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ALS:なおること/…
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■なおることについての記述きじゅつ
■「リルテック」
■ラジカット
遺伝子いでんし医療いりょう/ES細胞さいぼう/iPS細胞さいぼう
民間みんかん療法りょうほう
ALSとHGF べつぺーじ

新着しんちゃく

安孝やすたかよし(アン・ヒョスク) 2014/11/20 難病なんびょう障害しょうがい共存きょうぞん障害しょうがいがく国際こくさいセミナー 2014,於:イルムセンター(韓国かんこく・ソウル

■なおることについての記述きじゅつ

◆1973 「新聞しんぶんで、よんじゅうはち年度ねんど難病なんびょう対策たいさくとして、わたしおな病気びょうきめいが、特定とくてい疾患しっかん追加ついかされる記事きじんで、ほっとすると同時どうじに、これから研究けんきゅうはじまるのでは、自分じぶん病気びょうきをなおすには、まにあいそうもないようながしてきた。
 いち世紀せいきまえからあばれまわっている病気びょうきが、厚生省こうせいしょうのいうねんをめどに対策たいさくこうじようとしてみても、おいそれとはその処方しょほうさぐれるとはおもわれない。かりに、ねん治療ちりょうほうつかったとしても、この病気びょうき平均へいきん寿命じゅみょうと、わたし自身じしん病気びょうき進行しんこう速度そくどかんがえてみると、とてもまにないそうにもない。」(川合かわい[1987:154])

◆1975ねんごろ 「日本にっぽんでALS治療ちりょう多岐たきにわたる薬剤やくざいこころみられたことが…厚生省こうせいしょう研究けんきゅうはん報告ほうこくにあります。副腎ふくじん皮質ひしつホルモン、タンパク同化どうかホルモン、グルカゴンATP+ニコチンさん、L−DOPA、ペニシリン、グアニジン、CDP−コリン、こうコリンエステレースさん成長せいちょうホルモン、膵エキス、こうあつ酸素さんそこう結核けっかくやく塩酸えんさんメクロフェキセート、金属きんぞくキレー(p.7)トざいなどです。/しかし、いずれも少数しょうすう患者かんじゃさんを対象たいしょうとし治療ちりょう経験けいけんれい報告ほうこくで、ALSの進行しんこう抑制よくせいしたり、長期ちょうき改善かいぜんさせたりできるものではありませんでした。」(pp.7-8)
 中野なかの 亮一りょういちつじ しょう 20001001 「とおくなるような治療ちりょう研究けんきゅうかさね」,『難病なんびょう在宅ざいたくケア』06-07(2000-10):07-10

◆1993ねん 「せきれてワーッとすすはじめているようながしますので、ALSの治療ちりょうかんしてかなり確実かくじつなことがわかるのも、あまりとお将来しょうらいのことではないようながします。」
 「アメリカにおけるALSの治療ちりょう研究けんきゅう」 三本みもと(みつもと)ひろし『JALSA』028ごう(1993/08/31)p.21

◆1993ねん 「ほんさんのかかっているすじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょうもこの難病なんびょうひとつで、現在げんざいなお患者かんじゃさんの期待きたい鋭意えいい究明きゅうめい努力どりょくつづけられ、いまいち解決かいけつという段階だんかいている。」(ほん[1993:4]) ほんさんの戦友せんゆうとして 国立こくりつ療養りょうようしょ中部ちゅうぶ病院びょういん院長いんちょうぜん鹿児島大学かごしまだいがく学長がくちょう) 井形いがた昭弘あきひろpp.3-7 執筆しっぴついちきゅうきゅうさんねんがつ

◆1994ねん 「柳沢やなぎさわ先生せんせいのご講演こうえんにもありますように、いま、ALSの研究けんきゅう世界せかいてき規模きぼすすめられていて、治験ちけんやく次々つぎつぎためされつつあります。この病気びょうき原因げんいん究明きゅうめいされるのもけっしてとおくはないとしんじて、頑張がんばってゆこうではありませんか。」(編集へんしゅう後記こうき
 『JALSA』032ごう(1994/07/30)

日本にっぽんALS協会きょうかい基金ききんおおくは原因げんいん究明きゅうめいとそして治療ちりょうほう開発かいはつのための研究けんきゅうたいして…されている。(かく年度ねんど件数けんすう金額きんがく。)

◆「特定とくてい疾患しっかん調査ちょうさ研究けんきゅう事業じぎょうを22ねんぶりに見直みなおし」
 『難病なんびょう在宅ざいたくケア』02-01(1996-04):21

立岩たていわ しん也 20041115 『ALS――不動ふどう身体しんたいいきする機械きかい医学書院いがくしょいん,449p. ISBN:4260333771 2940 [amazon][kinokuniya] ※

だい2しょう まだなおらないこと
1 いまのところなおらない
 これからていく告知こくちをめぐる困難こんなんにしても、また呼吸こきゅうけるとかけないといったことも、安楽あんらくにしても、みなALSがいまのところなおらない病気びょうきであることによっているとはえる。だからなおるようになればよい。それはそのとおりだ。ALSが治療ちりょう可能かのうになることへの期待きたいつよく、その期待きたいおおかたられる。ときには自分じぶんあたらしいくすり治験ちけんけさせてもらえない苛立いらだちがかたられる。
 わたしもなおす方法ほうほうあらわれるとおもう。近代きんだい医学いがく医療いりょう特定とくてい病因びょういんろん前提ぜんていにするとされる。これは特定とくていされないやまい場合ばあいには効力こうりょくよわいということだが、特定とくていされれば一定いっていちから発揮はっきしうるということでもある。なぜALSがこるのか、その原因げんいんはわかっていない。しかしなにこっているかははっきりしている。がわさく(そくさく)とは脊髄せきずいなかきりからだで、大脳皮質だいのうひしつから手足てあし筋肉きんにくうごかす命令めいれいとお通路つうろである。このがわさくずいさや(ずいしょう)の消失しょうしつだつずいこり、脊髄せきずい運動うんどう神経しんけいぜんかく細胞さいぼう消失しょうしつしてしまう。そして筋肉きんにく萎縮いしゅくしていく。
 こっていることは特定とくていされているのだから、やがてすくなくとも直接ちょくせつ原因げんいん症状しょうじょう発生はっせいじょはつきとめられるだろう。その特定とくていによって治療ちりょうほうつかるだろう。あるいは原因げんいん解明かいめいさきんじ、様々さまざま処方しょほうのいずれかが、ときにそのせいはよくわからないまま有効ゆうこうであることがあきらかになるだろう。
 しかしこれまでのところ治療ちりょうほうはなく、いまはなおらない。様々さまざまやまいがそうであったように、あるように、これまでも様々さまざま治療ちりょうほうこころみられてきた。また研究けんきゅうがなされてきた。
【73】 いちきゅうななさんねん。《新聞しんぶんで、よんはち年度ねんど難病なんびょう対策たいさくとして、わたしおな病気びょうきめいが、特定とくてい疾患しっかん追加ついかされる記事きじんで、ほっとすると同時どうじに、これから研究けんきゅうはじまるのでは、自分じぶん病気びょうきをなおすには、まにあいそうもないようながしてきた。/いち世紀せいきまえからあばれまわっている病気びょうきが、厚生省こうせいしょうのいうねんをめどに対策たいさくこうじようとしてみても、おいそれとはその処方しょほうさぐれるとはおもわれない。かりに、ねん治療ちりょうほうつかったとしても、この病気びょうき平均へいきん寿命じゅみょうと、わたし自身じしん病気びょうき進行しんこう速度そくどかんがえてみると、とてもまにないそうにもない。》(川合かわい[1987:154]。初版しょはん川合かわい[1975])
【74】 ななねんごろ。《日本にっぽんでALS治療ちりょう多岐たきにわたる薬剤やくざいこころみられたことが[…]厚生省こうせいしょう研究けんきゅうはん報告ほうこくにあります。副腎ふくじん皮質ひしつホルモン、タンパク同化どうかホルモン、グルカゴンATP+ニコチンさん、L-DOPA、ペニシリン、グアニジン、CDP-コリン、こうコリンエステレースさん成長せいちょうホルモン、膵エキス、こうあつ酸素さんそこう結核けっかくやく塩酸えんさんメクロフェキセート、金属きんぞくキレートざいなどです。/しかし、いずれも少数しょうすう患者かんじゃさんを対象たいしょうとした治療ちりょう経験けいけんれい報告ほうこくで、ALSの進行しんこう抑制よくせいしたり、長期ちょうき改善かいぜんさせたりできるものではありませんでした。》(中野なかのつじ[2000:7-8])
 ALSのひとあつまりでは医師いし講演こうえんばれ、どこまで解明かいめいすすんだといったはなしをすることがおおい。
【75】 きゅうさんねん。《せきれてワーッとすすはじめているようながしますので、ALSの治療ちりょうかんしてかなり確実かくじつなことがわかるのも、あまりとお将来しょうらいのことではないようながします。》(さんほん[1993:21])
【76】 きゅうさんねん。《ほんさんのかかっているすじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょうもこの難病なんびょうひとつで、現在げんざいなお患者かんじゃさんの期待きたい鋭意えいい究明きゅうめい努力どりょくつづけられ、いまいち解決かいけつという段階だんかいている。》(井形いがた[1993:4]。井形いがたほん[42]の入院にゅういんさき国立こくりつ療養りょうようしょ中部ちゅうぶ病院びょういん院長いんちょう
【77】 きゅうよんねん。《柳沢やなぎさわ先生せんせいのご講演こうえんにもありますように、いま、ALSの研究けんきゅう世界せかいてき規模きぼすすめられていて、治験ちけんやく次々つぎつぎためされつつあります。この病気びょうき原因げんいん究明きゅうめいされるのもけっしてとおくはないとしんじて、頑張がんばってゆこうではありませんか。》(『JALSA』32の編集へんしゅう後記こうき講演こうえん柳沢やなぎさわ[1994]、[114]に一部いちぶ引用いんよう
【78】 きゅうねん。《すべてのめんにおいていちねんまえとはあきらかにこの方面ほうめん進歩しんぽしているとおもいます。また、今後こんごわずかのあいだおどろくような、うれしい局面きょくめん展開てんかいするかんがしています。》(いとさん[1995:13]。日本にっぽんALS協会きょうかい総会そうかい記念きねん講演こうえん結語けつご)」(立岩たていわ[2004])

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■「リルテック」

『JALSA』035ごう(1995/00/00)
 欧米おうべいでのリルゾールの治験ちけん結果けっか

『JALSA』042ごう(1997/12/22)
□ 「小諸こもろ介護かいご研修けんしゅう合宿がっしゅく 於 長野ながの佐久さくホテル・ゴールデンセンチュリー 平成へいせいきゅうねんろくがつはちきゅうにち
質疑しつぎ応答おうとう
二日ふつか懇談こんだんかい」より(前日ぜんじつ配布はいふ質問しつもんひょうをもとに)
だい一部いちぶ 
いち治療ちりょうやくについて
Q。リルゾールが韓国かんこくから入手にゅうしゅできるとくが、それについてのかんがえをきたい。
A。協会きょうかいとして、来年度らいねんどには日本にっぽんでも認可にんかされるよう、厚生省こうせいしょう要請ようせいしていく。」(p.28)

◆1998/12/02 中央ちゅうおう薬事やくじ審議しんぎかい常任じょうにん部会ぶかい議事ぎじろく
 http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s9812/txt/s1202-3_15.txt
 実名じつめいかくされている委員いいん冒頭ぼうとうのようにう。「日本にっぽんでの症例しょうれいすうは、患者かんじゃさんのかいそのはなしではおそらく年間ねんかん2000〜3000にんぐらいのあたらしい患者かんじゃですが、実際じっさいにいったん発症はっしょうすると非常ひじょうがよくなくて、大体だいたいいちねんからいちねんはんくらいでくなる非常ひじょう進行しんこうせい病気びょうきでありまして、やはりそれにたいする治療ちりょう必要ひつようであるが、くすりがないという悲惨ひさん状況じょうきょうであろうとおもわれます。」
 「結論けつろんてきにはわたし賛成さんせいです。ただ、いまはALSの場合ばあいだからあま有効ゆうこうせいがはっきりしないけれども、ほかにくすりがないからやむを承認しょうにんしてしまおうということだとおもいます。」

『JALSA』045ごう(1998/12/10)
 「リルゾールの輸入ゆにゅうようや承認しょうにん
 12月2にち厚生省こうせいしょう中央ちゅうおう薬事やくじ審議しんぎかい常任じょうにん部会ぶかいは、ALSの医療いりょう機関きかんよう治療ちりょうやくとして、「リルゾール」(アイルランドで製造せいぞう)の輸入ゆにゅう承認しょうにんしました。
 欧米おうべいでは、1996ねんから発売はつばい使用しようされているこの「リルゾール」の薬効やっこうは、場合ばあいにより、ALSの進行しんこうやく3かげつ抑制よくせいする効果こうかがある程度ていどといわれている一方いっぽうかん障害しょうがいといった副作用ふくさよう問題もんだいもあり、とうてい満足まんぞくするわけにはまいりませんが、なにはともあれはつ治療ちりょうやくとして承認しょうにんされたことはよろこばしいかぎりです。
 いつから、どのようにして、利用りようできるかですが、これから薬価やっかとう審議しんぎされるため、まだあきらかではありません(順調じゅんちょう手続てつづきがすすめば、明春みょうしゅんからとの観測かんそく情報じょうほう)。
事務じむきょくとしては、げん個人こじん輸入ゆにゅう多額たがくとうじているほうすくなくないことでもあり、厚生省こうせいしょう連絡れんらくみつにして、詳細しょうさい確報かくほう把握はあくつとめる所存しょぞんです。」(p19)

佐藤さとう たけし国立こくりつ精神せいしん神経しんけいセンター国府台こうのだい病院びょういん名誉めいよ院長いんちょう) 1999/03/09
 「ALSの治療ちりょうやく:リルテックについて」
 『JALSA』(1999/04/08)046ごう:04
 http://www.als.gr.jp/public/pub04/main.html
 「すじ委縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう(ALS)の治療ちりょう薬剤やくざいとして、今回こんかいリルテックじょう50(一般いっぱんめい:リルゾール、販売はんばい会社かいしゃ:ローヌ プーラン ローラー)が保険ほけんやくとしてみとめられ、3がつまつには発売はつばいされる見込みこみとの発表はっぴょうがありました。以前いぜんから患者かんじゃさんのわせがおおく、期待きたいしておられたほうもおられるとおもいますので、文献ぶんけんとメーカーから資料しりょうをもとに、リルテックについて説明せつめいいたします。[…]
 進行しんこうまったり、筋力きんりょくもとのように回復かいふくすることはありません。したがって、このくすり過度かど期待きたいせることはできません。ALSでは、有効ゆうこう薬剤やくざいいまだなく、欧米おうべいでリルテックが認可にんかされているのなら、効果こうかわずかでも服用ふくようしたいと希望きぼうする患者かんじゃさんがおおいときます。発売はつばい調査ちょうさなかで、日本にっぽんにおけるこのくすり有効ゆうこうせい確認かくにんする、という条件じょうけんで、厚生省こうせいしょう認可にんかあたえたとのことです。」(佐藤さとう[1999])

後藤ごとう忠治ただはる
 http://www.isn.ne.jp/~tm-gt/toubyou/pasokon.htm
 パソコンと呼吸こきゅう・・・・1999ねん平成へいせい11ねん
 「川島かわしま先生せんせいより[リルテック]の個人こじん輸入ゆにゅう説明せつめいける。「過剰かじょう期待きたいしないように」との説明せつめいもあったがその手続てつづきをおねがいする。ほんのすこしでも可能かのうせいがあればためしてみたい。よんがつから保険ほけん服用ふくようできるとのことだがそれまでまてない。
 後日ごじつ手続てつづきに時間じかんがかかりさんがつにずれむとの連絡れんらくはいりそれならばよんがつまでったほうがいいということになり、個人こじん輸入ゆにゅう見送みおくことにする。
 よんがつちにった[リルテック]。過剰かじょう期待きたいしないようにとの説明せつめいであったがどうしても期待きたいしてしまう。副作用ふくさよう説明せつめいもあったがそんなこと眼中がんちゅうい。ただひたすらこといのるだけです。」

『JALSA』047ごう(1999/06/12)

□「平成へいせい11年度ねんど総会そうかいひら
〔…〕
いち松本まつもと会長かいちょう挨拶あいさつ
 […]
 このよんがつからALS治療ちりょうやくとしてリルゾールがみとめられましたが、日本にっぽん治験ちけん成績せいせきからるとあまりかんばしくないようです。それでも特効薬とっこうやくのぞんだ患者かんじゃにとってはひとつの光明こうみょうであります。これをバネに原因げんいん治療ちりょうほう研究けんきゅうのスピード厚生省こうせいしょうにおねがいしなければなりません。
 そして、本当ほんとうにALSがなお特効薬とっこうやく開発かいはつされるまでは、せめて療養りょうよう環境かんきょう整備せいびして、安心あんしんして療養りょうよう生活せいかつおくれるようにと、つようったえつづけたいとおもいます。」
 […]
議事ぎじ
いち平成へいせいじゅう年度ねんど活動かつどう報告ほうこく
〔…〕
つぎ対外たいがいめんでは、@はつのALS薬品やくひんリルテックの輸入ゆにゅう承認しょうにんされ、このよんがつから適合てきごうする患者かんじゃさんに処方しょほうされることとなりました。」(p.7)

日本にっぽん神経しんけい学会がっかい 2002 「ALS治療ちりょうガイドライン」より
 http://www.neurology-jp.org/guideline/ALS/4_10.html

「X.薬物やくぶつ療法りょうほう(リルゾール)

ALSにたいするリルゾール(リルテックR)治療ちりょう報告ほうこく

 ALSにたいするリルゾール治療ちりょう報告ほうこく国内外こくないがいで120以上いじょう論文ろんぶんがある.ALS全体ぜんたいたいする効果こうかについての報告ほうこくのほか,投与とうよりょう効果こうか関係かんけい特定とくてい症状しょうじょうたいする効果こうか副作用ふくさよう患者かんじゃ同意どうい,などについての報告ほうこくがあるが,総説そうせつおおい.

効果こうか

 欧米おうべい施行しこうされた最初さいしょ臨床りんしょう試験しけん(155れい,Bensimon et al. 1994)では,ALS患者かんじゃ生存せいぞん期間きかん延長えんちょうし,とくたまがたでよりあきらかであった.また筋力きんりょく低下ていか進行しんこう速度そくど遅延ちえんしたとの知見ちけんられた.その実施じっしされたよりだい規模きぼ試験しけん(959れい,Lacomblez et al. 1996a)では,たまがた四肢ししがたともに生存せいぞん期間きかん有意ゆうい延長えんちょうみとめられた.ただし徒手としゅ筋力きんりょくやNorris scaleなどの機能きのう評価ひょうかでは増悪ぞうあく速度そくど遅延ちえん確認かくにんできなかった.おな研究けんきゅうグループによるメタアナリシス(Lacomblez et al. 1996b)では投与とうよりょう効果こうか関係かんけい検討けんとうし,いちにちりょう50mgよりも100mg,200mgでより有効ゆうこうであった.生存せいぞんりつが80%,70%,60%になるまでの期間きかんをみると,リルゾール100mg・200mg投与とうよでいずれもやく3ヶ月かげつ延長えんちょうした.おな症例しょうれいもちいたADLに注目ちゅうもくした重症じゅうしょう解析かいせき(Riviere et al. 1998)では,重症じゅうしょうしゃにはあきらかな効果こうかがなかったが,けい症例しょうれいでは重症じゅうしょうへの進行しんこうおくれたという結果けっかられた.
 一方いっぽう日本人にっぽんじん患者かんじゃ対象たいしょうにした臨床りんしょう試験しけん(195れい柳澤やなぎさわ 1997a)がおこなわれたが,生存せいぞん期間きかん全体ぜんたいとしても,また臨床りんしょうがたべつ投与とうよりょうべつ検討けんとうしてもplaceboぐんとのあいだまったはなく,有意ゆうい効果こうかみとめられなかった.欧米おうべい日本にっぽん適当てきとう症例しょうれいのぞいた100mg投与とうよぜん患者かんじゃ対象たいしょうにしてメタアナリシス(828れい柳澤やなぎさわ 1997b)がおこなわれ,生存せいぞん期間きかん有意ゆうい延長えんちょう確認かくにんされた.ただし重症じゅうしょうべつ解析かいせきすると,high riskぐんでのみ生存せいぞん期間きかん延長えんちょう確認かくにんされた.
 いずれの臨床りんしょう試験しけんいち評価ひょうか項目こうもく死亡しぼう気管きかん切開せっかいまでの期間きかんなどであり,実質じっしつてき生存せいぞん期間きかん評価ひょうかされた.試験しけん結果けっかちがいについては,患者かんじゃ重症じゅうしょう評価ひょうか感受性かんじゅせいなどの問題もんだいのほか,治療ちりょう・ケア体制たいせい家族かぞく対応たいおう,などの要素ようそ考慮こうりょれる必要ひつようがある.

副作用ふくさよう

 すべての臨床りんしょう試験しけんつうじて,じゅうあつし副作用ふくさようはみられない.比較的ひかくてき頻度ひんどたかいものとして,悪心あくしん嘔吐おうと下痢げり食欲しょくよく不振ふしんなどの消化しょうか症状しょうじょう眠気ねむけ無力むりょくかん,めまい,錯感覚かんかくなどの神経症しんけいしょうじょう検査けんさではきも機能きのう障害しょうがい(GOT,GPT),貧血ひんけつなどが報告ほうこくされている.臨床りんしょう試験しけん参加さんかした症例しょうれいもっとおおいLacomblez et al.の報告ほうこく(959れい)を下記かきしめすが,その報告ほうこくでもほぼ同様どうよう結果けっかである(柳澤やなぎさわ 1997a,Roch-Torreiles et al. 2000,Pongratz et al. 2000,Scelsa et al. 2000).
 消化しょうか症状しょうじょうはplaceboぐんでもすう%〜10すう%の頻度ひんどでみられたが,50mgではほとん変化へんかがなかった.悪心あくしん嘔吐おうとは100mgでplaceboぐんくらべて増加ぞうか(それぞれやく20%,5%),200mgでもはなかった.食欲しょくよく不振ふしん下痢げりは200mgで増加ぞうかしたが10%未満みまんである.
 神経症しんけいしょうじょうかたぶけねむり,しびれが100mg以上いじょう出現しゅつげんし,200mgではさら増加ぞうかしたが,200mgでもかず%以下いかであった.めまいは200mgで10すう%みられた.
 検査けんさ所見しょけんではGPT増加ぞうか正常せいじょう上限じょうげんの5ばい以上いじょう)は50mgで5%,100mg 7%,200mg 12%と投与とうよりょうとも増加ぞうかした.GOTにはあきらかな増加ぞうか正常せいじょう上限じょうげんの3〜5ばい以上いじょう)はられなかった.貧血ひんけつ(Hbで10g/dl以下いか)は50mgで1%以下いか,100mg 3%,200mg 6%とやはり投与とうよりょうとも増加ぞうかした.

患者かんじゃ同意どうい

 リルゾール治療ちりょうについての患者かんじゃ同意どうい問題もんだい報告ほうこくされている(46れい,Rudnicki 1997).リルゾール治療ちりょうについて,寿命じゅみょう延長えんちょう効果こうか平均へいきん3ヵ月かげつであること,筋力きんりょく呼吸こきゅうなどの進行しんこうわらないこと,さらに必要ひつよう経費けいひ副作用ふくさようについて説明せつめいしたあと,治療ちりょう同意どういするかどうかが調査ちょうさされた.その結果けっか治療ちりょう同意どういしたひと17れい(37%),同意どういしなかったひと29れい(63%)であった.同意どういしなかったひとだいいち理由りゆう効果こうかとぼしいことだった.
 調査ちょうさ米国べいこくおこなわれたもので,病名びょうめい告知こくちについての日米にちべい考慮こうりょする必要ひつようがあるが,リルゾールの効果こうかがかなり限定げんていされたものであること,じゅうとくとはいえないが副作用ふくさようこる可能かのうせいがあることから,リルゾール治療ちりょうについての患者かんじゃ同意どうい必要ひつようであろう.

リルゾール治療ちりょうのガイドライン

治療ちりょう妥当だとうせい
 治療ちりょうすることがのぞましい.
 ただし効果こうか顕著けんちょではない.そのむねつたえたうえでの患者かんじゃ同意どうい必要ひつよう
 努力どりょくせい肺活量はいかつりょうが60%以下いか患者かんじゃでは効果こうか期待きたいできないので投与とうよしない(厚生こうせい労働省ろうどうしょう).
標準ひょうじゅん投与とうよりょう
 100mg/最初さいしょは50mg/にちからはじめることがのぞましい.
 200mg/にち効果こうかは100mg/にちとほぼ同様どうようであり,副作用ふくさようは200mgでえる.
禁忌きんき
 リルゾールにたいするアレルギーをゆうする患者かんじゃ
副作用ふくさよう
 じゅうあつし副作用ふくさようなし.
 頻度ひんど比較的ひかくてきたかいもの
  消化しょうか症状しょうじょう:嘔気,嘔吐おうと下痢げり食欲しょくよく不振ふしん
  神経症しんけいしょうじょう無力むりょくかん,めまい,錯感覚かんかく
  検査けんさ異常いじょうかん機能きのう障害しょうがい(GOT,GPT),貧血ひんけつこうちゅうだま減少げんしょう
使用しようじょう注意ちゅうい
 治療ちりょうまえおよび治療ちりょうちゅう定期ていきてきさんきも機能きのう検査けんさおこなう.
 かん障害しょうがいこし薬剤やくざい併用へいよう注意ちゅういする.
 きもじん機能きのう障害しょうがい感染かんせんしょう患者かんじゃ慎重しんちょう投与とうよ必要ひつよう
文献ぶんけん

Bensimon G, Lacomblez L, Meininger V, et al.: A controlled trial of riluzole in amyotrophic lateral sclerosis. N Engl J Med. 1994; 330: 585-591 (Ib, 155れい)
Galer BS, Twilling LL, Harle J, et al.: Lack of efficacy of riluzole in the treatment of peripheral neuropathic pain conditions. Neurology. 2000; 55: 971-975 (Ib, 43れい)
Lacomblez L, Bensimon G, Leigh PN, et al.: Dose-ranging study of riluzole in amyotrophic lateral sclerosis. Lancet. 1996a; 347: 1425-1431 (Ib, 959れい)
Lacomblez L, Bensimon G, Leigh PN, et al.: A confirmatory dose-ranging study of riluzole in ALS. ALS/Riluzole Study Group-II. Neurology. 1996b; 47: S42-50 (Ia, 959れい)
Pongratz D, Neundorfer B, Fischer W: German open label trial of riluzole 50mg b.i.d. in treatment of amyotrophic lateral sclerosis (ALS). J Neurol Sci 2000; 180: 82-85 (919れい)
Riviere M, Meininger V, Zeisser P, et al.: An analysis of extended survival in patients with amyotrophic lateral sclerosis treated with riluzole. Arch Neurol 1998; 55: 526-528 (Ia, 959れい)
Roch-Torreiles I, Camu W, Hilaire-Buys D: Adverse effects of riluzole (Rilutek) in the treatment of amyotrophic lateral sclerosis. Therapie 2000; 55: 303-312 (153れい)
Rudnicki: Factors influencing a patient's decision regarding riluzole: an early experience. J Neurol Sci 1997; 152: S80-81 (46れい)
Scelsa SN, Khan I: Blood pressure elevations in riluzole-treated patients with amyotrophic lateral sclerosis. Eur Neurol 2000; 43: 224-227 (35れい)
柳沢やなぎさわ信夫しのぶ田代たしろ邦雄くにお東儀とうき英夫ひでお日本にっぽんにおけるすじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう患者かんじゃたいするRiluzoleのじゅうめくらけん比較ひかく試験しけん医学いがくのあゆみ 1997a;182:851-866(Ib,195れい
柳沢やなぎさわ信夫しのぶ田代たしろ邦雄くにお東儀とうき英夫ひでおすじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょうたいするRiluzoleのメタアナリシス.医学いがくのあゆみ 1997b;182:867-878(Ia,828れい)」

◆2004/09 ALS治療ちりょうやく/リルテック製品せいひん情報じょうほう
http://www.als.gr.jp/staff/RILU/rilu_02.html
Live Today For Tomorrow ALSすじ委縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう疾患しっかん治療ちりょうかんする情報じょうほうプログラムより

開発かいはつ経緯けいい
リルテック(一般いっぱんめい:リルゾール)は,フランスのローヌ・プーラン ローラーしゃげんサノフィ・アベンティスしゃ)において開発かいはつされた,神経しんけい細胞さいぼう保護ほご作用さようゆうするベンゾチアゾールけい合成ごうせい化合かごうぶつであり,グルタミン酸ぐるたみんさん作動さどうせい神経しんけいにおいてグルタミン酸ぐるたみんさん伝達でんたつ抑制よくせいします.
リルテックの薬理やくりがくてき作用さようは1980年代ねんだい初頭しょとうから検討けんとうされ,海外かいがいでのだいしょう,また,すじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう(ALS:amyotrophic lateral sclerosis)を対象たいしょうとしただいIIしょうおよだいIIIしょう試験しけん成績せいせき評価ひょうか検討けんとうした結果けっかほんざい有効ゆうこうせい安全あんぜんせいみとめられました.
本邦ほんぽうにおいては1993ねんよりだいしょう引続ひきつづだいIIIしょう試験しけん開始かいしされ,同年どうねん11がつにALSを対象たいしょうとした希少きしょう疾病しっぺい医薬品いやくひん(オーファンドラッグ)の指定していを受 け,1998ねん12月にALSの治療ちりょう,ALSの病勢びょうせい進展しんてん抑制よくせい効能こうのう効果こうかとした輸入ゆにゅう承認しょうにんて,1999ねん3がつよりローヌ・プーラン ローラー株式会社かぶしきがいしゃげんサノフィ・アベンティス株式会社かぶしきがいしゃ)より発売はつばいするにいたりました.ほんざいすで米国べいこくをはじめ世界せかい40ヵ国かこく以上いじょう発売はつばいされています.

立岩たていわ しん也 20041115 『ALS――不動ふどう身体しんたいいきする機械きかい医学書院いがくしょいん,449p. ISBN:4260333771 2940 [amazon][kinokuniya] ※
 「比較的ひかくてきちかいところでは、「リルテック(一般いっぱんめい:リルゾール)」というくすり使つかわれるようになった。ALSでは、神経しんけい伝達でんたつ物質ぶっしつであるグルタミン酸ぐるたみんさん過剰かじょう分泌ぶんぴつ運動うんどう神経しんけい細胞さいぼう変性へんせいこしているとかんがえられるのだが、リルテックはグルタミン酸ぐるたみんさん分泌ぶんぴつおさえる作用さようゆうするくすりで、米国べいこく、フランスとうでALSの治療ちりょうやくとして承認しょうにんされた。初期しょき紹介しょうかいとしてたとえば以下いか
【79】 きゅうよんねんきゅうろくねん論文ろんぶん紹介しょうかいし、《やくさんケ月かげつ延命えんめい効果こうかがあったともえる。この結果けっかが、ただいま現在げんざいALSをわずら患者かんじゃにとって、とても満足まんぞくできるものでないことはうまでもない。しかし、ルー・ゲーリックがいてよんねんにして、はじめてALS患者かんじゃを『治療ちりょう』できるくすり開発かいはつされたという意味いみでは、歴史れきしてき偉大いだいいちえるであろう。/ALSの究極きゅうきょく原因げんいんがわかっていないこともあり、リルゾールがどうして治療ちりょう効果こうかがあるのかということは十分じゅうぶんにはわかっていないが[…]》(西野にしの[1997:11])
 その日本にっぽんでも使用しようみとめられることになった。
【80】 いちきゅうきゅうはちねんいちがつにち中央ちゅうおう薬事やくじ審議しんぎかい常任じょうにん部会ぶかい実名じつめいせられている委員いいん冒頭ぼうとうのようにう。《日本にっぽんでの症例しょうれいすうは、患者かんじゃさんのかいそのはなしではおそらく年間ねんかん〇〇〇〜さん〇〇〇にんぐらいのあたらしい患者かんじゃですが、実際じっさいにいったん発症はっしょうすると非常ひじょうがよくなくて、大体だいたいいちねんからいちねんはんくらいでくなる非常ひじょう進行しんこうせい病気びょうきでありまして、やはりそれにたいする治療ちりょう必要ひつようであるが、くすりがないという悲惨ひさん状況じょうきょうであろうとおもわれます。》(中央ちゅうおう薬事やくじ審議しんぎかい常任じょうにん部会ぶかい[1998])
 毎年まいとし〇〇〇からさん〇〇〇にんおおすぎ、いちねんからいちねんはんみじかすぎる。いま間違まちがいとされていても、かつてはただしいとされていたことがあり、その時点じてんとらえれば間違まちがいとだんずるのがむずかしい場合ばあいときにはある。しかし、みぎあきらかな間違まちがいな部類ぶるいぞくする。
【81】 《ALS(すじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう)というおそろしい病気びょうきがあります。それにかかると、運動うんどう神経しんけい細胞さいぼう萎縮いしゅくして全身ぜんしん不随ふずいとなり、やがて見舞みまわれるという難病なんびょうです。日本にっぽんでもとおざからず流行りゅうこうしそうな兆候ちょうこうがあり、医学いがくかいいそいで対策たいさく研究けんきゅうしているというニュースが最近さいきんテレビで報道ほうどうされました。》(松田まつだ[1997:143]。Schwartz[1996=1997]の「訳者やくしゃあとがき」のし)
 わたしがこれまでんだなかではこの記述きじゅつもっともよく間違まちがっているのだが、それにくらべればたしかに中央ちゅうおう薬事やくじ審議しんぎかい常任じょうにん部会ぶかいでの発言はつげん[80]のほう水準すいじゅんたかいとうべきか、どちらともえないとうべきか、ともかく説明せつめいはなされ、使用しよう承認しょうにんされることにはなる。委員いいん一人ひとりつぎのように発言はつげんする。
【82】 《結論けつろんてきにはわたし賛成さんせいです。ただ、いまはALSの場合ばあいだからあま有効ゆうこうせいがはっきりしないけれども、ほかにくすりがないからやむを承認しょうにんしてしまおうということだとおもいます。》(中央ちゅうおう薬事やくじ審議しんぎかい常任じょうにん部会ぶかい[1998])
 海外かいがい実験じっけんでは部分ぶぶんてき有効ゆうこうせいみとめられたが、国内こくない治験ちけんでは有効ゆうこうせい見出みいだされなかった(関連かんれんした研究けんきゅう結果けっか概要がいよう日本にっぽん神経しんけい学会がっかいの『ALS治療ちりょうガイドライン』(日本にっぽん神経しんけい学会がっかい[2002])に要約ようやくされている)。それほどの効果こうか見込みこめないが、保険ほけんやくとしてみとめられ、いちきゅうきゅうきゅうねんさんがつ発売はつばいになった。
【83】 すぐにこのくすりについて説明せつめいもとめられ、佐藤さとうたけし国立こくりつ精神せいしん神経しんけいセンター国府台こうのだい病院びょういん名誉めいよ院長いんちょう)はALS協会きょうかい機関きかん寄稿きこうする。その説明せつめい自体じたいは、妥当だとうな、穏当おんとうなものである。《進行しんこうまったり、筋力きんりょくもとのように回復かいふくすることはありません。したがって、このくすり過度かど期待きたいせることはできません。ALSでは、有効ゆうこう薬剤やくざいいまだなく、欧米おうべいでリルテックが認可にんかされているのなら、効果こうかわずかでも服用ふくようしたいと希望きぼうする患者かんじゃさんがおおいときます。発売はつばい調査ちょうさなかで、日本にっぽんにおけるこのくすり有効ゆうこうせい確認かくにんする、という条件じょうけんで、厚生省こうせいしょう認可にんかあたえたとのことです。》(佐藤さとう[1999])
 保険ほけんやくみとめられるまえには、いくつかの手続てつづきをんだじょう医師いし個人こじん輸入ゆにゅうするという手段しゅだんがとられた。
【84】 《わたし自身じしん個人こじん輸入ゆにゅう申請しんせいしたALS患者かんじゃさんはめいです。[…]わたしからすすめたことはありません。それはたとえ呼吸こきゅう不全ふぜんおちい時期じき数カ月すうかげつびることが期待きたいできても、それまで毎月まいつきいちまんえんずつの自己じこ負担ふたんになってしまい、それだけのおかねがあればQOLをよくするために、たとえばうごけるうちだったら旅行りょこうしたり、介護かいごじんおおやとって家族かぞく負担ふたんすくなくしたほうにおかねついやすのが有益ゆうえきおもわれるからです。/しかし、どうしてもリルゾールを服用ふくようしたいととおくからたずねてこられるほうがいます。期待きたいされる効果こうかがわずかであること[…]を説明せつめいし[…]》(吉野よしの[1999:10])
【85】 《川島かわしま先生せんせいよりリルテックの個人こじん輸入ゆにゅう説明せつめいける。「過剰かじょう期待きたいしないように」との説明せつめいもあったがその手続てつづきをおねがいする。ほんのすこしでも可能かのうせいがあればためしてみたい。よんがつから保険ほけん服用ふくようできるとのことだがそれまでまてない。/後日ごじつ手続てつづきに時間じかんがかかりさんがつにずれむとの連絡れんらくはいりそれならばよんがつまでったほうがいいということになり、個人こじん輸入ゆにゅう見送みおくことにする。/よんがつちにったリルテック。過剰かじょう期待きたいしないようにとの説明せつめいであったがどうしても期待きたいしてしまう。副作用ふくさよう説明せつめいもあったがそんなこと眼中がんちゅうい。ただひたすらこといのるだけです。》(後藤ごとう忠治ただはる[67]のホームページ、後藤ごとう[2000a])
【86】 《わたしがリルテックのことをったのは、昨年さくねんはじめころだったとおもう。新聞しんぶんんでいてALS治療ちりょうやく記事きじつけた。外国がいこくではすでに使つかわれていたがくにでは、厚生省こうせいしょう使用しようみとめていなかった。/しかしこのよんがつから移入いにゅうみとめられ使用しよう許可きょかされるとうことである。/つぎ受診じゅしんわたしはその記事きじ先生せんせいせてくわしいことをりたいとたのんだ。/先生せんせいくすりのことはよくっておられたが、国内こくないでの使用しようれいもなく、まだせることも出来できないのでよく調しらべてみますとうことだった。/ただ治療ちりょうやくではなく症状しょうじょうすすむのをおくらせるとうだけで、副作用ふくさようかんがえられあまり期待きたいしないほうがよい、とうことだった。/しかし病人びょうにんとしてはわらにもすがるおもいで、使用しようできるようになったら手配てはいしてほしいとたのんだ。すこしでも病状びょうじょうすすまなければいい、そのためにはすすんでからではおそい、すこしでもはやいほうがよいとおもった。/六月ろくがつはじめ、先生せんせいからリルテックのはなしがあった。そしてくすり説明せつめいしょもらった。/いえかえってんでみたが専門せんもん用語ようごいてあってよくはわからない。/しかし、どのような副作用ふくさようがあるかはよくほどけかった。むねのむかつき、下痢げりひとによっては便秘べんぴ症状しょうじょうるといてある。そして、副作用ふくさようだけくすりくかどうかはわからない。先生せんせいには、自分じぶん責任せきにんむから、手配てはいしていただくようにとたのんだ。/説明せつめいしょくらいの副作用ふくさようならかまわないとおもった。かなくてもともと、そのときはやめればいいではないか、けばもうけもの、ひと参考さんこうにもなる。/なながつ中頃なかごろから服用ふくようはじまった。治療ちりょうらしい治療ちりょうである。いちにちかい朝晩あさばん食前しょくぜんいちあいだまえ服用ふくようである。はじめてにちはやくも副作用ふくさよう症状しょうじょうはじめた。むねがむかつく、気持きもちがわるい、でも食欲しょくよくはあった。べることに支障ししょうはない。このくらいの副作用ふくさようならどうとうことはない、それに時間じかんみじかく、すこしくらいあったほうくすりいているがした。》(東畑とうはた[2001])
【87】 いちねん〇〇〇ねん。《服用ふくようはじめていちねんになる。その効果こうかについてはだれにもわからない。先生せんせいのはじめの説明せつめいで、「症状しょうじょう改善かいぜんするくすりではない。すこしでも病気びょうき進行しんこうおさえられればよいくらい気持きもちで服用ふくようしてください。」との説明せつめいであったが、現在げんざい服用ふくようはじめの状態じょうたいくらべてみても、わずかな進行しんこうかんじられるがほとんどわからない。/んでいるからこの程度ていどなのか、まなくてもわらなかったのか、わたしにもわからない。でも服用ふくようはじめてしまったのだから、やめる勇気ゆうきもない。さいわ副作用ふくさようなにかんじられない。/今後こんご服用ふくようつづけるより仕方しかたないだろう。》(東畑とうはた[2001])
 リルテックは――やはり、とってよいか――どうやらさほどかない、ということになった。
【88】 《ALSは治療ちりょうといえるほど効果こうかをもつくすり存在そんざいしていないのが残念ざんねんなことなのですが、現状げんじょうなのです。/ですから、あたらしく登場とうじょうしたこのくすりには、当然とうぜんおおきな期待きたいせられるのです。このくすり効果こうかについては海外かいがいでも日本にっぽんでも患者かんじゃさんに投与とうよして検討けんとうされていますが、その結果けっかるかぎり病気びょうきなおすという効果こうか期待きたいできません。》(中原なかはら[2001:40-41])
【89】 《このくすり比較的ひかくてき早期そうきのALSにたいして病勢びょうせいよわくする効果こうかがある。ただし残念ざんねんなことに完全かんぜん病気びょうき進行しんこう抑制よくせいしたり筋力きんりょく回復かいふくしたりすることはのぞめない。》(石垣いしがき祖父江そふえ[2003:59])

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■「ラジカット」

◆「国立こくりつ精神せいしん神経しんけいセンター国府台こうのだい病院びょういん ALS医療いりょう相談そうだんしつALS臨床りんしょう試験しけん(プラセボ対照たいしょうじゅうめくらけん試験しけん参加さんかしゃ募集ぼしゅう募集ぼしゅう終了しゅうりょういたしました]」
 http://www.ncnp-k.go.jp/hospital/kohnodai/als/alsrinsyoh.html

小谷野こやの とおる千葉ちばけん)・『ひかりおと かぜおと』 20020810-
 http://members.jcom.home.ne.jp/pinwheel/
 「わたしのALSくろにくる」
 http://members.jcom.home.ne.jp/pinwheel/chronicle.htm

 http://members.jcom.home.ne.jp/pinwheel/als2001.htm
 11月にホームページでる。


 http://members.jcom.home.ne.jp/pinwheel/als2002.htm
 「2002ねん 生活せいかつ変容へんよう
 10がつ 今月こんげつから国府台こうのだい病院びょういんで、自費じひで「ラジカット」の投与とうよけることにした。月曜げつようから金曜きんようまでの5日間にちかん隔週かくしゅう通院つういんする予定よてい抗生こうせい物質ぶっしつミノマイシンもはじめる。いまのところ自覚じかくできるような症状しょうじょう改善かいぜんられないが、しばらくはつづけてようとおもう。今月こんげつはいって室内しつない転倒てんとうした。さいわいけがはないが室内しつない歩行ほこうもおぼつかなくなってしまった。りょううでつづいて、両足りょうあし運動うんどう機能きのう風前ふうぜんのともしびとなってきた。
 […]
 11月じゅういちがつ 11がつにち船橋ふなばしのアンデルセン公園こうえんった。肌寒はだざむいちにちだったが、ふかまる紅葉こうようなかひさしぶりに散歩さんぽした。かえりには中華ちゅうかレストランで外食がいしょくたのしめ、たのしいいちにちとなった。今月こんげつもラジカットの自費じひ投与とうよ週間しゅうかんつづけたが、病気びょうきはますます進行しんこうしている。さむさのせいだろうか? 両手りょうて麻痺まひのため布団ふとんがかけられず苦労くろうしていたがハロゲンヒーターを購入こうにゅう布団ふとんわりに使つかいはじめたら、非常ひじょうにあたたかく重宝ちょうほうしている。」

藤本ふじもとさかえ『ALSをたのしくきる』
 http://www.ailife.co.jp/als/als_enjoy.html
 http://www.ailife.co.jp/als/rajicut.html

立岩たていわ しん也 20041115 『ALS――不動ふどう身体しんたいいきする機械きかい医学書院いがくしょいん,449p. ISBN:4260333771 2940 [amazon][kinokuniya] ※
 「つぎにラジカット(商品しょうひんめい一般いっぱんめいはエダラボン)が試用しようされはじめた。このくすり〇〇いちねん急性きゅうせいのう梗塞こうそくともな症候しょうこう機能きのう障害しょうがい改善かいぜん効果こうかのあるくすりとして承認しょうにんされ、六月ろくがつから販売はんばい医療いりょう保険ほけん使つかえる(ALSの場合ばあい自己じこ負担ふたんになる)。吉野よしのすぐる当時とうじ千葉ちばけん市川いちかわ国立こくりつ精神せいしん神経しんけいセンター国府台こうのだい病院びょういん神経しんけい内科ないか、そのとくしゅうかいグループ治験ちけんセンターちょう)[84]が病院びょういん倫理りんり委員いいんかい〇〇いちねんなながつ申請しんせいいちがつ許可きょかされ、臨床りんしょう試験しけん(プラセボ対照たいしょうじゅうめくらけん試験しけん)を開始かいしした。じつくすり投与とうよされるひと偽薬ぎやく生理せいりしょく塩水えんすい)を投与とうよされるひとがいるが、どちらを投与とうよされるかわからない。にん日間にちかん連続れんぞくよんかい。その希望きぼうしゃにはじつくすりいちよんにち連続れんぞく投与とうよするというもの(吉野よしの[2002a][2002b])。 【90】 中村なかむら修一しゅういち新潟にいがたけん)は吉田よしだ雅志まさし[63]のホームページ(吉田よしだ[1996-])で臨床りんしょう試験しけん開始かいしり、ALS協会きょうかい新潟にいがたけん支部しぶはなしをし、参加さんかすすめられた。〇〇ねんいちがつにちからがつはちにちまで試験しけん参加さんか中村なかむら場合ばあいは、《今回こんかい週間しゅうかんというかぎられた日数にっすう入院にゅういん治療ちりょうやく検討けんとう試験しけんでは、わたしには、残念ざんねんながらえての効果こうかかったみたいです。》(中村なかむら[2002])  に、国府台こうのだい病院びょういん通院つういん自費じひくすり投与とうよした小谷野こやのとおる報告ほうこく小谷野こやの[2000-])、藤本ふじもとさかえ報告ほうこく藤本ふじもと[200?])とうがある。前者ぜんしゃ効果こうかられないようだと、後者こうしゃ効果こうかがあるとしるしている。ただすくなくともこのくすりによって顕著けんちょ効果こうかがあったとはやはりえないようだ。  ALSに効果こうかがあることの利益りえきおおきいとかんがえられているから、副作用ふくさようがそれほどないとおもわれる場合ばあいには、それはにかけられない[85][86]。ただ、ラジカットについては、のう梗塞こうそくひと使つかった場合ばあい急性きゅうせい腎不全じんふぜん副作用ふくさようがあることがわかり死亡しぼうれい報告ほうこくされた。このことに言及げんきゅうしているひともいなくはない。 【91】 〇〇さんねんいちがつさんいちにち。《ラジカットで死者ししゃいちにんとテレビでほうじている。すぐに山本やまもと先生せんせい情報じょうほう公開こうかいをおねがいした。[…]/いちいちがついちいちにち 夕方ゆうがた山本やまもと先生せんせい回診かいしんえる。先日せんじつ情報じょうほう公開こうかいけん予想よそうしていたとお満足まんぞく回答かいとうられず。まああんなもんだろう。結局けっきょくこのへんでは死亡しぼうしゃはゼロでしたというだけ。これで情報じょうほう公開こうかいしたとおもっているんだろうか。》(宮本みやもと[2004])」(立岩たていわ[2004:])

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遺伝子いでんし医療いりょう/ES細胞さいぼう/iPS細胞さいぼう

『JALSA』023ごう(1991/10/25)

 「家族かぞくせいALSの起因きいんとなる遺伝子いでんしと21ばん染色せんしょくたい連鎖れんさ遺伝いでん異質いしつせいについて」

『JALSA』031ごう(1994/03/25)

 ALSの遺伝子いでんし解析かいせき――病因びょういん解明かいめいへのみち

『JALSA』054ごう(2001/10/10)

 「ALS原因げんいん遺伝子いでんし特定とくてい」 35 新聞しんぶん記事きじ紹介しょうかい

『JALSA』062ごう(2004/04/28)

□「チャンスの神様かみさま
 ゲノム解析かいせき、もう採血さいけつはおすみでしょうか?
 たった14ccでも、患者かんじゃであるほうにしかできないだい仕事しごとです。
いちがつ厚労省こうろうしょうALS新規しんき治療ちりょうほう研究けんきゅういとさんはん会議かいぎのち佐藤さとうたけし先生せんせいから、「橋本はしもとさんにはむずかしいでしょうから」と解説かいせつのお手紙てがみいただきました。
 冒頭ぼうとうに「日本にっぽん基礎きそ医学いがく分野ぶんやはすばらしい。ろくななねん成果せいかているので、希望きぼうって頑張がんばりましょう」という内容ないようしるされていました。
 ときちがわずかく先生せんせいのチームからは、「ALS原因げんいん究明きゅうめい糸口いとぐち発見はっけん」のニュース。
 これでゲノム解析かいせきすすめば、多方面たほうめんから頂上ちょうじょう目指めざせます。
「ゲノム」と「AMPA受容じゅようたいふたつのチャンスにめぐえたのは、いまきるいま患者かんじゃだけ。
 後追あとお禁物きんもつ、チャンスの神様かみさまには前髪まえがみしかありません。
 だからちからわせてガッチリつかまえ、一緒いっしょ未来みらいつめましょう。
会長かいちょう 橋本はしもと みさお」(p0)

立岩たていわ しん也 20041115 『ALS――不動ふどう身体しんたいいきする機械きかい医学書院いがくしょいん,449p. ISBN:4260333771 2940 [amazon][kinokuniya] ※
 「現在げんざいではおおくのひと遺伝子いでんし医療いりょう技術ぎじゅつはいせいみき細胞さいぼう(ES細胞さいぼう)をもちいた再生さいせい医療いりょう技術ぎじゅつ期待きたいしている。
【92】 ALSになった眼科がんか文章ぶんしょうから。《ALSの患者かんじゃしんには、医師いしたいする不信ふしんかん垣間見かいまみえます。なぜなら、なおしてもらえないことをっているからです。/わたしたちの切実せつじつねがいはひとつ。「抜本ばっぽんてき治療ちりょうほう確立かくりつ」です。たとえば神経しんけいみき細胞さいぼう移植いしょく可能かのうになれば、ALSをなおせるかもしれません。》(渡辺わたなべ[2003:343-344]。初出しょしゅつは『山形やまがた新聞しんぶん〇〇いちねんいちいちがついちにち
 遺伝子いでんし医療いりょう可能かのうせいかかわるような発見はっけん報道ほうどう時々ときどきなされる。たとえば〇〇いちねんいちがつ原因げんいんとなる遺伝子いでんしひとつを東海大学とうかいだいがくなどの研究けんきゅうグループが発見はっけんしたとほうじられた(『JALSA』54:35に「ALS原因げんいん遺伝子いでんし特定とくてい」という見出みだしで新聞しんぶん記事きじ紹介しょうかい)。これはALSのごく一部いちぶめるどものころ発症はっしょうする劣性れっせい遺伝いでんがたのALSについての発見はっけんで、それをつたえない報道ほうどうもあったから誤解ごかいしょうじさせた★01。だが誤解ごかいぶんいても、遺伝子いでんし解明かいめい期待きたいいだかせる。医学いがくしゃもそれをう。
【93】 《近年きんねん生命せいめい科学かがくおおきな進歩しんぽげ、遺伝子いでんし治療ちりょうみき細胞さいぼう移植いしょくなどの研究けんきゅう技術ぎじゅつ進歩しんぽにはめざましいものがある。こうした生命せいめい科学かがく進歩しんぽがALSという病気びょうき完全かんぜん治療ちりょう可能かのう病気びょうきにするがやがてるものとしんじている。》(石垣いしがき祖父江そふえ[2003:59])  基礎きそてき研究けんきゅうへのALSのひと協力きょうりょく要請ようせいされる。よくむと、まさしくひかな――つまりすぐに治療ちりょうほう発見はっけんにつながるというわけではないという――見込みこみがかたられる。
【94】 《理論りろんてきかんがえても、いち〇〇〇にん患者かんじゃさんに協力きょうりょくしていただければ、ALSになる危険きけんばいたかめる要因よういんつけることが可能かのうになってきています。》(東京大学とうきょうだいがくヒトゲノム解析かいせきセンターちょう中村なかむら祐輔ゆうすけ[2003b:10]――〇〇さんねんがつ日本にっぽんALS協会きょうかい総会そうかいでの講演こうえん。なお協会きょうかい要請ようせいされ寄稿きこうした文章ぶんしょう中村なかむら[2003a])
 ALSのひとおおくは当初とうしょから積極せっきょくてきだった。〇〇さんねん日本にっぽんALS協会きょうかい中村なかむら要請ようせいけ、ヒトゲノム解析かいせきプロジェクトへの協力きょうりょくめた(『JALSA』58)。協力きょうりょくしゃ協力きょうりょく病院びょういんまたは自宅じたくいちよんtの血液けつえき採取さいしゅして提供ていきょうする。当初とうしょひゃくめいのサンプルで解析かいせきすすめ、ある程度ていど解析かいせき内容ないようしぼんだ段階だんかいせんめいのサンプルを解析かいせきするという。このプロジェクトへの期待きたいつよく、ALSのひとによって協力きょうりょく意志いし表明ひょうめいされ、協力きょうりょくびかけられる(佐々木ささき[2000-a(124)(125)]等々とうとう)。いちめい先行せんこうして採血さいけつおうじ、さらに〇〇さんねんあきろくいちめい希望きぼういちがつから採血さいけつ開始かいしされた(『JALSA』61)。」

◆2010/01/11 京都大きょうとだい病院びょういんが「iPS細胞さいぼう再生さいせい医学いがく研究けんきゅうかい設立せつりつ
 『読売新聞よみうりしんぶん』2010-01-11
http://osaka.yomiuri.co.jp/university/research/20100112-OYO8T00706.htm

 「15にち午後ごご30ふん〜715ふんしばらん会館かいかん京大きょうだい医学部いがくぶない)。様々さまざま細胞さいぼう変化へんかするiPS細胞さいぼう新型しんがた万能ばんのう細胞さいぼう)による再生さいせい医療いりょう基礎きそ研究けんきゅうすすなか今後こんご実際じっさい治療ちりょう応用おうようするには、臨床りんしょうつね最新さいしん情報じょうほうれておく必要ひつようがあることから新設しんせつ臨床りんしょう応用おうようけた研究けんきゅう現状げんじょう課題かだいまなぶ。代表だいひょう世話人せわにん中村なかむら孝志たかし病院びょういんちょう就任しゅうにんし、としかい開催かいさい予定よていしている。
 はつ会合かいごうとなる15にちは、iPS細胞さいぼうもちいたすじ萎縮いしゅく(いしゅく)せいがわさく硬化こうかしょう研究けんきゅう発表はっぴょうや、安全あんぜんせい向上こうじょうかんする講演こうえんなどをおこなう。参加さんか1000えん定員ていいん230にん先着せんちゃくじゅん)。わせはどう病院びょういん総務そうむ(075・751・3005)へ。
(2010ねん1がつ11にち 読売新聞よみうりしんぶん)」(全文ぜんぶん)

◆2010/01/24 「ALS:治療ちりょうほう開発かいはつへ、ちからわせよう 協会きょうかいけん支部しぶけん西部せいぶはつつどい /島根しまね
 『毎日新聞まいにちしんぶん』2010-01-24
http://mainichi.jp/area/shimane/news/20100125ddlk32040323000c.html

 「すじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)(ALS)の患者かんじゃ家族かぞくでつくる「日本にっぽんALS協会きょうかい島根しまねけん支部しぶ」が24にちけん西部せいぶはじめての「患者かんじゃ家族かぞくつどい」を益田ますだ昭和しょうわまち益田ますだ保健所ほけんじょひらいた。患者かんじゃ家族かぞく友人ゆうじん保健所ほけんじょ職員しょくいんやく15にん出席しゅっせきした。
 ALSは全身ぜんしん運動うんどう神経しんけい細胞さいぼうだけがおかされる原因げんいん不明ふめい神経しんけい難病なんびょうで、進行しんこうするとからだうごかすことやはなすこと、自発じはつ呼吸こきゅうなどができなくなる。どう支部しぶ昨年さくねん設立せつりつ10周年しゅうねんむかえたが、これまでにけん西部せいぶ患者かんじゃ家族かぞく交流こうりゅうかいひらかれたことはなかった。
 支部しぶちょう松浦まつうら弥生やよいさんのおっと和敏かずとしさん(77)が「いちにちはや治療ちりょうほう開発かいはつけ、みんなでちからわせてがんばっていきたい」とあいさつ。患者かんじゃ介護かいごつづける家族かぞく現状げんじょうなどを報告ほうこくした。
 家族かぞくけん西部せいぶでALS患者かんじゃれる医療いりょう機関きかんすくないという不安ふあんや「365にちずっとていないといけない」「人工じんこう呼吸こきゅうけているので意思いし疎通そつうむずかしい」など介護かいご課題かだいうったえた。そして現状げんじょう改善かいぜんのため、介護かいごボランティアの募集ぼしゅう病気びょうきってもらう工夫くふうなどを提案ていあんった。【御園みそ生枝なまえさと】」(全文ぜんぶん)

◆2010/02/06 再生さいせい医療いりょう実現じつげんへ、iPS細胞さいぼう「バンク」不可欠ふかけつ
 『神戸こうべ新聞しんぶん』2010-02-06
http://www.kobe-np.co.jp/news/kurashi/0002693366.shtml

 「再生さいせい医療いりょう実現じつげんけた「ふだ」として期待きたいされる、ヒトの人工じんこう多能たのうせいみき細胞さいぼう(iPS細胞さいぼう)の作製さくせい技術ぎじゅつ開発かいはつした山中やまなかしんわたる(しんや)・京都大きょうとだい教授きょうじゅがこのほど、大阪おおさか市内しないひらかれた市民しみんけのイベント「再生さいせい医学いがくのう科学かがく最前線さいぜんせん」(大阪おおさかバイオサイエンス研究所けんきゅうじょなどの主催しゅさい)で講演こうえんした。どう細胞さいぼう活用かつようほうや、自身じしん提唱ていしょうしている「iPS細胞さいぼうバンク」などについて解説かいせつどうバンクをめぐっては「5ねん以内いない完成かんせいさせたい」と目標もくひょうかかげた。(武藤むとう邦生くにお
 1987ねん神戸大こうべだい医学部いがくぶ卒業そつぎょうした山中さんちゅう教授きょうじゅは2007ねん、ヒトの皮膚ひふ細胞さいぼうに、特殊とくしゅなウイルスを使つかってよっつの遺伝子いでんし培養ばいようする方法ほうほうで、iPS細胞さいぼう開発かいはつ成功せいこう発表はっぴょう。この功績こうせきから、ノーベルしょうもっとちか研究けんきゅうしゃ一人ひとりともされる。

数々かずかずのデータ

 どう細胞さいぼうは、くわえることで、身体しんたいのどの細胞さいぼうにも変化へんかできる能力のうりょくと、ほぼ無限むげん増殖ぞうしょく能力のうりょくち、再生さいせい医療いりょう実現じつげんするのにきわめて重要じゅうようされている。
 演壇えんだんった山中さんちゅう教授きょうじゅは「iPS細胞さいぼう使つかえば、神経しんけい心臓しんぞうなどの細胞さいぼう大量たいりょうつくることができ、(損傷そんしょうけた器官きかん細胞さいぼうつくって移植いしょくする)再生さいせい医療いりょう可能かのうせいひろがる」と説明せつめい。マウスによる実験じっけんではすでに、再生さいせい医療いりょうでの治療ちりょう効果こうかしめ数々かずかずのデータがていることにもれた。
 また、どうバンクについて「ボランティアのドナーから皮膚ひふ細胞さいぼう提供ていきょうけ、あらかじめiPS細胞さいぼう作製さくせい管理かんりしておく」と解説かいせつ患者かんじゃ素早すばや移植いしょくするために不可欠ふかけつなシステムであることをしめした。
 一方いっぽう、iPS細胞さいぼうバンクをもちいる方法ほうほうでは、他人たにん細胞さいぼう移植いしょくすることから、患者かんじゃ拒絶きょぜつ反応はんのうこるという問題もんだいてん指摘してき細胞さいぼうの“血液けつえきがた”にたるHLAがた適合てきごう必要ひつようとなる。「すうまん種類しゅるい以上いじょうあるぜんHLAがたのiPS細胞さいぼうをバンクにそろえるのは現実げんじつてきだが、特定とくていかたつ50にん種類しゅるい)の皮膚ひふ細胞さいぼうあつめれば、9わり日本人にっぽんじん対応たいおうできる」とちからめた。

治療ちりょうやく開発かいはつ

 再生さいせい医療いりょう以外いがい期待きたいされるのが、病気びょうき原因げんいん解明かいめい治療ちりょうやく開発かいはつなどの分野ぶんや。そのひとつが、運動うんどう神経しんけい細胞さいぼう異常いじょうこり、筋肉きんにくあまどころ(い)ちぢみ(しゅく)や筋力きんりょく低下ていか急速きゅうそくすすむ「すじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう(ALS)」の研究けんきゅうだ。
 このてんについても、山中さんちゅう教授きょうじゅは「患者かんじゃから、異常いじょうこしている運動うんどう神経しんけい細胞さいぼう採取さいしゅして研究けんきゅうするのはむずかしく、治療ちりょうほうながらく進展しんてんがなかった。しかしiPS細胞さいぼう技術ぎじゅつによって、患者かんじゃ皮膚ひふ細胞さいぼうから、運動うんどう神経しんけい細胞さいぼうつくることが可能かのうになり、世界中せかいじゅう研究けんきゅう機関きかんで、ALSの原因げんいん解明かいめい治療ちりょうやく探索たんさくすすめられている」と披露ひろうした。
 再生さいせい医療いりょう 病気びょうきやけがなどによってうしなわれた臓器ぞうき組織そしき再生さいせいし、機能きのう回復かいふくするための治療ちりょうで、実現じつげんいそがれている。完全かんぜん機能きのう再現さいげんむずかしい人工じんこう臓器ぞうきやドナーのかずかぎりのある臓器ぞうき移植いしょく問題もんだいてん克服こくふくできると期待きたいされる。さまざまな手法しゅほうかんがえられているが、神経しんけい心臓しんぞう血液けつえきなどさまざまな細胞さいぼうつくることができる技術ぎじゅつとしてiPS細胞さいぼうとく注目ちゅうもくされている。

写真しゃしん説明せつめい】「iPS細胞さいぼう世界中せかいじゅう研究けんきゅうされており、競争きょうそうはげしい」。展望てんぼうについてべる山中やまなかしんわたる京都大きょうとだい教授きょうじゅ大阪おおさか市内しない」(全文ぜんぶん)

◆2010/03/06 神経しんけい難病なんびょう解明かいめいへ、寄付きふ講座こうざ開設かいせつ――しんじだい医学部いがくぶ長野ながの
 『毎日新聞まいにちしんぶん』2010-03-06
http://mainichi.jp/area/nagano/news/20100306ddlk20040073000c.html

 「神経しんけい難病なんびょう解明かいめいへ、寄付きふ講座こうざ開設かいせつ――しんじだい医学部いがくぶ /長野ながの
 信州大しんしゅうだい医学部いがくぶ久保くぼめぐみ嗣部ちょう)は5にち、4がつにち神経しんけい難病なんびょう原因げんいん病態びょうたい解明かいめい目的もくてきとした寄付きふ講座こうざ開設かいせつすると発表はっぴょうした。キッセイ薬品工業きっせいやくひんこうぎょう松本まつもと芳野よしの神沢かみさわ陸雄むつお社長しゃちょう)が5年間ねんかん総額そうがくおく6000まんえん寄付きふするという。久保くぼ部長ぶちょうは「治療ちりょうやく開発かいはつ目指めざしていく。産学さんがく連携れんけい全面ぜんめんてき協力きょうりょくしていきたい」とはなした。しんだい寄付きふ講座こうざは7けん
 どう講座こうざ責任せきにんしゃとなるしんだい池田いけだ修一しゅういち教授きょうじゅ内科ないかがく)によると、研究けんきゅう対象たいしょうにする難病なんびょうおも脊髄せきずい(せきずい)小脳しょうのう失調しっちょうしょう(SCA)とすじ萎縮いしゅく(いしゅく)せいがわさく硬化こうかしょう(ALS)。SCAはからだのバランスがれなくなり歩行ほこう困難こんなんに、ALSは全身ぜんしん筋肉きんにく神経しんけい細胞さいぼうよわ歩行ほこう呼吸こきゅう不全ふぜんになる疾患しっかん両方りょうほうともに原因げんいん不明ふめいで、効果こうかてき治療ちりょうやくいという。07年度ねんど調査ちょうさ県内けんないには、関連かんれんする疾患しっかんわせてやく2760にん患者かんじゃがいるという。
 同社どうしゃ御子柴みこしばこんゆう開発かいはつ本部ほんぶちょうは「新薬しんやく開発かいはつけて企業きぎょう動物どうぶつ実験じっけんだけでは無理むりがあり、大学だいがく協力きょうりょくすることは有利ゆうりだ」と期待きたいめる。【渡辺わたなべりょう】」(全文ぜんぶん)

◆2010/03/19 「「5ねん以内いないにiPSバンクを」=山中さんちゅう教授きょうじゅ再生さいせい医療いりょう学会がっかいで―広島ひろしま
 『時事通信じじつうしん』2010-03-19
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010031900857

 「「5ねん以内いないにiPSバンクを」=山中さんちゅう教授きょうじゅ再生さいせい医療いりょう学会がっかいで―広島ひろしま
 あらゆる細胞さいぼうつくることができる「人工じんこう多能たのうせいみき(iPS)細胞さいぼう」を世界せかいはじめて開発かいはつした山中やまなかしんわたる京都大きょうとだい教授きょうじゅは19にち広島ひろしまひらかれた日本にっぽん再生さいせい医療いりょう学会がっかい講演こうえんし、将来しょうらいiPS細胞さいぼう治療ちりょう使つかうため、あらかじめ細胞さいぼう準備じゅんびしておくiPSバンクを「5ねん以内いない完成かんせいさせたい」とべた。
 iPS細胞さいぼうは、皮膚ひふなどの細胞さいぼう特定とくてい遺伝子いでんし導入どうにゅうして「初期しょき」した万能ばんのう細胞さいぼう目的もくてき細胞さいぼうつくえれば、再生さいせい医療いりょう応用おうようできる。患者かんじゃ自身じしん細胞さいぼう使つかえば移植いしょくしても拒絶きょぜつ反応はんのうきないが、がんになる危険きけんせいがあり、山中さんちゅう教授きょうじゅは「いかに安全あんぜんなiPS細胞さいぼう見分みわけるかが課題かだい安全あんぜんせい慎重しんちょう検討けんとうする必要ひつようがある」とべた。
 そのうえで、「iPS細胞さいぼう作製さくせいには時間じかん費用ひようかる。脊椎せきつい(せきつい)損傷そんしょうでは、けがから10にち以内いない移植いしょくしないと効果こうかがなく、iPSバンクをつくるべきだ」とうったえた。50種類しゅるいのiPS細胞さいぼうがあれば、日本人にっぽんじんの9わり対応たいおうできるという。
 また、山中さんちゅう教授きょうじゅは10ねん達成たっせい目標もくひょうとして基盤きばん技術ぎじゅつ確立かくりつ臨床りんしょう試験しけん実施じっしすじ萎縮いしゅく(いしゅく)せいがわさく硬化こうかしょう(ALS)の治療ちりょうやく開発かいはつなどをげた。(2010/03/19-18:28)」(全文ぜんぶん)

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民間みんかん療法りょうほう

 さまざまな療法りょうほうがためされている。そのなかにはいわゆる西洋せいよう近代きんだい医学いがくではない医療いりょう民間みんかん療法りょうほうがある。漢方かんぽう

 ◆本田ほんだ 昌義まさよし 19991121 「療友たちため行動こうどうこそうと決意けついしたとき自分じぶんみちけました。」
 「発症はっしょう以来いらい今日きょうまでいちにちかすことく「明日あしためれば、病気びょうきなおっているかもしれない。あるいはなに奇跡きせききて突然とつぜん病気びょうき完治かんじするかもしれない。」と、無駄むだゆめ毎日まいにちみてごしています。だから、ALS患者かんじゃのみならす難病なんびょう患者かんじゃには「もしかして…」とはたらいて、民間みんかん療法りょうほうをこころみるひとおお所以ゆえんであるかとおもいます。」

 ◆「ぞく民間みんかん療法りょうほうばれるものもいくつかこころみたことがあった。/そのひとつが、アーク(?)とかいう、放電ほうでんしょうずるスパークこうねつ患部かんぶてて治療ちりょうする方法ほうほうであった。[…]/新聞しんぶんった鍼治療ちりょういんたずねてみた。[…]/岡山おかやまにいる知人ちじんからは「難病なんびょうなおしてくれるという評判ひょうばんやいとがいる」とおしえてもらったので、新幹線しんかんせん岡山おかやままでかけたこともある。[…](p.27)/[…]あにから、どんな病気びょうきでもなお不思議ふしぎちからそなわっている姉妹しまいがいるといばなしまれた。[…]
 仕事しごとがらたくさんのひと出会であい、相手あいてしんむことを生業せいぎょうにしてきたからだとおもうが、平常へいじょうしんさえうしなわなければ、相手あいて意図いとけるようにえることがある。当初とうしょ期待きたいおおきかっただけに、めるのもはやかった。/ただ、彼女かのじょたちの行為こうい詐欺さぎまがいだと断定だんていしきれないのは、科学かがくてきには説明せつめいかないなんらかの能力のうりょくっている可能かのうせいがあることまでは否定ひていしきれなかったからだ。しかしその能力のうりょくわたし病気びょうき有効ゆうこうだったかといえば「ノー」といわざるをない。かなりの頻度ひんど治療ちりょうけいたにもかかわらず、病気びょうき確実かくじつ進行しんこうしていき、やりきれない気持きもちとむなしさだけがかさなっていった。」(pp.27-28])
 ◆西尾にしお けんわたる 「わたしは,7ねんあままえ身体しんたい異常いじょうかんじました。当時とうじ年齢ねんれいは49さいでした。それであちこちの病院びょういん転々てんてんとするうちにまれ難病なんびょう診断しんだんされたのです。このあいだわたし場合ばあい右足みぎあしから麻痺まひはじまったので、腰椎ようついのヘルニアに間違まちがえられて手術しゅじゅつけました。効果こうかのあることを期待きたいしましたが当然とうぜんありませでした。そして、整体せいたい気功きこうはりなどの民間みんかん療法りょうほうもやってみましたが、気休きやすめでした。身体しんたい異常いじょうかんじてから4ねん全身ぜんしん麻痺まひになり,呼吸こきゅう困難こんなんおちいり,食事しょくじめなくなったので,国立こくりつ石川いしかわ病院びょういんに1ねんカ月かげつ入院にゅういんすえ昨年さくねんがつから在宅ざいたく療養りょうようしています。」
 いまのところ、実際じっさいになおったという方法ほうほうはない。ただそれによって、みずからを、そしてみなを鼓舞こぶすることはある。

▽「原因げんいん解明かいめいされていない現在げんざいてきかく治療ちりょうほう存在そんざいしないし、今日きょうまであらゆる試行錯誤しこうさくごかさねた治療ちりょうほうにも確実かくじつ有効ゆうこうといえるものはなかった。したがってわらをもつかみたい患者かんじゃ家族かぞくが、特異とくいな(p.215)宗教しゅうきょう民間みんかん療法りょうほう貴重きちょう財産ざいさん時間じかん労力ろうりょくついやすことに異義いぎをとなえる資格しかく医師いしにはない。しかしある根拠こんきょもとづく仮説かせつて、疾患しっかん回復かいふく進行しんこう停止ていし、あるいはすこしでも進行しんこうおくらせる目的もくてき研究けんきゅう試行しこうは、世界せかいてき規模きぼ日夜にちやつづけられている。」(永松ながまつ[1998:215-216])

 [◆]長尾ちょうび 「◇民間みんかん療法りょうほう大金たいきん
 きゅうがつまつ美津子みつことくだい医師いしから告知こくちけた。「よりによって、おとうさんがそんな病気びょうきにかかるはずがない」。美津子みつこ診断しんだん信用しんようできなかった。親類しんるい相談そうだんすると、ALS関連かんれん診療しんりょうでは奈良なら県内けんない医大いだい有名ゆうめいだという。すぐ二人ふたりおとずれたが、病名びょうめいわることはなかった。
 おなおも病気びょうきでも、がんなどの一般いっぱんてき病気びょうきなら、自分じぶんたちがどんな状況じょうきょうかれたのか理解りかいもできただろう。ところが、名前なまえいたことさえなかったALS、なにがどうなるのかまったからない。二人ふたり途方とほうれた。
 いまうごいている手足てあしがやがてなえてしまうとはとてもかんがえられなかったし、病気びょうきなおらないなどおもいたくもなかった。「医者いしゃ絶望ぜつぼうてきなことをうが、なに方法ほうほうがあるんじゃないか」
 うらないでは「はるにはなおる」とた。あやしげな気功きこうかねみついだ。手足てあしあたためる器械きかい法外ほうがい値段ねだんわされ、土地とちわるいとわれては安値やすねはらった。なににでもくというワクチンを購入こうにゅうするため東京とうきょうぶ。居間いまには新興しんこう宗教しゅうきょう祭壇さいだん鎮座ちんざ…。民間みんかん療法りょうほうにつぎんだきむひゃくまんえんをはるかにえる。
 治療ちりょうほうがないとされるやまいを、現実げんじつのものとしてれるのは簡単かんたんなことではない。わずかでもひかりまみえればと、正体しょうたいれないものにもすがりついた。「ばかなことを、とおもわれるでしょうがね」と美津子みつこかえる。(敬称けいしょうりゃく

立岩たていわ しん也 20041115 『ALS――不動ふどう身体しんたいいきする機械きかい医学書院いがくしょいん,449p. ISBN:4260333771 2940 [amazon][kinokuniya] ※
「3 民間みんかん療法りょうほう
 様々さまざま療法りょうほうためされるのだが、そのなかにはいわゆる西洋せいよう近代きんだい医学いがくではない医療いりょう民間みんかん医療いりょう民間みんかん療法りょうほうもある(民間みんかん医療いりょう現在げんざいについてのほん佐藤さとう純一じゅんいちへん[2000])。
【95】 本田ほんだ昌義まさよし大分おおいたけん)。《発症はっしょう以来いらい今日きょうまでいちにちかすことく「明日あしためれば、病気びょうきなおっているかもしれない。あるいはなに奇跡きせききて突然とつぜん病気びょうき完治かんじするかもしれない。」と、無駄むだゆめ毎日まいにちみてごしています。だから、ALS患者かんじゃのみならず難病なんびょう患者かんじゃには「もしかして…」とはたらいて、民間みんかん療法りょうほうをこころみるひとおお所以ゆえんであるかとおもいます。》(本田ほんだ[1999])
【96】 いちきゅうはちろくねんごろひがしけんでん郁夫いくお[50]。《ぞく民間みんかん療法りょうほうばれるものもいくつかこころみたことがあった。/そのひとつが、アーク(?)とかいう、放電ほうでんしょうずるスパークこうねつ患部かんぶてて治療ちりょうする方法ほうほうであった。[…]/新聞しんぶんった鍼治療ちりょういんたずねてみた。[…]/岡山おかやまにいる知人ちじんからは「難病なんびょうなおしてくれるという評判ひょうばんやいとがいる」とおしえてもらったので、新幹線しんかんせん岡山おかやままでかけたこともある。[…]/[…]あにから、どんな病気びょうきでもなお不思議ふしぎちからそなわっている姉妹しまいがいるというはなしまれた。[…]仕事しごとがらたくさんのひと出会であい、相手あいてしんむことを生業せいぎょうにしてきたからだとおもうが、平常へいじょうしんさえうしなわなければ、相手あいて意図いとけるようにえることがある。当初とうしょ期待きたいおおきかっただけに、めるのもはやかった。/ただ、彼女かのじょたちの行為こうい詐欺さぎまがいだと断定だんていしきれないのは、科学かがくてきには説明せつめいかないなんらかの能力のうりょくっている可能かのうせいがあることまでは否定ひていしきれなかったからだ。しかしその能力のうりょくわたし病気びょうき有効ゆうこうだったかといえば「ノー」といわざるをない。かなりの頻度ひんど治療ちりょうけていたにもかかわらず、病気びょうき確実かくじつ進行しんこうしていき、やりきれない気持きもちとむなしさだけがかさなっていった。》(ひがしけんでん[1998:27-28])
【97】 長尾ながお義明よしあき[60]。《いまうごいている手足てあしがやがてなえてしまうとはとてもかんがえられなかったし、病気びょうきなおらないなどおもいたくもなかった。「医者いしゃ絶望ぜつぼうてきなことをうが、なに方法ほうほうがあるんじゃないか」/うらないでは「はるにはなおる」とた。あやしげな気功きこうかねみついだ。手足てあしあたためる器械きかい法外ほうがい値段ねだんわされ、土地とちわるいとわれては安値やすねはらった。なににでもくというワクチンを購入こうにゅうするため東京とうきょうぶ。居間いまには新興しんこう宗教しゅうきょう祭壇さいだん鎮座ちんざ…。民間みんかん療法りょうほうにつぎんだきむひゃくまんえんをはるかにえる。/治療ちりょうほうがないとされるやまいを、現実げんじつのものとしてれるのは簡単かんたんなことではない。わずかでもひかりまみえればと、正体しょうたいれないものにもすがりついた。「ばかなことを、とおもわれるでしょうがね」と美津子みつこかえる。》(『徳島とくしま新聞しんぶん』[2000])
【98】 西尾にしおけんわたる[65][71]、いちきゅうきゅうななねん。《わたしは、ななねんあままえ身体しんたい異常いじょうかんじました。当時とうじ年齢ねんれいよんきゅうさいでした。それであちこちの病院びょういん転々てんてんとするうちにまれ難病なんびょう診断しんだんされたのです。このあいだわたし場合ばあい右足みぎあしから麻痺まひはじまったので、腰椎ようついのヘルニアに間違まちがえられて手術しゅじゅつけました。効果こうかのあることを期待きたいしましたが当然とうぜんありませんでした。そして、整体せいたい気功きこうはりなどの民間みんかん療法りょうほうもやってみましたが、気休きやすめでした。身体しんたい異常いじょうかんじてからよんねん全身ぜんしん麻痺まひになり、呼吸こきゅう困難こんなんおちいり、食事しょくじめなくなったので、国立こくりつ石川いしかわ病院びょういんいちねんはちカ月かげつ入院にゅういんすえ昨年さくねんはちがつから在宅ざいたく療養りょうようしています。》(西尾にしお[1997])
【99】 《はりとかやいととか漢方薬かんぽうやくなど東洋とうよう医学いがくしょうするものから宗教しゅうきょうまで、じつ様々さまざますすめをけた。もちろん、もしかしたらなおるかもしれないというかすかな期待きたいいていったのだが、すうげつにはそれが幻想げんそうであることをやまい進行しんこうおしえてくれるのだった。/東洋とうよう医学いがくしょうする先生せんせいかたはどこでもおなじようなふたつのことをわれた。ひとつは「からだ機能きのうもとどおりになることは確約かくやくできないけれど、すくなくとも現状げんじょう維持いじ可能かのうおもう」[…]もうひとつは[…]まよってたずねた東洋とうよう医学いがく先生せんせいかたは、そろってこしにメスをれる必要ひつようはなかったのではと、あたかもそれが原因げんいんであるかのようにおな言葉ことばかされた。その都度つどうたがいをふかめ、安易あんい医師いしまかせて手術しゅじゅつ同意どういした自分じぶんめ、そしてやんだ。》(八木やぎ[1988]。乙坂おとさか[1996-1997:(2)30-32]に掲載けいさい
 番目ばんめほうは、発病はつびょうさんねんまえにカリエスのうたがいで開腹かいふくしたがその兆候ちょうこうはなかったという経験けいけんかかわる。東京とうきょうんでいた八木はちぼくは、「からだれて治療ちりょうけるほうが、もしかしたらなおるかもしれないという期待きたいがもてるようにかんじられ」、ふゆさんげつ金沢かなざわ郊外こうがい整骨せいこついんごし、好転こうてんきざしなく、いえかえることになる。
 「近代きんだい医学いがく」でないひとたちもまた、いかにもそのひとたちがいそうなことをう。そして近代きんだい医学いがくびうるなかにも様々さまざまあり、そのなかにも正統せいとう正当せいとうなものとそうでないとあるのだが、その境界きょうかいはときにさだかではない。以下いかしずさんしゃ(↓だい7しょう4せつ刊行かんこうほんから。そのなかで、著者ちょしゃ最後さいごまでその療法りょうほう肯定こうていてき、というのは正確せいかくでなく、効果こうかあらわれないことや不調ふちょう各所かくしょしるしながら、最後さいご肯定こうていてきである。
【100】 愛知あいちけん看護かんごをしていた山田やまだ徳子とくこいちきゅうはちろくねん発症はっしょういちきゅうはちきゅうねん、『奇跡きせきのがん療法りょうほう』というほん横浜よこはまサトウクリニックの院長いんちょう佐藤さとう一英いちえい手紙てがみす。三月さんがつきゅうにち今夕こんゆう先生せんせいみずからお電話でんわをいただいた。「くから、できるだけはやるように」とのこと。/わたしにとってのラストチャンスにけてみたい。[…]「たきり」でなく、ほんあしち、「ひと」としてきるためのラストチャンスなのだ。》(山田やまだ[1989:58])  名古屋なごやから横浜よこはまかよって、「免疫めんえき療法りょうほう」をけはじめる。三月さんがつさんにち精製せいせいされたリンパだまいち〇〇tほど注射ちゅうしゃされた」([:59])。六月ろくがついちにちかいのリンパだまけてから、体調たいちょうがあまりよくない。かえって病気びょうきすすめたようにさえかんじる。暗中模索あんちゅうもさく未踏みとう第一歩だいいっぽみこんだところだから、いろいろなことがこってたりまえだろう。》([:75])。なながついちさんにちだいさんかいかいくるしかった脱力だつりょくも、「免疫めんえき療法りょうほうとおだから」と先生せんせいわれた。この療法りょうほうがどこまで効果こうかがあるのか、いまのところだれにもわからない未知みち世界せかいだとおもう。はじめから、駄目だめでもともととおもって、自分じぶんのALSにたいするかんがかたためしてみたかったのだ。たとえこの療法りょうほうがけたことにより、きる時間じかん短縮たんしゅくしたとしても、消極しょうきょくてきつよりはるかに意義いぎふかいことであり、充実じゅうじつしている。》([:84])。九月くがついちはちにち横浜よこはまく。今回こんかい連絡れんらくおもわなくなく、リンパ球体きゅうたいわなかった。わりにグロブリン製剤せいざい注射ちゅうしゃしていただいた。先生せんせい自信じしんちたおはなし勇気ゆうきづけられた。》([:99])。いちがつにちよんかい免疫めんえき療法りょうほうのち脱力だつりょく度合どあいはいつものようにかるくなった。機能きのうほう容赦ようしゃなく減退げんたいしていく。》([:102])。いちいちがつさんにちかい([:121])。きゅうねんいちがつさんにちろくかい([:141])。三月さんがつさんにちななかい今日きょう記念きねんすべきである。免疫めんえき療法りょうほうで、学問がくもんてきには治療ちりょう効果こうか実証じっしょうされた、と先生せんせいわれた。自分じぶんからだこんひとつはっきりせず、あきらかな進行しんこう停止ていしみとめらないため、両手りょうてをあげて“万歳ばんざい三唱さんしょう”とよろこぶわけにはいかないが、朗報ろうほうにはちがいない。なんねん不治ふちというしたあまんじてきたのだから。変性へんせいした神経しんけい細胞さいぼう再生さいせい困難こんなんというより、不可能ふかのうとされている。だが、生体せいたいかぎりない神秘しんぴ経験けいけんしているいま、これも可能かのう範囲はんいだとかんがえられる。》([:156-157])
【101】 その横浜よこはまサトウクリニック院長いんちょう佐藤さとう一英いちえいが、山田やまだ著書ちょしょの「序文じょぶんにかえて」をいている。最初さいしょのやりとりの部分ぶぶんなど、山田やまだ記述きじゅつとまったく整合せいごうしない部分ぶぶんがあるが、それがいちさつほんっている。《山田やまだ徳子とくこさんのことを、ご主人しゅじんより相談そうだんされました。「よし、やってみよう」と返事へんじはしたものの、その効果こうかについてはまったく予測よそくしえないことでした。/しかし、いちかいかいげつごとに注射ちゅうしゃしていくにつれ、症状しょうじょう改善かいぜんされ、免疫めんえきグロブリンの正常せいじょうへと変化へんかしていくことがわかりました。》(佐藤さとう[1989:1-2])  このひとくなったが、「佐藤さとう免疫めんえき療法りょうほうともかい一英いちえいかい」」は存続そんぞくしていてホームページがある(http://www2.ocn.ne.jp/~ichiei/file/syoukai.html)。
【102】 国立こくりつ療養りょうようしょ神経しんけいすじ難病なんびょう研究けんきゅうグループのホームページ「神経しんけいすじ難病なんびょう情報じょうほうサービス」ではつぎのようにしるされている。《すじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう原因げんいん[…]/自己じこ免疫めんえきせいせつ運動うんどう神経しんけい攻撃こうげきし、変性へんせい壊死えししょうじる自己じこ抗体こうたい出来できているというせつです。ALSの患者かんじゃ一部いちぶで、単一たんいつクローンせいだかガンマグロブリンしょうともなうものがあることと、動物どうぶつ実験じっけんによる成績せいせきから提唱ていしょうされていますが、通常つうじょう自己じこ免疫めんえきせい疾患しっかんたいしてきわめて有効ゆうこうなステロイド療法りょうほう免疫めんえきグロブリン療法りょうほうではALSの進行しんこうめることは出来できません。》(国立こくりつ療養りょうようしょ神経しんけい難病なんびょう研究けんきゅうグループ[1996-])」(立岩たていわ[2004])



山田やまだ徳子とくこいちきゅうはちろくねん発症はっしょういちきゅうはちきゅうねん、『奇跡きせきのがん療法りょうほう』というほん横浜よこはまサトウクリニックの院長いんちょう佐藤さとう一英いちえい手紙てがみす。三月さんがつきゅうにち今夕こんゆう先生せんせいみずからお電話でんわをいただいた。「くから、できるだけはやるように」とのこと。/わたしにとってのラストチャンスにけてみたい。[…]「たきり」でなく、ほんあしち、「ひと」としてきるためのラストチャンスなのだ。」(58)名古屋なごやから横浜よこはまかよって、「免疫めんえき療法りょうほう」をはじめる。三月さんがつさんにち精製せいせいされたリンパだまいち〇〇ccほど注射ちゅうしゃされた」(59)。六月ろくがついちにちかいのリンパだまけてから、体調たいちょうがあまりよくない。かえって病気びょうきすすめたようにさえかんじる。暗中模索あんちゅうもさく未踏みとう第一歩だいいっぽみこんだところだから、いろいろなことがこってたりまえだろう。」(75)なながついちさんにちだいさんかい。「かいくるしかった脱力だつりょくも、「免疫めんえき療法りょうほうとおだから」と先生せんせいわれた。この療法りょうほうがどこまで効果こうかがあるのか、いまのところだれにてもわからない未知みち世界せかいだとおもう。はじめから、駄目だめでもともととおもって、自分じぶんのALSにたいするかんがかたためしてみたかったのだ。たとえこの療法りょうほうがけたことにより、きる時間じかん短縮たんしゅくしたとしても、消極しょうきょくてきつよりはるかに意義いぎふかいことであり、充実じゅうじつしている。」(84)きゅうがつじゅうはちにち横浜よこはまく。今回こんかい連絡れんらくおもわなくなく、リンパ球体きゅうたいわなかった。わりにグロブリン製剤せいざい注射ちゅうしゃしていただいた。先生せんせい自信じしんちたおはなし勇気ゆうきづけられた。」(99)いちがつにちよんかい免疫めんえき療法りょうほうのち脱力だつりょく度合どあいはいつものようにかるくなった。機能きのうほう容赦ようしゃなく減退げんたいしていく。」(102)じゅういちがつさんじゅうにちかい(121)。きゅうじゅうねんいちがつさんにちろくかい(141)。三月さんがつさんじゅうにちななかい。「今日きょう記念きねんすべきである。免疫めんえき療法りょうほうで、学問がくもんてきには治療ちりょう効果こうか実証じっしょうされた、と先生せんせいわれた。自分じぶんからだこんひとつはっきりせず、あきらかな進行しんこう停止ていしみとめらないため、両手りょうてをあげて”万歳ばんざい三唱さんしょう”とよろこぶわけにはいかないが、朗報ろうほうにはちがいない。なんねん不治ふちというしたあまんじてきたのだから。変性へんせいした神経しんけい細胞さいぼう再生さいせい困難こんなんというより、不可能ふかのうとされている。だが、生体せいたいかぎりない神秘しんぴ経験けいけんしているいま、これも可能かのう範囲はんいだとかんがえられる。」(山田やまだ[1989:156-157])

国立こくりつ療養りょうようしょ神経しんけい難病なんびょう研究けんきゅうグループ 1996- 『神経しんけい難病なんびょう情報じょうほうサービス』http://www.saigata-nh.go.jp/nanbyo/index.htm
 →「ALS」→「すじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう原因げんいんなにですか?」

すじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう原因げんいん
 自己じこ免疫めんえきせいせつ

運動うんどう神経しんけい攻撃こうげきし、変性へんせい壊死えししょうじる自己じこ抗体こうたい出来できているというせつです。ALSの患者かんじゃ一部いちぶで、単一たんいつクローンせいだかガンマグロブリンしょうともなうものがあることと、動物どうぶつ実験じっけんによる成績せいせきから提唱ていしょうされていますが、通常つうじょう自己じこ免疫めんえきせい疾患しっかんたいしてきわめて有効ゆうこうなステロイド療法りょうほう免疫めんえきグロブリン療法りょうほうではALSの進行しんこうめることは出来できません。」
http://www.saigata-nh.go.jp/nanbyo/als/alsgen.htm

 
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「4 えに直接ちょくせつはらうもの

 これまでをかえると、原因げんいん解明かいめいされ、治療ちりょうほう開発かいはつされるだろうとわれつづけたが、その予想よそうはずれてきた。そのかぎりではALSのひとたちがたものはない。ただ、その可能かのうせいがあることで希望きぼうられ、それがきていくかてになったとしたら、意味いみがあったとってよいはずだ。可能かのうせいがあり、その実現じつげんけてすすんでいることをることで、みずからを、そしてみなを鼓舞こぶすることはある。わたしたちは、実現じつげんしなかった希望きぼう、まだ実現じつげんしない希望きぼう全般ぜんぱん意味いみがないとはおもっていない。
 ただ、なおったほうがよいがまだその方法ほうほう見出みいだされていないというだけでなく、この状態じょうたいにALSがあることにかかわり、ALSのひとたちと医療いりょうとの関係かんけいかかわって、みっつほどのことがこっている。そしてそのみっつは、いずれもALSのひとたちがらしていくのによいことではない。
 だいいちに、直接ちょくせつ支払しはらいについて。結果けっかとしてかなくとも、すくなくとも一時いちじ希望きぼうられるものにはみな価値かちがあり、そのかぎりでは民間みんかん療法りょうほうであれなんであれみな等価とうかだということになるだろうか。わたしふく正統せいとうてきとされるもののかたをもってしまいがちなひとは、こうした態度たいど親近しんきんかんをもつ。ただ、どのような療法りょうほうであってもせいまけめんがあり、効果こうかして支払しはらうものがおおきいことがある。
 まけのものはまず薬剤やくざいとう副作用ふくさようである。わかっていてあえて使用しようすることもあるが、予測よそくされない作用さよう場合ばあいがあり、予期よきしうるのに本人ほんにんらされない場合ばあいもある。ALSの場合ばあいには副作用ふくさようじゅうあつし状態じょうたいになったひとがいることがほうじられたことはないが、病気びょうきでは副作用ふくさよう状態じょうたい悪化あっかさせたりいのちうしなうこともある。そして、医療いりょう保険ほけん支払しはらわれることもあるにせよ、費用ひようがかかる。さらには本人ほんにん時間じかんついやし、治療ちりょうけるときにいることができない★02。そして結局けっきょくうまくいかなければ、失望しつぼうがある。
 だから、ひとときの希望きぼうでもあたえるものであればそれでよいとはえない。効果こうかがある見込みこみがないことがわかっていて、それをかくして提供ていきょうし、そこから利益りえきるなら、それは不当ふとうおこないだとされるだろう。医療いりょうしゃ医学いがくしゃがわにも、正統せいとうてき医療いりょうたいするみずからの優位ゆうい現状げんじょうにおいて存在そんざいしないことをみとめながら、しかし詐欺さぎくらべれば真面目まじめにやっているとおもひとたちがいて当然とうぜんではある。
【103】 永松ながまつあきらなんじ大分おおいた県立けんりつ病院びょういん院長いんちょう)。《原因げんいん解明かいめいされていない現在げんざいてきかく治療ちりょうほう存在そんざいしないし、今日きょうまであらゆる試行錯誤しこうさくごかさねた治療ちりょうほうにも確実かくじつ有効ゆうこうといえるものはなかった。したがってわらをもつかみたい患者かんじゃ家族かぞくが、特異とくい宗教しゅうきょう民間みんかん療法りょうほう貴重きちょう財産ざいさん時間じかん労力ろうりょくついやすことに異義いぎをとなえる資格しかく医師いしにはない。しかしある根拠こんきょもとづく仮説かせつて、疾患しっかん回復かいふく進行しんこう停止ていし、あるいはすこしでも進行しんこうおくらせる目的もくてき研究けんきゅう試行しこうは、世界せかいてき規模きぼ日夜にちやつづけられている。》(永松ながまつ[1998:215-216])
 ALSの場合ばあい、なおってるものがとてもおおきいとかんじられるために、支払しはらうしなうものは相対そうたいてきちいさくられることになる。さらに結果けっかとしてられるものがまだなくとも、その希望きぼうのあるあいだは、希望きぼうがあること自体じたいがよいことである。これらはみな当然とうぜんのことだとわたしおもう。
 けれどもひとつには、ALSであるままでられるものが――もっとおおくできるのに、この社会しゃかい出来でき具合ぐあいのために――すくなくされていて、そのぶんなおることの価値かちたかくされ、そのために、なおるために支払しはらってもよい代償だいしょうたかくなってしまうことがある。つまり、なおらない状態じょうたいでのらしが困難こんなんであるぶんなおることへの期待きたいおおきくなり、なおるためにはらう(がいまのところその結果けっかられない)支払しはらいもおおきくなってしまう。
 そしてそのらしの困難こんなんは、いまのところ医療いりょうによって除去じょきょすることはできないが、社会しゃかいがわべつ手立てだてをとれば軽減けいげんすることはできる。できるのに実際じっさいにはなされておらず、困難こんなんらず、それで支払しはらいもおおきくなる。なくてすむ支払しはらいはすくないほうがよいのだから、この状態じょうたいはよいことではない。

5 なおすための空間くうかんになおらないひとがいること

 だいに、なおすための空間くうかんになおらないひとがいることによって、そのひとはよくきていくことができなくなることがある。
 医療いりょうしゃかぎらず、いのちすくってしまおうとすることはあり、なにかをめたらんでしまうだろうときにそれをめるのをためらうことはある。そして医療いりょうしゃはそうした場面ばめんうことがおおく、またいのちすくうのが仕事しごととされている。たとえば、救急きゅうきゅうしゃはこばれた意識いしきをなくしているひと救命きゅうめいのための処置しょちをする。それは義務ぎむであるともされる。しかしひとすくおうとする一般いっぱんてき性向せいこうや、一般いっぱんてき医療いりょうたすべき職務しょくむとしての救命きゅうめい生命せいめい維持いじという契機けいきべつにすれば、医療いりょう積極せっきょくてきかかわろうとするのは、ひとつには収益しゅうえきむすびつく場合ばあいすくなくとも経営けいえいする場合ばあいであり、ひとつにはなおせる可能かのうせいのある場合ばあいであり、どちらでもないときにはちがってくる。
 収益しゅうえき有無うむ多寡たかはその時々ときどき制度せいどのありかた左右さゆうされる。たとえば比較的ひかくてき経費けいひをかけずに病院びょういんくことができ、医療いりょう保険ほけんとうからの収入しゅうにゅう経費けいひ上回うわまわるなら、そのひと病院びょういんめておくことは経営けいえいじょう有利ゆうりなことがある。他方たほうれることが損失そんしつにつながる場合ばあいにはれられにくい。病院びょういんがわはことさらに利益りえき志向しこうしていなくとも、経営けいえい維持いじせねばならないから、そのひと歓迎かんげいされない。それで入院にゅういんことわられるか、転院てんいん退院たいいんうながされる。
 病院びょういん入院にゅういんしつづけざるをえないことも、入院にゅういんできずまた退院たいいんせざるをえないことも、社会しゃかい設定せっていした条件じょうけんによるのだから、医療いりょう医療いりょうしゃだけにそのせめかえせられることではない。ただ、ALSのひと場合ばあいには、制度せいどわっていくらかは事態じたいはよくなっているはずである[457]。だから病院びょういん経営けいえいじょう問題もんだいだけがあるのではない。
 ALSはやがてなおる病気びょうきになるだろう。だがいまのところは原因げんいん不明ふめいであり不治ふちである。だから少数しょうすう研究けんきゅうしゃにとってはその研究けんきゅう対象たいしょうとなるが、それ以外いがい医療いりょうしゃにとっては、日々ひび身体しんたい状態じょうたい維持いじのために必要ひつようなこと以外いがいにすることはそうない。なおすことにその仕事しごと価値かち見出みいだしているなら、なおせないひとから価値かちることができない。身体しんたいらく状態じょうたいたもつことはALSの本人ほんにんにとってはとても大切たいせつなことだが、医療いりょうがわ関心かんしんくことではない。
【104】 《医学いがくせいなかには、こんな面倒めんどう病気びょうきにはなにをしても無駄むだだと悲観ひかんてきになり、れものにさわるような反応はんのうこすものと、なにとかして治療ちりょうほうつけたいと理想りそうえるタイプがあるが、後者こうしゃ医師いしとなってがたつにつれ、理想りそうもしぼんでいく。》(はち[1991:15])
 なおすことが仕事しごとであり仕事しごと価値かちであるなら、なおらないことは価値かちであったり価値かち否定ひていでありうる。そこから「意味いみのない延命えんめい」という言葉ことばまでの距離きょり比較的ひかくてきちかい。[316]に引用いんようする文中ぶんちゅうには、「学会がっかい権威けんいしゃ」が「ALSには人工じんこう呼吸こきゅうをつけるべきでない。なぜなら不治ふじやまいであるから」とったとある。緊急きんきゅう事態じたいへの対応たいおうとして呼吸こきゅうけてしまうことがあるが、それは、なおらないから、のぞましくないとかんがえられる。そして、ほうけて積極せっきょくてきなにかするのでなく、にゆくのを見守みまもっていさえすればよいのであればそれほど抵抗ていこうかんはないかもしれない。いったん呼吸こきゅうけたらはずすことかできないから、冷静れいせい反省はんせいてきかんがえるなら呼吸こきゅうけないほうがよい、本人ほんにんにそのようにめる時間じかんあたえようとひとがいる。
【105】 だい6しょう紹介しょうかいする鈴木すずき千秋ちあきほんなかつぎのような箇所かしょがある。いちきゅうななねん。《学友がくゆうもり医師いしから、「この病気びょうき放置ほうちすれば自然しぜん窒息ちっそく肺炎はいえん併発へいはつつことになるが、それはもっと残酷ざんこくだ。いま状態じょうたいでは気管きかん切開せっかいし、栄養えいよう鼻腔びこう注入ちゅうにゅうをすすめる」といわれたが、この主治医しゅじい藤沢ふじさわ医師いしうかがうと、まった反対はんたい意見いけんべられた。/「まえ窒息ちっそく状態じょうたいせられれば、無意識むいしきうごいて気管きかん切開せっかいおこなってしまう。しかし冷静れいせいかんがえればこれはすべきではない。[…]自然しぜん悪化あっかゆだねるほかはない。切手きってじゅつはこのような老人ろうじんにはショッキングにすぎるし、こえ完全かんぜんなくなる。たとえそれによって呼吸こきゅうらくになっても死期しき目前もくぜんにある。》(鈴木すずき[1978:101])
 医療いりょうしゃはなおすことが仕事しごとであるひとたちであり、なおらないことに肯定こうていてきになれない。
【106】 医者いしゃは《治療ちりょう成功せいこうこのむ。自分じぶん有能ゆうのうでないとられるのはこのまない。しかし、障害しょうがい患者かんじゃ慢性まんせいてき病人びょうにんはそれこそ自分じぶん無能むのう証明しょうめいである。患者かんじゃ医者いしゃ心理しんりてき距離きょりいているのを当然とうぜんかんじる。患者かんじゃ孤立こりつかんあじわう。病院びょういんごしたことがある障害しょうがいしゃだれでも経験けいけんしている。医者いしゃからけるやさしい軽蔑けいべつにはほとんど敵意てきいちかいものすらある。》(Gallagher[1995=1996:353]。立岩たていわ[2005]で紹介しょうかい
【107】 《医者いしゃ救済きゅうさいしゃとみようとする理想りそう主義しゅぎは、すみやかに患者かんじゃたいする攻撃こうげきてき感情かんじょうわってしまい、ついにはラディカルな「最終さいしゅうてき処方しょほうもとめるようになる。》(Pross & Gotz eds.[1989=1993:5]。立岩たていわ[2005]で紹介しょうかい
 そんなことはない、それはいがかりだと反論はんろんする医師いしもいるだろう。反論はんろんするひと真面目まじめひとたちだから、その反論はんろんはそのひと自身じしんそくすればたっているだろう。また、みぎ引用いんようはドイツのナチス政権せいけん時代じだいになされた病者びょうしゃ障害しょうがいしゃ安楽あんらく(むしろ明白めいはく殺人さつじん立岩たていわ[1997b:236-237,263-265])やその時期じき医師いしたちの行動こうどうについてしるしたほんからだが、そうした悪行あくぎょうおこなったものたちと自分じぶんたちは同列どうれつあつかわれたくないとおもうのも当然とうぜんのことだ。ただそれでも、こうした傾向けいこうがあることは否定ひていできない。
 つぎに、同時どうじに、医療いりょうはなおらずくなることがおおこるであり、それが日常にちじょう出来事できごとであるでもある。それで、そのはたらひとたちはなおらないことやぬことにれていて、それらにたいせいがある★03。
 れていること自体じたいはその仕事しごとをするひとにとって必要ひつようなことでもある。れていなければ、いちいちおおきな衝撃しょうげきけてしまい、それではがもたない。だからこのこと自体じたいをそうめるわけにはいかない。また、利用りようしゃがわからも必要ひつようとされることがある。狼狽ろうばいしたり興奮こうふんしたりしているものたちがいるなかで、一定いってい距離きょりたもち、ことを円滑えんかつすすめるやくになひと必要ひつようなことがある。葬儀そうぎ死者ししゃかなしまないことを、たんたんと仕事しごとすすめてくれるひと必要ひつようとしているわたしたちはめたりはしない。
 ただ、そうしたひと裁量さいりょうまかされるなら、こまることがしょうじてしまうことがあることを、これからいくつかの場面ばめんる。それはまず、らせること、らせないこと、そのありかたかかわってくる。病院びょういんではやっかいなことがこりすぎるのだが、そこではたらひとたちはそのことにれてもいるし、れないとやっていけないのでもある。らせたりらせなかったするそのありかたもこのことに影響えいきょうされるだろう。そしてつぎに、ひとぬことについてかんじることをすくなくせざるをえないひと摩耗まもうかんじることがすくなくなってしまったひとは、んだこと、んでいくことを、れていないひと比較ひかくすれば、容易よういれるかもしれない。このひとたちにまかせられると、よりおおじんほうせられることがある。
 以上いじょう乱暴らんぼうみじかかえすと、医療いりょうしゃは、なおらないことに否定ひていてきであり、同時どうじに、なおらないでんでいくことにはれてもいるということだ。そして社会しゃかいはそのようなに、(すくなくともいまのところは)なおらないひといておく。その環境かんきょうはそのひときてらしていくのに快適かいてきなものではない。

6 なおらないあいだにすべきことができないこと

 だいさんに、もっぱらなおることに関心かんしんかうとき、また医療いりょうくわえるに、いわゆるリハビリテーション、看護かんご)という資源しげんだけにたよらざるをえないあいだ、ALSのひとたちは、なおらないことを前提ぜんていにとりあえずしたらよいこと、またすべきことがうまくできず、うまくきることができないことがある。
 技術ぎじゅつによる解決かいけつのぞまれるが、その方法ほうほういまのところ見出みいだされていない。いずれたしかな方法ほうほう見出みいだされるとして、それには相当そうとう時間じかんはかかるだろう。だから、見出みいだされるまでのあいだは、それはそれとして、ないものはないとしてやっていくしかない。なおらないままできていくための方策ほうさくをとるしかない。だがそのようになかなか事態じたい推移すいいしてこなかった。図式ずしきてきえば、障害しょうがいしゃで(も)ある現実げんじつたいするちからがもっとつよくなってよいのに、病者びょうしゃというわくぐみによってなかなかつよくならなかった。
 ALSは障害しょうがいなのか病気びょうきなのか。ALSのひと病者びょうしゃなのか障害しょうがいしゃなのか。むろん、言葉ことば様々さまざま意味いみ使つかうことができ、それぞれの言葉ことばしめ範囲はんい変更へんこうすることができるから、それによってこたえわってくる。ただ一般いっぱんに、やまい健康けんこう対比たいひされるものであり、くるしかったり気持きもちがわるかったりする。またんでしまうこともあり、よからぬものとされる。また障害しょうがいとは、身体しんたい状態じょうたいかかわって不便ふべんであったり不都合ふつごうであったりすることがあるということだ。やまいによって障害しょうがいることはあるから、両方りょうほうねることはある。ALSは病気びょうきではある。そして同時どうじ機能きのう障害しょうがいしょうずる。ALSのひとたちは同時どうじに、病人びょうにん病者びょうしゃでもあり障害しょうがいしゃであるひとたちだ。こたえとしてはまずはこれでよい。
 そして制度せいどとの関係かんけいでもALSのひとたちは両方りょうほうである。まずALSは「難病なんびょう」である。この難病なんびょうという言葉ことば自体じたい行政ぎょうせいてき呼称こしょうでもある。いちきゅうななねんに「特定とくてい疾患しっかん治療ちりょう研究けんきゅう事業じぎょう」が開始かいしされ、「厚生省こうせいしょう特定とくてい疾患しっかん」に指定していされた病気びょうき(これが行政ぎょうせい用語ようごとしての「難病なんびょう」ということになる★04)については、政策せいさくとして研究けんきゅう推進すいしんすることになり、症例しょうれい研究けんきゅうかすという趣旨しゅしで、医療いりょう補助ほじょがなされてきた。特定とくてい疾患しっかん指定していされている病気びょうきにかかったひとには保健所ほけんじょ申請しんせいすると「特定とくてい疾患しっかん医療いりょう受給じゅきゅうしゃしょう」が交付こうふされる。
 そして同時どうじに、ALSにかかると身体しんたい様々さまざまなところがうごかなくなる。そこでこちらは福祉ふくし事務所じむしょ役所やくしょ担当たんとう申請しんせい判定はんていけ、「身体しんたい障害しょうがいしゃ手帳てちょう」を交付こうふされて、障害しょうがいしゃということになる。
 ただ、ひとによって、どちらを強調きょうちょうするか、れるかはおなじでないようだ。患者かんじゃという規定きていさきひとたちもいる。どうしてだろう。事故じことう途中とちゅうから障害しょうがいしゃになるひとたちもたくさんいるから、障害しょうがいしゃである/ないはまれつきの区分くぶんではないのだが、それでも、障害しょうがいしゃという言葉ことばには、あらかじめの「一般人いっぱんじん」とけられた集団しゅうだんというイメージがあるのかもしれない。それにたいして病気びょうきほうは、可能かのうせいとしてはだれもがなるものという意識いしきがあるのかもしれない。そして、病気びょうきについては治療ちりょうのしようがあるはずだ、本来ほんらい一時いちじてきなもののはずだという希望きぼうもまためられているのかもしれない★05。
 他方たほう障害しょうがいしゃでもあることがわれることもある。病者びょうしゃではなく障害しょうがいしゃだというわれかたもされる。
【108】 《わたし呼吸こきゅう装着そうちゃくすれば、そのときから患者かんじゃ病人びょうにんではなくなるとかんがえている。あたまはたらき・感覚かんかく正常せいじょうであり(むしえる)、吸引きゅういんけいかん注入ちゅうにゅう排便はいべん体位たいい交換こうかんおよたきりによるいたい、かゆい、だるい等々とうとうよん時間じかんきわめてのかかる身体しんたい障害しょうがいしゃだとおもう。/呼吸こきゅう装着そうちゃくある時期じきぎると、やがて長期ちょうき安定あんてい状態じょうたいはいっていく》(新田にった新田にった[2003(1):83])
【109】 本田ほんだ昌義まさよし[95]。《これはわたし持論じろんですが、「ALSは病気びょうきではない。ただ全身ぜんしん運動うんどう神経しんけいおかされた障害しょうがいしゃです。だから介助かいじょがあればなにでも出来できるのです。」と》(本田ほんだ[2000:33])
【110】 橋本はしもとみさお[48]。《ALSは難病なんびょうであると同時どうじさい重度じゅうど障害しょうがいしゃでもあるのですから、ハンディがおおぶん努力どりょく必要ひつようであるとおもいますし、障害しょうがいしゃのニーズに対応たいおうするのは福祉ふくし行政ぎょうせい責務せきむだとかんがえています。ALS患者かんじゃが「社会しゃかいきる」ためには、本人ほんにん自覚じかくはもとより 「医療いりょう福祉ふくし行政ぎょうせい」の協力きょうりょく不可欠ふかけつです。》(橋本はしもと[1998a])
わたしつねに、ALS(すじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう患者かんじゃを、さい重度じゅうど障害しょうがいしゃであるととらえています。ハンディのおおきいもの地域ちいき社会しゃかいきるためには、おうぶん努力どりょくをすることは、至極しごくたりまえのことで、その努力どりょくこたえることは社会しゃかいの(行政ぎょうせいの)責務せきむかんがえています。》(橋本はしもと[2001a])
【111】 《どうもわたしは、患者かんじゃとしての自覚じかくけるらしい。/師走しわすに「街頭がいとう募金ぼきんをしましょう」と、熊本くまもと事務じむ局長きょくちょう提案ていあんしたところ、「街頭がいとうでなくてもいでしょう、まして患者かんじゃさんがさむさのなか屋外おくがい必要ひつようはない」と、なんともつれないお返事へんじでした。/しかし患者かんじゃあつかいされることのないわたしには、納得なっとくできるお返事へんじではありません。》(橋本はしもと[2000a:30])
【112】 《今回こんかいわたしがこので、皆様みなさま貴重きちょうなお時間じかんをいただいたおおきな理由りゆうは、「ALSは死病しびょうではなくさい重度じゅうど障害しょうがいともなやまいである」と、つたえたかったからなのです。》(橋本はしもと[2000c]。デンマークでの国際こくさい会議かいぎ(↓だい11しょう4せつ)での発言はつげん
 まず、病巣びょうそう拡大かくだい病状びょうじょう進行しんこうする、あるいは縮小しゅくしょう治癒ちゆするといったとらかたより、身体しんたい機能きのう低下ていか、できないことの増加ぞうか、また固定こていとしてとらえるほうがALSの現実げんじつそくしているという認識にんしきがある[108]。そして、できないことはおぎなえばできる、そのために必要ひつようなものが必要ひつようだという主張しゅちょうになる[109][110]。
 また、医療いりょう医療いりょうしゃ対応たいおうするのが病気びょうきであるともされるのだが、前節ぜんせつべたように、ALSの場合ばあい医療いりょうはときに必要ひつようだが、医療いりょう内部ないぶかこいこまれてしまうとよいことにはならない。そんなおもいもここにはあるかもしれない。障害しょうがいのあるひとたちのなかからも自分じぶんたちは病人びょうにんではないとわれることがある。それは、医療いりょうサービスを必要ひつようとするのではなく、ゆえに医療いりょう機関きかん医療いりょうしゃ管理かんりされる必要ひつようもないのだとっている。このことはALSのひとたちについても、いくらかは、える。
 さらにALS協会きょうかい当時とうじ事務じむ局長きょくちょうってかかっている橋本はしもとげん[111]には、おとなくしていればよいとされることにたいする抵抗ていこうがある。社会しゃかいがくに「病人びょうにん役割やくわり」という言葉ことばがある。だれもがっていることに名前なまえをつけただけだから、だれったかなどどうでもよいことだが、パーソンズというひとったことになっている(Parsons[1958][1964=1973]、その医療いりょう社会しゃかいがくについて高城たかぎ[2002])。
 病気びょうき場合ばあいには、闘病とうびょうすること、病気びょうきたたかうことはよしとして、それ以外いがい社会しゃかいてき責務せきむ免除めんじょされることがあることがわれる。米国べいこく人類じんるい学者がくしゃが、良性りょうせい骨髄こつづい腫瘍しゅよう全身ぜんしん麻痺まひしていくみずからとその周囲しゅうい世界せかいとをフィールドにしていた著名ちょめいほんにはつぎのように紹介しょうかいされている。
【113】 パーソンズの《論文ろんぶんかなしいことにしちめんどうくさい学術がくじゅつ用語ようごかれているのだが、しかしなにとか翻訳ほんやくしてみればなにのことはない、病気びょうきになったことがあるものならだれでもっていることをいっているにすぎない。つまりこうだ。通常つうじょう社会しゃかいてき役割やくわり――母親ははおや父親ちちおや弁護士べんごし、パン学生がくせい等々とうとう――は、そのひと病気びょうきになったとたんに効力こうりょく一時いちじ停止ていしする。そのひとは“病人びょうにん”という規定きていけ、病気びょうき軽重けいちょうにより通常つうじょう義務ぎむ一部いちぶ、あるいは全部ぜんぶから解放かいほうされる。/通常つうじょう義務ぎむ一時いちじ停止ていしとはいっても、病人びょうにんという役割やくわりえんじるもの義務ぎむまったくなくなってしまうということはない。いやむしろひとつのおおきいやつを背負しょまされる。つまり、回復かいふくけて努力どりょくしまないという義務ぎむだ。》(Murphy[198=1992:31-32])
 それでらくができるときもあるのだが、それはそのひと社会しゃかいてき行為こういしゃとしてはみとめられにくいということでもある。病人びょうにんだまっているものだとされてしまうと、なにいたいことがあるときにはこまる。もちろん、病人びょうにんだからといってこの役割やくわりを担なければならないということはないのだから、病人びょうにんのままでこの役割やくわり拒絶きょぜつすればよいのではある。ただ、病気びょうき治療ちりょうにだけ関心かんしんけられると、それ以外いがい部分ぶぶんけられてよいちからがれるということはある。
 ALSは、うまく工夫くふうして身体しんたい状態じょうたいたもつことができれば、かならずしも苦痛くつうをもたらすものではない。またがすぐにもたらされるものでもない。そしてなおすというやりかたではいまのところはきつづけることができず、対応たいおうのしようのないところがある。他方たほう筋肉きんにくうごかなくなって、できなくなることがてくる。そのかぎりでは障害しょうがいしゃであるという性格せいかくほうつよい。だが、なおるまでのあいだ、なおらないままできていくための手立てだてを十分じゅうぶんられてこなかった。
 それを、病気びょうきとしての把握はあく病人びょうにんとしての認識にんしきつよかったせいにしてしまうことはできない。本人ほんにんたちも支援しえんするたひとたちも、生命せいめい生活せいかつ維持いじのために必要ひつようなものがなにかはわかっていたし、その必要ひつようせいもずっとうったえてきた。ただ、どこまでこしえてそれをいいはれたかである。また支援しえんするがわは、医療いりょう看護かんご以外いがい支援しえん必要ひつようなことがわかってはいても、どれだけそれを現実げんじつうごかせたか、有効ゆうこう機能きのうさせることができたかである。さらに、そのひとたちの「職域しょくいき」がときにはALSのひと生活せいかつ阻害そがいするようにはたらくこともある。このことをだい10しょうでみる。

7 医療いりょう社会しゃかい()がくについて
[…]」(立岩たていわ[2004])


立岩たていわしん 
UP:20030714(資料しりょう:20020718〜より分離ぶんり) REV:1218,19,21 20040221,26 0408,12 0525, 20100410, 19, 0918
ALS  ◇難病なんびょう
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