フェラーリ・375F1

フェラーリ 375F1 (Ferrari 375F1) はスクーデリア・フェラーリが1950年ねんから1951年ねんにかけて使用しようしたフォーミュラ1カーである。F1世界せかい選手権せんしゅけんにおいてフェラーリが初はつ優勝ゆうしょうを遂とげたマシンとして知しられる。名称めいしょうの「375」はエンジン1気筒きとうあたりの排気はいき量りょう375ccを表あらわす（375×12気筒きとう=4,500cc）。

フェラーリ 275F1
フェラーリ 340F1
フェラーリ 375F1

フェラーリ 375F1（1951年ねん）
カテゴリー	F1
コンストラクター	フェラーリ
デザイナー	アウレリオ・ランプレディ
先代せんだい	フェラーリ・125F1
後継こうけい	フェラーリ・500F2
主要しゅよう諸しょ元もと
エンジン	フェラーリ Tipo275 フェラーリ Tipo340 フェラーリ Tipo375
主要しゅよう成績せいせき
チーム	スクーデリア・フェラーリ G.A.ヴァンダーベル
ドライバー	アルベルト・アスカリ ルイジ・ヴィロレージ ピエロ・タルフィ フロイラン・ゴンザレス
出走しゅっそう時期じき	1950 - 1951
コンストラクターズタイトル	0 （タイトル制定せいてい前まえ）
ドライバーズタイトル	0
初戦しょせん	1950年ねんイタリアGP（275F1） 1950年ねんイタリアGP（375F1）
初はつ勝利しょうり	1951年ねんイギリスGP
最終さいしゅう戦せん	1951年ねんスペインGP
優勝ゆうしょう 表彰台ひょうしょうだい ポール Fラップ 3 （375F1） 13 （375F1） 3 （375F1） 0

本ほん記事きじでは開発かいはつ順じゅんに3,300ccのフェラーリ 275F1、4,100ccのフェラーリ 340F1、4,500ccのフェラーリ 375F1について説明せつめいする。

開発かいはつ

フェラーリは1950年ねんのF1世界せかい選手権せんしゅけんにスーパーチャージャー付つき1,500ccエンジンの125F1で臨のぞみながら、次期じき主力しゅりょくとなる自然しぜん吸気きゅうきエンジンの開発かいはつを進すすめていた。自然しぜん吸気きゅうきエンジンは過か給きゅうエンジンに比くらべると出力しゅつりょくでは劣おとるが、燃費ねんぴが良よいためレース中ちゅうにピットインして再さい給油きゅうゆする回数かいすうを減へらすことができるというメリットがあった。この路線ろせん変更へんこうの決断けつだんには、前年ぜんねんのベルギーGPで125F1が自然しぜん吸気きゅうきエンジンのタルボ・ラーゴに敗やぶれた影響えいきょうがあったとされる。

エンジンの開発かいはつはアウレリオ・ランプレディが担当たんとうし、排気はいき量りょうを段階だんかい的てきに増ふやしていく方法ほうほうを採とった。最初さいしょに完成かんせいしたのが275エンジン（275cc×12気筒きとう=3,300cc）、次つぎが340エンジン（340cc×12気筒きとう=4,080cc）。レギュレーション上限じょうげんの4,500ccまで拡大かくだいした完成かんせい形がたが375エンジンである。これらはランプレディ・エンジン（別名べつめい：ビッグブロック）と呼よばれ、レース用ようスポーツカーや高級こうきゅうGTカーにも使用しようされた。275F1のシャーシは125F1のものを流用りゅうようしたが、340F1から新しんシャーシとなった。

1951年ねんにはシリンダーヘッドの新しん設計せっけい、点火てんか系けいのツインプラグ化かにより最高さいこう出力しゅつりょくが380馬力ばりきに向上こうじょうした。このマシンは区別くべつのためフェラーリ 375F1/51とも表記ひょうきされる。イギリスGPでフロイラン・ゴンザレスの乗のる375F1が常勝じょうしょうアルファロメオ・159を破やぶり、フェラーリの記念きねんすべきF1初はつ勝利しょうりを実現じつげんした（ゴンザレスのマシンは1950年ねん型がただった）。

1952年ねんシーズンは世界せかい選手権せんしゅけんが2,000ccのF2規定きていで行おこなわれたため、375F1は排気はいき量りょう制限せいげんのないフォーミュラ・リブレで使用しようされた。フェラーリはシリーズ第だい2戦せんに組くみ込こまれていたインディアナポリス500（インディ500）に参戦さんせんするため、オーバルコース向むけにホイールベースを延長えんちょうしたフェラーリ 375インディをアメリカに送おくった。

スペック

シャーシ

• 構造こうぞう スチール製せいチューブラーフレーム
• 全長ぜんちょう mm
• 全幅ぜんぷく mm
• 全高ぜんこう mm
• ホイルベース 2,320mm
• トレッド 1,278mm（前まえ） 1,250mm（後ご）
• ギアボックス 4速そく＋後進こうしん1速そく
• 重量じゅうりょう 850kg
• サスペンション
  • 前まえ ダブルウィッシュボーン/リーフスプリング
  • 後のち スイングアクスル/トーションバー（275F1・340F1） ド・ディオンアクスル/リーフスプリング（375F1）
• ブレーキ ドラム式しき

エンジン

• 気筒きとう数すう・角度かくど　V型がた12気筒きとう・60度ど
• ボア・ストローク 72×68mm（275F1） 80×68mm（340F1） 80×74.5mm（375F1）
• 排気はいき量りょう 3,322cc（275F1） 4,101cc（340F1） 4,493cc（375F1）
• 最高さいこう出力しゅつりょく 300馬力ばりき/7,300回転かいてん（275F1） 335馬力ばりき/7,000回転かいてん（340F1） 350馬力ばりき/7,000回転かいてん（375F1）
• 動どう弁べん SOHC・1気筒きとうあたり2バルブ
• キャブレター ウェバー42 DCFキャブレター（トリプル）
• 点火てんか装置そうち 1気筒きとうあたり1プラグ
• 潤滑じゅんかつシステム ドライサンプ
• クラッチ マルチプレート
• 最高さいこう速度そくど 280km/h（275F1） 300km/h（340F1） 320km/h（375F1）

タイヤ

• 前輪ぜんりんサイズ 5.50×16
• 後こう輪わサイズ 7.00×16（275F1・340F1） 7.50×17（375F1）

成績せいせき

1950年ねん

275F1はF1第だい5戦せんベルギーGPから投入とうにゅうされたが、次つぎ戦せんフランスGPでは不調ふちょうのため出走しゅっそうをキャンセルした。7月がつ末まつの非ひ選手権せんしゅけんジュネーブGPで340F1が登場とうじょうし、9月の地元じもとイタリアGPで375F1がデビューした。エースのアルベルト・アスカリは途中とちゅうからドリノ・セラフィーニのマシンに乗のり継つぎ2位いに入はいった。アルファロメオ不参加ふさんかの非ひ選手権せんしゅけんペニャリンGPでは1-2-3フィニッシュを決きめた。

• 1950年ねんのF1世界せかい選手権せんしゅけん
  • 第だい5戦せんベルギーGP
    • アルベルト・アスカリ - 予選よせん6位い・決勝けっしょう5位い（275F1）
  • 第だい7戦せんイタリアGP
    • アルベルト・アスカリ - 予選よせん7位い・決勝けっしょうリタイア（375F1）
    • ドリノ・セラフィーニ/アルベルト・アスカリ - 予選よせん2位い・決勝けっしょうリタイア（375F1）

1951年ねん

オフシーズンの開発かいはつにより375F1は戦闘せんとう力りょくを高たかめ、開幕かいまくからアルファロメオと接戦せっせんを演えんじた。迎むかえた第だい5戦せんイギリスGP、途中とちゅう加入かにゅうしたフロイラン・ゴンザレスが同郷どうきょうのファン・マヌエル・ファンジオの追撃ついげきをかわして初はつ優勝ゆうしょうを記録きろくした。その後ごは完全かんぜんにフェラーリ優勢ゆうせいとなり、ドイツGP、イタリアGPでアスカリが連勝れんしょう。最終さいしゅう戦せんスペインGPはアスカリとファンジオのドライバーズタイトル決定けってい戦せんとなった。しかし、フェラーリ勢ぜいはタイヤを通常つうじょうの17インチから16インチに替かえるという作戦さくせんが裏目うらめに出でてタイヤトラブルに見舞みまわれ、ファンジオのチャンピオン獲得かくとくを許ゆるした。

375F1はフェラーリワークスチームのほか、イギリスのプライベーターチーム、ヴァンダーベルが「シンウォール・スペシャル」として使用しようした（のちにフェラーリと争あらそうヴァンウォールの前身ぜんしん）。ドライバーはレッグ・パーネルとピーター・ホワイトヘッドが交代こうたいで乗のった。

• 1951年ねんのF1世界せかい選手権せんしゅけん
  • 第だい1戦せんスイスGP
    • アルベルト・アスカリ - 予選よせん7位い・決勝けっしょう6位い
    • ルイジ・ヴィロレージ - 予選よせん3位い・決勝けっしょうリタイア
    • ピエロ・タルフィ - 予選よせん6位い・決勝けっしょう2位い
  • 第だい3戦せんベルギーGP
    • アルベルト・アスカリ - 予選よせん4位い・決勝けっしょう2位い
    • ルイジ・ヴィロレージ - 予選よせん3位い・決勝けっしょう3位い
    • ピエロ・タルフィ - 予選よせん5位い・決勝けっしょうリタイア
  • 第だい4戦せんフランスGP
    • アルベルト・アスカリ - 予選よせん3位い・決勝けっしょうリタイア
    • ルイジ・ヴィロレージ - 予選よせん4位い・決勝けっしょう3位い
    • フロイラン・ゴンザレス/アルベルト・アスカリ - 予選よせん6位い・決勝けっしょう2位い
  • 第だい5戦せんイギリスGP
    • アルベルト・アスカリ - 予選よせん4位い・決勝けっしょうリタイア
    • ルイジ・ヴィロレージ - 予選よせん5位い・決勝けっしょう3位い
    • フロイラン・ゴンザレス - 予選よせん1位い・決勝けっしょう1位い
  • 第だい6戦せんドイツGP
    • アルベルト・アスカリ - 予選よせん1位い・決勝けっしょう1位い
    • ルイジ・ヴィロレージ - 予選よせん5位い・決勝けっしょう4位い
    • ピエロ・タルフィ - 予選よせん6位い・決勝けっしょう5位い
    • フロイラン・ゴンザレス - 予選よせん2位い・決勝けっしょう3位い
  • 第だい7戦せんイタリアGP
    • アルベルト・アスカリ - 予選よせん3位い・決勝けっしょう1位い
    • ルイジ・ヴィロレージ - 予選よせん5位い・決勝けっしょう4位い
    • ピエロ・タルフィ - 予選よせん6位い・決勝けっしょう5位い
    • フロイラン・ゴンザレス - 予選よせん4位い・決勝けっしょう2位い
    • フランチェスコ・ランディ - 予選よせん16位い・決勝けっしょうリタイア
  • 第だい戦せんスペインGP
    • アルベルト・アスカリ - 予選よせん1位い・決勝けっしょう4位い
    • ルイジ・ヴィロレージ - 予選よせん5位い・決勝けっしょうリタイア
    • ピエロ・タルフィ - 予選よせん7位い・決勝けっしょうリタイア
    • フロイラン・ゴンザレス - 予選よせん3位い・決勝けっしょう2位い

1952年ねん

フェラーリ・375インディ

インディ500はF1開幕かいまく時じから選手権せんしゅけんレースに指定していされていたが、実際じっさいに出場しゅつじょうしたのはフェラーリが最初さいしょだった。これはエンツォ・フェラーリの旧友きゅうゆうでありアメリカでフェラーリ販売はんばい代理だいり店てんを営いとなむルイジ・キネッティの働はたらきかけによるもので、375インディの3台だいに地元じもとのプライベーターが乗のり、ワークスからはアスカリひとりが出場しゅつじょうした（予選よせん出走しゅっそうためF1初戦しょせんスイスGPを欠場けつじょう）。プライベーター勢ぜいは予選落よせんおちし、決勝けっしょうに進すすんだアスカリもホイール破損はそんのため序盤じょばんにリタイアした。

その他た

• フェラーリが初はつ優勝ゆうしょうした1951年ねんから70年ねんを迎むかえた2021年ねん、マラネッロの工場こうじょうに保管ほかんされていた設計せっけい書しょを基もとにして375F1のレストアを実施じっしした。その後ご、レストアした375F1を初はつ勝利しょうりしたイギリスグランプリの開催かいさい地ちであるシルバーストン・サーキットにて、2021年ねん7月がつ19日にちにマルク・ジェネ、シャルル・ルクレールによるデモランが行おこなわれた。
• また、2011年ねんのイギリスグランプリでも前述ぜんじゅつの初はつ優勝ゆうしょうを記念きねんして、バーニー・エクレストン所有しょゆうする375F1のデモランをフェルナンド・アロンソが行おこなった。