(Translated by https://www.hiragana.jp/)
システム科学 - Wikipedia

システム科学かがく(システムかがく、英語えいご:systems science. - systemology (greco. σύστημα - systema, λόγος - logos))は、学際がくさいてき学問がくもん領域りょういきの1つであり、自然しぜん生命せいめい医療いりょう社会しゃかい科学かがくにわたる広範こうはん領域りょういきで、複雑ふくざつ対象たいしょうを"システム"として把握はあくし、対象たいしょう固有こゆう領域りょういきとしてではなく、認識にんしき装置そうち(epistemic device)としてのシステムモデルやシステムてき性質せいしつ(systemic properties)によって、対象たいしょう把握はあく分析ぶんせきし、またそれらを人工じんこうぶつとしてデザインし、あるい合成ごうせい分解ぶんかい制御せいぎょ・マネージしようとする学問がくもん体系たいけいである。この学問がくもんは、多様たよう分野ぶんや工学こうがく生物せいぶつがく医学いがく社会しゃかい科学かがくなど)に適用てきよう可能かのうな、可能かのうかぎ学際がくさいてき領域りょういきをつなぐことのできる認識にんしき地図ちずしょモデルを構築こうちくすることを目標もくひょうとしている。

具体ぐたいてきには、システム科学かがくには、以下いかのような形式けいしき科学かがく分野ぶんや関連かんれんしている -- 複雑ふくざつけい(complex systems)、サイバネティックス(cybernetics)、力学りきがくけい理論りろん(dynamical systems theory)、ソフトシステム方法ほうほうろん英語えいごばんエージェント・ベース・モデル。また学際がくさいてき学問がくもん領域りょういきとして、システム科学かがく自然しぜん科学かがく社会しゃかい科学かがくおよび工学こうがく応用おうよう領域りょういきふくむ。れいとしては、制御せいぎょ理論りろん(control theory)、オペレーションズ・リサーチ(operations research)、社会しゃかいシステム理論りろん(social systems theory)、システム生物せいぶつがく(systems biology)、システムダイナミクス(systems dynamics)、システム生態せいたいがく(systems ecology)、システム工学こうがく(systems engineering)、システム心理しんりがく(systems psychology)などがある。

歴史れきし 編集へんしゅう

システムてきかんがかた自体じたい端緒たんしょは、研究けんきゅうしゃによって様々さまざま見解けんかいはあるが、古代こだいギリシャや紀元前きげんぜんのエジプトのピラミッド建設けんせつにおけるプロジェクトマネジメントや工学こうがくまでさかのぼることができる。そのも、ライプニッツ哲学てつがくねつ力学りきがくなど、各所かくしょにシステムてきかんがかた見出みいだすことができる。

また哲学てつがくしゃらは(科学かがく工学こうがく技術ぎじゅつがわでは、それとはまったべつサイバネティックス提唱ていしょう発展はってんなどがあった)、ルートヴィヒ・フォン・ベルタランフィの1945ねん原著げんちょ)の著書ちょしょである『一般いっぱんシステム理論りろん: その基礎きそ発展はってん応用おうよう』(General System Theory: Foundations, Development, Applications 邦訳ほうやくばんみすず書房しょぼう[1]ISBN 4-622-02522-1 )にしるされた「一般いっぱんシステム理論りろん」について研究けんきゅうふかめた。1954ねんにスタンフォード大学だいがく高等こうとう行動こうどう科学かがくセンター(Center for Advanced Study in the Behavioral Sciences)において着想ちゃくそうされ、1956ねん一般いっぱんシステム協会きょうかい英語えいごばん設立せつりつされた。1988ねんには「スコープの範囲はんいひろがった」[2]として、"International Society for the Systems Sciences" と名称めいしょう変更へんこうした。

理論りろん 編集へんしゅう

基礎きそ理論りろん 編集へんしゅう

システム理論りろん
システムのかんがかた自体じたい包括ほうかつてき理論りろん研究けんきゅう。システムの一般いっぱん理論りろん(general theory of systems)と一般いっぱんシステムの理論りろん(theory of general systems)のふたつのながれがある。とく後者こうしゃにおいては、システム特性とくせいを、代数だいすうがくけんろん(category theory)におけるじゅん同型どうけいがかりとして分類ぶんるいし、代表だいひょうもと抽出ちゅうしゅつして研究けんきゅうするというリサーチプログラムが確立かくりつされた(抽象ちゅうしょうてきシステム理論りろん abstract systems theory)。[3]

対象たいしょう特定とくていのシステム特性とくせい注目ちゅうもくした研究けんきゅう分野ぶんや 編集へんしゅう

システムダイナミクス
システムダイナミクスsystems dynamics)とは、複雑ふくざつけい動的どうてき振舞ぶるまい分析ぶんせきするための方法ほうほうろんひとつである。システム全体ぜんたい影響えいきょうあたえる時間じかん遅延ちえん内部ないぶフィードバック・ループを研究けんきゅう対象たいしょうとする。また、コンピュータシミュレーションを利用りようするため、非線形ひせんけい関係かんけい極度きょくど単純たんじゅんすることなくあつかうことができる。社会しゃかいシステムを対象たいしょうとしたシステム思考しこうをベースにした理論りろんはサイバネティクスのかんがかたれているものがおおいが、システムダイナミクスはサーボメカニズムのかんがかたをベースにしているてんおおきなちがいといえる(Richardson, 1991, p. 129)。また、ほかの複雑ふくざつけい解析かいせき方法ほうほうちがい、システムダイナミクスはフィードバック・ループ、フローやストックという概念がいねんもちいることで、外見がいけんじょう単純たんじゅんなシステムからされる複雑ふくざつなふるまいをより効果こうかてき分析ぶんせき可能かのうである。
システム工学こうがく
システム工学こうがくsystems engineering)は複雑ふくざつ人工じんこうシステムの組織そしきおよび開発かいはつをテーマとする工学こうがく学際がくさい分野ぶんやである。システム工学こうがくはすでにあらゆる科学かがく技術ぎじゅつ分野ぶんや浸透しんとうしており、すうおおくの大学だいがくにおいて専門せんもん課程かてい設立せつりつされている。[4]
生存せいぞん可能かのうシステムアプローチ
生存せいぞん可能かのうシステムアプローチ(viable systems approach, vSa)は、経営けいえい意思いし決定けっていなどあらゆる意思いし決定けっていシステムは、生物せいぶつ同様どうよう機能きのうゆうする必要ひつようがあるとし、とりわけ神経しんけいけいのメタファーをもちいて組織そしき分析ぶんせきおこな方法ほうほうろんである。

主体しゅたい対象たいしょうとの関係かんけいせいおよ対象たいしょう自体じたい特性とくせい両方りょうほうふくあいてきにシステム概念がいねん適用てきようする分野ぶんや 編集へんしゅう

システム解析かいせき
システム解析かいせきSystems analysis)は、経営けいえいフローなどをシステムてき表現ひょうげん解析かいせきすることを目的もくてきとする。おも応用おうようは、コンピュータじょうでの情報じょうほうシステムを実装じっそうによる業務ぎょうむ改善かいぜん自動じどうである。オペレーションズ・リサーチとの関連かんれんせいふかい。
システムデザイン
システムデザイン(Systems design)とは、指定していした要求ようきゅう仕様しようたすために、コンピュータシステムのハードウェア・ソフトウェアアーキテクチャ、コンポーネント、モジュール、インターフェースおよびデータを定義ていぎする過程かていである。システム理論りろんのコンピューティングへの応用おうようだともえる。
ソフトシステム方法ほうほうろん
ソフトシステム方法ほうほうろんSoft Systems Methodology, SSM)は、組織そしきプロセスをモデルするための組織そしきろん方法ほうほうろんである。一般いっぱんてき問題もんだい解決かいけつ変革へんかくのマネジメントにもちいられる。イングランドのランカスター大学だいがくシステム学科がっかが10年間ねんかんのアクション・リサーチにより開発かいはつした。
エージェントベース社会しゃかいシステム科学かがく(Agent-Based Social Systems Sciences, ABSSS)
今日きょうは、意思いし決定けってい問題もんだいおよ政策せいさく意思いし決定けっていプロセスがともに複雑ふくざつしているのが特徴とくちょうてきである。こうした状況じょうきょうふくあいてきにサポートするべ く、(1)エージェントベース・アプローチもとづく社会しゃかいシステム理論りろんさい構築こうちくはかり、(2)革新かくしんてきなシミュレーション言語げんごとその技法ぎほう開発かいはつすすめ、(3)これらの社会しゃかいシステム理論りろんとシミュレーションツールをもちいて斬新ざんしん実証じっしょう分析ぶんせきおこな積極せっきょくてき社会しゃかいてき提言ていげん発信はっしんすることを目的もくてきとして提唱ていしょうされたのが、 ABSSS である。[5]
サービス科学かがく
サービス科学かがくService science, management and engineering (SSME))における価値かちきょうそう(value co-creation)の研究けんきゅう個別こべつ分野ぶんや限定げんていされないことから、システム科学かがくは SSME の理論りろんてきかくをなす。このことをより明示めいじてきにし、サービス科学かがくのことをサービスシステム科学かがく(Service systems science)とぶこともある。[6]

分野ぶんや 編集へんしゅう

今日きょう、システム科学かがくは、その学際がくさいてき特徴とくちょうより、きわめて多様たよう分野ぶんや応用おうようされている。

組織そしき 編集へんしゅう

かずある学会がっかいなかで、もっと顕著けんちょ学際がくさいてき、かつ統合とうごうてきにシステム科学かがく研究けんきゅう推進すいしんしているのが The International Society for the Systems Sciences(ISSS)である。メンバーは、学術がくじゅつ、ビジネス、政府せいふ、そして営利えいり組織そしき広範囲こうはんいにわたり、50ねんあまりにわたって複雑ふくざつけい科学かがくてき研究けんきゅうからコミュニティー発展はってん経営けいえいへの相互そうご作用さようアプローチまできわめて学際がくさいてきんでいる。さらに、ノーベル化学かがくしょう受賞じゅしょうしゃであるイリヤ・プリゴジンをはじめとして、そうそうたる面々めんめん会長かいちょう歴任れきにんしている。日本にっぽん国内こくないでは、ISSS に直結ちょっけつした拠点きょてんとして東京工業大学とうきょうこうぎょうだいがく知能ちのうシステム科学かがく専攻せんこう価値かちシステム専攻せんこうがある。2007 ねんには日本人にっぽんじん唯一ゆいいつ会長かいちょう選出せんしゅつされている木嶋きじま恭一きょういちのもと、東京工業大学とうきょうこうぎょうだいがくにおいて東京とうきょう大会たいかい開催かいさいされた。[7]

今日きょうでは、システム科学かがく世界中せかいじゅう非常ひじょう多数たすう学会がっかい研究けんきゅう機関きかんにより推進すいしんされている。こうした多数たすう国際こくさい地域ちいき学会がっかいあいだ国際こくさい連合れんごうとして1981ねん設立せつりつされた営利えいり科学かがく教育きょういく機関きかんInternational Federation for Systems Research(IFSR)である。様々さまざまくにからの30もの組織そしきのメンバーからなる。IFSRの総合そうごうてき目的もくてきは、学会がっかいあいだ関係かんけい強化きょうか創発そうはつてき意見いけん交換こうかんつうじて、サイバネティックスやシステムズリサーチ、システムズアプリケーションを学会がっかいわくえて推進すいしんすることである。2ねん一度いちどかく学会がっかい・テーマの専門せんもん参加さんかしゃとして開催かいさいされる対話たいわ(conversation)がおも活動かつどうであるが、いちだけ2005ねん神戸こうべ世界せかい大会たいかい開催かいさいされた。

システム科学かがく分野ぶんやもっともよくられている研究所けんきゅうじょサンタフェ研究所けんきゅうじょ(Santa Fe Institute, SFI)である。サンタフェ研究所けんきゅうじょはアメリカのニューメキシコのサンタフェに位置いちし、複雑ふくざつけい研究けんきゅう注力ちゅうりょくしている。この研究所けんきゅうじょ は1984ねん、ジョージ・コーワン(George Cowan)、デイヴィッド・パインズ(David Pines)、スターリング・コルゲート(Stirling Colgate)、マレー・ゲルマン(Murray Gell-Mann)、ニック・メトロポリス(Nick Metropolis)、ハーブ・アンダーソン(Herb Anderson)、ピーター・A・カルザース(Peter A. Carruthers)、そしてリチャード・スランスキー(Richard Slansky)らによって設立せつりつされた。パインズとゲルマンをのぞく全員ぜんいんがロスアラモス国立こくりつ研究所けんきゅうじょ科学かがくしゃである。SFIの元々もともと使命しめいは、別々べつべつ学際がくさいてき研究けんきゅう領域りょういき複雑ふくざつせい科学かがく(complexity science)としてSFIにおいて引用いんようされる複雑ふくざつ適応てきおうけい分野ぶんや、のかんがえをひろめることであった。

日本にっぽん国内こくないでは、21世紀せいきCOEプログラムで 「エージェントベース社会しゃかいシステム科学かがく創出そうしゅつ」が採択さいたくされ、A 評価ひょうかている。[8]これにともない、エージェントベース社会しゃかいシステム科学かがくをさらに拡める目的もくてきで、エージェントベース社会しゃかいシステム科学かがく研究けんきゅうセンター(CABSSS)が2005ねん4がつ設立せつりつされた。[9]

脚注きゃくちゅう 編集へんしゅう

関連かんれん文献ぶんけん 編集へんしゅう

  • B. A. Bayraktar, Education in Systems Science, 1979, 369 pp.
  • Kenneth D. Bailey, "Fifty Years of Systems Science:Further Reflections", Systems Research and Behavioral Science, 22, 2005, pp. 355–361.
  • Robert L. Flood, Ewart R Carson, Dealing with Complexity: An Introduction to the Theory and Application of Systems Science, 1988.
  • George J. Klir, Facets of Systems Science, Plenum Press, 1991.
  • Ervin László, Systems Science and World Order: Selected Studies, 1983.
  • Mihajlo D. Mesarovic and Yasuhiro Takahara, Abstract Systems Theory, Springer, 1989.
  • Anatol Rapoport (ed.), General Systems: Yearbook of the Society for the Advancement of General Systems Theory, Society for General Systems Research, Vol 1., 1956.
  • Li D. Xu, "The contributions of Systems Science to Information Systems Research", Systems Research and Behavioral Science, 17, 2000, pp. 105–116.
  • George P Richardson, "Feedback Thought in Social Science and Systems Theory." 1991, Pegasus Communications. ISBN 1-883823-46-3.
  • Graeme Donald Snooks, "A general theory of complex living systems: Exploring the demand side of dynamics", Complexity, vol. 13, no. 6, July/August 2008.
  • John N. Warfield, "A proposal for Systems Science", Systems Research and Behavioral Science, 20, 2003, pp. 507–520.

外部がいぶリンク 編集へんしゅう

主要しゅよう国際こくさい学会がっかい専門せんもんてきポータルなど 編集へんしゅう

国内こくない研究けんきゅう拠点きょてん 編集へんしゅう