神戸こうべ市し、歩行ほこう困難こんなんな79歳さい居住きょじゅう者しゃを震災しんさい復興ふっこう住宅じゅうたくから強制きょうせい退去たいきょ…入居にゅうきょ期限きげんの通知つうち不徹底ふてってい

「UR都市とし機構きこう　HP」より

　阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさいの被災ひさい者しゃのための借かり上あげ復興ふっこう住宅じゅうたくに住すむ高齢こうれいの入居にゅうきょ女性じょせいに神戸こうべ市しが明あけ渡わたしを求もとめた裁判さいばんで、神戸こうべ地裁ちさい（山口やまぐち浩司こうじ裁判さいばん長ちょう）は10月がつ10日とおか、明あけ渡わたしを命めいずる判決はんけつをい渡いわたした。継続けいぞく入居にゅうきょ問題もんだいでは、神戸こうべ市しと西宮にしのみや市しが「20年ねんの契約けいやく期限きげんが切きれた」として計けい17人にんの住民じゅうみんに対たいし明あけ渡わたし訴訟そしょうを起おこしているが、今回こんかいが最初さいしょの判決はんけつとなる。　

「入居にゅうきょ許可きょか書しょの記載きさいで十じゅう分ふん」

　神戸こうべ市し兵庫ひょうご区くの借かり上あげ復興ふっこう住宅じゅうたく「キャナルタウンウェスト」4号棟ごうとうに2002年ねん9月がつから入居にゅうきょしているＮさん（79）は、昨年さくねん10月がつ末まつで「契約けいやく期限きげん」として退去たいきょを求もとめられていた。歩行ほこう困難こんなんや持病じびょうを抱かかえるＮさんはバリアフリーの同どう住宅じゅうたくに住すみ慣なれており、判決はんけつ後ごに「ここでしか生活せいかつできない」などと談話だんわを出だした。借か上うわ復興ふっこう住宅じゅうたく弁護べんご団だんの佐伯さえき雄三ゆうぞう団長だんちょうは、「高齢こうれい者しゃが引ひっ越こすことがどんな大変たいへんなことか、市しは考かんがえるべきで判決はんけつは認みとめられない。今回こんかいの判決はんけつは他たの入居にゅうきょ者しゃの裁判さいばんには影響えいきょうしない」と話はなした。

　裁判さいばんは、明あけ渡わたし期限きげんの通知つうちが争点そうてん。市しは「入居にゅうきょ許可きょか書しょで通知つうちしていた」とし、Ｎさんは「抽選ちゅうせんで入居にゅうきょが決きまった時ときに通知つうちすべき」と主張しゅちょうした。山口やまぐち裁判さいばん長ちょうは「入居にゅうきょ許可きょか時じに通知つうちで十じゅう分ふん。決定けってい時じの通知つうちまでは求もとめられていない」とＮさんの主張しゅちょうを退しりぞけた。

　民間みんかんマンションなどの借かり上あげの導入どうにゅうで、震災しんさい翌年よくねんに改正かいせいされた公営こうえい住宅じゅうたく法ほうは32条じょう1項こうで「借かり上あげ期間きかんが満了まんりょうすれば事業じぎょう主体しゅたいは入居にゅうきょ者しゃに明あけ渡わたしを請求せいきゅうできる」とするが、25条じょう2項こうは「入居にゅうきょ者しゃを決定けっていした際さい、満了まんりょう時じに明あけ渡わたさなくてはならない旨むねを通知つうちする義務ぎむ」が書かかれる。

　改正かいせい法ほうが適用てきようされなければ入居にゅうきょ者しゃの権利けんりを強つよく守まもる借地しゃくち借家しゃくや法ほうが適用てきようされる。同どう弁護べんご団だんの吉田よしだ維一弁護士べんごしは「改正かいせい前まえに入居にゅうきょしていた人ひとについても西宮にしのみや市しと神戸こうべ市しは改正かいせい法ほうを遡及そきゅうさせようとしている。事後じご法ほうは当事とうじ者しゃに不利益ふりえきになる場合ばあいは適用てきようできないのが原則げんそく」と警戒けいかいする。

「出でなくてはならないとは言いわれていない」

　
　神戸こうべ市しは借かり上あげ住宅じゅうたくの入居にゅうきょ継続けいぞく条件じょうけんとして（1）85歳さい以上いじょう、（2）要よう介護かいご度ど3以上いじょう、などの基準きじゅんを設もうけて条件じょうけんに当あてはまらない人ひとに退去たいきょを求もとめていた。

　Ｎさんの入居にゅうきょ許可きょか証しょうにはなぜか期限きげんが記載きさいされていたが、書面しょめんの筆跡ひっせきはＮさんのものではなかった。だが大半たいはんの住民じゅうみんの許可きょか証しょうには退去たいきょ期限きげんは記載きさいされていない。市しに被告ひこくにされた人ひとたちは「20年ねん後ごに出でなくてはならないなんて、まったく言いわれていない。言いわれていれば最初さいしょから入はいりません」と声こえを揃そろえる。