政府せいふに原子力げんしりょくを提言ていげんした「懇談こんだん会かい」、推進すいしん派はによるロビー活動かつどうの思惑おもわく：法ほう制度せいど・規制きせい

図ず1　提言ていげん書しょの表紙ひょうし。内容ないようは6ページにわたる。出典しゅってん：エネルギー・原子力げんしりょく政策せいさく懇談こんだん会かい

　安倍あべ首相しゅしょうに手渡てわたされた提言ていげん書しょのタイトルからして強烈きょうれつである。「責任せきにんある原子力げんしりょく政策せいさくの再さい構築こうちく〜原子力げんしりょくから逃にげず、正面しょうめんから向むき合あう〜」と付つけられている（図ず1）。

　この提言ていげん書しょをまとめた「エネルギー・原子力げんしりょく政策せいさく懇談こんだん会かい」は有志ゆうしの集あつまりという形式けいしきをとっていて、会長かいちょうを務つとめるのは元もと・東京大学とうきょうだいがく総長そうちょうの有馬ありま朗人あきと氏しである。安倍あべ首相しゅしょうに提言ていげん書しょを手渡てわたしたのも有馬ありま氏しだ。

　提言ていげん書しょには3つの提言ていげんが示しめされている。第だい1に「福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの廃はい炉ろと被災ひさいコミュニティの復興ふっこう」、第だい2に「国際こくさいスタンダードに則のっとったプロフェッショナルによる安全あんぜん規制きせい」、第だい3に「安全あんぜんを大前提だいぜんていにしたエネルギーの総合そうごう最適さいてき政策せいさく」である。さまざまな理由りゆうや背景はいけいをもとに主張しゅちょうを展開てんかいしながら、結論けつろんとして原子力げんしりょく発電はつでん所しょを再さい稼働かどうする必要ひつよう性せいを訴うったえている。

　原子力げんしりょく発電はつでんを復活ふっかつさせる理由りゆうのひとつとして、火力かりょく発電はつでんの増加ぞうかによる燃料ねんりょう費ひの問題もんだいを挙あげていて、「年間ねんかん3兆ちょう円えん超ちょうの国富こくふの流出りゅうしゅつが生しょうじている」と指摘してきする。しかし、福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの事故じこによって失うしなわれた“国富こくふ”は、有形ゆうけい・無形むけいのものを含ふくめて3兆ちょう円えんなどという規模きぼでは済すまないほど大おおきいと考かんがえるべきだろう。

　懇談こんだん会かいのメンバーには原子力げんしりょくを推進すいしんする企業きぎょうの経営けいえい者しゃや団体だんたいのOBが名なを連つらねていて、実態じったいは推進すいしん派はによるロビー活動かつどうと言いえる。安倍あべ首相しゅしょうは2月がつ28日にちの施政しせい方針ほうしん演説えんぜつの中なかで、「安全あんぜんが確認かくにんされた原発げんぱつは再さい稼働かどうする」と明言めいげんした。原子力げんしりょくに偏重へんちょうした提言ていげんが国くにのエネルギー戦略せんりゃくに影響えいきょうを及およぼさないことを期待きたいしたい。

　提言ていげん書しょに記載きさいされているメンバー29人にんの中なかには、学界がっかいや原子力げんしりょく関係かんけい団体だんたいのOBのほか、産業さんぎょう界かいからは以下いかの各氏かくしが個人こじん名めいで並ならぶ（カッコ内ないの企業きぎょう名めいはスマートジャパンが調しらべたもの）。産業さんぎょう界かいとは言いっても、鉄鋼てっこう・商社しょうしゃ・電機でんきの3業種ぎょうしゅに集中しゅうちゅうしていて、他たの業種ぎょうしゅは加くわわっていない。

今井いまい敬たかし（新しん日本にっぽん製鐵せいてつ）、槍やり田た松まつ瑩（三井物産みついぶっさん）、岡おか素之もとゆき（住友商事すみともしょうじ）、勝俣かつまた宣夫のりお（丸紅まるべに）、川村かわむら隆たかし（日立製作所ひたちせいさくしょ）、北村きたむら秀夫ひでお（東芝とうしば）、小林こばやし栄三えいざ（伊藤忠商事いとうちゅうしょうじ）、佐藤さとう育男いくお（日本製鋼所にほんせいこうしょ）、島田しまだ昌幸まさゆき（テレビ東京てれびとうきょう）、佃つくだ和夫かずお（三菱重工業みつびしじゅうこうぎょう）、中村なかむら邦夫くにお（パナソニック）、以上いじょう敬称けいしょう略りゃく