気候きこう変動へんどうリスクを踏ふまえた事業じぎょう活動かつどうを行おこなっていくためには

2021年ねんに改訂かいていされたコーポレートガバナンス・コードで、東京とうきょう証券しょうけん取引とりひき所しょ（東証とうしょう）プライム市場いちば上場じょうじょう会社かいしゃはTCFD（気候きこう関連かんれん財務ざいむ情報じょうほう開示かいじタスクフォース）またはそれと同等どうとうの枠組わくぐみに沿そった開示かいじを求もとめられている。また、東証とうしょうプライム市場いちば上場じょうじょう会社かいしゃに限かぎらず、上場じょうじょう会社かいしゃの提出ていしゅつする有価ゆうか証券しょうけん報告ほうこく書しょでも、TCFD提言ていげんやISSB（国際こくさいサステナビリティ基準きじゅん審議しんぎ会かい：新あらたな国際こくさい的てき・統一とういつ的てきなサステナビリティ情報じょうほうの開示かいじ基準きじゅんを作つくるために設立せつりつされた機関きかん）の基準きじゅんを参考さんこうにサステナビリティ情報じょうほうの開示かいじを義務ぎむ化かすることが提案ていあんされている（※１）。

ここで参考さんこうにされているTCFD提言ていげんやISSBの基準きじゅん案あんで共通きょうつうして開示かいじが推奨すいしょう・要求ようきゅうされている事項じこうの一ひとつとして、「インターナルカーボンプライシング（ICP）」が挙あげられる。

ICPとは、各かく企業きぎょうの内部ないぶで決きめられた炭素たんその価格かかくのことを指さす。外部がいぶ機関きかんの排出はいしゅつ権けん価格かかくや同業どうぎょう他社たしゃの設定せってい価格かかくなどを参考さんこうに、企業きぎょうの裁量さいりょうによって、例たとえばCO2の排出はいしゅつ量りょう1トン当あたり○円えん、という価格かかく付づけをするといった具合ぐあいである。このICPは何なにのためにどのように利用りようされ、また、なぜICPの開示かいじを行おこなう必要ひつようがあるのだろうか。

ICPは気候きこう変動へんどうリスクを見みえる化かするとともに、そうしたリスクを踏ふまえた企業きぎょうの意思いし決定けっていや、リスクを軽減けいげんするための活動かつどうの促進そくしんのために利用りようされる。近年きんねん、企業きぎょうは特とくに気候きこう変動へんどうリスク（例たとえば、将来しょうらい的てきに厳きびしい炭素たんそ税ぜいが課かされ、脱だつ炭素たんそが進すすめられないと税ぜい負担ふたんがかかるなど）への対応たいおうを迫せまられている。そのため、事業じぎょう活動かつどうを行おこなう上うえでもこうしたリスクを踏ふまえたプロジェクトの選択せんたくを行おこなうことが考かんがえられるが、リスクを定量ていりょう化かすることは難むずかしい。

ICPの導入どうにゅうにより、企業きぎょうは、「このプロジェクトは○トンのCO2を排出はいしゅつすることが想定そうていされるから、ICPを掛かけると○円えんのコストがかかる」といったように、事業じぎょう活動かつどうによる炭素たんそ排出はいしゅつ量りょうを基もとにリスクを定量ていりょう化かし、コストとして捉とらえることが可能かのうとなる。このコストを事業じぎょう活動かつどうから得える収益しゅうえきから引ひくことで、気候きこう変動へんどうリスクを踏ふまえたプロジェクトの価値かちを認識にんしきし、脱だつ炭素たんそを考慮こうりょした意思いし決定けっていをすることができるようになる。また、コストを見みえる化かするだけでなく、実際じっさいにこのコストを回収かいしゅうし、脱だつ炭素たんその活動かつどうに充あてることも考かんがえられる。

こうしたICPの活用かつよう状じょう況きょうを開示かいじすることによって、投資とうし家かなどに向むけて、気候きこう変動へんどうリスクを考慮こうりょした経営けいえいを行おこなっていることを示しめすことができる。もちろんICPは単たんなる投資とうし家かへのアピールではなく、上記じょうきの通とおり脱だつ炭素たんそに配慮はいりょした企業きぎょうの意思いし決定けっていにも有効ゆうこうである。ICPの活用かつようはわが国くにでも広ひろがりつつあるが、国際こくさい的てきな開示かいじ基準きじゅんでICPの開示かいじが推奨すいしょう・要求ようきゅうされていることも勘案かんあんし、まだ活用かつようしていない企業きぎょうは導入どうにゅう・検討けんとうを進すすめてみることも一案いちあんではないだろうか。（※２）

（※１）ISSBの基準きじゅんや有価ゆうか証券しょうけん報告ほうこく書しょにおけるサステナビリティ情報じょうほうの開示かいじについて、詳くわしくは拙著せっちょ「企業きぎょうの気候きこう変動へんどう情報じょうほうの開示かいじに関かんする国際こくさい的てきな基準きじゅん案あんが公表こうひょう」（2022年ねん4月がつ22日にち、大和総研だいわそうけんレポート）、拙著せっちょ「ディスクロージャーワーキング・グループ報告ほうこく（サステナビリティ情報じょうほうの開示かいじ拡充かくじゅう）」（2022年ねん6月がつ20日はつか、大和総研だいわそうけんレポート）を参照さんしょう。
（※２）ICPの導入どうにゅうや検討けんとうの際さいには、環境省かんきょうしょう「インターナルカーボンプライシング活用かつようガイドライン　～企業きぎょうの低てい炭素たんそ投資とうしの推進すいしんに向むけて～」（2022年ねん3月がつ更新こうしん）などを参考さんこうとすることが推奨すいしょうされる。

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