2次じ補正ほせいがもたらす財政ざいせい上じょうのツケ

2022年ねん12月2日にち、令れい和わ4年度ねんど補正ほせい予算よさん（第だい2号ごう）（以下いか、2次じ補正ほせい）が国会こっかいで成立せいりつした。総合そうごう経済けいざい対策たいさくの財政ざいせい上じょうの裏付うらづけとなるものだ。だが近年きんねんは、当初とうしょ予算よさん・補正ほせい予算よさんにかかわらず、多額たがくの財源ざいげんを国債こくさいに依存いぞんする状況じょうきょうが続つづいており、財政ざいせいの持続じぞく可能かのう性せいを懸念けねんする見方みかたがある。

米国べいこくでは、新規しんきの法案ほうあんが発議はつぎされると、独立どくりつ財政ざいせい機関きかんである議会ぎかい予算よさん局きょくが10年ねん程度ていどの財政ざいせいへの影響えいきょうを推計すいけいしている。それに倣ならって2次じ補正ほせいが今後こんご10年間ねんかん（2022～31年度ねんど）に財政ざいせいに与あたえる影響えいきょうを簡単かんたんに試算しさんしてみよう。財政ざいせいの持続じぞく可能かのう性せいに関連かんれんする指標しひょうとして、①基礎きそ的てき財政ざいせい収支しゅうし（プライマリーバランス、以下いかPB）、②国債こくさい利り払はらい費ひ、③政府せいふ債務さいむ残高ざんだか（名目めいもくGDP比ひ）に注目ちゅうもくしたい（※１）。

まず、PBへの影響えいきょうはどうか。PBは、ある年度ねんどの行政ぎょうせいサービスを提供ていきょうするための経費けいひを、同おなじ年度ねんどの税収ぜいしゅう等とうで賄まかなえているかどうかを示しめす。2次じ補正ほせいでは、PBの対象たいしょうとなる歳出さいしゅつは29.2兆ちょう円えん程度ていど（総合そうごう経済けいざい対策たいさくのための経費けいひなど）、歳入さいにゅう（当初とうしょ予算よさんから税収ぜいしゅうが上うえ振ふれする分ぶんなど）は3.8兆ちょう円えん程度ていどであるため、2022年度ねんどのPBは25.4兆ちょう円えん程度ていど赤字あかじ幅はばが拡大かくだいする。なお補正ほせい予算よさんは当年度とうねんどの歳出さいしゅつ・歳入さいにゅうを修正しゅうせいするものであるから、次じ年度ねんど以降いこうのPBには基本きほん的てきに影響えいきょうを与あたえない。

続つづいて、国債こくさい利り払はらい費ひは10年間ねんかんでどのくらい増ふえるだろうか。2次じ補正ほせいによって22.9兆ちょう円えんの新規しんき国債こくさいが増発ぞうはつされるので、その分ぶんの利り払はらい費ひが増ふえる。足元あしもとの金利きんりは日銀にちぎんによって低ひくく抑制よくせいされているが、インフレが続つづけば金融きんゆう緩和かんわが修正しゅうせいされる可能かのう性せいがある。金利きんり動向どうこうにもよるが、2031年度ねんどにかけて長期ちょうき金利きんりが0.8～2.8％に上昇じょうしょうすると想定そうていした場合ばあい、利り払はらい費ひは2031年度ねんどまでの累積るいせきで0.8～1.2兆ちょう円えん程度ていど増加ぞうかするとみられる。

最後さいごに、10年ねん後ごの政府せいふ債務さいむ残高ざんだか（名目めいもくGDP比ひ）にはどういう影響えいきょうがあるだろうか。分子ぶんしと分母ぶんぼに分わけて考かんがえてみよう。分子ぶんしの政府せいふ債務さいむ残高ざんだかは、2022年度ねんどのPB赤字あかじ拡大かくだいや今後こんご10年ねんの利り払はらい費ひ増ぞうによって増ふえる（ただし剰余じょうよ金きんの活用かつよう等とうによってある程度ていど抑制よくせいされる）。一方いっぽうで分母ぶんぼの名目めいもくGDPだが、10年ねん後ごには総合そうごう経済けいざい対策たいさくの景気けいき刺激しげき効果こうかはほとんど残のこっていないだろう。だが経済けいざいが自然体しぜんたいで成長せいちょうするだけでも名目めいもくGDPは10年ねん後ごには拡大かくだいしていると予想よそうされるため、政府せいふ債務さいむ残高ざんだか（名目めいもくGDP比ひ）を押おし下さげる効果こうかを持もつ。総そうじてみると、10年ねん後ごの政府せいふ債務さいむ（名目めいもくGDP比ひ）は、2次じ補正ほせいがなかった場合ばあいと比くらべて3～4％pt程度ていど上昇じょうしょうすると推計すいけいされる。

もっともここでの試算しさんでは、経済けいざい対策たいさくによる景気けいき刺激しげき効果こうかで一時いちじ的てきに税収ぜいしゅうが増ふえたり、中長期ちゅうちょうき的てきにも潜在せんざい成長せいちょう力りょくが引ひき上あげられて名目めいもくGDPがさらに拡大かくだいしたりする効果こうかは考慮こうりょしていない。だがその効果こうかを考慮こうりょしても、財政ざいせい状況じょうきょうについては総そうじて悪化あっかする可能かのう性せいが高たかいだろう。

足元あしもとでは海外かいがい経済けいざいが下した振ふれするリスクが強つよまっており、2次じ補正ほせいには国民こくみん生活せいかつを守まもり経済けいざい成長せいちょうを促うながす効果こうかが期待きたいされる。だが財政ざいせいへの目配めくばりも重要じゅうようである。経済けいざい対策たいさくを行おこなう際さいには、国会こっかいやマスメディアも含ふくめ、財政ざいせいへの影響えいきょうをもっと議論ぎろんしてもよいように思おもわれる。

（※１）試算しさん手法しゅほう・前提ぜんてい等とうの詳細しょうさいは、末吉すえきち孝行こうこう「インフレと金利きんり上昇じょうしょうで財政ざいせいはどうなるか　政府せいふ債務さいむの名目めいもくGDP比ひは短期たんき的てきに低下ていかするが、将来しょうらいの利り払はらい費ひは急増きゅうぞう」（大和総研だいわそうけんレポート、2022年ねん12月9日にち）を参照さんしょう。

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