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東京から巨額税金流出、返礼品3割規制で魅力喪失…「ふるさと納税」を頑なにやめない事情 | ビジネスジャーナル
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東京とうきょうから巨額きょがく税金ぜいきん流出りゅうしゅつ返礼へんれいひん3わり規制きせい魅力みりょく喪失そうしつ…「ふるさと納税のうぜい」をかたくなにやめない事情じじょう

ぶん小川おがわ裕夫ひろお/フリーランスライター
東京から巨額税金流出、返礼品3割規制で魅力喪失…「ふるさと納税」を頑なにやめない事情の画像1
泉佐野いずみさのふるさと納税のうぜいサイト」より

 2019ねんがつから、ふるさと納税のうぜいしん制度せいど移行いこうした。ふるさと納税のうぜい返礼へんれいひんたいして、これまで総務そうむしょうは「寄付きふがくの3わり程度ていど」「地場じば産品さんぴん」といった条件じょうけんしてきた。しかし、総務そうむしょう自治体じちたい自主じしゅせい尊重そんちょうする立場たちばをとっていたため、これら条件じょうけん強制きょうせいできない。つまり、たんなるおねがいだった。

 ふるさと納税のうぜい競争きょうそうつため、目立めだった地場じば産品さんぴんがない市町村しちょうそん返礼へんれいひん高級こうきゅう家電かでん金券きんけんるいそろえ、富裕ふゆうそうから税金ぜいきんをかきあつめた。これをに、ふるさと納税のうぜい爆発ばくはつてきひろがりをせていく。

 一方いっぽう高級こうきゅう家電かでん金券きんけんるい返礼へんれいひん登場とうじょうしたことで、ふるさと納税のうぜい過熱かねつ東京とうきょう23などはすうじゅうおくえん税金ぜいきん流出りゅうしゅつする事態じたいこり、ごみ収集しゅうしゅう清掃せいそうまち美化びか緑化りょくかをはじめとする通常つうじょう業務ぎょうむ支障ししょうをきたすほどになった。事態じたい重要じゅうようせい察知さっちした総務そうむしょうは、ふるさと納税のうぜい見直みなおしに着手ちゃくしゅ。これまで、どこの地方自治体ちほうじちたいでも自由じゆうにふるさと納税のうぜい制度せいど導入どうにゅう活用かつようできたが、昨年さくねんがつからは総務そうむしょう認可にんかした団体だんたいのみに税額ぜいがく控除こうじょみとめられることになった。いわば、総務そうむしょう意向いこう沿わない地方自治体ちほうじちたい制度せいど枠組わくぐみから排除はいじょすることが可能かのうになった。

 しん制度せいどへの移行いこうにあたり、総務そうむしょう念頭ねんとうにおいてきたのは大阪おおさか泉佐野いずみさの存在そんざいだ。泉佐野いずみさの関西国際空港かんさいこくさいくうこうなどをかかえる自治体じちたいだが、和牛わぎゅう海産物かいさんぶつといった目立めだった地場じば産品さんぴんがない。そのため、ふるさと納税のうぜい返礼へんれいひんはどうしても地味じみなラインナップになってしまう。これでは、耳目じもくあつめることはむずかしく、激化げきかするふるさと納税のうぜい競争きょうそうてない。そうしたおもいから、泉佐野いずみさのはアマゾンギフトけん返礼へんれいひんとしておくることをめた。アマゾンギフトけん換金かんきんせいたかく、ほぼ現金げんきん同様どうよう使用しようできるため、同市どうしにふるさと納税のうぜい殺到さっとうし、やく498おくえんあつめることに成功せいこうした。

 一方いっぽう総務そうむしょうのガイドラインを遵守じゅんしゅしていた地方自治体ちほうじちたいにとって、泉佐野いずみさの行状ぎょうじょう面白おもしろくない。そのため、総務そうむしょう同市どうし認可にんか団体だんたいから除外じょがい。しかし、しん制度せいど移行いこうは2019ねんがつからであり、同市どうしがアマゾンギフトけん多額たがくのふるさと納税のうぜいあつめたのは、しん制度せいど移行いこうまえ同市どうしは「遡及そきゅうして除外じょがいすることはおかしい」と異議いぎもうて、除外じょがい決定けっていしをもとめて訴訟そしょう発展はってんした。

 総務そうむしょう泉佐野いずみさの法廷ほうてい闘争とうそうは、2020ねんがつ大阪おおさか高裁こうさい総務そうむしょう主張しゅちょうみとめたことで同市どうし敗訴はいそ同市どうし最高裁さいこうさい上告じょうこくしたが、敗訴はいそ影響えいきょうはかれない。やく498おくえんのふるさと納税のうぜい一転いってんしてゼロとなり、20年度ねんど予算よさんにもおおきなかげとしている。

返礼へんれいひん寄付きふがくの3わり以下いか

泉佐野いずみさのだけが目立めだっているが、ほかにも総務そうむしょうしたがわなかった市町村しちょうそんはいくつかある。今回こんかい泉佐野いずみさのけんいちけん落着らくちゃくしておらず、予断よだんゆるさない」とはなすのは、総務そうむしょう職員しょくいんだ。

 じつは、大阪おおさか高裁こうさい判決はんけつ総務そうむしょうにとっても想定そうていがいだった。総務そうむしょう泉佐野いずみさのは、訴訟そしょうへと発展はってんするまえくに地方ちほう係争けいそう処理しょり委員いいんかいたがいの主張しゅちょうをぶつけている。どう委員いいんかいは、総務そうむしょう過去かこ遡及そきゅうして泉佐野いずみさののやりかた問題もんだいしたてん見直みなおすように勧告かんこくしていた。どう委員いいんかいはあくまでも第三者だいさんしゃてき機関きかんだが、過去かこのやりりをると、どうしてもくにおもんばかった判断はんだんおおい。そのどう委員いいんかい泉佐野いずみさの支持しじし、総務そうむしょう主張しゅちょう退しりぞけたのだ。

 総務そうむしょうかたくなに泉佐野いずみさの行状ぎょうじょう容認ようにんしないのは、ほかの自治体じちたいからのげをけているといった理由りゆうもある。このまま泉佐野いずみさの行状ぎょうじょう放置ほうちすれば、追随ついずいする自治体じちたいてくる。これでは、ふるさと納税のうぜい制度せいどそのものが崩壊ほうかいしてしまう。そんな危機ききかんから、総務そうむしょうくに地方ちほう係争けいそう処理しょり委員いいんかい勧告かんこくって、大阪おおさか高裁こうさいへと勝負しょうぶうつした。そして、大阪おおさか高裁こうさいねばちする。

 ふるさと納税のうぜい多額たがく税金ぜいきん流出りゅうしゅつしている東京とうきょう23職員しょくいんたちは「大阪おおさか高裁こうさい判決はんけつ評価ひょうかできるが、それでも東京とうきょう23から多額たがく税金ぜいきん流出りゅうしゅつしているので、早急そうきゅうにふるさと納税のうぜい制度せいど廃止はいしすることがのぞましい」とくちにする。

 そして、泉佐野いずみさの追随ついずいする地方自治体ちほうじちたいてくることを心配しんぱいするこえもあがっている。こうした心配しんぱい払拭ふっしょくするべく、ふるさと納税のうぜいみのおやとされる福井ふくいけん西川にしかわ一誠いっせい知事ちじ当時とうじ)は、いくつかの自治体じちたいびかけて17ねんに「ふるさと納税のうぜい健全けんぜん発展はってん目指めざ自治体じちたい連合れんごう」を結成けっせい。ふるさと納税のうぜい維持いじする方策ほうさく模索もさくはじめた。しかし、西川にしかわは19ねん県知事けんちじせん落選らくせんどう連合れんごうあるじうしない、機能きのう停止ていしした状態じょうたいになっている。こうしたキーマンの退場たいじょうも、今回こんかい制度せいど改正かいせいすくなからず影響えいきょうおよぼした。

 今回こんかい改正かいせいにより、地方自治体ちほうじちたい返礼へんれいひん寄付きふがくの3わり厳守げんしゅするようになった。厳守げんしゅしなければ、総務そうむしょうから指定してい団体だんたいとして認可にんかされない。これが、ふるさと納税のうぜいブームを沈静ちんせいさせるおおきなターニングポイントでもあった。それでも制度せいど完全かんぜん廃止はいしされたわけではない。いまだ制度せいど活用かつようしてちかられる自治体じちたいはある。制度せいど改正かいせい返礼へんれいひん寄付きふがくの3わり程度ていどとされたこともあり、返礼へんれいひんおく市町村しちょうそん負担ふたんかるくなった。そうしためんだけをれば、地方自治体ちほうじちたい過当かとう競争きょうそうから解放かいほうされて、実質じっしつてき実入みいりがよくなったとおもわれがちだ。

ポータルサイトと自治体じちたい関係かんけい

 しかし、あらたな問題もんだい地方自治体ちほうじちたいくるしめる。今般こんぱんふるさと納税のうぜいおおくはポータルサイトを経由けいゆしてあつめられている。市町村しちょうそんのHPからも直接ちょくせつもうみができるようになっているが、ポータルサイトは各地かくちのふるさと納税のうぜい一覧いちらんできるために、比較ひかくしながらえらべる。それが、寄付きふしゃ意欲いよく刺激しげきする。

 ポータルサイトは当然とうぜんながら手数料てすうりょう自治体じちたいがわからている。そのため、ポータルサイト経由けいゆからふるさと納税のうぜいもうまれると、市町村しちょうそんがわ実入みいりはすくなくなる。ふるさと納税のうぜいはいったん制度せいど導入どうにゅうしてしまえば、あとはほとんど費用ひようがかからない。そのため、返礼へんれいひんがくおおきくしてもおおくの寄付きふあつまれば自治体じちたいがわ実入みいりはよくなるので、ポータルサイトによる仲介ちゅうかいても、たくさんのふるさと納税のうぜいあつまれば問題もんだいなかった。

 そうした構図こうずは、自治体じちたいだけではなくポータルサイトも同様どうようなので、サイト運営うんえいしゃはあのこのでふるさと納税のうぜい機運きうんたかめてきた。イベントなどを定期ていきてき開催かいさいし、そこに地方自治体ちほうじちたい参加さんかさせ、すうまんにん来場らいじょうしゃあつめるなどした。イベントを開催かいさいすることで、ふるさと納税のうぜい競争きょうそう過熱かねつ。これが、ポータルサイトと地方自治体ちほうじちたいのwin-winな関係かんけいきずかせた。

 しかし、配送はいそう業者ぎょうしゃ人手ひとで不足ふそくはしはっした配送はいそうりょう値上ねあ問題もんだい勃発ぼっぱつし、この負担ふたん地方自治体ちほうじちたいくるしめる。総務そうむしょう通達つうたつした返礼へんれいひんわりという目安めやすは、返礼へんれいひんそのもののがくくわえて、配送はいそうりょうふくまれている。そのため、遠方えんぽうへの配送はいそう遠方えんぽうからの配送はいそうたかくなる。北海道ほっかいどう東北とうほく四国しこく九州きゅうしゅうは、都心としんからはなれているために漁業ぎょぎょう酪農らくのう農業のうぎょうさかんで、それがふるさと納税のうぜいではメリットになっていた。

 しかし、一大いちだい消費しょうひである東京とうきょう大阪おおさかからとおいために、どうしても配送はいそうりょうたかくなる。この配送はいそうりょうみで3わりまでとなると、配送はいそうりょう負担ふたん自治体じちたいおもくのしかかる。とく離島りとう配送はいそうりょうたかくなるので、必然ひつぜんてき返礼へんれいひんやす産品さんぴんになってしまう。せっかく魅力みりょくてきだったふるさと納税のうぜい返礼へんれいひんも「3わりまで」というきびしい条件じょうけんせられて返礼へんれいひん魅力みりょく色褪いろあせた。返礼へんれいひんたのしみに寄付きふをしていたひとたちもそっぽをいてしまっている。ふるさと納税のうぜいがく減少げんしょうすれば、それだけ地方自治体ちほうじちたいくるしくなる。

「ふるさと納税のうぜいという名前なまえとおり、ふるさとを元気げんきづける目的もくてき制度せいど発足ほっそくしました。しかし、その意義いぎはもはやわすれられています。『もう、やめてもいいのではないか?』というこえもありますが、総務そうむしょう苦労くろうしてそだててきた制度せいどですから、ここで制度せいどつぶすわけにはいかないというおもいがあるのでしょう」(前出ぜんしゅつ東京とうきょう23職員しょくいん

 総務そうむしょう規制きせいつよまった18ねんごろから「ふるさと納税のうぜいはオワコン」とわれつづけてきた。それでも制度せいど延命えんめいしてきたのは、かんよしえら官房かんぼう長官ちょうかん影響えいきょうりょくともささやかれる。前述ぜんじゅつのとおり西川にしかわ提唱ていしょうしてまれた制度せいどだが、具現ぐげんしたのはかんよしえら総務そうむ大臣だいじん当時とうじ)だとされているからだ。かん現在げんざい安倍あべ政権せいけん官房かんぼう長官ちょうかんつとめ、かげ実力じつりょくしゃともばれるだけに、ここでふるさと納税のうぜい廃止はいしすればかんのメンツはつぶれる。だい安倍あべ政権せいけん発足ほっそく直後ちょくご地方ちほうそうせいうたわれ、そのもローカルアベノミクスなどと地方ちほう重視じゅうしするような政策せいさく・スローガンがされたのも、そうした永田町ながたちょう力学りきがく背景はいけいにある。それらが複雑ふくざつ関係かんけいして、ふるさと納税のうぜいはここまで延命えんめいつづけてきた。

 しかし、ふるさと納税のうぜいえかかっている。

ぶん小川おがわ裕夫ひろお/フリーランスライター)

小川裕夫/フリーライター

小川おがわ裕夫ひろお/フリーライター

行政ぎょうせい編集へんしゅうしゃてフリーランスに。都市とし計画けいかく鉄道てつどうなどを専門せんもん分野ぶんやとして取材しゅざい執筆しっぴつ著書ちょしょに『渋沢しぶさわ栄一えいいち鉄道てつどう』(てんゆめじん)、『私鉄してつ特急とっきゅうなぞ』(イースト新書しんしょQ)、『封印ふういんされた東京とうきょうなぞ』(いろどりしゃ)、『東京とうきょうおう』(ぶんかしゃ)など。

Twitter:@ogawahiro

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