アーロン・ラルストン

アーロン・リー・ラルストン(Aron Lee Ralston, 1975年ねん10月27日にち - )は、アメリカの登山とざん家か、および演説えんぜつ家か。 2003年ねん5月がつ、アメリカ・ユタ州しゅうの渓谷けいこくで事故じこに遭あい、岩いわに挟はさまれた右腕うわんをナイフで切断せつだんすることにより脱出だっしゅつしたことで一躍いちやく有名ゆうめいになった。この事故じこは自伝じでんとして小説しょうせつ化かされ、2010年ねんには『127時じ間あいだ』(原題げんだい:127 Hours)として映画えいが化かされた。

アーロン・ラルストン Aron Ralston
アーロン・ラルストン（2008年ねん）
生誕せいたん	(1975-10-27) 1975年ねん10月27日にち（48歳さい） インディアナ州しゅうインディアナポリス
出身しゅっしん校こう	カーネギーメロン大学だいがく
職業しょくぎょう	演説えんぜつ家か、登山とざん家か
代表だいひょう作さく	『アーロン・ラルストン 奇跡きせきの6日間にちかん』(Between a Rock and a Hard Place, 2004)
配偶はいぐう者しゃ	ジェシカ・トラスティ

略歴りゃくれき

ラルストンは、コロラド州しゅうグリーンウッドのチェリー・クリーク高校こうこうを卒業そつぎょうし、ピッツバーグのカーネギーメロン大学だいがくに入学にゅうがく、機械きかい工学こうがくとフランス語ふらんすごを専攻せんこうし首席しゅせきで卒業そつぎょうした。また副ふく専攻せんこうとしてピアノを学まなんだ。

カーネギーメロン大学だいがく在学ざいがく中ちゅう、リサーチアシスタントとして従事じゅうじした他ほか、海外かいがいに留学りゅうがくし、学内がくないスポーツに汗あせを流ながした。その後ごインテルにメカニカルエンジニアとして勤つとめ、2002年ねん登山とざんに専念せんねんするためインテルを退社たいしゃ。彼かれの当時とうじの目標もくひょうは、コロラドにある14000フィート（およそ4200メートル）を超こえる山やますべてに冬期とうき単独たんどく登頂とうちょうすることであり、これは当時とうじまだ誰だれも成なし遂とげていなかったが、その後ご彼かれはこの偉業いぎょうを成なし遂とげた。

2009年ねん8月がつ、ラルストンは、ジェシカ・トラスティと結婚けっこんし、2010年ねん1月がつ、最初さいしょの子供こどもであるレオが誕生たんじょうした。

事故じこ

2003年ねん4月がつ、ブルー・ジョン・キャニオン（ユタ州しゅう東部とうぶ、キャニオンランズ国立こくりつ公園こうえん・ホースシュー・キャニオン地区ちくのすぐ南みなみ）を歩あるいている時ときに、渓谷けいこく内ないで挟はさまっていた岩いわが外はずれて落おち、彼かれの右腕うわん前腕ぜんわん部ぶに落おちて、渓谷けいこく内ないの壁かべとの間あいだに腕うでを挟はさんで止とまった。ラルストンは彼かれの旅たびの計画けいかくを誰だれにも伝つたえていなかったので、誰だれも自分じぶんのことを探さがしに来こないだろうと考かんがえていた。

彼かれは自分じぶん自身じしんの死しを悟さとり、5日間にちかんで、150ml程ほどしか残のこっていない水みずを少すこしずつ飲のみながら、腕うでを引ひき抜ぬこうと試こころみた。しかし800ポンド（約やく360キロ)ある岩いわが腕うでを挟はさんでいて、引ひき抜ぬく努力どりょくは無駄むだになった。岩いわを持もち上あげようとしたり壊こわそうとしたりして3日にち経たち、脱水だっすい症状しょうじょうを起おこして精神せいしん錯乱さくらん状態じょうたいとなり、ラルストンは脱出だっしゅつのために挟はさまった右腕うわん前腕ぜんわんの中程なかほどを切断せつだんしようと試こころみた。彼かれは、腕うでが挟はさまった最初さいしょの数日すうじつで実験じっけん的てきに右腕うわんを止血しけつし、表皮ひょうひに傷きずを入いれて出血しゅっけつしないかどうか確たしかめている。4日にち目めの時点じてんで腕うでを引ひき離はなすには腕うでの骨ほねを折おらなければいけないことに気きがついたが、彼かれが持もっていた道具どうぐでは骨ほねを折おるのに不十分ふじゅうぶんであった。5日にち目めには飲のみ水みずが尽つき、渓谷けいこくの壁かべに自分じぶんの誕生たんじょう日びと死しぬであろう日付ひづけを刻きざみつけ、自分じぶん自身じしんをビデオ撮影さつえいして家族かぞくに向むけて最後さいごのメッセージを録画ろくがした。恐おそらくその夜よるは生いき延のびられないだろう思おもっていたが、翌朝よくあさ（2003年ねん5月がつ1日にち木曜日もくようび）の夜明よあけにまだ生いきているということに気きがついた。その後ごすぐに「挟はさまった腕うでをねじって力ちからを加くわえることで、前腕ぜんわん部ぶの二に本ほんの骨ほね（尺しゃく骨こつと橈骨）を折おることができるのではないか」と直感ちょっかんし、直ただちに実行じっこうに移うつしたが、彼かれの持もっていたナイフが短みじかかったために切断せつだんには1時じ間あいだ程ほどかかった。彼かれはナイフのメーカーについて「レザーマン製せい以外いがいのものを使つかった」とだけ言いって、どのメーカーのものであるか言及げんきゅうしていないが、「15ドルの懐中かいちゅう電灯でんとうを買かった時ときに、万能ばんのうツールとしておまけでもらったものだ」と言いっている 。

腕うでの切断せつだんに成功せいこうした後のち、彼かれは車くるまを置おいた場所ばしょまで戻もどらなくてはいけなかった。長ながく留とどまっていた狭せまい渓谷けいこくを脱出だっしゅつし、垂直すいちょくの壁かべを片手かたてで懸垂けんすい下降かこうし、真昼まひるの太陽たいようの降ふり注そそぐ中なか、渓谷けいこくを歩あるきとおした。自分じぶんの車くるまを駐車ちゅうしゃしたところまで8km程ほど離はなれていたが、携帯けいたい電話でんわを持もっていなかった。歩あるいているうちに、オランダから休暇きゅうかに来きていた家族かぞく（エリク・マイヤー、モニク・マイヤーとその息子むすこアンディ）に遭遇そうぐうした。彼かれらはラルストンに水みずを与あたえ、救助きゅうじょを要請ようせいするために急いそいで移動いどうした。ラルストン自身じしんは救急きゅうきゅう要請ようせいされる前まえに出血しゅっけつ多量たりょうで死しぬのではないかと思おもっていたが（この時ときまでに体重たいじゅうが40ポンド（約やく18キロ）減少げんしょうしていた。これは血液けつえきの25%に当あたる）、偶然ぐうぜんにもラルストンを探さがしていたレスキュー隊たいがヘリコプターで着陸ちゃくりくし救助きゅうじょされた。腕うでを切断せつだんして6時じ間あいだ後ごのことであった（家族かぞくや友達ともだちが、ラルストンがいなくなったことで救助きゅうじょ要請ようせいをし、救助きゅうじょの直前ちょくぜんにキャニオンランズに捜索そうさく対象たいしょうを絞しぼったところだった）

後日ごじつ、切断せつだんされて残のこった腕うでは、国立こくりつ公園こうえんの管理かんり者しゃによって岩いわの下したから取とり出だされた。トム・ブロコウによると、13人にんがかりで巻まき上あげ機きと油圧ゆあつジャッキを使つかって岩いわを動うごかし、ようやくラルストンの腕うでを取とりだすことができたという。腕うでは火葬かそうにされた上うえでラルストンに渡わたされた。6カ月かげつ後ご、NBCテレビでの事故じこの特集とくしゅう番組ばんぐみを撮影さつえいするため、彼かれの28回かい目めの誕生たんじょう日びにトム・ブロコウと共ともに事故じこ現場げんばに戻もどった。その際さい「自分じぶんの右腕うわんはこの事故じこ現場げんばのものだから」といって、右腕うわんの遺のこ灰はいを現場げんばに散骨さんこつしている。

事故じこ後ごの状況じょうきょう

コロラド州しゅうアスペンのインディペンデンス・パス近ちかくにあるコロラド州しゅう中部ちゅうぶの山やまにて（2009年ねん）

ラルストンは引ひき続つづき多おおくの山やまに登のぼり続つづけており、2008年ねんにはチリのオホス・デル・サラード、アルゼンチンのピシス山さんに登頂とうちょうしている。2005年ねんには、ラルストンは14000フィートを超こえるコロラドの53座ざすべてに冬季とうき単独たんどく登頂とうちょうした初はじめての登山とざん家かとなった。1997年ねんに登頂とうちょうを開始かいしし、ブルー・ジョン・キャニオンでの右腕うわん切断せつだんによる中断ちゅうだん期間きかんを挟はさんでの達成たっせいであった。2008年ねんデナリに登頂とうちょうし、6194mの頂上ちょうじょうからスキーで滑降かっこうした。2009年ねんには、友人ゆうじん達たちを率ひきいてグランド・キャニオンを通とおってコロラド川がわの川かわ下くだりを敢行かんこうし、同年どうねんタンザニアのキリマンジャロに登頂とうちょうした。いつかはエベレストに登頂とうちょうしたいとラルストンは言いっているが、「極地きょくち探検たんけん家か」であるエリック・ラーセンが主導しゅどうして行おこなわれた2010年ねんの"Save the Poles"には帯同たいどうしなかった。

ラルストンは、事故じこの経験けいけんを書籍しょせきBetween a Rock and a Hard Placeとして2004年ねん9月がつ7日にちに出版しゅっぱんした。

2011年ねん5月がつ15日にちには、カーネギーメロン大学だいがくの学位がくい授与じゅよ式しきに講演こうえん者しゃとして演説えんぜつした。

127時じ間あいだ

詳細しょうさいは「127時じ間あいだ」を参照さんしょう

イギリス人じんの映画えいが監督かんとく、ダニー・ボイルはラルストンの実話じつわに基もとづいて、映画えいが『127時じ間あいだ』(原題げんだい:127 Hours)を制作せいさくした。撮影さつえいは2010年ねんの4～5月がつに行おこなわれ、2010年ねん11月5日にちにニューヨークとロサンゼルスを皮切かわきりに封切ふうぎられた。ジェームズ・フランコがラルストン役やくを演えんじた。映画えいがは、各地かくちの映画えいが祭さいでスタンディング・オベーションを受うけるなどの喝采かっさいを浴あびた。トロント、ニューヨークなどでは、右腕うわん切断せつだんのリアルな描写びょうしゃのために気きを失うしなう観客かんきゃくが出でた。

映画えいがはアカデミー賞しょうにおいて、作品さくひん賞しょう・主演しゅえん男優だんゆう賞しょう（ジェームズ・フランコ）を含ふくむ6つの賞しょうにノミネートされた。

関連かんれん項目こうもく

• 洞窟どうくつ救助きゅうじょ

外部がいぶリンク

• Redux: A Climber's Survival Tale
• Aron Ralston: in his own words
• The story on BBC-Outlook (26min)
• 127 Hours (127Hours) - Facebook
• 127 Hours (@127HoursMovie) - X（旧きゅうTwitter）