電力でんりょく損失そんしつを95％削減さくげんする超電導ちょうでんどうケーブル、横浜よこはま市しの工場こうじょうで実証じっしょう導入どうにゅうがスタート：太陽光たいようあきら

　NEDO、昭和しょうわ電線でんせんケーブルシステム、BASFジャパンは2020年ねん11月、BASFジャパン戸塚とつか工場こうじょう（横浜よこはま市し戸塚とつか区く）に全長ぜんちょう約やく200mの三さん相そう同軸どうじく超電導ちょうでんどうケーブルを敷設ふせつし、工場こうじょうの省しょうエネルギー化かを目指めざす実証じっしょう試験しけんを開始かいししたと発表はっぴょうした。

　金属きんぞくを導体どうたいとして用もちいる電線でんせんは、電気でんき抵抗ていこうによる発熱はつねつで送電そうでんロスが発生はっせいする。これに対たいして抵抗ていこうゼロの超電導ちょうでんどう体たいは大幅おおはばな省しょうエネルギー効果こうかが期待きたいできるが、超電導ちょうでんどう状態じょうたいを維持いじするためには液体えきたい窒素ちっそなどで冷却れいきゃくし続つづける必要ひつようがあり、実用じつよう化かにはコスト面めんで問題もんだいがあった。そこで3社しゃはこうした課題かだいの解決かいけつにつながる新あらたなシステムの開発かいはつを進すすめてきた。

　開発かいはつした超電導ちょうでんどうケーブルは、電気でんきを流ながす超電導ちょうでんどう層そうを一本いっぽんのケーブルの中なかに絶縁ぜつえん層そうを挟はさみつつ、同軸どうじく上じょうにU相しょう、V相しょう、W相しょうを流ながす三さん層そうを配置はいちした構造こうぞうを持もつ。この各層かくそうに個別こべつに電気でんきを流ながすため、長手ながて方向ほうこうに3つの電流でんりゅう端子たんしが配置はいちされており、従来じゅうらい型がたケーブルの終端しゅうたんに比くらべて非常ひじょうにコンパクトな設計せっけいとなった。

　試験しけんを実施じっしするBASFの工場こうじょうは塗料とりょうを扱あつかう化学かがくプラントで、超電導ちょうでんどうケーブルは配電はいでん変電へんでん所しょ横よこの終端しゅうたんから高たかさ6mの専用せんようラックを通とおり、約やく200m先さきの受電じゅでん設備せつび近傍きんぼうの終端しゅうたんまで敷設ふせつ。工場こうじょうの既設きせつレイアウトを有効ゆうこう活用かつようすることによって、ケーブルを納おさめる建物たてものの建設けんせつ、または地面じめんを掘ほりケーブルを地下ちかに通とおす工程こうていを不要ふようとした。

今回こんかい設置せっちした実証じっしょうシステムのイメージ　出典しゅってん：NEDO

　冷却れいきゃくには、昭和しょうわ電線でんせんケーブルシステムとエア・ウォーターが共同きょうどう開発かいはつしたサブクール式しき冷却れいきゃくシステムを導入どうにゅう。これは密閉みっぺい容器ようきに貯ためた液体えきたい窒素ちっそを減圧げんあつすることで液体えきたいが気体きたいに変かわる際さいの蒸発じょうはつ熱ねつを利用りようして、-200℃まで冷却れいきゃくが行おこなえるシステム。プラントで大量たいりょうに保有ほゆうしている液体えきたい窒素ちっそを冷媒れいばいとして利用りようし、減圧げんあつするために排気はいきした窒素ちっそガスは回収かいしゅうしてプラントに戻もどして利用りようすることができる。新規しんきに開発かいはつした液体えきたい窒素ちっそポンプは連続れんぞく1万まん時じ間あいだ稼働かどうできる設計せっけいだとう。

　超電導ちょうでんどうケーブルを冷却れいきゃくする液体えきたい窒素ちっそは、超電導ちょうでんどう導体どうたいの中央ちゅうおうのフォーマ内部ないぶを使つかった内部ないぶ流りゅう路ろ、超電導ちょうでんどう導体どうたい外側そとがわと内部ないぶコルゲート管かんの空間くうかんを使つかった外側そとがわ流りゅう路ろを往路おうろ、復路ふくろとして流ながれる。送電そうでん側がわ終端しゅうたんから出でると直ただちに6mの高たかさ（高低こうてい差さ5m）まで急きゅう角度かくどで立たち上あがり、200m先さきまでケーブルの内部ないぶ流りゅう路ろを流ながれる仕組しくみ。その後ご、高低こうてい差さを乗のり越こえながら冷却れいきゃく装置そうちまで戻もどり、冷却れいきゃくされて送電そうでん側がわ終端しゅうたんに戻もどる循環じゅんかん経路けいろを流ながれる。急きゅうこう配ばいで液体えきたい窒素ちっそが上昇じょうしょう・下降かこうし、2カ所かしょで曲まがり入はいる設置せっち形態けいたいは世界せかい初はつだという。

今回こんかい設置せっちした代表だいひょう的てきな設備せつび　出典しゅってん：NEDO

　また、今回こんかいの取とり組くみは、民間みんかん工場こうじょうの実じつ系統けいとうに三さん相そう同軸どうじく超電導ちょうでんどうケーブルを導入どうにゅうして行おこなう実証じっしょう試験しけんとしても世界せかい初はつだという。今回こんかいの超電導ちょうでんどうケーブルを30MW以上いじょうの大だい規模きぼ電力でんりょくを使つかうプラントのケーブルに採用さいようすると、従来じゅうらいのケーブルに比くらべ送電そうでん時じの電力でんりょく損失そんしつを95％以上いじょう抑制よくせいでき、年間ねんかん2000万まん円えん以上いじょうの電気でんき料金りょうきんの削減さくげん効果こうかが見込みこめるとしている。国内こくないに適用てきよう可能かのうな事業じぎょう所しょは300カ所かしょ程度ていど存在そんざいするという。

　3者しゃは今回こんかいの実証じっしょうにより、複雑ふくざつな工場こうじょうレイアウトでもケーブルを敷設ふせつ、液体えきたい窒素ちっそを流ながすめどが立たったとし、2021年ねん9月がつ末まつまで実証じっしょう試験しけんを行おこない、運用うんよう方法ほうほうやコストの算出さんしゅつ、安全あんぜん性せいなどの確認かくにんを行おこなう計画けいかく。屋外おくがいに敷設ふせつした超電導ちょうでんどうケーブルの耐たい候こう性せいについても検証けんしょうを進すすめるとしている。