飲食いんしょく店てんや金融きんゆう機関きかんで「おすすめ」「おまかせ」を聞きくのは損そん？店みせ側がわの「カモ」になる危険きけんも

「Thinkstock」より

　私わたしたち消費しょうひ者しゃは、モノやサービスを選えらぶときに「なるべく最良さいりょうの選択せんたくをしたい」と思おもっている。というか、絶対ぜったいに損そんはしたくない。もっというと、「ほかの連中れんちゅうが損そんをしても、自分じぶんだけは得とくをしたい」と願ねがう、非常ひじょうに率直そっちょくな生いき物ものだ。

　しかし、最良さいりょうの選択せんたくにはなかなか手間てまがかかる。選えらぶべき商品しょうひんの情報じょうほうをあまねく集あつめ、性能せいのうを比較ひかく検討けんとうし、支払しはらう価格かかくに見合みあうかを吟味ぎんみするのは、正直しょうじき面倒めんどうくさい。

　それで、つい売うり手てに聞きいてしまうのだ。「おすすめはどれですか？」と。消費しょうひ者しゃ行動こうどうの意思いし決定けっていがどうなされるかを説明せつめいする「行動こうどう経済けいざい学がく」には、こんな言葉ことばがある。「情報じょうほう過多かた」あるいは「選択肢せんたくし過多かた」だ。

　選択肢せんたくしが増ふえれば増ふえるほど、本来ほんらいは自分じぶんに合あうものを選えらべるはずなのだが、逆ぎゃくに消費しょうひ者しゃは、「選択せんたくをしない」という判断はんだんをしてしまう傾向けいこうがあるのだという。

　50色しょくものTてぃーシャツが揃そろい、「あなたにぴったりの色いろを選えらんでください」と言いわれると、「うわ、面倒めんどうくさい。時間じかんがかかりそうだし、今日きょうは買かわなくていいや」と思おもってしまわないだろうか。この裏うらには、「複雑ふくざつな思考しこうプロセスをなるべく回避かいひしたい」という意識いしきが働はたらいている。

　そこで、我々われわれを楽らくにしてくれる魔法まほうの言葉ことばがこれだ。「おすすめはどれですか？」。

　ちょっと高こうそうなレストランに入はいり、料理りょうり名めいが複雑ふくざつなメニューを見みたとき、つい、このキーワードを使つかってしまうことは多おおい。賢明けんめいな方ほうならすぐおわかりだと思おもうが、このときの「おすすめ」は、消費しょうひ者しゃにとってのおすすめとは限かぎらない。

　もし、筆者ひっしゃがそのレストランの店主てんしゅなら、こんなものからチョイスするだろう。たとえば、原価げんかが安やすくて利益りえき率りつが高たかいもの、旬しゅんの素材そざいで安やすく大量たいりょうに仕入しいれてしまったもの、そろそろ使つかい切きりたい素材そざいのもの……。

　つまり、お店みせ側がわに売うりたい事情じじょうのあるメニューが「おすすめ」に変かわるわけだ。無論むろん、シェフの腕前うでまえを200％発揮はっきした渾身こんしんの一いち皿さらが出でてくる可能かのう性せいもあるにはある（おそらく、その料理りょうりをつくるための材料ざいりょうもたっぷりある）。

　しかしながら、売うり手て側がわにメリットが少すくないものをあえておすすめする理由りゆうはないだろう。

　家電かでん量販りょうはん店てんでも、ついおすすめを聞ききたくなるが、これも「あぁ、この商品しょうひんを売うりたいんだな。手数料てすうりょうがたっぷりもらえるのかな、それとも販売はんばいノルマがあるのかな？」と考かんがえてしまう。

　つまり、おすすめを聞きくのは、もっとも賢かしこい選択肢せんたくしとはいえない可能かのう性せいがある。素直すなおに財布さいふを開ひらく前まえに、隣となりにある商品しょうひんの値段ねだんや機能きのうについて質問しつもんしてみると、ベターな選択せんたくができるかもしれないのだ。

「おすすめ」は、あくまで自分じぶんの選択せんたくの一いち材料ざいりょうとして聞きくのが、正ただしい使つかい方かただろう。