サウナの「ととのう」って何なにだ？ サウナ好すきの医師いしが徹底てってい解説かいせつ

サウナが大好だいすきな救急きゅうきゅう医い・三谷みたに雄つよし己おのれさんの連載れんさいがスタート。サウナの効能こうのうや誰だれもが安全あんぜんにサウナを楽たのしむための知識ちしきを医学いがく的てきに解説かいせつします。ときどきサウナ愛あいを語かたります。

はじめまして！

　私わたしは、救急きゅうきゅう科か専門医せんもんいとして救急きゅうきゅう診療しんりょうの最前線さいぜんせんで働はたらきつつ、整形せいけい外科げかの領域りょういきでも研鑽けんさん（けんさん）を積つんでいる救急きゅうきゅう医いです。日々ひびの業務ぎょうむの傍かたわら、SNSを通つうじた情報じょうほう発信はっしんもしています。特とくに、医学いがく生せいや若手わかて研修けんしゅう医いに向むけた医学いがくの知識ちしきや勉強べんきょう法ほうなどの情報じょうほうの共有きょうゆうに力ちからを入いれています。

　私わたしのモットーは「知行ちぎょう合一ごういつ」です。この言葉ことばを直訳ちょくやくすると「知識ちしきと行動こうどうは一ひとつである」となりますが、本質ほんしつ的てきな意味合いみあいはもう少すこし深ふかく、知識ちしきを持もつことと、その知識ちしきに基もとづいて行動こうどうすることが一致いっちしている状態じょうたいを指さすと考かんがえます。ただ知識ちしきを学まなぶだけではなく、その学まなんだ知識ちしきを実際じっさいの行動こうどうに移うつし、アウトプットすることで、さらに自身じしんの知識ちしきを深ふかめ、さらなる成長せいちょうを目指めざしています。この想おもいを大切たいせつに、自分じぶんの日々ひびの経験けいけんや学まなんだことや葛藤かっとうを若手わかて医師いし向むけに綴つづった「綴つづる救急きゅうきゅう医い～20代だいの私わたしが残のこしたかったこと」という連載れんさいエッセーを日経にっけいメディカルで続つづけていたところ、日経にっけいGoodayでも連載れんさいのお話はなしをいただきました。

　さて、これから始はじまるこの連載れんさいコラムのテーマは、タイトルからも分わかるように、ずばり「サウナ」についてです。日ひごろから健康けんこう習慣しゅうかんについて関心かんしんの高たかい日経にっけいGoodayの読者どくしゃの皆みなさんに向むけて、サウナをはじめ、その周辺しゅうへん知識ちしきとなる温泉おんせんや入浴にゅうよくについて、医師いしの視点してんから解説かいせつをしていきます。私わたしがなぜサウナをテーマとしたのか、それには私わたし自身じしんがサウナにこれまで抱だいていた想おもいが大おおきく関かかわっています。

サウナは体からだに悪わるそう…最初さいしょはそう思おもっていた

　私わたしは小ちいさな頃ころから、湯船ゆぶねにつかるのが大好だいすきでした。今いまでも、家いえでは毎日まいにち必かならず湯船ゆぶねにお湯ゆを張はって、緊急きんきゅう手術しゅじゅつなどがあってどれだけ遅おそく帰宅きたくしても、湯船ゆぶねにつからなければ眠ねむれないほどです。友人ゆうじんと旅行りょこうに行いくときも、第だい一いちに考かんがえる候補こうほは温泉おんせん地ちで、いかにその温泉おんせん地ちの中なかでも気きになる温泉おんせんを効率こうりつよくはしごするかを考かんがえるほどでした。

　その一方いっぽうで、温泉おんせんや銭湯せんとうに併設へいせつされることの多おおいサウナには、あまり良よい印象いんしょうを持もっていませんでした。サウナに入はいるとなんだか体からだがヒリヒリするし、息苦いきぐるしい。時ときには頭あたまが痛いたくなったこともありました。サウナはつらいもの――そんなサウナに対たいする少すこしネガティブなイメージは、救急きゅうきゅう医いとしての勤務きんむを開始かいしして以降いこう、さらに強つよまりました。

　救急きゅうきゅう隊たいからは昼夜ちゅうやを問とわず、重症じゅうしょう患者かんじゃの受うけ入いれ要請ようせいの連絡れんらくが病院びょういんに入はいってきます。その中なかには少すくなからず、スーパー銭湯せんとうやスパ施設しせつのサウナで気分きぶんが悪わるくなったり、サウナ室しつの中なかで意識いしきを失うしなったりして、救急きゅうきゅう搬送はんそうされてくる患者かんじゃさんがいました。中なかには、サウナ室しつの中なかで心肺しんぱい停止ていしの状態じょうたいとなり命いのちを落おとした患者かんじゃさんも。こういった救急きゅうきゅうの受うけ入いれ要請ようせいに接せっするたびに、「サウナは危険きけんなもの」「なぜ体調たいちょうを崩くずすのにわざわざサウナに入はいるのか分わからない」などと感かんじるようになりました。友達ともだちや他たの利用りよう者しゃがサウナや水風呂みずぶろに吸すい込こまれていく様子ようすを湯船ゆぶねから眺ながめては、「あんな体からだに悪わるそうなもの、よく好すきこのんで入はいるなあ」と疑問ぎもんに思おもい続つづけ、ずっと“食くわず嫌ぎらい”をしてきたのでした。

初はじめての「ととのう」

　原稿げんこうをいくつか抱かかえていたある3月の年度ねんど末まつ、行いき詰づまった私わたしは、何なにか新あたらしい刺激しげきを求もとめ、春休はるやすみの最後さいごの2日間にちかんを使つかって直島なおしまへ向むかいました。

　直島なおしまは、香川かがわ県けんは瀬戸内海せとないかいに位置いちするアートの島しまです。サイクリングをしながら、美術館びじゅつかんや現代げんだいアート作品さくひんの建築けんちく、オブジェを巡めぐり、普段ふだん体感たいかんできないものにたくさん出合であいました。特とくに事前じぜん学習がくしゅうをせずに向むかったので、私わたしはスポンジのように、見みるもの触ふれるもの全すべてを吸収きゅうしゅうしていきました。そんな体験たいけんに満足まんぞくしながら向むかった宿やどは、直島なおしまの中なかでも有名ゆうめいなリゾート施設しせつでした。

　「SANA MANE」。そこはサウナ好すきの友人ゆうじんや、おしゃれなものに感度かんどの高たかい知人ちじんから推薦すいせんされていた宿やどで、グランピング施設しせつの中なかに貸かし切きりサウナを備そなえています。そもそもグランピング施設しせつに行いくのが初はじめてだったので、とてもわくわくしました。ちょっと部屋へやでくつろいだ後のち、この施設しせつを有名ゆうめいにしているサウナ「SAZAE」を眺ながめに行いきました。

　SAZAEは、建築けんちく物ぶつそのものがアートとして世界せかい的てきに評価ひょうかされており、その造形ぞうけい美びは素人しろうとの私わたしが見みても五感ごかんが刺激しげきされるほどに素敵すてきでした。元々もともとサウナに対たいして苦手にがて意識いしきを持もっていた私わたしですが、せっかくここまで有名ゆうめいなサウナ施設しせつに来きたのだから、体験たいけんしてみようという気持きもちになりました。