弟おとうとが父ちちと母ははを騙だまして財産ざいさん“生前せいぜん贈与ぞうよ”を受うけていた！父ちちを介護かいごし続つづけた兄あにには遺産いさんほぼゼロ

　昨年さくねん、積水せきすいハウスが約やく55億おく円えんをだまし取とられた詐欺さぎ事件じけんで、にわかに注目ちゅうもくを集あつめた“地面じめん師し（じめんし）”。7月17日にちに東京とうきょう地裁ちさいで地主じぬし役やくなどを務つとめた3被告ひこくに判決はんけつがい渡いわたされる予定よていだ。一般いっぱん庶民しょみんにとっては「一生いっしょう縁えんのない別世界べっせかいの話はなし」と受うけ止とめている人ひとが圧倒的あっとうてきだが、驚おどろくべきことに、地面じめん師し問題もんだいは一般いっぱん的てきな個人こじん宅たくもターゲットになるケースがある。しかも“家庭かてい内ない地面じめん師し”ともいうべき親族しんぞくに、まんまとしてやられるケースに泣ないている人ひとも少すくなくない。「そんなバカな」と思おもうあなたに、実例じつれいを紹介しょうかいしたい。

　ウィキペディアによれば、地面じめん師しとは「土地とちの所有しょゆう者しゃになりすまして売却ばいきゃくをもちかけ、多額たがくの代金だいきんをだまし取とる不動産ふどうさんをめぐる詐欺さぎを行おこなう者もの、もしくはそのような手法しゅほうで行おこなわれる詐欺さぎ行為こういのこと」だという。一般いっぱん庶民しょみんには地面じめん師しに関かんする報道ほうどうが流ながれても、金額きんがくのケタが違ちがいすぎて他人事たにんごとで終おわってしまう。しかし、親おやの遺産いさんが自宅じたくだけという人ひとも多おおいなか、身内みうちの土地とち建物たてものを騙だまし取とる家庭かてい内ない地面じめん師しもいる。

　会社かいしゃ員いんであるＡさんには弟おとうとのＢがいたが、Ｂは実家じっかから遠とおく離はなれた土地とちで、中小ちゅうしょう企業きぎょうの経営けいえい者しゃをしていた。高齢こうれいになった両親りょうしんの世話せわを最後さいごまでしていたのは、実家じっかの近所きんじょに住すむＡさんと妻つまだった。

　Ａさんの実家じっかは西日本にしにほんにあり、主要しゅよう駅えきからほど近ちかい目抜めぬき通どおりの場所ばしょで100坪つぼほどの広ひろさがあった。子供こどもたちは大学だいがくに進学しんがくするまで、そこで暮くらしていた。駅前えきまえ開発かいはつで土地とちが高騰こうとうし、今いまでは4,000万まん円えんほどの売買ばいばい価格かかくといわれていた。

　別荘べっそうもあるにはあったが、山やまの中なかの一軒家いっけんや（1ＬＤＫ）で、最寄もよりのコンビニまでは5キロもあるという場所ばしょだ。資産しさん価値かちも数すう百ひゃく万まん円えん程度ていどだ。仕事しごとで多忙たぼうを極きわめる父親ちちおやが、「のんびりしたとした静しずかな場所ばしょで休やすみを過すごしたい」と探さがしたお気きに入いりの場所ばしょでもあった。子供こどもの頃ころは夏休なつやすみや冬休ふゆやすみのたびに一家いっかは別荘べっそうで過すごしたが、子供こどもが大おおきくなるにつれ、両親りょうしんだけしか行いかなくなっていた。Ａさんが社会しゃかい人じんになって地元じもとにＵターンしてからは、懐なつかしがる両親りょうしんを連つれて、時折ときおり、その地ちを訪おとずれることもあった。

　高齢こうれいになった両親りょうしんはもう別荘べっそうを懐なつかしむこともなくなり、ここ数すう年ねんはＡさん夫婦ふうふが管理かんりに時折ときおり出でかけていく程度ていどで、以前いぜんから母親ははおやは「夫おっとにもしものことがあれば、管理かんりも大変たいへんだから、別荘べっそうは処分しょぶんしていい」とＡさんとＢに話はなしていた。

　ある日ひ、Ａさんに珍めずらしく電話でんわをかけてきたＢは、両親りょうしんの面倒めんどうを見みてくれたことに感謝かんしゃした上うえで、「実家じっかのことだけど、両親りょうしんも高齢こうれいだし、いつ何なにがあっても不思議ふしぎじゃない。相続そうぞくのことも考かんがえないといけないと思おもう」と切きり出だした。