(Translated by https://www.hiragana.jp/)
立岩真也「即席的研究製造方法即解」
HOME > Tateiwa >

即席そくせきてき研究けんきゅう製造せいぞう方法ほうほうそくかい

立岩たていわしん
2002/07/13 障害しょうがいがく研究けんきゅうかい関西かんさい部会ぶかいだい15かい研究けんきゅうかい
14:00〜17:00 会場かいじょう茨木いばらぎ市立しりつ男女だんじょ共生きょうせいセンター・ローズWAM



立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう入試にゅうし情報じょうほうhttp://www.r-gscefs.jp/?p=113


報告ほうこく(14:10-15:20)
 1)まえおき
 2)なおすこと、なおることについて
 3)精神せいしん障害しょうがい、について
 4)労働ろうどう、と
 5)そうじて、そのひとたちの歴史れきし

質疑しつぎ応答おうとう(15:40-17:00)

報告ほうこくぜんHP掲載けいさい資料しりょう(20020527,更新こうしん:0606)


 ※報告ほうこく質疑しつぎ応答おうとう部分ぶぶんについては、土屋つちや貴志たかしさんが作成さくせいしてくださった記録きろくがもとになっています。「報告ほうこく」の部分ぶぶんの4)までは、報告ほうこくのち立岩たていわ付加ふかしメモをふくめ、障害しょうがいがくメイリング・リスト送信そうしんしたものをすこくわえ、えて以下いか掲載けいさいしました。「質疑しつぎ応答おうとう」の部分ぶぶん土屋つちやさんの記録きろくをほぼそのまま使つかわせてもらっています。(20031204)

 
 
>TOP

報告ほうこく(14:10-15:20)

1)まえおき

 まだやられておらず、やったほうがいい仕事しごとがたくさんある。なのに社会しゃかいがくなどでは、主題しゅだいつけられないというじんがいたりして不思議ふしぎ。いくらでもあるではないかとおもうのだが。
 また、対象たいしょうをみつけて分析ぶんせきすることがむずかしいというが、障害しょうがいについては、すでに様々さまざま主題しゅだいについてろんじられてきたその歴史れきしがある。したがって、なにろんじられてきたかを、まず記述きじゅつするというがある。自分じぶんあたま使つかまえに(使つかうのが面倒めんどうだったら)、人々ひとびとなにかんがえてきたのかをること。そのほうらく
 そして、摩擦まさつ対立たいりつまりやあるところをみること。なにもない(ようにえる)ところからなにかを見出みいだすのはなかなかたいへん。わざがいる。それにたいして、相手あいてがわにすでに喧嘩けんかこっており、さらにそれには解説かいせつがついていたりするのだから、それを記述きじゅつするほうが、やはりらく、でたいていおもしろい。
 そしてらく、というだけでなく、やはりそういう部分ぶぶん大切たいせつなのだとおもう。そしてそういうあらそい、疑念ぎねん、…がしょうじたひとつのわたしは1970ねん前後ぜんこうだとおもっていて、そこからの歴史れきし現在げんざい歴史れきし記述きじゅつする必要ひつようがあるとおもっている。
 では、具体ぐたいてきにどんなおもろいことがあり、調しらべたりかんがえたりするとおもしろいことがあるのか。それを、これからただたんに列挙れっきょしていくことにする。

 * こんなようなことは
2000/11/01 「たぶんこれからおもしろくなる」,『そうぶん』426(2000-11):1-5
http://www.arsvi.com/0w/ts02/2000033.htm
*2001/07/30「なおすことについて」,野口のぐち裕二ゆうじ大村おおむら英昭ひであきへん臨床りんしょう社会しゃかいがく実践じっせん』,有斐閣ゆうひかく pp.171-196
http://www.arsvi.com/0b/010730ny.htm
などにもいています。以下いかにもいくつか引用いんようがありますので、どうぞ。

 
>TOP

2)なおすこと、なおることについて。

 たとえばはん原発げんぱつ運動うんどう障害しょうがいしゃ運動うんどうとのあいだ摩擦まさつ齟齬そごしょうじことがあったのだが、それはなんだったのか。
 「早期そうき発見はっけん」・「早期そうき治療ちりょう」にたいする批判ひはんというものがなされたことがあったのだが、それはいったいなにに文句もんくったのか。
 そうした批判ひはん言説げんせつ位置いち、のすこ手前てまえに、さまざまな療法りょうほう体験たいけんしてきた(させられてきた)にんたちの体験たいけん記録きろくすること。TVてれび放映ほうえい書籍しょせき出版しゅっぱんがきっかけで、いままたドーマンほう話題わだいになったりしているのだが、こうした様々さまざま療法りょうほうがどのようにはやり、あるいはすたれ、あるいは存続そんぞくしてきたのか。なおす業界ぎょうかいひとたちは失敗しっぱい記録きろくしない。それが研究けんきゅう業績ぎょうせきになったりすることはない。だからその外側そとがわひと記録きろくすることになる。

 * このことは、1)にもあげましたが
2001/07/30「なおすことについて」,野口のぐち裕二ゆうじ大村おおむら英昭ひであきへん臨床りんしょう社会しゃかいがく実践じっせん』,有斐閣ゆうひかく pp.171-196
http://www.arsvi.com/0b/010730ny.htm
にもきました。「即席そくせきてき研究けんきゅう製造せいぞう方法ほうほうそくかい
http://www.arsvi.com/ts/2002077.htm
にもいくつか引用いんようがあります。
 また、それは、ようやく校正こうせいということになってめでたい明石書店あかししょてんかん障害しょうがいがくほんだいだん掲載けいさいされるはすの「ないにこしたことはない、か・1」(昨年さくねん関東かんとう部会ぶかいでの報告ほうこくをほとんどなおさず、せてもらうことになります)の主題しゅだいでもありますが、そこでは「なおすことについて」と同様どうよう事実じじつをきちんとっているのではなく、ほぼ、思弁しべん終始しゅうししています。ただ、関連かんれんファイルが
http://www.arsvi.com/0ds/0.htm
にありますのでごらんください。
 また、一部いちぶ話題わだいになったらしい番組ばんぐみほんについては、わたし案内あんないをいただいたものの、きませんでしたが、
◇2002/07/22の読書どくしょかい報告ほうこく
http://members.tripod.co.jp/saihikarunogo/lunavideosanda0722.html
◇2002/06/13三田みた市立しりつ図書館としょかんひらいた読書どくしょかい報告ほうこく
http://members.tripod.co.jp/saihikarunogo/lunavideosanda0613.html
らせていただいています(「全文ぜんぶん掲載けいさい」からもリンクされています)。
 そして、研究けんきゅうかい当日とうじつ瀬山せやま紀子のりこさんから紹介しょうかいしていただいていた、古井ふるいとおるさん(理学りがく療法りょうほう神戸大学こうべだいがく大学院だいがくいん医学いがくけい研究けんきゅう博士はかせ後期こうき課程かてい在学ざいがくちゅう)がいらしていて、ほんのすこしだけおはなしをうかがうことができたのですが、かれはいま、過去かこ治療ちりょうがどのような(まけの)効果こうかあたえたのか、あたえているのかを研究けんきゅうしていて、それを博士はかせ論文ろんぶんにまとめているのだそうです。とても重要じゅうようなお仕事しごとではないかとおもいます。

※20030724追記ついき
 古井ふるい とおる 20030829 「リハビリ再考さいこう「がんばり」への呪縛じゅばくとそのOUTCOME」
 障害しょうがいがく研究けんきゅうかい関西かんさい部会ぶかいだい19かい研究けんきゅうかい 於:京都きょうと
※20031204追記ついき
 古井ふるい とおる 20031101 「リハビリテーションの誤算ごさん
 現代げんだい思想しそう』31-13(2003-11):136-148

 
>TOP

3)精神せいしん障害しょうがい、について

 「触法しょくほう精神せいしん障害しょうがいしゃ」のことがここすうねん、また議論ぎろんされ、法律ほうりつつくろうというひとたちがいて、反対はんたい運動うんどうがある。これはもちろんはじめてのことではないわけで、わたし自身じしんがすこしおぼえているところでも1980年代ねんだいのはじめにも保安ほあん処分しょぶん制度せいどつくろうとするうごきとそれにたいする反対はんたい運動うんどうがあった。それがなにであったのか、これもまたあまり記録きろくされていないとおもう。
 そしてなにうか。たとえば、精神せいしん障害しょうがいしゃ、あるいは知的ちてき障害しょうがいしゃは、ひとたちとおなじくらいには危険きけんでない、あるいはむしろ平均へいきん下回したまわるのだということをってきた。様々さまざま誤解ごかいがあるかぎりにおいてこうした言明げんめいいまでも有効ゆうこうではある。しかし、そのようないいかた全部ぜんぶっていけるかといえば、そうではないようにもおもう。とするとなにうのか。こんなことをかんがえるうえでも、なにわれてきたか、なにってきたかをること。
cf.
http://www.arsvi.com/0ds/m.htm
http://www.arsvi.com/0ds/m2002.htm
etc.

 身体しんたい障害しょうがいであれば、たとえば横塚よこつか晃一こういち
http://www.arsvi.com/0w/yktkkuic.htm
といったひとのことは、それなりに記憶きおくされるようになった?のだが、(ついでに→こないだ横田よこたひろしさんと対談たいだんというのをやりました
http://www.arsvi.com/0w/ykthrs.htm
といっても、もっぱらわたしほりりききだすというものでしたが。かれはいくつか対談たいだんしてそれをどっかからしたいとのこと。おなじくあおしばかい神奈川かながわけん連合れんごうかい小山こやま正義まさよしさんも記録きろくしたいという意向いこうがあるとメイルにいてらっしゃいました。とうひとたちにおいて、かたろうとする用意ようい相当そうとうにあるということだろうとおもいます。)
※20031204追記ついき
 横田よこたさんは自分じぶんかれるばかりだったこのとき対談たいだんにいらず、そのもう一度いちど対談たいだんしました。後者こうしゃほう収録しゅうろくされるほんが2004ねんのはじめには現代書館げんだいしょかんからます。
※200401追記ついき
 出版しゅっぱんされました。→横田よこたひろし 20040125 否定ひていされるいのちからのい――脳性のうせいマヒしゃとしてきて 横田よこたひろし対談たいだんしゅう
たとえば、吉田よしだおさみというひと
http://www.arsvi.com/0w/ysdosm.htm
ったこともまた、かんがえられてよいはずなのだとおもう。(かれほん、もうみな絶版ぜっぱんになっているんじゃないかと研究けんきゅうかいではいましたが、山田やまださんからおしえてもらったところでは&このMLにもいておられたように([6833]) 19831201『「精神せいしん障害しょうがいしゃ」の解放かいほう連帯れんたい』(新泉しんいずみしゃ,246p. 1500えん)はまだ入手にゅうしゅ可能かのうです。)

 個人こじんだけでなく組織そしきについてもおなじことがえる。
全国ぜんこく精神せいしん障害しょうがいしゃ家族かぞくかい連合れんごうかいぜんいえれん)」
http://www.arsvi.com/o/zkr.htm
といった立派りっぱ組織そしきであれば、いろいろと出版しゅっぱんぶつなどあったりするのでしょうが(それでもこの組織そしき主題しゅだいにした研究けんきゅうというのがあるのか?)
全国ぜんこく精神病せいしんびょうしゃ集団しゅうだん
http://www.arsvi.com/o/zss.htm
というような組織そしき?となると(ってよいほどには)らない。これももったいない。
※20031204追記ついき
 2003ねんなつにこの組織そしき?のメンバーにおいした。ふる機関きかんなどをだれかまとめてくれたらとおっしゃっていた。
※200405追記ついき
 わたし手元てもとにあったほん大学院だいがくいん院生いんせいしつうつしました。→そのリスト

 前便ぜんびんしるした、吉田よしだおさみのほん入手にゅうしゅして、20ねんぶりぐらいにんだのですが(以前いぜん図書館としょかんりてんだ)、おもしろいです。すこしだけですが引用いんようしておきました。
http://www.arsvi.com/0w/ysdosm.htm
たとえば、それと、ここのところ2かいにわたって書評しょひょういた「べてるのいえ」の
http://www.arsvi.com/o/beteru.htm
り、との異同いどう連続れんぞく連続れんぞく、についてかんがえることもおもしろいとおもう。それはひとつに、「病気びょうき」「障害しょうがい」をどうとらえるかということにもかかわり「病因びょういんろん」ともかかわってくる。このことについては、ニキさんが翻訳ほんやく紹介しょうかいされているほんかれている文章ぶんしょうにもすこし
言及げんきゅうさせていただきつつ、
・2002/04/01「生存せいぞんあらそい――医療いりょう現代げんだいのために・2」,『現代げんだい思想しそう』30-04(2002-04):150-170
・2002/06/01「生存せいぞんあらそい――医療いりょう現代げんだいのために・3」,『現代げんだい思想しそう』30-7(2002-6):41-56 資料しりょう
http://www.arsvi.com/0w/ts02/2002021.htm
かんがえたことをいたので、よろしかったらどうぞ。
また、運動うんどうろん組織そしきろんとしてかんがえるべきこともあるだろう。

 昨年さくねん(2001ねん)、とあるところである大学院生だいがくいんせい相談そうだんけた。沖縄おきなわにフィールドワークにってみたのだが、なかなか…、という。どういうきっかけで?とくと、F・ガタリ精神せいしん管理かんり社会しゃかいをどうえるか?』(松籟しょうらいしゃ、2000ねん、290p.、2800えん)をんで、という。(そのときにはこのほんんでなくて、あと注文ちゅうもんしてんだ。山本やまもと真理まりさんが[jsds:6853]で紹介しょうかいされていた「すべての些細ささい事柄ことがら」というドキュメンタリー映画えいが舞台ぶたいにもなったラボルド精神せいしん病院びょういんのことがおもにはいてあるほんで、おもしろいほんです。ここに「沖縄おきなわ精神せいしん医療いりょう文化ぶんか」というだい高江洲たかえす義英よしひでへのインタビューが収録しゅうろくされている。ところで上記じょうきの「べてるのいえ」でつくられているビデオは「ベリー・オーディナリー・ピープル」というのだが、なにやら、「すべての些細ささい事柄ことがら La moindre des choses」というだいも、それにつうじるものがあるようにもおもう……どちらもてません。)さてそのことはそれとして、いろいろとはなしていくと、(そういうことを調しらべようというひとにとっては)基礎きそ知識ちしきとしてっておいてよいのではおもえることをらされていないようだった。かんがえてみれば、情報じょうほうげんがなかなかないから(つかんでしまえばいもづるしきにぞろぞろてくるのだが)そういうものかもしれない。それを論文ろんぶんにするかどうかはべつとして、やはりっておいてよいのではなかろうかと、あるいは修士しゅうし論文ろんぶんということであれば、沖縄おきなわ精神せいしん医療いりょう特質とくしつなんていうむずかしい主題しゅだいに(なかなかそちらにって調しらべることもむずかしいなかで)以前いぜんに、っておいてよい&調しらべれば調しらべられる近年きんねん歴史れきしをとりあえずまとめても立派りっぱ論文ろんぶんになるのではないかというようなことをったとおもう(上記じょうきほんにもさんわき康生やすお精神せいしん医療いりょうさい政治せいじのために」という、この主題しゅだい関係かんけいする文章ぶんしょうじつ収録しゅうろくされている)。

 
>TOP

4)労働ろうどう、と

 労働ろうどうについても、理論りろんてき考察こうさつもふくめ、やってよいことがたくさんある。これは運動うんどうにとっても困難こんなん主題しゅだいだった。いわゆる「自立じりつ生活せいかつ運動うんどう」においても前面ぜんめんにはてこない(ところに意味いみがあったというところもあるのだが)。そしてわたし(たち)にとっても。(まだろんじることができないと『なま技法ぎほう』にしるした。)
 とにかくしょくかせるのだという職業しょくぎょうリハビリテーションのながれがある。そして、実質じっしつてきにはちゅうごす(そのあいだおや一息ひといきつける)場所ばしょとしての「作業さぎょうしょづくりの運動うんどう
 それにたいして、またそれとともに、
 「労働ろうどうからの撤退てったいという路線ろせんがあった。はたらけなくてかまわない、「ただめしい」を肯定こうていしようというのである〔安積あさか 1990,pp.28-29〕。と同時どうじに、障害しょうがいしゃにしつらえられた否定ひていし「一般いっぱん就労しゅうろう」を主張しゅちょうする運動うんどうがあり、さらに「きょうはたらけ」をかかみずからがはたらつくろうとする運動うんどうがあった。問題もんだい複雑ふくざつさをしめすこうした多面ためんせい記述きじゅつしつつ[…]そのうえかんがえていく必要ひつようがある。」
 これはさきの研究けんきゅうかいのための資料しりょう
http://www.arsvi.com/0w/ts02/2002077.htm
でも引用いんようした、2001/12/25 「できない・と・はたらけない――障害しょうがいしゃ労働ろうどう雇用こよう基本きほん問題もんだい」,『季刊きかん社会しゃかい保障ほしょう研究けんきゅう』37-3:208-217(国立こくりつ社会しゃかい保障ほしょう人口じんこう問題もんだい研究所けんきゅうじょ
http://www.arsvi.com/0w/ts02/2001043.htm
一部いちぶです。
 じつは、上記じょうきでは最後さいごしるしたながれをつくってきた「共同きょうどうれん
http://www.arsvi.com/0w/o/kdr.htm
関係かんけいしゃ?が中心ちゅうしんになって、調査ちょうさ研究けんきゅうをやろうということになっていて、はじまっています。代表だいひょう熊本学園大学くまもとがくえんだいがく花田はなたさんで、わたしは、またしても、名前なまえだけってますがなにもできていません。興味きょうみのあるほうがいたら連絡れんらくください。先方せんぽうつたえます。会合かいごう名古屋なごやあたりでやることがおおいのかな。
 「しばらく消費しょうひろんじられてきた。それはそれでよいとして、これからすくなくともすうじゅうねん労働ろうどう国家こっか分配ぶんぱいといった古色こしょく蒼然そうぜんとしたものについてかんがえることが大切たいせつなことになる。」と
2002/10/00「労働ろうどう分配ぶんぱい正解せいかい理由りゆう」,『グラフィケーション』123 特集とくしゅうはたらくことの意味いみ
http://www.arsvi.com/0w/ts02/2002041.htm
にもきました。そのとおりにおもっています。
 だい3・4便びんにもかかわりますが、「べてるのいえ」が社会しゃかいがくてきに?おもしろいのもそういうことにかかわっているとおもっています。
http://www.arsvi.com/0w/ts02/2001000.htm

 もうひとつやっかいな問題もんだい教育きょういくがある。
 障害しょうがい教育きょういく(についての議論ぎろん)の歴史れきし特殊とくしゅ教育きょういく研究けんきゅうしゃたちがまとめたものはあるが、それぞれのバイアスがある。普通ふつう学級がっきゅうへ、という就学しゅうがく運動うんどう。そのときの/その議論ぎろんがなんだったのか。これは学校がっこうというものをどうかんがえるか、につながる。が、とりあえず、なにこったのか、人々ひとびとなにかんがえたか、調しらべてまとめておく必要ひつよう
 (だれんでない部分ぶぶんだが、拙著せっちょ私的してき所有しょゆうろんだいしょうわりのほうで、このことをすこしかんがえてみている。)

 
>TOP

5)そうじて、そのひとたちの歴史れきし

 「自立じりつ生活せいかつ運動うんどう」、自立じりつ生活せいかつセンター」のこと。なま技法ぎほう調しらべた以降いこうのこと。調しらべたいが、調しらべられていない。
 たとえばまた全国ぜんこく障害しょうがいしゃ解放かいほう運動うんどう連絡れんらく会議かいぎぜんさわれんがやってきたこと。それはどういううごきをたどったのか。単純たんじゅんなモノグラフでよいから。
 そして知的ちてき障害しょうがいをめぐるうごき。たとえばピープルファースト。なにかがはじまるときにそれをえる、というのは特権とっけんてきなことだ(cf.寺本てらもと晃久あきひさ)。
 たとえば長瀬ながせやく国際こくさいてき障害しょうがいしゃ運動うんどう誕生たんじょう:DPI』。これは事務じむきょくでアルバイトをしていた女性じょせい修士しゅうし論文ろんぶんだったとおもう。内部ないぶにいたから、設立せつりついた状況じょうきょう、そのしばらくの経緯けいいをある程度ていど内部ないぶからもえがけてもいる。おもしろいから日本語にほんご翻訳ほんやくもされた。

 断絶だんぜつこっている。たとえば論文ろんぶん「1970ねん」にいたこと(→拙著せっちょよわくある自由じゆうへ』収録しゅうろく)。このころから、障害しょうがいをめぐって別様べつようかんがえることがこり、それが現在げんざいにつながっている。
 この時代じだい社会しゃかい運動うんどうけたことになっていて、もだしてかたらず、さけまないとかたれない、というふうになっている。ただ、運動うんどうけてもそのひと日常にちじょう持続じぞくしていくが、障害しょうがいしゃ運動うんどうけてやめたら生活せいかつかない。だから持続じぞくする。けながら法螺ほらいていればよいというのではなく、現実げんじつかい、けないたたかいを持続じぞくしていかなくてはならない。このことがこの運動うんどうしつしめしている。
 運動うんどう記録きろくまでまわらない。そんなことをやっているひまはない。でも、実際じっさいにやっている人々ひとびとこそが、当座とうざしのぎではいけないとかんがえている。基本きほんてきにどうかんがえたらいいのか、もとめている。研究けんきゅうしゃがそこに関与かんよできる余地よちがあり、状況じょうきょうとしてもそうなっている。
 運動うんどうがわ研究けんきゅうしゃ使つかう、といううごきになってきている。うまく使つかったのは(=研究けんきゅうしゃがこきつわかれたのは)自立じりつ生活せいかつセンターけい組織そしき全国ぜんこく組織そしき
 かんがえるまえくこと。なにかんがえたらいいかからない、となやむのではなく、調しらべてみればかんがえたいことがでてくる。論点ろんてんてくる。まずたんなるモノグラフでいい。

 せられる媒体ばいたい:いまのところ確実かくじつなところはない。ひとひとつのテーマを50まいでまとめられるはずがない。主題しゅだいによってはなが必要ひつようがある。とりあえず50まい、それをなんほんく。
 いま、ききと調査ちょうさなどは、ほとんど自分じぶんではできていない。いまかんがえれば、1980年代ねんだいわりは、くらべれば時間じかんがあったのだとおもう。時間じかんがあるひとともしい。いまようやくこうとおもっているのは、神経しんけい難病なんびょうすじ萎縮いしゅくせいがわさく硬化こうかしょう=ALS)のひとたちの経験けいけん。『現代げんだい思想しそう』8がつごうからる。ALSについては闘病とうびょう機関きかんもたくさんている。そこから引用いんようかさねていっても、すぐ50まい×10かい=500まいくらいになるが、そのひとたちはそれだけのせいきている。

 
 
>TOP

質疑しつぎ応答おうとう(15:40-17:00)[「:」以下いか立岩たていわ回答かいとう

(A)ひとつは、1970ねんあたりが区切くぎりという実感じっかん自分じぶんにもある。社会しゃかい運動うんどうから社会しゃかい福祉ふくしんだかたちになっていたりする。ただ、それ以後いごおなじような体験たいけんをしたひとたちがくわわっていない。そういう分野ぶんやからの参入さんにゅうえたのちで、学校がっこう教育きょういくけたひとたちがになになってきていて、かんがかたわってきている。そのあたりをっかけてしい。
 ふたつめは、就学しゅうがく闘争とうそう以前いぜんのことをおもった。就学しゅうがく猶予ゆうよでも学校がっこうっていなかったわけではないはず。そこから障害しょうがいしゃ学級がっきゅうされた。そういう体験たいけんしゃ証言しょうげんがなかなかこえてこないので、っかけてしい。

 :ひとつめにすとすると、バックグラウンドのギャップをめきれないとしても、福祉ふくし業界ぎょうかいでこれからはたらひとに、こういうことがあったぞとらせる、ということでもある。
 ふたつめのはなしは、昭和しょうわ30年代ねんだいかこみがこった。そのはじまりは戦後せんごで、それほどむかしのことではない。経験けいけんしゃきているので、さえられる。

(B)あたま使つかまえけというが、そもそも立岩たていわさんが障害しょうがいしゃ業界ぎょうかい研究けんきゅう対象たいしょうにしようとした動機どうきは?

 :自分じぶんのことでいえば、いわゆる障害しょうがいしゃ問題もんだいからひっかかったわけではなくて、いわゆる能力のうりょく主義しゅぎをどうかんがえるか、えられるか、というテーマの関連かんれんむすびついた。この社会しゃかいはそんなにいい社会しゃかいじゃない、とおもうとき、その社会しゃかい構成こうせい原理げんりとか価値かちをどうかんがえられるか、わる可能かのうせいがあるか、ということをかんがえてきている。生活せいかつとして特別とくべつ出来事できごとがあったわけではない。ただ、大学だいがくはいった79ねんは、養護ようご学校がっこう義務ぎむとしだし、保安ほあん処分しょぶん反対はんたいうごきもあって、そういうことがまわりにあってかかわったこととかもある。

(C)大著たいちょ私的してき所有しょゆうろん』をいただきながら、いつも読破どくはできずに途中とちゅう挫折ざせつする。それは、さきほどのげんにあるように、「かんがえるまえかれている」から?、というか、・・・「編集へんしゅうされていないから?」、いや、「従来じゅうらいのアカデミズムの流儀りゅうぎとはちがった編集へんしゅう方針ほうしんをとってチャレンジされている」から?
 当事とうじしゃせいのない研究けんきゅうしゃが、どうして障害しょうがいしゃ運動うんどうに、関心かんしんって研究けんきゅうてきかかわるかということでは、ポリオかい仲間なかましゃべると、「研究けんきゅうしゃによる搾取さくしゅ(メシのたねにしてる)」について警戒けいかいし、嫌悪けんおするこえをよくかされるが・・・。フェアな関係かんけいづくりにはおおくの課題かだいがあるとかんじている。研究けんきゅうしゃ権力けんりょくせい研究けんきゅう自体じたいのもつ「権力けんりょく作用さよう」については?(「ちからなり、とき暴力ぼうりょくなり」ってね。)

 :編集へんしゅう構成こうせい作業さぎょうはかなりしている。むしろ『私的してき所有しょゆうろん』は圧縮あっしゅくぎているのかも。でもおもったとおりに、かんがえた順番じゅんばんいているとわれてしまうのはなんでだろう?
 研究けんきゅうしゃがどういう動機どうきなにをするか、といういについては、なにでもいい、というスタンスをとりたい。それが結果けっかとして、調査ちょうさ対象たいしょうになるひとたちに「これはなにだ」とおもわれることもあるのだろう。しかし、そういうことについて日常にちじょうてき深刻しんこくかんがえることはしていない。医療いりょう看護かんご社会しゃかい福祉ふくし業界ぎょうかい論文ろんぶんは、加害かがいてきであるまえ内容ないようなものがすくなくない。それだったらこういうことをけば?というのが今日きょうはなし
 ただ、運動うんどうやっているひとたちと相反あいはんすることをくことはありうる。自分じぶんとしてはそのことをうしかないとおもえば、そううしかない。それは仕方しかたない。でも、おおくの研究けんきゅうしゃは、そこまで仕事しごとをしていない。業界ぎょうかいなかからてこない。

 (C)業界ぎょうかい頑張がんばさんたちは、よくもわるくも、あるしゅ使命しめいかん今日きょうよりもましな明日あしたを!)でやっているが、「社会しゃかいくターゲット」として、外野がいやから接近せっきんするだけなら、諸々もろもろ権力けんりょく構造こうぞう加担かたんせずにすむ、ということ?

 :業界ぎょうかい論文ろんぶん使命しめいかんかれるわけではなくて、業績ぎょうせきつくらなければならないからただいている論文ろんぶんがある、というのがひとつ。使命しめいかんからかれていても、それがどこにはっし、どこにくのか、ということ自体じたい吟味ぎんみすべき。
 外野がいやでいることについては、それでもゲームにかかわっている。それでいやすいのなら、えばいいじゃないか。そのあとどうなるかは、またかんがえる。なかにいるひとも、外野がいやてき視点してんをほしがっている。そういうひとたちと協同きょうどう役割やくわり分担ぶんたんがある。なかはたらいているからえないけど、かたられるべきとおもっていることを、外野がいやわりにかたる、ということもある。なかにいるひとも、なかにいながらそとからる、ということは不可能ふかのうではない。

 (B)立岩たていわさんは当事とうじしゃ主体しゅたいとなって運営うんえいする自立じりつ生活せいかつセンターにかかわっていたのだとおもうが、知的ちてき障害しょうがいしゃ支援しえんしている施設しせつとう当事とうじしゃでないひとたちが中心ちゅうしんとなって運営うんえいしているところでは、まず当事とうじしゃよりも支援しえんしゃ運営うんえいしゃのいいぶんくことになる。すると当事とうじしゃ乖離かいりする。当事とうじしゃ研究けんきゅうしゃ位置いち関係かんけい立岩たていわさんじゃなく院生いんせいはいったときに現場げんばあつかいはちがうのでは?

 :アクセスすることのむずかしさに直面ちょくめんしては、様々さまざま手練しゅれん手管てくだ使つかって、やれることをやるしかない。たとえば医療いりょう病院びょういんなかれるところはいいところで、わるいところはれてくれない。たとえば医療いりょう社会しゃかいがくで、ゴフマンのような、実証じっしょう研究けんきゅう研究けんきゅうはない。しかしALSなどでは、患者かんじゃ回顧かいころくなどで病院びょういんめいなどが実名じつめい公刊こうかんされているから、実名じつめい引用いんようできる。いろいろものをかんがえているソーシャルワーカーと仲良なかよくなるとか、いろいろなやりかたがある。接近せっきんできるところに接近せっきんするしかない。痴呆ちほうせい老人ろうじんのフィールドワークで、ぼけることがぼけ老人ろうじんにとってどうなのか、ということをやっている研究けんきゅうしゃもいる。かれ仕事しごとはそれ以前いぜんにはなかったもので、とても面白おもしろい*。ただ、今日きょうはなしたことは、フィールドにまえにできること。
立岩たていわ しん也 2002/07/25出口いでぐちやすしやすし野口のぐち裕二ゆうじ医療いりょう社会しゃかいブックガイド・18)
 『看護かんご教育きょういく』2002-07(医学書院いがくしょいん

 (D)当事とうじしゃとその家族かぞく支援しえんする実践じっせんをしていれば、病院びょういんとつながっていくから、なにえなくなってしまうのでは? 院内いんないソーシャルワーカーからも相談そうだんされて、ソーシャルワーカーとおなじように守秘しゅひ義務ぎむわされて、なにけなくなってしまう。どう支援しえんするのかで、どんまりになっている。

 :一般いっぱんてきこたえはない。当人とうにんをとりあえず支援しえんするか、としてつめたくするか、どっちか。前者ぜんしゃらなければならないわけではない。ただ、そのそのおうじてやりようがあることはある。固有こゆうめいけなくてもけることもある。守秘しゅひ義務ぎむがかからないケースから記述きじゅつする方法ほうほうもある。
 調査ちょうさするとかいって、本人ほんにんたちにフィードバックがない場合ばあいなど問題もんだいになる。調査ちょうさされるがわは、自分じぶんにとってやくにたない研究けんきゅう拒否きょひすればよい。研究けんきゅうしゃことわられても仕方しかたがない。研究けんきゅうされるがわ研究けんきゅうしゃをうまい具合ぐあい利用りようすればよい。当事とうじしゃにプラスになるとわかれば、研究けんきゅうしゃれるようになる。障害しょうがいしゃ運動うんどうはそうだった。調査ちょうさされるがわもしたたかになる必要ひつようがある。

 (E)研究けんきゅうというものをどういうものとかんがえているか?
 :あるしゅ実践じっせんてき関心かんしんはある。そして面白おもしろいこともある。ものを調しらべたり、いたりすることのたのしさはある。くるしいところもあるが。対象たいしょうからけるたのしさ、障害しょうがいしゃ運動うんどうからったものは、自分じぶん自身じしんきているうえ解放かいほうてき肯定こうていてきなものであった。

 (F)社会しゃかい福祉ふくし業界ぎょうかいでは、必要ひつようせいすら認識にんしきされていない。障害しょうがいがくとか立岩たていわさんの研究けんきゅうと、社会しゃかい福祉ふくしがくとのあいだに、接点せってんはあるか?
 :あるとおもう。業界ぎょうかいわってきている。いま状態じょうたい満足まんぞくしていないひとおおい。なにをどういう方法ほうほう調しらべなければならないかかんがえている。業績ぎょうせきづくりだけでやっているわけではないが、なにをしていいかわからないひとたちに、内部ないぶ外部がいぶから提起ていきしていくことに意味いみがある。業界ぎょうかい外部がいぶもとめている。内部ないぶひとたちと一緒いっしょにできることもある。

 *出席しゅっせき33にん手話しゅわ通訳つうやくしゃにん

 
 
>TOP

■[資料しりょう作成さくせい:20020527,更新こうしん:0606

◆2001/07/30「なおすことについて」より
 野口のぐち裕二ゆうじ大村おおむら英昭ひであきへん臨床りんしょう社会しゃかいがく実践じっせん有斐閣ゆうひかく pp.171-196

 「けれど本章ほんしょうはその臨床りんしょう(についての)社会しゃかいがく成果せいか報告ほうこくするのではない。たんにふたつのことをべるにすぎない。ひとつに、なおすことをめぐって、実際じっさいこったこと、こっていることをわすれないうちに、おぼえているひときているうちにきちんと記述きじゅつしておくことをしたらよいのではないかと提案ていあんする。もうひとつは、そこになにがしめされたのか、いまとりあえずかんがえられることをすこかんがえてみる。
 …(りゃく)…
 実際じっさい作動さどうしている力学りきがくがもっと記述きじゅつされてよいとおもう。ただ、たとえば医療いりょうであれば、かなりおおくのひとはある程度ていど医療いりょうとのつきあいというものはあって、病院びょういん医者いしゃ雰囲気ふんいきはそれなりにっている。とはいえ、それ以上いじょう、それ以外いがいのことはないと見切みきりをつけることもないかもしれず、丹念たんねん記述きじゅつしていくと、っているようでらないことがてくることはありうる。たとえば「会話かいわ分析ぶんせき」といった手法しゅほうでそういう接近せっきんはじまっているのかもしれない。ただ、わたしたちがすでになんとはなしにっていることをえたことをうには、それなりのわざ工夫くふう必要ひつようとするだろう。わたしは、そういうむずかしいことをやるまえに、そんな高等こうとうわざようする仕事しごとでなくてよいから、してよいことがあるようにおもう。
 それは波風なみかぜった摩擦まさつこっためん、そこにしょうじたとがりやとげについて、その歴史れきしについて調しらべることである。それらのおおくは、そうむかしのことではない、ここすうじゅうねんあいだにあったことであり、ちいさなしょうじたことだ。もちろん医療いりょう医学いがくかぎっても、おおきな事件じけんとなった公害こうがい薬害やくがい事件じけんについては、その怠業たいぎょう意図いとてき意図いとてき加害かがい行為こういについてそれなりの研究けんきゅうがあり、蓄積ちくせきがある。だがこったのはそれだけではない。いちきゅうろく年代ねんだい後半こうはん以降いこう、それらの事件じけん顕在けんざいし、医療いりょうがつけばなんでもありがたいこととることはないのだと人々ひとびとおもいはじめたことにも関係かんけいをもちながら、様々さまざまなことがあったしあるとおもう。そこでは存在そんざいする事態じたいこった事件じけんそのものがかんがえるべき論点ろんてんしめしているのだから、調しらべるがわは、すくなくともまずはただたんになにがあったのかをるだけでよい。なにもなくおもえるところからなにかをしてくるより面倒めんどうすくない。
 さまざまな不信ふしん疑義ぎぎ批判ひはんがあった。そしてそれらを経験けいけんてき感覚かんかくてきっている世代せだいはあって、さけでもむとそんなはなしがでないでもないのだが、しかし文字もじには、すくなくともまとまったかたちには、なかなかなっていない。これは、これからはじめても「研究けんきゅう」にもとめられる「オリジナリティ」が簡単かんたんはいるということでもあるのだが、それにしても、この空白くうはくはなんなのだろう。
 …(りゃく)…
 前置まえおきがながくなったがもったいぶるほどのことではない。「なおすこと」「なおること」をめぐってこったこと、われたこと、かんがえられたことを辿たどり、記述きじゅつしてみて、そしてかんがえてみたらよいのではないか。
 ひとつ、「なおる」(というより「なおされること」)にたいする拒絶きょぜつとでもえるようなつよ提起ていきがあったのだが、これについてかんがえるのはのちかいそう――ここにくことをまずいてみて、それとの差分さぶんがあるのかどうかをかんがえてみたらよいとおもっている★04。ここでは、いたいのがよいかそうではないかとえば、いたくないほうがよいだろう、からだが不自由ふじゆうであるより自由じゆうほうがよいだろう、そういう意味いみでなおることはプラスであるとってよい、というところからひとまずはじめることにする。なおるならそれはそれでよい、しかし、というはなしだ。
 脳性のうせい麻痺まひという障害しょうがいがある。出生しゅっしょう前後ぜんごのう損傷そんしょうされ、それによって四肢しし言語げんご障害しょうがいがもたらされる。いちきゅうろく年代ねんだいからいちきゅうなな年代ねんだいにかけてということになろうか、その「治療ちりょう」、「リハビリテーション」としていくつかの方法ほうほう流行はやったらしい。そのころのはなしを、いまよんさいだいからさいだい何人なんにんかの脳性のうせい麻痺まひ障害しょうがいのあるひとからいたことがある。小学校しょうがっこうころ、あるいはそれ以前いぜんにさまざまな「療育りょういくほう」が流行りゅうこうし、そのひとたちはそれをやってみた、というより、そのひとたち自身じしんはまだちいさかったから、おやからやらされた。そしてすべてむなしかった、けっきょくぜんぜんなおらなかった、かえっておかしくなったところもあったという★05。そしてこうしたことは脳性のうせい麻痺まひかぎったことではないようだ。
 わたし時間じかんがあったらききとっておきたいとおもうのはたとえばこういうことについてである。ただその仕事しごとおこなわれていない★06。以下いかでは、いくつかききかじったことから、またすこかれたものをんで、そこにしめされているようにおも論点ろんてん列挙れっきょする。
 …(りゃく)…

◆2001/05/15「普通ふつうみちおこなってみる」
 『地域ちいき社会しゃかいがく年報ねんぽう』13:77-95(地域ちいき社会しゃかい学会がっかい),ハーベストしゃ

 「この時代じだいのちに、異様いよう頻繁ひんぱん一様いちよう危機ききかたられた時代じだいとして記憶きおくされるだろう。ただそのためにも記録きろくされなくてはならない。たとえば「少子化しょうしか」や「高齢こうれい」がいつごろからどのようにかたられしたのか、危機ききかた論理ろんりがどのようにあらわれ、議論ぎろんたたかわされたのか。おもしてみると意外いがい記憶きおく曖昧あいまいだったり、辿たどれない部分ぶぶんがあることにおおくのひとおもたるはずだ。記録きろく分析ぶんせきがなにもないのではないが、とても不足ふそくしているとおもう。それをきちんとうのは十分じゅうぶん意義いぎふか仕事しごとだとおもうし、そんな仕事しごとをしていくと、それをどうかんがえるたらよいのかがてくるかもしれない。」

◆2001/12/25「できない・と・はたらけない――障害しょうがいしゃ労働ろうどう雇用こよう基本きほん問題もんだいより
 『季刊きかん社会しゃかい保障ほしょう研究けんきゅう』37-3:208-217(国立こくりつ社会しゃかい保障ほしょう人口じんこう問題もんだい研究所けんきゅうじょ

 「本稿ほんこうでできないのは、ひとつに現在げんざい状況じょうきょう分析ぶんせき具体ぐたいてき指針ししんについての検討けんとうであり★01、ひとつに、これまでなにわれなに主張しゅちょうされてきたのかを辿たどることである。とくに後者こうしゃはこれまであまり記述きじゅつされ検討けんとうされたことがないが、重要じゅうよう課題かだいだとおもう★02。」
 「★02 障害しょうがいしゃ福祉ふくし政策せいさくはまず、「職業しょくぎょうてき更生こうせい」を目指めざす、はたらけるようになるための施策しさくだった。そしてもちろん当人とうにんたちも職業しょくぎょうてき自立じりつもとめ、そのための施策しさく要求ようきゅうしてきた。とともに、そのようでしかなかったことにたいする反発はんぱつとして運動うんどう展開てんかいもまたある。完全かんぜんになおってしまうのでなければ(それは障害しょうがいしゃでなくなるということである)がんばっても結局けっきょくいち人前にんまえにはならない。そしてはたらけるようになる見込みこみのないひとのこされる。くちうごくならほかひととそうわらずにはたらくことができる。だがたとえば使つかえず言語げんご障害しょうがいがきつい脳性のうせいまひの場合ばあいにはそう簡単かんたんではない。そしてそこでは、できるようになるためにひとよりおお支払しはらわねばならない労苦ろうく当然とうぜんのこととされ、それが成果せいかをあげなかったときにはそのままにかれる〔立岩たていわ 2001c〕。だから労働ろうどうからの撤退てったいという路線ろせんがあった。はたらけなくてかまわない、「ただめしい」を肯定こうていしようというのである〔安積あさか 1990,pp.28-29〕。と同時どうじに、障害しょうがいしゃにしつらえられた否定ひていし「一般いっぱん就労しゅうろう」を主張しゅちょうする運動うんどうがあり、さらに「きょうはたらけ」をかかみずからがはたらつくろうとする運動うんどうがあった。問題もんだい複雑ふくざつさをしめすこうした多面ためんせい記述きじゅつしつつ――わたし自身じしんは〔立岩たていわ 1990〕〔立岩たていわ 1998〕にわずかのことをしるしたことがあるだけだ――そのうえかんがえていく必要ひつようがある。」


◆2002 「ないにこしたことはない、か?・1」
 石川いしかわじゅん倉本くらもと智明ともあき長瀬ながせおさむへん障害しょうがいがく主張しゅちょう』(仮題かだい),明石書店あかししょてん
 【りょう:20010905】

★04 ……たとえば「先天せんてんせい四肢しし障害しょうがい父母ちちははかい」。このかいは、まれたときあしゆびがない、すくないといった障害しょうがいをもつどものおやかいとして、1975ねん設立せつりつされた。その障害しょうがい原因げんいん不明ふめいだったのだが、環境かんきょう汚染おせん様々さまざま問題もんだいにされていた時期じきでもあり、環境かんきょう要因よういんうたがわれ、かい当初とうしょ原因げんいん究明きゅうめい」をうったえる活動かつどうをする。ここでは、当然とうぜん、その障害しょうがいをなくすことが目指めざされた。だがげん障害しょうがいがあってらしているどもがいるときに、障害しょうがい否定ひていてきとらえてよいのか。そうしたことをかんがえていくことになる。たとえばその軌跡きせきをたどってみたらよいとおもう。(cf.野辺のべ[2000]、「先天せんてんせい四肢しし障害しょうがい父母ちちははかい」のホームページはhttp://park.coconet.or.jp/hubonokai/)。
 それ以外いがいにもいくつもそういうことにかかわるはなしいてきた。たとえばワクチンができたためにポリオがなくなった。それはよかったのだろうかといういをいたことがある。また、フェニルケトン尿にょうしょう新生児しんせいじスクリーニングによって発見はっけんされると食餌しょくじ療法りょうほうによって障害しょうがい回避かいひできる。これはたしてよいことなのだろうかといったいかけもいたことがある。cf.立岩たていわ[1997:23]

◆2002/02/〜「生存せいぞんあらそい――医療いりょう現代げんだいのために・」
 『現代げんだい思想しそう』 資料しりょう

◆2002/**/**「医療いりょう技術ぎじゅつ現代げんだいのために」
 今田いまだこうしゅんへん産業さんぎょう環境かんきょう共生きょうせい』(講座こうざ社会しゃかい変動へんどう2),ミネルみねるァ書房ぁしょぼう
 【りょう:20020414】

 「そしてわたしたちがらないのはそうむかしのことではない。ここさんよんねんほどの歴史れきしるべきこと、かんがえるべきことがある。研究けんきゅうしゃ研究けんきゅう業績ぎょうせきえていて、歴史れきし対象たいしょうとする研究けんきゅう業績ぎょうせきえている。これは歓迎かんげいすべきことだ。ただ、日本にっぽん戦後せんごについての研究けんきゅうほう他国たこくのもっとまえ時代じだい対象たいしょうとするより容易よういだろうとおもうのだが、あまりなされていない。おな領域りょういき現在げんざい、そしてちか過去かこなにがあったかをらないまま、もっと以前いぜん研究けんきゅうおこなわれることもある。なにがあったのか、どのような対立たいりつがあったのか。それがどこまでのことをったのか。すぐれた仕事しごともないではないがおおくはない。たとえば吉岡よしおかひとしおこなってきた、科学かがく技術ぎじゅつやそれをめぐ言説げんせつはたらいている政治せいじ十全じゅうぜん解析かいせきする仕事しごと流行りゅうこうには冷水れいすいびせるような仕事しごと必要ひつようだ。本来ほんらいはそうした作業さぎょうがある程度ていどなされたうえで、なにかをえばよい。だがそれをっていられないから、そしてその仕事しごと必要ひつようとおもしろさを広告こうこくするためにも、そこにあったはずのことについてすこしるし、かんがえてみる。
 なぜちか過去かこ辿たど必要ひつようがあるとかんがえるのか。このあいだかんがえるべきことが提出ていしゅつされ、いくつかの道筋みちすじしめされたとおもうからだ。出来事できごととしても様々さまざまなことがこった。いくつもの対立たいりつてんあらわれ、いまがれる批判ひはんがなされ、そのこたえこころみが途上とじょうのままになっているいがしめされた。そのかんがえるためにそこになにがあったかをっておく必要ひつようがある。くわえれば、医療いりょう社会しゃかいがく医療いりょう人類じんるいがくもここすうじゅうねん変動へんどうべつあらわれたのではなく、そこからしょうじた。最初さいしょから規範きはんてき議論ぎろんをその仕事しごと中心ちゅうしんとする医療いりょう倫理りんりがく生命せいめい倫理りんりがくかぎらない。医療いりょう社会しゃかいかかわるがく自体じたい近代きんだい医学いがく医療いりょう批判ひはん関係かんけいをもちながら、そのなかはじまった。だからこの時期じき以降いこううごきを検討けんとうすることは、それらのがくったことを再考さいこうしてみることでもあり、これからなにをするかをかんがえるじょうでも必要ひつようだ。
 さまざまなことがこりそしてまだそう時間じかんのたっていない部分ぶぶんについて記述きじゅつがない。たとえば精神せいしん障害しょうがい犯罪はんざいについてどんな議論ぎろんがあったか。どのように高齢こうれい問題もんだいとされ議論ぎろんされたか。いつハンセン病はんせんびょうしゃたいする差別さべつ差別さべつだということになったのか。いつからどんな経路けいろ自己じこ決定けっていという言葉ことば使つかわれひろまったのか。少子化しょうしか高齢こうれいたいする危機ききかんをいつだれい、どのように普及ふきゅうしたのか。優生ゆうせいがくという言葉ことば否定ひていてき言葉ことばとなったのは、いつ、どのようなひとたちのあいだでだったのか。その、「自分じぶんらしくぬこと」といった言説げんせつ誕生たんじょう流布るふについて。そして様々さまざま治療ちりょうほう栄枯盛衰えいこせいすい、いつのまにかえてしまった様々さまざまなもののかた学会がっかい業界ぎょうかいなかでの様々さまざまな(なかにはひどく重要じゅうよう論点ろんてんふくむ)対立たいりつ等々とうとう。ある年代ねんだい以上いじょうならある程度ていどのことをっているひともいる、それ以降いこうひとたちはまったくなにらない。そこにいたひとしかおぼえておらず、そのひとたちも記憶きおくさだかでなく、おぼえていたくないものはわすれているか、わすれたことにしている。だから、とく論争ろんそうてき主題しゅだいについては「これまでかたられてこなかった」というまくら言葉ことばがよくかれるのだが、それをついしんじてしまうことにもなる。ところが、たとえば安楽あんらくについて、医療いりょう使つかえる資源しげんには限界げんかいがあることについて、いままでタブーとされかたられてこなかったからあえてわたしかたるとうのだが、それは間違まちがいなのだ。まさにそのような前言ぜんげんとともにかえかたられているのである。」

年表ねんぴょうとう

 Core Ethics ?? / Core Sociolgy ??のところにいくつか。

 
>TOP

規範きはんろん

◆2000/03/25闘争とうそう遡行そこう
 『STS NETWORK JAPAN Yearbook '99』:43-48
 1998/10/31 STS Network Japan シンポジウム「医療いりょう問題もんだい科学かがくろんかたれるか」の記録きろく

◆2000/04/05「ただしい制度せいどとは,どのような制度せいどか?」
 大澤おおさわ真幸まさきへん社会しゃかいがく33』新書しんしょかん,pp.232-237 15まい

◆2000/06/30「こうもあれることのりくつをいう――という社会しゃかいがく計画けいかく
 『理論りろん方法ほうほう』27:101-116(日本にっぽん数理すうり社会しゃかい学会がっかい特集とくしゅう変貌へんぼうする社会しゃかい学理がくりろん

◆2000/11/01「たぶんこれからおもしろくなる」
 『そうぶん』426(2000-11):1-5

◆2001/01/27闘争とうそう遡行そこう――立岩たていわしん也氏にく 『よわくある自由じゆうへ』」(ききて米田よねだつな
 『図書としょ新聞しんぶん』2519:1-2

◆2001/05/15普通ふつうみちおこなってみる」
 『地域ちいき社会しゃかいがく年報ねんぽう』13:77-95(地域ちいき社会しゃかい学会がっかい),ハーベストしゃ
 【りょう:20001231】

◆2002/06/02「じつはいまも、こう沃野よくや、かもしれない」
 関東かんとう社会しゃかい学会がっかい 「ケアの社会しゃかいがく部会ぶかい 於:法政大学ほうせいだいがく多摩たまキャンパス

 

記録きろく(このファイルにまとめるまえのもの)

◆◆2002/08/4 00:48
 [jsds:6881] 関西かんさい部会ぶかい15の01
◆◆2002/08/15 01:39
 [jsds:6887] 関西かんさい部会ぶかい15の02
◆◆2002/08/19 00:02
 [jsds:6897] 関西かんさい部会ぶかい15の03
◆◆2002/09/03 16:12
 [jsds:6921] 関西かんさい部会ぶかい15の04


REV:....20031204,040513, 20171224
障害しょうがいがく研究けんきゅうかい関西かんさい部会ぶかい  ◇障害しょうがいがく  ◇立岩たていわしん  ◇Shin'ya Tateiwa  ◇せい辿たどどうさぐる――身体しんたい×社会しゃかいアーカイブの構築こうちく 
TOP HOME (http://www.arsvi.com)