『航空宇宙軍史』とは、谷甲州によるハードSF著作群である。
概要
航空宇宙軍の発足から、木星や土星の衛星国家による「外惑星連合」との二度にわたる争い(外惑星動乱)、汎銀河連合との恒星間戦争に至るまでの人類文明史を描いたハードSF小説である。2014年より「新・航空宇宙軍史シリーズ」がSFマガジンで断続的に掲載されている。
登場勢力
航空宇宙軍
航空宇宙軍史の主役であり、元々は国連安保理の一組織として結成された架空の軍事組織。建前上は独立した全太陽系の警備保安組織であり、地球=月連合の正規軍と明記されたことはないが、多分実質的に地球=月連合の正規軍と言っていい。
発足時はともかく、シリーズの最終巻に当たる「終わりなき索敵」というタイトルが示している通りに敵を求めてサーチアンドデストロイをするために拡張してきた軍隊である。
基本的には外宇宙探査が主眼の外宇宙艦隊と太陽系警備担当の内宇宙艦隊と謎の多い軍令部に分かれている。
有名な外惑星動乱期で活躍したのは内宇宙艦隊で基本的には、主力のフリゲート艦、警備艦、砲艦等で構成されている。
外宇宙艦隊は初期には、本当にただの探査艦が主力であったが、外宇宙探査が進み、他恒星系にも進出するようになるとこちらが主力となる。外宇宙侵攻時になると単艦で恒星系を制圧できる宙域制圧戦闘母艦やら恒星間飛行ができる高加速戦闘艦が主力になる。
最終的にはサーチアンドデストロイしすぎたため、地球近縁の約100光年の汎銀河世界の惑星国家の蜂起が続発して果てしない鎮圧作戦に陥り、主力艦隊が壊滅して絶望的な撤退戦を繰り広げて壊滅して、地球人類は散り散りとなる……
そもそも何で航空宇宙軍が終わりなき索敵のサーチアンドデストロイマンになったかというと、外宇宙艦隊の探査船が遭遇した未知の情報源によるもので…(クリックでネタバレ内容表示)
彼らの正体は壊滅寸前の航空宇宙軍が送りだした情報である。つまり無限ループですな
外惑星連合軍
21世紀末に地球=月連合の影響下にある惑星開発局の統制開発に反感を持った木星圏を中心とした外惑星自治政府が結成した連合軍。本来は各自治政府が経済協力を名目に結成された協商組織であるが、実態は反地球=月連合の各政府の自治軍の秘密軍事同盟となっている。航空宇宙軍とは一回の占領期を挟んで2回外惑星動乱を引き起こしているが敗北している。
彼らの大きな主張は以下のとおり
- 天王星&海王星の開発からの撤収とそれを主導していた惑星開発局の解体&外宇宙艦隊の縮小。(=不採算拠点の放棄、親地球勢力の増加の阻止)
- 航空宇宙軍が保有する土星圏レアの重水素工場、木星圏アナンケ基地、小惑星帯のセンチュリーステーションのそれぞれの割譲(=航空宇宙軍の地球軍化)
- 航空宇宙軍の公宙(各自治政府の管轄軌道以外)の警察権の縮小、宇宙船建造の自由化(各国の完全武装化)
要は地球=月連合主導の太陽系体制から各自治政府が群雄割拠する太陽系体制を目指していたのである。
戦力としては、自治政府の沿岸警備隊と軍警察を自治軍に改変した組織であるため、基本的には各政府領域のみの警備艦しか保有しておらず、機動戦力は民間輸送艦を改造して爆雷とレーザー砲を積んだ仮装巡洋艦のみである。正規巡洋艦をこっそり開発していたが間に合わずに第一次外惑星動乱に突入してしまう。
第一次外惑星動乱は、急な航空宇宙軍の査察要求から始まる地球=月連合との外交交渉から始まり、外交交渉がこじれた結果として、外惑星連合軍は宣戦布告の上で戦争に突入する。最もやる気だったのは木星圏のカリスト&ガニメデ両政府で、土星圏のタイタンは非協力的であり、開戦後もすぐに降伏する有様だった。
戦間期には、各政府ともに占領されて自治軍も解体されるも、同時期に旧ガニメデ情報部主導の地下組織が結成され、その後はゲリラ組織SPAとして武装闘争をするもジリ貧となる。起死回生の策として、再開発が開始された辺境の天王星の衛星都市エリヌスを武装占拠してSPAの自治領化目指すも失敗し壊滅する。
その後、各外惑星自治政府は再軍備が認められて、従来通りの小規模警備艦隊を保有してる状態が続いていたが、いつの間にかタイタンがせっせと再軍備していたようで……
木星諸国
土星諸国というかタイタン
土星最大の衛星で太陽系2番目にでかくて窒素と液体炭化水素に覆われた衛星で土星の自治国家。
木星と一緒に地球=月連合と対立しているが、実際には木星派と地球派で主導権争いしていた国家で、第一次動乱前夜までドタバタしていて、態度を明確にしていなかった国家である。
なお、第一次外惑星動乱ではさっさと降伏するのでハト派国家なのかなと思うが、実際には人材不足が深刻なのか人体実験大好き集団。自分ところの民間人や敵軍の捕虜の脳みそ取り出してクラスター化させてスパコンを作ってみたり、その脳みそスパコンを活用して長距離精密射撃ができる無人兵器作ってみたり。新鮮な死体見つけるとウキウキで脳みそサルベージして擬似人格を作り上げて、脳みそは制御装置として再活用したりなどなど死体を余すところなく活用するネクロマンサー国家。
さっさと降伏したので、軍事作戦には懲りて経済戦争や政治闘争で自治拡大を目指すかと思いきや、再軍備したら査察官制度を活用してまで、再戦争の準備と秘密保持を徹底する臥薪嘗胆ぶりを発揮する。人材不足が高じて謎のびっくりロボット軍団を開発したり、再軍備の裏側でエンジンをセコセコ開発したりしている。
第二次外惑星動乱では宣戦布告もなし地球衛星軌道上の軍港を奇襲攻撃を行い、その行為にドン引きし独自に和平交渉を始めようとしたカリスト&ガニメデ両政府をびっくりどっきりロボ軍団で政権転覆させるブラックぶりを披露する。
こいつら絶対悪の秘密結社だよ
シリーズ一覧
紙媒体はすべて絶版で、後述の完全版に切り替わっている。電子書籍版は『カリスト―開戦前夜―』『タナトス戦闘団』『火星鉄道一九』『巡洋艦サラマンダー』の四作のみ中央公論新社から発売中。なお、『惑星CB-8越冬隊』は遠未来が舞台であり、シリーズ名の由来ともなっている航空宇宙軍が直接登場することはない。
上記の他に『137機動旅団』(単行本未収録)と『ガネッシュとバイラブ』(短編集『星空の二人』に収録)という短編があるほか、同作者の『戦闘員ヴォルテ』にも航空宇宙軍が登場している。また、『逝きし者』という短編(短編集『エミリーの記憶』に収録)にも航空宇宙軍陸戦隊が出てくるのだが、なぜかこの話は『航空宇宙軍史』と関連付けて語られることがあまりない。
完全版
2016年より「完全版」が新たに刊行された。以前刊行されていた単行本2冊分が1冊にまとめられている他、刊行(収録)の順番も一部変更されている。
新・航空宇宙軍史
いわば第2期。第二次外惑星動乱期が舞台となっている。
関連生放送
※第36回日本SF大賞(2016年)において谷氏が『コロンビア・ゼロ 新・航空宇宙軍史』で大賞を受賞した。
関連項目
親記事
子記事
兄弟記事
-
ページ番号: 5031140
-
-
リビジョン番号: 3259432
-
- 編集内容についての説明/コメント:
ニコニコ生放送ブログパーツの大きさ調整、シリーズ一覧の項目に書籍版元ページへのテキストリンクを追加、ネタバレ反転をdetails-summary囲みに変更、「。。。。。。」を「……」に変更、誤字(衍字)修正