日本にっぽんサッカー協会きょうかい（JFA）は9月がつ10日とおか(金)きんに創設そうせつ100周年しゅうねんを迎むかえます。100周年しゅうねんを記念きねんし、1921年ねんの創設そうせつから現在げんざいまでを振ふり返かえるカウントダウンコラムを掲載けいさいします。第だい1回かい目めはサッカーの伝来でんらいから1955年ねん頃ごろまでの日本にっぽんサッカー草創そうそう期きについて、サッカージャーナリストの後藤ごとう健生たけおさんにご執筆しっぴついただきました。

大だい日本にっぽん蹴球しゅうきゅう協会きょうかいが発足ほっそく

明治維新めいじいしんの後のち「文明開化ぶんめいかいか」の名なの下したに日本にっぽんは政治せいじ、経済けいざい、軍事ぐんじ、法律ほうりつ、芸術げいじゅつなどあらゆる分野ぶんやで急きゅうピッチに近代きんだい化か（西欧せいおう化か）を進すすめた。そして、教育きょういくの近代きんだい化かの一環いっかんとして体育たいいく教育きょういくも取とり入いれられ、近代きんだいスポーツが普及ふきゅうしていく。サッカーも各地かくちの旧制きゅうせい中学校ちゅうがっこう（現在げんざいの高校こうこうに当あたる）などでプレーされるようになったが、初はじめて本格ほんかく的てきにサッカーの強化きょうかに取とり組くんだのは中村なかむら覚さとし之これ助すけなど東京とうきょう高等こうとう師範しはん学校がっこう（筑波大学つくばだいがくの前身ぜんしん）フートボール部ぶの学生がくせいたちだった。1903年ねん頃ごろのことである。お手本てほんは横浜よこはまなどの外国がいこく人じんチームだった。

1910年代ねんだい後半こうはんになると旧制きゅうせい中学ちゅうがくを中心ちゅうしんにサッカー強化きょうかに取とり組くむ学校がっこうも増ふえ、各地かくちで大会たいかいが開催かいさいされるようになる。そして、1919年ねんにはイングランドサッカー協会きょうかい（FA）から「全国ぜんこく選手権せんしゅけん優勝ゆうしょうチームに授与じゅよするように」として銀ぎんのカップが贈おくられてきた。日本にっぽんのサッカー人じんとも交流こうりゅうがあったウィリアム・ヘーグ書記官しょきかん補ほの発案はつあんで在日ざいにち英国えいこく大使館たいしかんが本国ほんごくの外務省がいむしょうを通つうじてFAに依頼いらいしたものだった。

これをきっかけに1921年ねん9月がつには大だい日本にっぽん蹴球しゅうきゅう協会きょうかいが発足ほっそく。同年どうねん11月がつには東京とうきょうの日比谷公園ひびやこうえん内ないにあった芝生しばふのグラウンドで「ア式蹴球あしきしゅうきゅう全国ぜんこく優勝ゆうしょう競技きょうぎ会かい」が開催かいさいされ、東京とうきょう高だか師しなどのOBによる「東京とうきょう蹴球しゅうきゅう団だん」が初代しょだい王者おうじゃとなった。これが、全日本ぜんにほん選手権せんしゅけん大会たいかいの始はじまりで、戦後せんごの1951年ねんからは優勝ゆうしょうチームに天皇てんのう杯はいが授与じゅよされることになり、2021年度ねんどの天皇杯てんのうはいJFA全日本ぜんにほん選手権せんしゅけん大会たいかいは101回かい目めの大会たいかいとなる。

日本にっぽんサッカーが国際こくさい舞台ぶたいへ

協会きょうかい発足ほっそく前まえの1917年ねんにはすでに国際こくさい試合しあいも行おこなわれていた。東京とうきょうで開催かいさいされた第だい3回かい極東きょくとう選手権せんしゅけん大会たいかいでのことだった。この大会たいかいは日本にっぽん、中国ちゅうごく、フィリピンが参加さんかして、陸上りくじょう、水泳すいえい、野球やきゅう、テニスなど各種かくしゅ競技きょうぎが行おこなわれる総合そうごう競技きょうぎ大会たいかいで「アジア大会たいかいの前身ぜんしん」とも言いわれている。

当時とうじはまだ全日本ぜんにほん選抜せんばつチームを結成けっせいするのが難むずかしかったので、東京とうきょう高だか師しが日本にっぽん代表だいひょうとして戦たたかったが、中国ちゅうごく（香港ほんこんの南みなみ華はな体育たいいく会かい）には0対たい5、フィリピンには2対たい15とともに大敗たいはいを喫きっした。英国えいこく植民しょくみん地ちだった香港ほんこんや米国べいこく領りょうだったフィリピンではスポーツが盛さかんだったのだ。しかも、フィリピン代表だいひょうには、フィリピン系けいスペイン人じんでFCバルセロナのエースだったパウリーノ・アルカンタラが参加さんかしていた。

その後ご、1920年代ねんだいを通つうじて日本にっぽんサッカー界かいの目標もくひょうは中国ちゅうごくやフィリピンだった。

1920年代ねんだい後半こうはんになると師範しはん学校がっこうや旧制きゅうせい中学ちゅうがくよりも年齢ねんれい層そうの高たかい大学だいがくチームが日本にっぽんのサッカーをリードするようになり、関東かんとう、関西かんさいの学生がくせいリーグが日本にっぽんのトップリーグとなった。そして、1927年ねんに中国ちゅうごくの上海しゃんはいで開ひらかれた第だい8回かい極東きょくとう選手権せんしゅけんでは、日本にっぽん代表だいひょうとして参加さんかした早稲田大学わせだだいがくWMWがフィリピンを破やぶって国際こくさい試合しあいでの初はつ勝利しょうりを記録きろく。さらに1930年ねんに東京とうきょうで開ひらかれた第だい9回かい大会たいかいには、関東かんとう大学だいがくリーグで無敵むてきだった東京帝大とうきょうていだい（現げん・東京大学とうきょうだいがく）主体しゅたいに初はじめて全日本ぜんにほん選抜せんばつチームが結成けっせいされて日本にっぽん代表だいひょうとして参加さんかした。日本にっぽんはフィリピンに勝かって中国ちゅうごくとも3対たい3で引ひき分わけて、日にち中ちゅう両国りょうこくが同時どうじ優勝ゆうしょう。日本にっぽんサッカーにとって初はつの国際こくさい大会たいかい優勝ゆうしょうだった。

極東きょくとう選手権せんしゅけん大会たいかいは日にち中ちゅう両国りょうこくの政治せいじ的てき対立たいりつのため、1934年ねんの大会たいかいを最後さいごに消滅しょうめつしてしまう。日本にっぽんサッカー界かいにとって、次つぎの目標もくひょうはオリンピックだった。

当時とうじのオリンピックはアマチュアだけの大会たいかいだったが、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん前まえは英国えいこく勢ぜいなど一部いちぶを除のぞいて欧州おうしゅう各国かっこくでもまだ正式せいしきにプロ化かが進すすんでいなかったので、オリンピックのサッカーには各国かっこくのアマチュア選手せんしゅだけではなく事実じじつ上じょうのプロ選手せんしゅも代表だいひょうとして参加さんかしていた。

オリンピックで残のこした爪痕つめあと

日本にっぽんが初はつ参加さんかしたのは1936年ねんのベルリン・オリンピック。関東かんとう大学だいがくリーグを連覇れんぱしていた早稲田大学わせだだいがく主体しゅたいの全日本ぜんにほん選抜せんばつが参加さんか。ノックアウト式しきトーナメントで行おこなわれた大会たいかいの1回戦かいせんで日本にっぽんは2年ねん後ごの第だい3回かいワールドカップで4位いに入はいる強豪きょうごう国こくスウェーデンと対戦たいせん。前半ぜんはんは下馬評げばひょう通どおりスウェーデンが2対たい0とリードして折おり返かえしたが、後半こうはんに入はいると日本にっぽんが走はし力ちからを生いかして反撃はんげきを開始かいし。川本かわもと泰三たいぞう、右近うこん徳太郎とくたろうの得点とくてんで追おいつくと、終了しゅうりょう間際まぎわの85分ふんに松永まつなが行こうが3点てん目めを決きめて逆転ぎゃくてん勝利しょうりした。日本にっぽんは2回戦かいせんではイタリアと対戦たいせんした。名将めいしょうヴィットリオ・ポッツォ監督かんとく率ひきいるイタリアは1934年ねんと38年ねんのワールドカップで優勝ゆうしょうし、若手わかて主体しゅたいで参加さんかしたベルリンオリンピックでも金きんメダルを獲得かくとくした世界せかい最強さいきょうチーム。日本にっぽんは後半こうはん30分ふんまで3失点しってんと粘ねばったが、最後さいごはスウェーデンの疲つかれもあって0対たい8と大敗たいはいを喫きっした。

1940年ねんのオリンピックは東京とうきょうでの開催かいさいが決きまっていた。ベルリンで世界せかいを相手あいてに善戦ぜんせんした日本にっぽん代表だいひょうは1938年ねんのワールドカップにも初はじめてエントリーしており、東京とうきょう大会たいかいに向むけて強化きょうかを続つづけられれば日本にっぽんのサッカーは大おおきく成長せいちょうできたはずだ。だが、1937年ねんに始はじまった日にち中ちゅう戦争せんそうが激化げきかしたことでワールドカップ予選よせんは棄権きけんせざるをえず、東京とうきょうオリンピックも返上へんじょうすることとなった。

その後ご、戦争せんそうはさらに拡大かくだい。1941年ねんには太平洋戦争たいへいようせんそうも勃発ぼっぱつする。サッカーの強化きょうかは滞とどこおり、スウェーデン戦せんでゴールを決きめた右近うこんや松永まつながなど多おおくの名めい選手せんしゅも戦争せんそうの犠牲ぎせい者しゃとなった。
1945年ねんに第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんが終おわると翌よく1946年ねんには全日本ぜんにほん選手権せんしゅけんも再開さいかいされ、また1951年ねんにはインドで開ひらかれた第だい1回かいアジア大会たいかいにも日本にっぽん代表だいひょうが出場しゅつじょうして銅どうメダルを獲得かくとくしている。そして、1954年ねんには韓国かんこくとの間あいだでスイス・ワールドカップ予選よせんが行おこなわれた。初はじめての日にち韓かん戦せんだった。日本にっぽん代表だいひょう選手せんしゅの多おおくは戦前せんぜんから活躍かつやくしていた選手せんしゅだったが、1対たい5で敗やぶれた第だい1戦せんで先制せんせいゴールを決きめたのは、後のちに日本にっぽんサッカーのリーダーとして長ながく活躍かつやくすることになる当時とうじ23歳さいの長沼ながぬま健けんだった。日本にっぽんサッカーは新あたらしい時代じだいを迎むかえようとしていた。