生活習慣病を解消し、一生ものの体をつくるために知っておきたいことを大阪大学大学院特任准教授の野口緑氏に解説してもらう本連載。今回のテーマは「正しい血圧の測り方」。血圧計を購入して毎日まめに測っていながら、やり方を間違えている残念な人は意外に多いという。1日何回測るべき? 測るときの姿勢は? 手首に巻く血圧計でも大丈夫? 「高血圧治療ガイドライン2019」に書かれている「正しい血圧の測り方」を解説していただこう。
こんにちは。大阪大学大学院で生活習慣病予防の研究をしている野口緑です。ご存じの通り、「高血圧」は最も患者数が多い生活習慣病です。2019年の「国民健康・栄養調査」によると男性の29.9%、女性の24.9%が高血圧になっていました。そのため、最近は多くの人が血圧計を持っています。毎日欠かさずチェックしている方もたくさんいらっしゃることでしょう。
野口緑氏の新刊『健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと』(日経BP)
しかし、中には間違った測り方をしている人も少なくありません。せっかく血圧を測っても、間違った測り方をしていては正しい数値は当然出てきません。大変もったいないことです。そこで今回は、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」に書かれている「正しい血圧の測り方」についてお話ししたいと思います。
本題に入る前に、改めて高血圧の定義を確認しておきましょう。上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上になると高血圧と診断されますが、これは病院で測る「診察室血圧」の場合です。家でリラックスした状態で測る「家庭血圧」の場合、それぞれ5mmHgずつ低くなることに注意してください。つまり、「135/85mmHg以上」(収縮期血圧が135mmHg以上かつ/または拡張期血圧が85mmHg以上)で高血圧となります。
(出典/ 高血圧治療ガイドライン2019)
最近は、高血圧の診断をする際、診察室血圧だけでなく家庭血圧を重視するようになっています。昼に病院で測るだけでは「夜間高血圧」や「早朝高血圧」を見落としやすいこと、また、診察室血圧と家庭血圧が異なる「白衣高血圧」の人などもいるからです。
- 夜間高血圧
夜間の血圧が十分に下がらない状態。夜間の血圧の平均値が120/70mmHg以上を指す。
- 早朝高血圧
早朝に血圧が過剰に高くなる状態。診察室血圧が140/90mmHg未満と正常でも、早朝に測定した家庭血圧の平均値が135/85mmHg以上を指す。
- 白衣高血圧
家で測ると高血圧ではないが、診察室で測ると高血圧である状態。逆に診察室では正常で家で測ると高くなる場合は「仮面高血圧」と呼ぶ。