先進せんしん諸国しょこくで高齢こうれい化かが進すすむなか、クルマはどう変かわるのか？

ピンチは日本にっぽんだけじゃない！

私事しじで恐縮きょうしゅくだが、還暦かんれきを過すぎた頃ころから、自みずからの運転うんてん能力のうりょくへの不安ふあんが高たかまっている。カーマニアの常つねで昔むかしは運転うんてんに自信満々じしんまんまんだったが、もう自分じぶんで自分じぶんが信用しんようできない！ もちろんペダル踏ふみ間違まちがえ事故じこだってひとごとじゃない！

近年きんねん、いわゆる自動じどうブレーキ（衝突しょうとつ被害ひがい軽減けいげんブレーキ）系けいの安全あんぜん装置そうちはアタリマエのものになった。2021年ねん11月がつ以降いこうに登場とうじょうした新型しんがた車しゃには、自動じどうブレーキの装備そうびが義務ぎむづけられており、2025年ねん12月からは、既存きそんの販売はんばい車種しゃしゅにも義務ぎむ化かされる。高齢こうれい者しゃにとってはある意味いみ追おい風かぜで、大変たいへんありがたい。

ただし自動じどうブレーキでも、「ペダル踏ふみ間違まちがい抑制よくせい装置そうち」は、今いまのところ義務ぎむ化かの対象たいしょう外がい。国産こくさん車しゃに関かんしてはすでに9割わりのモデルに装備そうびされているが、輸入ゆにゅう車しゃとなるとサッパリだ。メルセデス・ベンツとBMW（アルピナ含ふくむ）だけは、ほぼすべての現行げんこうモデルに装備そうびされているが、その他たのブランドには付ついていない。輸入ゆにゅう車しゃファンとしては、座視ざしできない事実じじつである。

そもそも欧米おうべい人じんは「自分じぶんのことは自分じぶんで決きめる」「人ひとに指図さしずされるなんてありえない」という考かんがえが強つよい。ペダル踏ふみ間違まちがい抑制よくせい装置そうちは、ドライバーのアクセル操作そうさを制限せいげんするもの。トム・クルーズ演えんじる『ミッション：インポッシブル』のイーサン・ハントなら、断固だんこ拒絶きょぜつするだろう。

私わたしはトム・クルーズと同おない年どしだけど、トム・クルーズじゃない。運転うんてん能力のうりょくが衰おとろえているんです！ このままじゃ輸入ゆにゅう車しゃに乗のれなくなってしまいます！

そんな声こえが欧州おうしゅうにも届とどいたのか、国連こくれん欧州おうしゅう経済けいざい委員いいん会かいが、ペダル踏ふみ間違まちがい抑制よくせい装置そうちに関かんする新あらたな基準きじゅんを策定さくていした。同どう委員いいん会かいは、「踏ふみ間違まちがいによる事故じこと年齢ねんれいに相関そうかん関係かんけいがみられる」と指摘してきし、その例れいとして、日本にっぽんでは高齢こうれいドライバーが踏ふみ間違まちがいをする確かく率りつが他たの世代せだいと比くらべて8倍ばいにもなっていることを挙あげている。実じつは今回こんかいの基準きじゅんの策定さくていに関かんしては、日本にっぽんが提案ていあんを行おこなったのである。たまにはいい仕事しごとするじゃないかニッポン政府せいふ！

トヨタの場合ばあい、障害しょうがい物ぶつを認識にんしきして衝突しょうとつ被害ひがいの軽減けいげんに寄与きよする「インテリジェントクリアランスソナー」を2012年ねんから新車しんしゃに導入どうにゅうし、2018年ねんには後こう付つけの「踏ふみ間違まちがい加速かそく抑制よくせいシステム」も発売はつばい。2020年ねん7月がつからは、「障害しょうがい物ぶつがない状況じょうきょうでのペダル踏ふみ間違まちがい事故じこの抑止よくし・被害ひがい軽減けいげん」を掲かかげ「急きゅうアクセル時じ加速かそく抑制よくせい」のシステムも販売はんばいしている（写真しゃしんは、これら後ご付つけシステムを紹介しょうかいするトヨタのオフィシャルサイトのイメージ）。

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後こう付つけできるトヨタの「踏ふみ間違まちがい加速かそく抑制よくせいシステム」は、低速ていそく走行そうこう時じの急きゅう加速かそく回避かいひまでサポートできるか否ひかで2タイプ用意よういされ、いずれかのシステムを装着そうちゃくできる車種しゃしゅは、2024年ねん7月がつ現在げんざいで17車種しゃしゅにおよぶ。

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ペダル踏ふみ間違まちがい時じ加速かそく抑制よくせいシステムを採用さいようしている輸入ゆにゅうブランドはどうかといえば、メルセデスかBMW、アルピナくらいのもの。その装着そうちゃく状じょう況きょうについては、独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん 自動車じどうしゃ事故じこ対策たいさく機構きこうがブランド・車種しゃしゅごとの資料しりょう（一覧いちらん表ひょう）を公表こうひょうしている。

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安全あんぜんあっての「運転うんてんの自由じゆう」

新あらたな基準きじゅんは2024年ねん11月に正式せいしきに採択さいたくされる見込みこみで、2025年ねん6月がつ以降いこう、主おもに欧州おうしゅう諸国しょこく（≒日本にっぽんにおける輸入ゆにゅう車しゃの大だい部分ぶぶん）で、基準きじゅんに基もとづいた国内こくない法ほうが施行しこうされ、導入どうにゅうすることが義務ぎむづけられる見込みこみだ。具体ぐたい的てきには、障害しょうがい物ぶつの1m手前てまえと1.5m手前てまえで停車ていしゃした状態じょうたいから、アクセルをいっぱいに踏ふみ込こんだ場合ばあいを想定そうていしている。

日本にっぽんの国交こっこう省しょうは現在げんざい、「ペダル踏ふみ間違まちがい急きゅう発進はっしん抑制よくせい装置そうち」の認定にんてい制度せいどを設もうけており、クルマの前後ぜんごに設置せっちされたカメラやソナーで障害しょうがい物ぶつを検知けんちし、その結果けっか、衝突しょうとつしない、もしくは衝突しょうとつした場合ばあいでも8km/hを超こえず、通常つうじょうより30％以上いじょう速度そくどが低下ていかしていることを要件ようけんとしている。

ただしこれは最低限さいていげんのもの。国産こくさんメーカーの多おおくは、もっと進すすんだ装置そうちを開発かいはつしている。

例たとえば「ホンダセンシング」のオプション装備そうび「急きゅうアクセル抑制よくせい機能きのう」（高齢こうれい者しゃのスマートキーを販売はんばい店てんで有償ゆうしょう登録とうろくすることで使用しよう可能かのう）は、駐車ちゅうしゃ場じょうでゆっくり進すすみながら駐車ちゅうしゃ位置いちを探さがしているとき、ブレーキを踏ふむつもりでアクセルを踏ふんでしまっても作動さどうする。障害しょうがい物ぶつが近ちかくになくても、30km/h以下いかで走はしっている時ときにいきなりアクセルを全開ぜんかいにすると、加速かそくが抑制よくせいされるのだ（トヨタやマツダ、日産にっさんなどもほぼ同どう内容ないようの装備そうびをオプション設定せってい）。こんなのが付ついてちゃイーサン・ハントの任務にんむは遂行すいこうできないが、一般人いっぱんじんにはありがたい。

国土こくど交通省こうつうしょうは、2025年ねん6月がつの国連こくれん基準きじゅん採択さいたくに合あわせて国内こくない基準きじゅんを整備せいびし、新車しんしゃへの導入どうにゅうを義務ぎむづける方針ほうしんだ。輸入ゆにゅう車しゃもいずれ義務ぎむになる。

個人こじん的てきには完全かんぜん自動じどう運転うんてんよりも、「ほぼぶつからないクルマ」をなるはやで実現じつげんしてほしいと願ねがっている。今いまはまだアクセル操作そうさに関かんしては、おおむねドライバーの意思いしが優先ゆうせんされているが、そんな信用しんようできないモンは無視むしし、ぶつかりそうだとクルマが判断はんだんすればガンガン減速げんそくしてもらいたい。それならいますぐにもできるはず。移動いどうの自由じゆうも運転うんてんするヨロコビも確保かくほできて一いち石せき三さん鳥ちょうだ。

イーサン・ハントは、ちょっと古ふるいクルマを選えらべばいい。『ミッション：インポッシブル』シリーズのカーチェイスが、全部ぜんぶネオクラシックカーになってもオッケーです！

（文ぶん＝清水しみず草くさ一いち／編集へんしゅう＝関せき 顕あらわ也）

ホンダでは2024年ねん7月がつの時点じてんで新車しんしゃ9モデルに「急きゅうアクセル抑制よくせい機能きのう」を搭載とうさいしている。システムとしては工場こうじょう出荷しゅっか時じはオフの状態じょうたいで、別途べっと、販売はんばい会社かいしゃによるセッティング作業さぎょうが必要ひつようとのこと。

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「急きゅうアクセル抑制よくせい機能きのう」は、重量じゅうりょう物ぶつを積つんで車両しゃりょうが傾かたむいているときや、段差だんさのある路面ろめん・坂道さかみちの走行そうこう時じ、スリップを伴ともなう雪ゆき道どうの走行そうこう時じには作動さどうしないことがある（写真しゃしんは、その注意ちゅういを呼よびかけるホンダのウェブサイトのイメージ）。

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