ヘアスタイル

ヘアスタイル（英語えいご: Hairstyle）または髪型かみがた、髪形かみがた（かみがた）とは、頭あたまから生はえている髪かみの毛けを使つかって作つくられたスタイルのこと。

長ながくする、同おなじ長ながさに揃そろえる、固かたまりを作つくる、編あむなどの様々さまざまな手てを加くわえて作つくられるが、スキンヘッドのように毛髪もうはつを利用りようしないスタイルも髪形かみがたのバリエーションの一ひとつとして認識にんしきされている。ヘアスタイルを作つくるために髪かみを切きり揃そろえることをヘアカット（散髪さんぱつ）と言いうが、整髪せいはつする前まえの基礎きそ作づくりとして髪かみを切きる場合ばあいや、カットだけで髪型かみがたを作つくる場合ばあいがある^[1]。

宗教しゅうきょう、民族みんぞく、所属しょぞくする集団しゅうだんなどによって髪型かみがたに社会しゃかい的てきな役割やくわりと規制きせいが設もうけられている場合ばあいがある。

古代こだいのヘアスタイルの文化ぶんか

古代こだいエジプトでは紀元前きげんぜん4000～300年ねんには、鋭するどく砥とぎいだ燧石ひうちいしやかき殻からなどによるヘアカットが行おこなわれていたが、「善ぜんと悪あくの精せいは頭髪とうはつを伝つたわって出入でいりする」という迷信めいしんがあったため、ヘアカットは悪あくの精せいを追おい出だす宗教しゅうきょう的てき儀式ぎしきの意味いみももち、理容りよう師しの仕事しごとも僧侶そうりょと薬学やくがく者しゃが兼かねていた^[2]。

古代こだいエジプトでは初期しょきからウィッグを使用しようする文化ぶんかがあり、第だい18王朝おうちょうや第だい19王朝おうちょうの貴族きぞくは装飾そうしょく的てきなウィッグを着つけていた^[3]。古代こだいエジプトでウィッグが使用しようされた理由りゆうはよくわかっていないが、剃髪ていはつを神聖しんせいなものとみる宗教しゅうきょう上じょうの理由りゆうと、強つよい太陽光たいようこう線せんや虫むしから頭部とうぶを保護ほごする実用じつよう的てきな理由りゆうがあったと考かんがえられている^[3]。

古代こだいエジプトではウィッグによるヘアスタイルが着用ちゃくよう者しゃの社会しゃかい的てき地位ちいや富とみを象徴しょうちょうするものとなり、その習慣しゅうかんは紀元前きげんぜん30年ねんにローマの植民しょくみん地ちとなるまで続つづいた^[3]。ウィッグを着つけるため男性だんせいは髪かみを剃すったり頭皮とうひに密着みっちゃくするよう髪かみをクリップするスタイルであった^[3]。また、長子ちょうしは編あんだ髪かみを左右さゆうに垂たらす習慣しゅうかんがあった^[3]。

欧米おうべいのヘアスタイル文化ぶんか

丸刈まるがりにされたアメリカ海軍兵学校かいぐんへいがっこう生徒せいと

ヨーロッパではルイ13世せいがウィッグを着用ちゃくようするようになってから、貴族きぞく階級かいきゅうの男性だんせいにウィッグが浸透しんとうしていったが、カラーウィッグが着用ちゃくよう者しゃの社会しゃかい像ぞうを誇示こじするのに役立やくだったことも背景はいけいにある^[3]。ルイ王朝おうちょう時代じだい（1661年ねん-1789年ねん）はウィッグを中心ちゅうしんとする調髪ちょうはつの全盛期ぜんせいきとなった^[3]。

一方いっぽう、貴族きぞく階級かいきゅうの女性じょせいの間あいだでは髪かみを高たかく結ゆい上あげるフォンタンジュ髪型かみがたが流行りゅうこうした^[3]。ルイ14世せいの時代じだいにはア・ラ・フォンタンジュと呼よばれる髪型かみがたも現あらわれたが、ルイ15世せいによる親政しんせいとなった時期じきには頭部とうぶを小ちいさく見みせようとするモードが主流しゅりゅうとなり、プレーンにまとめた髪かみの上うえにリボンや造花ぞうか、小ちいさなレースのキャップやベレー風ふうの被かぶり物ものを付つけるスタイルが見みられた^[3]。貴族きぞく階級かいきゅうの女性じょせいの髪型かみがたは一時いちじ的てきにシンプルなものになったが、1760年代ねんだいになると調髪ちょうはつに芯しんを用もちいる大型おおがたの髪型かみがたが流行りゅうこうし、それからフランス革命かくめいまで「史上しじょう最大さいだいのヘアースタイルの時期じき」と呼よばれている^[3]。この時期じきには小型こがたのキャップ・ウィッグを着つけてから自みずからの髪かみとさらにボリュームを出だすための入いれ髪がみを加くわえて結ゆい上あげる髪型かみがたや、馬うまのしっぽの毛けでできた髪床かみどこを針金はりがね枠わくなどで固定こていしてから入いれ毛げを付つけてボリュームを出だしポマードで固かためる髪型かみがたなど一層いっそう技巧ぎこう的てきなものになった^[3]。

しかし、1780年代ねんだいの終おわりには貴族きぞく社会しゃかいへの批判ひはんから軽快けいかいな英国えいこく風ふうモードが浸透しんとうし、人工じんこう的てきなウィッグは廃すたれて自じ毛けをウィッグのように結ゆい上あげるようになった^[3]。

日本にっぽんのヘアスタイル文化ぶんか

丁髷ちょんまげ

古墳こふん時代じだい・大和やまと時代じだいには、総角あげまき（みづら、美よし豆まめ良りょう）と呼よばれる髪型かみがたが男性だんせいの間あいだで行おこなわれた。髪かみを二ふたつに分わけ、それぞれを耳みみの横よこで上下じょうげに丸まるめる髪型かみがたである。古墳こふん時代じだいの女性じょせいは江戸えど時代じだいの島田しまだ髷まげに似にた髪形かみがただった。奈良なら時代じだいの女性じょせいは中国ちゅうごく風ふうの高こう髻たぶさ（こうけい）、双そう髻たぶさ（そうけい）を結ゆった。

平安へいあん時代じだい - 安土あづち桃山ももやま時代じだい

平安へいあん時代じだいの皇族こうぞく、貴族きぞくたちは、男性だんせいは髻たぶさ（もとどり）を結ゆった上うえに冠かんむりを被こうむり、女性じょせいは垂髪たれがみ（たらしがみ/すべしがみ/すいはつ）といわれるただ簡素かんそに髪かみを下おろしたスタイルをしていた。女性じょせいの髪かみは黒くろいほど、また長ながいほど美人びじんとされていた。髪かみを耳みみに挟はさむことは、品しなのないこととされ「耳みみ挟はさみ」といって嫌きらわれた。子供こども時代じだいは振分髪ふりわけがみ（あるいは尼あまそぎ）といわれる髪かみをそのまま下おろす髪型かみがたや、男児だんじではみづらに結ゆう事こともあった。12歳さい - 16歳さい頃ごろになると、男おとこは髪かみを結ゆって烏帽子えぼしや冠かんむりをかぶる初はつ冠かんむり（ういかぶり）（元服げんぷく）の儀ぎ、女おんなは裳も着ぎの儀ぎと呼よばれる儀式ぎしきで裳も着ぎを身みにつけると同時どうじに、髪かみ上あげを行おこない、男女だんじょ共どもお歯黒はぐろを付つけ、引眉ひきまゆした。これらの儀式ぎしきは、それぞれ成人せいじんの儀式ぎしきという意味合いみあいがあった。平安へいあん末期まっき以降いこうは武家ぶけ、及および、やや裕福ゆうふくな庶民しょみんにも広ひろがった。皇族こうぞく・貴族きぞくにあっては、この習慣しゅうかんは明治めいじに入はいるまで続つづいた。庶民しょみんの男性だんせいは前髪まえがみを後うしろに撫なで付つけて、髪かみを後うしろで引びき結むすぶか髷まげを作つくった総髪そうはつという髪型かみがたをしていた。元結もとゆいが乱みだれたり、元結もとゆいを作つくらず髪かみを散ちらした髪型かみがたを散髪さんぱつ、乱髪らんぱつと呼よんでいた^[1]。

江戸えど時代じだい

→女性じょせいについては「日本髪にほんがみ」を参照さんしょう

→男性だんせいについては「総髪そうはつ」や「丁髷ちょんまげ」を参照さんしょう

明治めいじ以降いこう

日本にっぽんでは明治めいじ時代じだいに政府せいふから断髪だんぱつ令れいが出だされたがなかなか浸透しんとうしなかった。そこで明治天皇めいじてんのうが範はんを示しめすことで普及ふきゅうが計はかられた。これ以後いご、文明開化ぶんめいかいかの象徴しょうちょうとして民衆みんしゅうにザンギリ頭あたまが流行りゅうこうした。狂歌きょうか「ザンギリ頭あたまを叩たたいてみれば文明開化ぶんめいかいかの音おとがする」は有名ゆうめい。1885年ねん頃ごろから日本にっぽんでバリカンが使用しようされ始はじめ、丸刈まるがり、八はち分ふん刈かり、五ご分ふん刈かりなど髪かみを短みじかく刈かり上あげる髪型かみがたが定着ていちゃくするようになった。

断髪だんぱつ令れいの例外れいがいとして、相撲すもうの力士りきしの髷まげ（まげ）は認みとめられた（注意ちゅうい点てんとして、断髪だんぱつ令れいは髪型かみがたを自由じゆうにして良よいとの布告ふこくなので、髷まげを結ゆっていても罰ばっせられるという事ことはなかった）。

大正たいしょう時代じだいから昭和しょうわ

大正たいしょう時代じだいから昭和しょうわ戦前せんぜん期きにかけては、女児じょじの髪型かみがたはおかっぱ頭あたまが主流しゅりゅうであった。大正たいしょう時代じだいには、大人おとなの女性じょせいの間あいだでも髪かみを肩かたにかからない程度ていどに切きりそろえる断髪だんぱつが現あらわれ、女性じょせいの間あいだにも髪かみを結ゆい上あげず切きりそろえておく髪型かみがたが広ひろがった。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん直前ちょくぜんから戦争せんそう中ちゅうには、髪型かみがたに大おおきな規制きせいが掛かけられた。1939年ねんには「パーマネントはやめましょう」とのスローガンによる追放ついほう運動うんどうが起おこり、パーマが事実じじつ上じょう禁止きんしされた^[4]ほか、1943年ねん2月がつからは男性だんせいに対たいして一いち号ごうから三さん号ごうからなる国民こくみん頭髪とうはつ型がたが定さだめれられた。一いち号ごうは前髪まえがみの長ながさ二に寸すん、二に号ごうは前髪まえがみの長ながさ八はち分ふんないし一寸いっすん、三さん号ごうは二分にぶん刈がりまたは丸刈まるがりとなっていた。一いち号ごう以上いじょうの長髪ちょうはつ希望きぼう者しゃはポマードかチックを理髪りはつ店てんに持参じさんすることが求もとめられた^[5]が、既すでに入手にゅうしゅできる環境かんきょうにはなかった。

戦後せんごは、日本にっぽんにおいては、少年しょうねんの髪型かみがたは丸刈まるがりと坊ぼっちゃん刈がりのふたつしかなかった（少すこし遅おくれてスポーツ刈がりが現あらわれた）。成年せいねん男性だんせいの髪型かみがたには七なな三さん分わけと呼よばれる髪型かみがたが多おおく、オールバックや角刈かくがりなども行おこなわれた。1950年代ねんだい頃ごろから男子だんし青少年せいしょうねんの間あいだで、GIカットやリーゼントの髪型かみがたが流行りゅうこうした。

1970年代ねんだいから1990年代ねんだい初頭しょとうまでのアイドルブームにより、健太郎けんたろうカット、聖子せいこちゃんカットなどのパーマとカットを組くみ合あわせた髪型かみがたが流行りゅうこうするようになった。また、女性じょせいの社会しゃかい進出しんしゅつに伴ともない、手入ていれが楽らくなソバージュが同どう時期じきに流行りゅうこうした。

平成へいせい

1990年代ねんだい、人気にんき歌手かしゅや、ヴィジュアル系けいバンド、カリスマ美容びよう師し等ひとしの影響えいきょうによって、ヘアカラーやハイブリーチ、シャギースタイルが流行りゅうこうした。

ハリウッドではリヴァー・フェニックスやレオナルド・ディカプリオ、キアヌ・リーブスらトップスターが、いわゆるロン毛げ（ロングヘア）にしていたことで、男性だんせいでも長髪ちょうはつにする若者わかものが数多かずおおくいた。日本にっぽんでは江口えぐち洋介ようすけや、特とくに木村きむら拓哉たくやの長髪ちょうはつを後うしろで結ゆうスタイルが流行りゅうこうし、時代じだいのアイコンとなった。