマンスキル」に重おもきが置おかれ、階層かいそうが上あがるにつれて、「テクニカルスキル」の割合わりあいが減へり、ヒューマンスキル」に加くわえ、「コンセプチュアルスキル」が増ふえていく(図表ずひょう１参照さんしょう)。

（※１）経済けいざい産業さんぎょう省しょう「持続じぞく的てきな企業きぎょう価値かちの向上こうじょうと人的じんてき資本しほんに関かんする研究けんきゅう会かい報告ほうこく書しょ～人材じんざい版ばん伊藤いとうレポート～」（2020年ねん9月がつ30日にち）

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