エンシエロ

エンシエロ（牛追うしおい）
	サン・フェルミン祭さいでのエンシエロ
会場かいじょう所在地しょざいち	スペイン・バスク州しゅうパンプローナほか、スペインやラテンアメリカ諸国しょこく
設立せつりつ	1215年ねん

エンシエロ（スペイン語ご: encierro）は、祭礼さいれいなどで牡おす牛うしの群むれの前まえを人間にんげんが走はしる行為こうい。前まえを走はしるのは人間にんげんだが、日本語にほんごでは牛追うしおいとも表記ひょうきされる。スペイン語ごのエンセラール（encerrar、囲かこう）という動詞どうしに由来ゆらいする^[1]。

特徴とくちょう

闘牛とうぎゅう（黒色こくしょく）と去勢きょせい牛うし（茶ちゃ/白しろ）からなる牡おす牛うしの群むれ

エンシエロはスペインやラテンアメリカの多おおくの村むら（pueblo）やいくつかの都市とし（ciudad）での祝祭しゅくさいにおける伝統でんとう的てきな闘牛とうぎゅうの慣習かんしゅうのひとつである。先頭せんとう牛うしに率ひきいられたある一定いっていの数かずの牡おす牛うし（toro）、若わか牡おす牛うし（novillo）、若わか牝めす牛うし（vaquilla）などの群むれの前まえを走はしる。一般いっぱん的てきに牛うしたちにより近ちかいポジションで、牛うしと接触せっしょくせずに走はしるのが優秀ゆうしゅうな走はしり手しゅとされる。慣なれていない走はしり手しゅが躓つまずいたり、混雑こんざつにより走路そうろが渋滞じゅうたい状態じょうたいになることがこの祝祭しゅくさい行事ぎょうじにおける最大さいだいの危険きけんである。

一般いっぱんにエンシエロは、闘牛とうぎゅう祭まつり期間きかんの毎日まいにち午前ごぜんに、一ひとつの柵しがらみもしくは二に重じゅうの柵しがらみが設置せっちされた市街地しがいちルートで行おこなわれ、エンシエロの牛うしのうちの6頭とうの牡おす牛うしは午後ごごに行おこなわれる闘牛とうぎゅうに登場とうじょうする牛うしである。

自治体じちたいによって走はしり手しゅの年齢ねんれい制限せいげんが定さだめられている場合ばあいがある。例たとえばサン・セバスティアン・デ・ロス・レイジェスでは16歳さい以上いじょうと決きめられているが、一般いっぱん的てきには年齢ねんれい制限せいげんはない。

スペイン・ナバーラ州しゅうパンプローナのサン・フェルミン祭さいで行おこなわれるエンシエロがもっとも有名ゆうめいである^[2]。この行事ぎょうじは、牡おす牛うしが夜よる間あいだを過すごした屋外おくがいの囲がこい場じょうから闘牛とうぎゅう場じょうに輸送ゆそうする必要ひつよう性せいに由来ゆらいする。パンプローナなどの町まちでは、エンシエロに使用しようされた6頭とうの牛うしが同日どうじつ午後ごごにパンプローナ闘牛とうぎゅう場じょうで行おこなわれる闘牛とうぎゅうにも使用しようされる。牡おす牛うしをルートに沿そって誘導ゆうどうし、路地ろじに入はいらないようにするため、エンシエロの開始かいし前まえにはルートに木製もくせいまたは鉄製てつせいの柵しがらみが設置せっちされる。参加さんか者しゃが危険きけんを感かんじた際さいに素早すばやくルートから脱出だっしゅつできるように、柵しがらみが二に重じゅうに設置せっちされている個所かしょもある。二に重じゅう部分ぶぶんは人間にんげんが避難ひなんするのに十分じゅうぶんな幅はばだが、牡おす牛うしは阻止そしできる程度ていどに狭せまく作つくられる。

歴史れきし

記録きろくに残のこる最古さいこのエンシエロは、1215年ねんにカスティーリャ地方ちほう（現げんセゴビア県けん）のクエリャルで行おこなわれたものであり、夜明よあけ前まえに牧童ぼくどうたちが牧場ぼくじょうから村むらまでの6.5kmを走はしったとされている^[3]。牡おす牛うしを市場いちばまで移動いどうさせる際さい、牛うし飼かいは恐おそろしく刺激しげき的てきな方法ほうほうを用もちいて牛うしを急いそがせた。この数すう年ねん後ご、牛うしを速すみやかに移動いどうさせることは競技きょうぎのひとつとなり、若者わかものは追おい抜ぬかされることなく牡おす牛うしの前まえを走はしって牡おす牛うしを囲かこいに入いれることに挑戦ちょうせんした。この習慣しゅうかんはやがて人気にんきを増まし、またスペインの都市とし人口じんこうが増加ぞうかするとますます注目ちゅうもくされるようになり、伝統でんとうとなって今日きょうに至いたっている^[4]。フランコ政権せいけん下かではエンシエロ自体じたいが禁止きんしされたが、民政みんせい移管いかん期きには闘牛とうぎゅうをしのぐ人気にんきとなり、1982年ねんには左派さはのスペイン社会労働党しゃかいろうどうとう(PSOE)政権せいけんがフランコ時代じだいの牛追うしおい禁止きんし令れいを廃止はいしした^[5]。

事例じれい

ナバーラ州しゅうパンプローナ

エンシエロの進行しんこう

エンシエロを見物けんぶつする人々ひとびと

スペインでもっとも人気にんきがあるエンシエロはナバーラ州しゅうの州都しゅうとパンプローナのものであり^[2]、30年ねん以上いじょうにわたってスペインの国営こくえい放送ほうそうであるRTVEが全国ぜんこく放送ほうそうしている^[6]。パンプローナのエンシエロはサン・フェルミン祭さいでもっとも重要じゅうような行事ぎょうじであり、7月がつ7日にちから7月がつ14日にちの朝あさ8時じに毎日まいにち開催かいさいされる^[2]。18歳さい以上いじょうであること、牡おす牛うしと同おなじ方向ほうこうに走はしること、牡おす牛うしを扇動せんどうしないこと、酩酊めいてい状態じょうたいで参加さんかしないことなどの規則きそくが定さだめられている^[7]。パンプローナでは、人間にんげんが避難ひなんするのに十分じゅうぶんな二に重じゅうの木製もくせい柵しがらみが通とおりに設置せっちされる。この柵しがらみは約やく3,000のパーツからなり、いくつかのパーツは祭礼さいれいの期間きかん中ちゅうはそのまま残のこされるが、それ以外いがいのパーツは毎朝まいあさ組くみ立たてられてエンシエロ終了しゅうりょう後ごに解体かいたいされる^[8]。

エンシエロの開始かいし前まえ、参加さんか者しゃは壁かべに設置せっちされた聖きよしフェルミンの像ぞうに向むかって、讃さん美歌みかを3度ど、それぞれカスティーリャ語ごとバスク語ごで歌うたう。聖せいフェルミンはパンプローナ市しの守護しゅご聖人せいじんであり祭礼さいれいの守護しゅご聖人せいじんでもある。カスティーリャ語ご版ばんは「A San Fermín pedimos, por ser nuestro patrón, nos guíe en el encierro dándonos su bendición」（エンシエロの最中さいちゅうに我々われわれを導みちびき、祝福しゅくふくを与あたえるよう、守護しゅご聖人せいじんである聖せいフェルミンに請こう）と歌うたわれる。歌手かしゅが「ビバ、サン・フェルミン、ゴラ、サン・フェルミン」（ビバはカスティーリャ語ご、ゴラはバスク語ごで、それぞれ「サン・フェルミン万まん歳さい」の意味いみ）と叫さけんで讃さん美歌みかが終おわる^[7]。多おおくの参加さんか者しゃは白色はくしょくのシャツ・赤色あかいろのベルト・赤色あかいろのネッカチーフからなる伝統でんとう衣装いしょうを着用ちゃくようし、牡おす牛うしの注意ちゅういを引ひくために新聞しんぶんを握にぎりしめる者ものもいる^[7]。

午前ごぜん8時じちょうどに第だい1の花火はなびが打うち上あげられ、囲がこい場じょうのゲートが開ひらかれて闘牛とうぎゅう6頭とうが走はしりだす。第だい2の花火はなびは6頭とうの去勢きょせい牛うしが放はなたれる合図あいずである。第だい3の花火はなびと第だい4の花火はなびは牡おす牛うし12頭とうすべてがパンプローナ闘牛とうぎゅう場じょうに入はいり、エンシエロが終了しゅうりょうしたことを意味いみする^[7]。第だい1の花火はなびが打うち上あげられてからエンシエロが終了しゅうりょうするまでの平均へいきん時間じかんは4分間ふんかんである^[7]。群むれは6頭とうの闘牛とうぎゅう（主おもに黒色こくしょく）と6頭とうの去勢きょせい牛うし（主おもに白色はくしょくと茶色ちゃいろ）の計けい12頭とうからなり、さらに2分ふん後ごには3頭とうの去勢きょせい牛うしが囲がこいから放はなたれる。6頭とうの去勢きょせい牛うしの役目やくめは12頭とうの群むれを誘導ゆうどうすることである^[7]。群むれの平均へいきん速度そくどは24km/h（15mil/h）である^[7]。

スタート地点ちてんの囲がこい場じょうからゴール地点ちてんのパンプローナ闘牛とうぎゅう場じょうまでは826m（903yd）である。旧きゅう市街地しがいちの4つの通とおり（サント・ドミンゴ通どおり、パンプローナ市庁舎しちょうしゃ前ぜん広場ひろば、メルカデレス通どおり、エスタフェタ通どおり）、パンプローナ闘牛とうぎゅう場じょうに入はいる前まえのテレフォニカと呼よばれるセクションを走はしる^[2]。もっともスピードの速はやい部分ぶぶんはサント・ドミンゴ通どおりから市庁舎しちょうしゃ前ぜん広場ひろばにかけてである。エスタフェタ通どおりの入口いりくちではしばしば牡おす牛うしの群むれが分断ぶんだんされ、また速度そくども遅おそくなる。

負傷ふしょう者しゃや衛生えいせい管理かんり

負傷ふしょう者しゃの手当てあてをする救護きゅうご隊たい

ほとんどの負傷ふしょう者しゃは転倒てんとうによる挫傷ざしょうであり、重傷じゅうしょうを負おうわけではないものの、毎年まいとし200人にんから300人にんがエンシエロ中ちゅうに負傷ふしょうしている。すべての負傷ふしょう者しゃが病院びょういんへの搬送はんそうを必要ひつようとしているわけではないが、2013年ねんには50人にんが救急きゅうきゅう車しゃでパンプローナ市内しないの病院びょういんに搬送はんそうされ、この数値すうちは2012年ねんの2倍ばい近ちかくであった。角かくで突つかれることがよく起おこるわけではないが、突つかれた場合ばあいには生命せいめいを脅おびやかす恐おそれがある。2009年ねんは10人にん、2010年ねんは9人にん、2011年ねんと2012年ねんは4人にん、2013年ねんは6人にんの参加さんか者しゃが祭礼さいれい期間きかん中ちゅうに牡おす牛うしに突つかれて負傷ふしょうし、2009年ねんには1人ひとりが死亡しぼうした。参加さんか者しゃの大だい部分ぶぶんは男性だんせいだが、1974年ねん以来いらい、5人にんの女性じょせいが棒状ぼうじょうのもので突つかれている。以前いぜんは女性じょせいの参加さんかが禁止きんしされていた。

負傷ふしょう者しゃのもうひとつの発生はっせい要因よういんは、エンシエロの最終さいしゅう部分ぶぶんである闘牛とうぎゅう場じょうの入口いりくち付近ふきんに参加さんか者しゃが押おし寄よせることである。この区域くいきは漏斗ろうとのように狭せばまって閉塞へいそくが起おこり、密集みっしゅうによる窒息ちっそくや転倒てんとうによる挫傷ざしょうなどの原因げんいんとなり、また後うしろからやってきた牛うしに突つかれることがある。入口いりくち付近ふきんの閉塞へいそくはエンシエロの歴史れきし上じょう少すくなくとも10回かい発生はっせいしており、最初さいしょの閉塞へいそくは1878年ねん、直近ちょっきんの閉塞へいそくは2013年ねんに起おこった。1977年ねんには1人ひとりの参加さんか者しゃがこのような閉塞へいそくで窒息ちっそくして死亡しぼうした。

1910年ねんに記録きろくが開始かいしされて以来いらい、15人にんがサン・フェルミン祭さいのエンシエロ中ちゅうに死亡しぼうしており、彼かれらの大だい部分ぶぶんは牛うしに突つかれたことが死因しいんにつながっている。負傷ふしょうの影響えいきょうを最小限さいしょうげんに抑おさえるため、毎日まいにち200人にんが参加さんか者しゃの救護きゅうごに協力きょうりょくしている。彼かれらは、平均へいきんして50mおきに配置はいちされた16か所しょの救護きゅうご所しょに配置はいちされ、各かく救護きゅうご所しょには少すくなくとも医師いしと看護かんご師しが1人にんずつ待機たいきしている。200人にんの大だい部分ぶぶんは主おもに赤十字せきじゅうじ社しゃからのボランティアである。救護きゅうご所しょに加くわえて、約やく20台だいの救急きゅうきゅう車しゃが待機たいきしている。この組織そしきは牛うしに突つかれた参加さんか者しゃが容体ようだいを安定あんていさせて10分ふん以内いないに病院びょういんに搬送はんそうされることを可能かのうにしている。

サン・フェルミン祭さいのエンシエロでの死亡しぼう事故じこ（1910年ねん以降いこう）^[7]
#	開催かいさい年ねん	年齢ねんれい/性別せいべつ	出身しゅっしん地ち	発生はっせい場所ばしょ	死因しいん
1	1924年ねん	22歳さい男性だんせい	ナバーラ州しゅう	テレフォニカ	牛うしに突つかれたこと ^[9]
2	1927年ねん	34歳さい/男性だんせい	ナバーラ州しゅう	パンプローナ闘牛とうぎゅう場じょう	牛うしに突つかれたこと ^[9]
3	1935年ねん	29歳さい/男性だんせい	サン・ルイス・ポトシ	パンプローナ闘牛とうぎゅう場じょう	牛うしに突つかれたこと ^[9]
4	1947年ねん	37歳さい/男性だんせい	ナバーラ州しゅう	エスタフェタ通どおり	牛うしに突つかれたこと^[9]
5	1947年ねん	23歳さい/男性だんせい	ナバーラ州しゅう	パンプローナ闘牛とうぎゅう場じょう	牛うしに突つかれたこと ^[9]
6	1961年ねん	32歳さい/男性だんせい	ナバーラ州しゅう	サント・ドミンゴ通どおり	牛うしに突つかれたこと ^[9]
7	1969年ねん	45歳さい/男性だんせい	ナバーラ州しゅう	サント・ドミンゴ通どおり	牛うしに突つかれたこと ^[9]
8	1974年ねん	18歳さい/男性だんせい	ナバーラ州しゅう	テレフォニカ	牛うしに突つかれたこと ^[9]
9	1975年ねん	41歳さい/男性だんせい	ナバーラ州しゅう	パンプローナ闘牛とうぎゅう場じょう	牛うしに突つかれたこと ^[9]
10	1977年ねん	17歳さい/男性だんせい	ナバーラ州しゅう	パンプローナ闘牛とうぎゅう場じょう	将棋倒しょうぎだおしによる窒息ちっそく死し^[7]
11	1980年ねん	26歳さい/男性だんせい	ナバーラ州しゅう	市庁舎しちょうしゃ前ぜん広場ひろば	牛うしに突つかれたこと ^[9]
12	1980年ねん	29歳さい/男性だんせい	エストレマドゥーラ州しゅう, バダホス	パンプローナ闘牛とうぎゅう場じょう	牛うしに突つかれたこと ^[9]
13	1995年ねん	22歳さい/男性だんせい	イリノイ州しゅう	市庁舎しちょうしゃ前ぜん広場ひろば	牛うしに突つかれたこと^[10]
14	2003年ねん	63歳さい/男性だんせい	ナバーラ州しゅう	メルカデレス通どおり	牛うしの角かくが当あたったこと^[11]
15	2009年ねん	27歳さい/男性だんせい	マドリード州しゅう, アルカラ・デ・エナーレス	テレフォニカ	牛うしに突つかれたこと^[12]^[13]

メディアへの登場とうじょう

パンプローナにあるヘミングウェイの石像せきぞう

パンプローナのエンシエロは、文学ぶんがく作品さくひん、テレビ番組ばんぐみ、広告こうこくなどで何なん度ども描えがかれている。1899年ねん、「映画えいがの父ちち」と呼よばれるルイ・リュミエールはエンシエロの動画どうがを撮影さつえいした^[14]。サン・フェルミン祭さいのエンシエロが世界せかい的てきに有名ゆうめいになったのは、アメリカ人じん作家さっかアーネスト・ヘミングウェイの影響えいきょうである。ヘミングウェイは、1926年ねんに小説しょうせつ『日ひはまた昇のぼる』を発表はっぴょうし、英語えいご圏けんでサン・フェルミン祭さいのエンシエロが知しられるようになった。ヘミングウェイは1933年ねんに闘牛とうぎゅうの解説かいせつ書しょである『午後ごごの死し』(英語えいご版ばん)を発表はっぴょうしている。

1991年ねんにはビリー・クリスタル監督かんとくが映画えいが「シティ・スリッカーズ」でエンシエロを描えがいた。親友しんゆう3人組にんぐみが牛追うしおいツアーに参加さんかし、カウボーイを体験たいけんすることで本来ほんらいの自分じぶんを見みつけようとする。この映画えいがではクリスタル監督かんとく自身じしんが演えんじたミッチという登場とうじょう人物じんぶつが背後はいごから牛うしに突つかれたが、命いのちに影響えいきょうはなかった。2011年ねんにはボリウッドの映画えいが『人生じんせいは二度にどとない』（ゾーヤー・アクタル監督かんとく）にエンシエロが登場とうじょうした。結婚けっこんを間近まぢかに控ひかえた親友しんゆう3人組にんぐみが独身どくしん最後さいごにスペインに旅行りょこうし、究極きゅうきょくの恐怖きょうふを克服こくふくするためにエンシエロに参加さんかした。3人にんは広場ひろばで立たち止どまったが、その後ご勇気ゆうきを奮ふるいたせて最後さいごまで走はしり切きった。この映画えいがはほぼ全編ぜんぺんがスペインロケで撮影さつえいされており、サン・フェルミン祭さいのエンシエロの他ほかに、トマティーナなども登場とうじょうする。2012年ねんには、コンストラクト・クリエイティヴズによって「Running with the Bulls」というドキュメンタリーが制作せいさくされ、ジェイソン・ファレルが進行しんこう役やくを務つとめた。このドキュメンタリーでは、物議ぶつぎを醸かもすエンシエロの伝統でんとうの長所ちょうしょと短所たんしょを紹介しょうかいしている^[15]。

パンプローナ以外いがいの都市とし

スペイン・ナバーラ州しゅう・パンプローナのサン・フェルミン祭さいで行おこなわれるエンシエロがもっとも有名ゆうめいであるが^[2]、イベリア半島はんとうの2ヶ国かこく（スペインとポルトガル）の町まちや村むらに加くわえて、メキシコのいくつかの都市としでもエンシエロが行おこなわれ^[16]、ペルーのトルヒーリョ（サン・ホセ祭さい）、アメリカのネバダ州しゅう・メスキーテ、夏季かきの南みなみフランスでもエンシエロが行おこなわれる^[17]。カスティーリャ地方ちほうでは小規模しょうきぼな祭まつりでもエンシエロが行おこなわれる^[18]。

8月がつ末まつにマドリード近郊きんこうのサンスで行おこなわれるエンシエロは、スペインではパンプローナに次ついで有名ゆうめいなものである。カスティーリャ・イ・レオン州しゅう・クエジャルのエンシエロはスペインでもっとも古ふるいとされており、1215年ねんまで遡さかのぼる記録きろくがある。ポルトガルのセントロ地方ちほう・サブガル（英語えいご版ばん）で行おこなわれるエンシエロでは馬うまが牛うしの群むれを先導せんどうする。イングランドのリンカンシャー・スタンフォード（英語えいご版ばん）では約やく700年ねんにわたって祭礼さいれいでエンシエロが行おこなわれていたが、1837年ねんに禁止きんしされた^[19]。地元じもとの伝承でんしょうによると、スタンフォードでのエンシエロの慣習かんしゅうは13世紀せいき初頭しょとうのジョン王おうの時代じだいまで遡さかのぼることができるという^[20]。

行事ぎょうじへの批判ひはん

PETAの活動かつどう家か

多おおくのアニマル・ライツ運動うんどう団体だんたいはエンシエロの開催かいさいに反対はんたいしている。動物どうぶつの倫理りんり的てき扱あつかいを求もとめる人々ひとびとの会かい(PETA)の活動かつどう家かは、パンプローナのサン・フェルミン祭さいの開幕かいまく日びの前まえに、デモンストレーションとして「ランニング・オブ・ザ・ヌーデス（英語えいご版ばん）」を行おこなっている^[21]。PETAは祭礼さいれいと闘牛とうぎゅうの際さいに牡おす牛うしが娯楽ごらくのために拷問ごうもんを受うけていると主張しゅちょうし、男性だんせいは性器せいきにプラスティック製せいの角かく（カバー）を付つけて、女性じょせいは全裸ぜんらで街路がいろを行進こうしんすることで主催しゅさい者しゃに抗議こうぎしている^[22]。

メキシコのサン・ミゲル・デ・アジェンデでもサンミゲラダと呼よばれるエンシエロが行おこなわれていたが、イベントに関連かんれんする公共こうきょう障害しょうがいを理由りゆうに2006年ねんから中止ちゅうしされている^[23]。サン・ミゲルでのエンシエロが中止ちゅうしされた後のちは、グアナフアト州しゅう・サルバティエラが代替だいたいとなる行事ぎょうじを開催かいさいしている。この行事ぎょうじはラ・マルケサダと呼よばれ、9月最終さいしゅう週しゅうまたは10月がつ最初さいしょ週しゅうの3日間にちかんに開催かいさいされる。近年きんねん、メキシコのエンシエロは多おおくの批判ひはんにさらされている。例たとえば、アニマル・ポリティコは今日きょうでは10人にん中ちゅう7人にんのメキシコ人じんがエンシエロに反対はんたいしていると推定すいていしており^[24]、メキシコの闘牛とうぎゅうは禁止きんしされるべきという世論せろんが形成けいせいされていることを示唆しさしている。

脚注きゃくちゅう

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

出典しゅってん

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