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ChatGPTなどの対話型AI(人工知能)、Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)やMidjourney(ミッドジャーニー)のような画像生成AIを、ビジネスで利用しようという機運が高まってきた。他業種に比べて対応が遅れているとされる建設関連企業は、生成AIの業務利用についてどのように考えているのか。主要企業にアンケートを実施した。
調査対象は計55社。建設会社は建築売上高上位20社、住宅会社は販売戸数が多い15社、建築設計事務所は設計・監理業務売上高上位20社を対象とした。各社に2023年5月12日時点の状況について尋ね、同年5月25日までに計25社から回答を得た。回答企業の内訳は建設会社が11社、住宅会社が6社、設計事務所が8社だ。
最初の質問は、生成AIの業務利用を従業員に認めているかどうか。回答企業の24%が「認めている」、12%が「対象者や業務内容を限定して認めている」とした。合計すると回答企業の約3分の1に当たる。一方、「禁止している」と回答したのは16%だった。最も多かったのは「特に方針を示していない」の48%だ。
大手ゼネコンでも対応は分かれている。例えば、大成建設や大林組、竹中工務店は利用を認める一方、鹿島は禁止している。清水建設は「特に方針を示していない」と回答した。
Q 「生成AI」の業務利用を従業員に認めているか?
回答社数は25社。内訳は建設会社が11社、住宅会社が6社、設計事務所が8社(出所:日経クロステック)
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業務利用に関するルールや指針の作成状況はどうか。「作成済み」が21%、「今後作成する予定」が67%で、回答企業の9割弱が対応を検討していることが分かった。「作成済み」と回答したのは、大林組と鹿島、大成建設、竹中工務店、旭化成ホームズ(東京・千代田)の5社だ。
Q 「生成AI」の業務利用に関するルールや指針を作成しているか?
回答社数は24社。内訳は建設会社が11社、住宅会社が5社、設計事務所が8社(出所:日経クロステック)
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具体的な活用事例はあまりないが、大成建設は「米MicrosoftのAzure OpenAI Serviceを利用した社内版ChatGPTの導入準備を進めている」とした。長谷工コーポレーションは「23年度中には従業員が活用できる環境をつくりたい」、奥村組は「業務利用に向けて、現在試行中」としている。石本建築事務所(東京・千代田)は「プロジェクト初期段階のブレストで活用している」などとした。
画像生成AIについては、大林組が22年3月に建築設計の初期段階でスケッチや3Dモデルから建物の外観デザインを生成する「AiCorb(アイコルブ)」を米SRI Internationalと共同で開発したと発表している。安井建築設計事務所(大阪市)は「業務での直接的な活用事例はないが、数年前から社内で建物内外観の生成などに関する研究・試行を行っている」とする。