秋の
夜長に
娘の
送ってくれた
浅田次郎著「
天切り
松 闇がたり」のページをめくっている。
当方、
何と
言っても
池波正太郎小説ファンであるが、
時折寄り
道しながら
違った
作家の
本を
読むのもいいものである。
その
本についての
感想は、いつになるか
分からないが4
巻すべて
読破後にでも・・・。
ところで、
先日購入の「
闇の
狩人」は、1ページ
目からノンストップで
読みきるまで、
次々とページをめくってしまう
魔力がある。
「
今年で42
歳の
弥平次は、
盗賊・
釜塚の
金右衛門の[
片腕]などと、
盗賊仲間でうわさされている
男だ」
「
小柄で
細い
身体つきなのだが、
裸になると
筋肉が
針金でも
縒り
合わせたかのように、ひきしまっていた」
「
頬骨の
張り
出した
顔いっぱいを、ふとい
鼻がしめている。
目は
小さい。
細い
目が
柔和であった。
筆にふくませた
濃い
墨が、ぽたりと
紙へ
落ちたような
眉毛なのである」
このように
書き
込まれていると、つい、
読み
進んでしまうから、さすがは
池波小説の
書きだしである・・・。
江戸の
盗賊の
小頭・
雲津の
弥平次が、
足を
痛めて
山奥の
湯治場で
療養中、ふとしたことから、
刺客に
追われていた
若い
浪人を
助けた。ところが、この
若い
浪人は
崖から
落ちたらしく
今までの
記憶を
失っている。
その
後、
弥平次はこの
浪人に「
谷川弥太郎」と
名付けることになった。それから2
年が
経過し、
盗賊・
釜塚の
金右衛門が
亡くなり、その
跡目相続で
気をもんでいた
弥平次が、ある
夜偶然にも
一人の
武士を
殺めていた
谷川弥太郎と
出会った。
2
年の
流浪の
中で、
弥太郎は
香具師(やし)の
元締め
五名の
清右衛門に
助けられ、その
剣技を
見込まれ
仕掛人として
生きていた・・・。
この
小説のタイトル「
闇の
狩人」とは、
主人公の
若き
浪人・
谷川弥太郎が
刺客に
追われており、その
暗い
闇の
過去に
何があったのか。
一方、
弥太郎の
過去を
探るため
側面的に
支援する
雲津の
弥平次は、
親分の
死後の
跡目相続に
絡み、
盗賊としての
闇の
世界での
生き
様など
二つの“
闇” を
指しているらしい。
時は
徳川政権が
確固たる
江戸時代、
参勤交代で
江戸と
自国を1
年置きに
往来している
武家社会、
跡目相続において
正室と
側室の
確執なども
日常茶飯事である。
また、
闇の
世界の
盗賊集団における
跡目相続も
似たような
確執があり、
香具師の
裏社会においても、
同様の
跡目相続や
縄張り
争いの
諍いは
絶えない・・・。
よく
言われていることであるが、
人は
一人で
生きてゆけるものではない。お
互いがお
互いを
助け
合い、
関わり
合って
生きなければならない。
その
助け
合い、
関わり
合いの
中で
義理を
果たすのである。ところが、
余りにも
複雑に
入り
組んだ
人間関係のため、
時には
世話になった
人に
不義理を
果たすことになるのも
世の
習いであろう。
「これは、どのように
科学が
進歩した
現代社会でも、
人の
社会の
仕組みというものは、
呼称こそ
変わってもその
仕組みは
同じであり、そこで
複雑に
関わっている
人間という
生きもの
本質は
不変である・・・とのテーマが
基本になっているのが
池波小説である」
と、
評する
池波小説ファンが
多いが、まさにその
通りである。
本編の
武家社会でも、
盗賊や
香具師の
裏社会でも
煎じつめれば
同じ
悩みに
生きており、そこに
自らの
生き
方を
見い
出すものである。
このように、
池波小説に
触れることによって、
人としての
生き
方を
体得できるところが、
著者の
作風に
大きな
魅力を
感じるのかも
知れない。
いみじくも
本編で
著者が
言いたかったことが、
弥平次の
言葉を
通じて
如実に
表現されている。
「
盗(つと)めの
世界も、
人の
世界だ。だから、
煎じつめれば、ほかの
堅気の
暮らしをしている
人たちとも、
大仰にいえば
将軍さまから
大名、
武家方とも
同じことなのだ。おれも、おれのしなくてはならねえことを、しておきたいのだよ」
複雑に
入り
組んだ
人間関係の
中でこそ、
自らの
生きる
道を
求めなさい・・・とのことであろう。(
夫)
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