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ゲリラ豪雨 - Wikipedia

ゲリラ豪雨ごうう

突発とっぱつてき局地きょくちてき大雨おおあめ

ゲリラ豪雨ごうう(ゲリラごうう)は、集中しゅうちゅう豪雨ごうう一種いっしゅ正式せいしき気象きしょう用語ようごではなく、突発とっぱつてき天気てんき予報よほうによる正確せいかく予測よそく困難こんなん局地きょくちてき大雨おおあめ[1]を、軍事ぐんじ用語ようごゲリラ奇襲きしゅう多用たようする正規せいき部隊ぶたい)にたとえた表現ひょうげんで、従来じゅうらいから使用しようされていた驟雨しゅううにわかあめ)や集中しゅうちゅう豪雨ごうう夕立ゆうだちといった言葉ことばマスメディア代用だいようするかたちとなった。2008ねんには新語しんご流行りゅうこう大賞たいしょうトップ10に選出せんしゅつされている。局地きょくち豪雨ごうう、ゲリラ、ゲリラ雷雨らいうなどのかたもある。

ゲリラ豪雨ごうう
こう降水こうすいがたスーパーセル

集中しゅうちゅう豪雨ごうう・ゲリラ豪雨ごうう夕立ゆうだちは、気象きしょうがくでの定義ていぎづけは明確めいかくになされておらず、日本にっぽんでのみもちいられる。日本にっぽん気象庁きしょうちょう予報よほう用語ようごとしてゲリラ豪雨ごううもちいず、集中しゅうちゅう豪雨ごううと「局地きょくちてき大雨おおあめ」、または「短時間たんじかんきょう」などの用語ようご雨量うりょうなどにおうじて使つかけている(参考さんこう : 集中しゅうちゅう豪雨ごうう#にわかあめ局地きょくちてき大雨おおあめ集中しゅうちゅう豪雨ごううちが[2][3][4][5]

使用しようれい普及ふきゅう 編集へんしゅう

1970年代ねんだい 編集へんしゅう

「ゲリラ豪雨ごうう」という用言ようげん初期しょき使用しようれいには、1969ねん8がつの『読売新聞よみうりしんぶん』がある[2]

1960年代ねんだいまでは気象きしょう災害さいがいによる死者ししゃ負傷ふしょうしゃ最大さいだい原因げんいん台風たいふうだった。しかし伊勢湾いせわん台風たいふう(1959ねん災害さいがい対策たいさく基本きほんほう制定せいていされ、防災ぼうさいのためのインフラストラクチャーととのってくると、接近せっきん時期じき進路しんろ事前じぜん予測よそくしやすい台風たいふう被害ひがい減少げんしょうしていった。

その一方いっぽうで、梅雨つゆ前線ぜんせんなどにより、夏季かき中心ちゅうしんとして集中しゅうちゅう豪雨ごうう被害ひがい目立めだつようになった。そして従来じゅうらい気象台きしょうだいによるあら観測かんそくもうでは予測よそく困難こんなん集中しゅうちゅう豪雨ごううたいし、「ゲリラ豪雨ごうう」の名称めいしょうもちいられるようになった。ゲリラのかたりには突然とつぜん発生はっせいすること、予測よそく困難こんなんであること、局地きょくちてきであること、同時どうじ多発たはつすることがあることなどのニュアンスがふくまれている[6]

このような集中しゅうちゅう豪雨ごうう発生はっせい捕捉ほそくするために、1970年代ねんだいアメダス観測かんそくもう整備せいびおこなわれた。また気象きしょう衛星えいせいひまわり」により、日本にっぽん上空じょうくうくも動向どうこう網羅もうらてき把握はあくできるようになった。数値すうち予報よほう精度せいど向上こうじょう集中しゅうちゅう豪雨ごうう発生はっせい予測よそくおおきな役割やくわりたした。このようにして梅雨つゆ前線ぜんせんともなって発生はっせいするような集中しゅうちゅう豪雨ごううではまったくの不意打ふいうちになることはすくなくなった。

1999ねん7がつ21にち東京とうきょう都区とく発生はっせいした、いわゆる練馬ねりま豪雨ごうう被害ひがい範囲はんい新宿しんじゅく杉並すぎなみ足立あだちふくむ)では、練馬ねりま役所やくしょで1あいだあたり91ミリの降雨こうう記録きろくした[7]。この豪雨ごうう被害ひがいは、死者ししゃ1にん重傷じゅうしょうしゃ1にん軽傷けいしょうしゃ2にん床上ゆかうえ浸水しんすい493むね床下ゆかした浸水しんすい315むね[7]のぼった。周辺しゅうへんでは豪雨ごううはおろか自体じたいっておらず、降雨こうう範囲はんいきわめてせまかった。

2000年代ねんだい以降いこう 編集へんしゅう

2006ねんころからひろもちいられるようになった理由りゆうとしては、マスメディアや民間みんかん気象きしょう予報よほう事業じぎょうしゃによって、予測よそく困難こんなんおもわれる「局地きょくちてき大雨おおあめ」にたいしてもちいられるようになってきていることがかんがえられている[注釈ちゅうしゃく 1]

これらの豪雨ごううは、10km四方しほう程度ていどきわめてせま範囲はんいに、1あいだあたり100mmをえるような猛烈もうれつあめるが、あめは1あいだ程度ていどしかつづかないという特徴とくちょうがある。これは前線ぜんせんともなって次々つぎつぎ積乱雲せきらんうん発生はっせい通過つうかして大雨おおあめになる集中しゅうちゅう豪雨ごううとは、あきらかにタイプがことなる。都市とし下水道げすいどう一般いっぱんてき最大さいだい降水こうすいりょうとして1あいだに50〜60mm程度ていど想定そうていしているため、これをえる雨量うりょうでは、短時間たんじかんであっても処理しょりしきれずに都市としがた洪水こうずい発生はっせいさせる。このような豪雨ごううは、ヒートアイランド現象げんしょう地方ちほうふうによって積乱雲せきらんうんいちじるしく発達はったつし、もたらされている可能かのうせい指摘してきされている[8]

2008ねん7がつから8がつまつの、日本にっぽん各地かくちでの豪雨ごうう災害さいがい2008ねんなつ局地きょくちてき荒天こうてん続発ぞくはつ)のさいとく同年どうねん8がつ5にち練馬ねりま周辺しゅうへんでの局地きょくちてき豪雨ごううさいには、豪雨ごううになっていなかった下流かりゅうで、下水道げすいどう工事こうじちゅう作業さぎょういん5めいながされ死亡しぼうした。これがおおきく報道ほうどうされたときにゲリラ豪雨ごううという用語ようご頻出ひんしゅつしたことから、だい25かい現代げんだい用語ようご基礎きそ知識ちしきせん『ユーキャン新語しんご流行りゅうこう大賞たいしょう』」(2008ねん)では、「ゲリラ豪雨ごうう」がトップ10に選出せんしゅつされた(受賞じゅしょう対象たいしょうしゃ株式会社かぶしきがいしゃウェザーニューズ[9]。このこともあり、「ゲリラ豪雨ごうう」の言葉ことばひろ一般いっぱんてきもちいられるようになった。

1970年代ねんだいからの当初とうしょ定義ていぎでは、気象きしょう観測かんそくもうとらえにくい豪雨ごううというなん捕捉ほそくせいなん予想よそうせい意味合いみあいがつよかった。しかし現在げんざいでは、大気たいき不安定ふあんてい状態じょうたい関東かんとう平野へいやひろ範囲はんいった(気象きしょうレーダー・アメダス捕捉ほそく容易よういな)散発さんぱつてき豪雨ごううを、マスコミがゲリラ豪雨ごううほうじるなど、当初とうしょの「なん捕捉ほそくせいなん予想よそうせい」から「なん予想よそうせいつよし降雨こううせい」を念頭ねんとういた意味合いみあいに変質へんしつしつつある。

2017ねんには、1976ねんからの10年間ねんかんと、直近ちょっきん10年間ねんかん気象庁きしょうちょう観測かんそく結果けっか比較ひかくした結果けっか、ゲリラ豪雨ごうう発生はっせいすう全国ぜんこく平均へいきんやく34%えていることが判明はんめいした[10]

対策たいさく 編集へんしゅう

このような豪雨ごううへの対策たいさくとして、行政ぎょうせい研究けんきゅう機関きかんなどはさらなる研究けんきゅう観測かんそく予測よそく強化きょうか官民かんみん防災ぼうさい機関きかんなどはゲリラ豪雨ごうう対応たいおうした防災ぼうさい体制たいせい構築こうちくと、おもに2つの方面ほうめんからのみによって、防災ぼうさいげんわざわいはかられつつある。

前者ぜんしゃでは、現存げんそんする気象きしょうレーダー雨粒あまつぶ位置いち密度みつど観測かんそくできる)をかしつつ、観測かんそく間隔かんかくを30〜10ふん間隔かんかくから5〜1ふん間隔かんかく短縮たんしゅくしたり、雨雲あまぐもあるいはかぜ移動いどう速度そくど方向ほうこう観測かんそくできるドップラー・レーダー(デュアル・ドップラー・レーダー観測かんそく)の設置せっち箇所かしょやす対策たいさくおこなわれているほか、さらに数値すうち予報よほうモデル(メソ数値すうち予報よほうモデル)のこう精度せいど、(密度みつどよりも実際じっさいあめ強度きょうどちかい)雨粒あまつぶ直径ちょっけい計測けいそくできるあたらしいタイプの気象きしょうレーダーの設置せっち、また多数たすうのリアルタイム観測かんそくデータから、積乱雲せきらんうん発達はったつ段階だんかいにおいて豪雨ごうう予測よそくする技術ぎじゅつ現状げんじょうでは雨粒あまつぶがある程度ていど成長せいちょうした成熟せいじゅく減衰げんすいでしか正確せいかく予報よほう困難こんなん)の開発かいはつすすめられている[11]

後者こうしゃかんしては、とく洪水こうずいなどの情報じょうほう伝達でんたつかんして課題かだいがあるのが現状げんじょうで、地方ちほう公共こうきょう団体だんたいによりがある。防災ぼうさい行政ぎょうせい無線むせん整備せいび情報じょうほう受信じゅしん端末たんまつかく家庭かていへの普及ふきゅうなどの費用ひようかる対策たいさくは、なかなか実行じっこうできないという自治体じちたいもある。こうした地域ちいきでは、自主じしゅ防災ぼうさい組織そしき消防しょうぼうだん水防すいぼうだんといった、従来じゅうらい活動かつどうかし強化きょうかする手法しゅほう重要じゅうようとされている。また、民間みんかん気象きしょう会社かいしゃやIT企業きぎょうでは、携帯けいたい電話でんわ利用りようして多数たすう利用りようしゃから豪雨ごうう情報じょうほう収集しゅうしゅうさい配信はいしんしたり、独自どくじ予報よほう発表はっぴょう配信はいしんしたりしているところもあり、ボトムアップかた対策たいさく多様たようなものが提供ていきょうされている。

突発とっぱつてき豪雨ごうう予測よそくできても、降雨こうう自体じたいふせげない。また都市とし中心ちゅうしん地面じめんアスファルトコンクリートくまなく舗装ほそうした結果けっか雨水あまみず地中ちちゅう浸透しんとうしにくくなり、短時間たんじかん市街しがいみずまったり、建物たてもの浸水しんすいきたりするようになっためんもある。このため、透水とうすいせい舗装ほそう雨水あまみず浸透しんとうます地下ちか貯水ちょすいそう設置せっち舗装ほそうしない緑地りょくち確保かくほといった雨水あまみず地面じめん滞留たいりゅうさせない対策たいさく自治体じちたいによりすすめられている。また降雨こうう短時間たんじかんなら、みず退しりぞくまでのあいだ建物たてものへの浸水しんすいふせぐために入口いりくち土嚢どのうんだり、とめすいいた・シートを展開てんかいしたりする方法ほうほうもある[12]

用語ようごたいする批判ひはん意見いけん 編集へんしゅう

ばくだんてい気圧きあつ」と同様どうように、「ゲリラ」という言葉ことば軍事ぐんじ連想れんそうさせ不適切ふてきせつとする指摘してき、またすで驟雨しゅうう集中しゅうちゅう豪雨ごううなど同義どうぎ類義語るいぎごがあるなかで、新語しんご採用さいようする必要ひつようはないという観点かんてんから、ゲリラ豪雨ごううという言葉ことば使用しよう否定ひてい批判ひはんする意見いけん存在そんざいする。

またかみなりくも発生はっせいなどあめ前兆ぜんちょう観測かんそくするのは容易たやすいことから、「奇襲きしゅう攻撃こうげき」のがあるゲリラというかたりはそぐわないという見方みかたもある。『読売新聞よみうりしんぶん』は「局地きょくち豪雨ごうう」へのいいかえを記載きさいした[2]。またNHKは、公共こうきょう放送ほうそうであるという性質せいしつじょう「ゲリラ豪雨ごうう」という呼称こしょう使つかわず(ただし報道ほうどう番組ばんぐみ天気てんき予報よほう以外いがい場面ばめん(バラエティ番組ばんぐみにおける気象きしょう予報よほう業務ぎょうむ紹介しょうかいなど)ではこのかぎりではない)、気象庁きしょうちょう同様どうように「集中しゅうちゅう豪雨ごうう」「局地きょくちてき大雨おおあめ」で放送ほうそうしている。

脚注きゃくちゅう 編集へんしゅう

注釈ちゅうしゃく 編集へんしゅう

  1. ^ 比較的ひかくてきふるいものでは『NEWSゆう』 特集とくしゅう都市としおそうゲリラ豪雨ごうう(2007ねん7がつ13にち時点じてんアーカイブ)」 2006ねん9月6にち放送ほうそうにその用法ようほうられる。

出典しゅってん 編集へんしゅう

  1. ^ ゲリラ豪雨ごうう(ゲリラごうう)とは - コトバンク”. コトバンク. 2016ねん8がつ3にち閲覧えつらん
  2. ^ a b c ばくだんてい気圧きあつは“禁止きんし”ですか。”. YOMIURI ONLINE. (2013ねん2がつ19にち). オリジナルの2015ねん1がつ29にち時点じてんにおけるアーカイブ。. https://archive.is/PBmvP 
  3. ^ 夕立ゆうだちと「ゲリラ豪雨ごうう」はどこがちがう?”. 日本経済新聞にほんけいざいしんぶん (2012ねん8がつ29にち). 2015ねん6がつ25にち閲覧えつらん
  4. ^ はれるんライブラリー 「ゲリラ豪雨ごうう」ってなにですか?”. 気象庁きしょうちょう. 2008ねん10がつ10日とおか時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2015ねん6がつ25にち閲覧えつらん
  5. ^ 局地きょくちてき大雨おおあめからまもるために―防災ぼうさい気象きしょう情報じょうほう活用かつよう手引てびき―” (PDF). 気象庁きしょうちょう (2009ねん2がつ). 2016ねん8がつ3にち閲覧えつらん
  6. ^ 風水害ふうすいがい時代じだいてき変遷へんせん防災ぼうさい気象きしょう情報じょうほう発展はってん” (PDF). 日本にっぽん気象きしょう学会がっかい (2005ねん12がつ). 2015ねん6がつ25にち閲覧えつらん
  7. ^ a b 過去かこおも東京とうきょう気象きしょう災害さいがい(1995ねん~1999ねん”. 東京とうきょう管区かんく気象台きしょうだい. 2011ねん3がつ23にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2019ねん10がつ10日とおか閲覧えつらん
  8. ^ 三上みかみ岳彦たけひこ大和やまと広明ひろあき安藤あんどう晴夫はるお横山よこやまひとし山口やまぐち隆子たかこ市野いちの美夏みか秋山あきやまゆうけいさと石井いしいかん一郎いちろう東京とうきょう都内とないにおける夏期かき局地きょくちてき大雨おおあめかんする研究けんきゅう」(PDF)『東京とうきょう環境かんきょう科学かがく研究所けんきゅうじょ年報ねんぽうだい2005かん、2005ねん、33-42ぺーじISSN 1343-30162020ねん7がつ16にち閲覧えつらん 
  9. ^ ユーキャン新語しんご流行りゅうこう大賞たいしょう2008 新語しんご流行りゅうこう大賞たいしょう”. 自由じゆう国民こくみんしゃ. 2020ねん7がつ16にち閲覧えつらん
  10. ^ 山本やまもとたかしきょう (2017ねん7がつ24にち). 短時間たんじかんきょう発生はっせいすう、3わりぞう 76ねんからの10ねん比較ひかく. 朝日新聞あさひしんぶん. オリジナルの2017ねん7がつ23にち時点じてんにおけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170723114641/https://www.asahi.com/articles/ASK7G35X0K7GUTIL006.html 2020ねん7がつ16にち閲覧えつらん 
  11. ^ ゲリラ豪雨ごううつかめ 気象庁きしょうちょう、12年度ねんどめどに予報よほうモデル 朝日新聞あさひしんぶん 2008ねん8がつ15にち
  12. ^ ゲリラ豪雨ごううへのそな日刊にっかん工業こうぎょう新聞しんぶん』2017ねん6がつ19にち(10めん)2018ねん6がつ9にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく 編集へんしゅう

外部がいぶリンク 編集へんしゅう