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ボー - Wikipedia

ボー (baud略記りゃっきではBd) は、1びょうあいだあたりの物理ぶつり信号しんごうパターンの個数こすうあらわ単位たんい。「シンボル毎秒まいびょう」(Symbol/sec)とも。また、そのボーレートシンボルレート変調へんちょうレートぶ。

ボー(baud)
デジタル変調の例
記号きごう baud
けい MKScgsfps ひとし
りょう 変調へんちょうレート
定義ていぎ 1秒間びょうかんあたりの信号しんごう変調へんちょう回数かいすう
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「ボー」という用語ようごは、フランス電信でんしん技術ぎじゅつしゃジャン=モーリス=エミール・ボドーせい「Baudot」に由来ゆらいする[1][注釈ちゅうしゃく 1]

概要がいよう

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デジタル通信つうしんにおいて、物理ぶつり信号しんごうとしていち送信そうしんできるデータの最小さいしょうりょうシンボルぶ。シンボルとして使つかわれる物理ぶつり信号しんごうには、パルス電圧でんあつや、変調へんちょうした搬送波はんそうは周波数しゅうはすう振幅しんぷく位相いそうなどがある。ボーレートは、1秒間びょうかんなんのシンボルを通信つうしん送受そうじゅするかをbaudの単位たんいしめしたもので、高速こうそく通信つうしんではSI接頭せっとうをつけてkbaud (キロボー)・Mbaud (メガボー)・Gbaud (ギガボー)などの単位たんいもちいる。

シンボル1つで複数ふくすうビット表現ひょうげんするものがある。たとえば物理ぶつり信号しんごうパターンとして4種類しゅるいのシンボルA・B・C・Dがあれば、A:00, B:01, C:10, D:11などのように1シンボルで2ビットが表現ひょうげんできる。このようにシンボルとビットはことなるりょうあらわし、それぞれの速度そくどであるボーレートとビットレートもまたことなる概念がいねんであるが、しばしば混同こんどうされるため注意ちゅうい必要ひつようである (次節じせつ参照さんしょう)。

単位たんい混同こんどう

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baud, bps (ビット毎秒まいびょう), Hz (ヘルツ)はいずれもすものがことなる。それぞれ物理ぶつり信号しんごう個数こすう・データりょう振動しんどうすう(なみ上下動じょうげどう回数かいすう)の1秒間びょうかんにおける単位たんいであるが、一致いっちすることがあり、混同こんどうしやすい。たとえば、

  • 1シンボル(1かい物理ぶつり信号しんごうパターン)が1ビットのデータに対応たいおうする場合ばあい、1 baud かつ 1 bps となる。
  • 1シンボル(1かい物理ぶつり信号しんごうパターン)が4ビットのデータに対応たいおうする場合ばあい、1 baud かつ 4 bps となる。
  • シンボルが正弦せいげん位相いそう周波数しゅうはすう表現ひょうげんされる場合ばあい、1周期しゅうきがそのまま1信号しんごう対応たいおうするため、1 Hzへるつ かつ 1 baud となる。
  • シンボルが一定いってい期間きかんの0V・1Vいずれかの電圧でんあつパルスで表現ひょうげんされる場合ばあい最短さいたんで2信号しんごうそろってはじめて上下動じょうげどう1かいとなるため、1 Hzへるつ かつ 2 baud となる。

かつては1シンボルが1ビットとなるシステムがおおかったため、baudとすべき表現ひょうげんをbpsと名残なごりられることがある[2][3]

通信つうしん高速こうそくともない、帯域たいいきはば効率こうりつてき利用りようするためにおおくのビットを1かい物理ぶつり信号しんごうとして符号ふごうすることがおおく、それぞれの単位たんいにおいて一般いっぱんには比例ひれい関係かんけいにはあるが一致いっちしない。ビットレート(bps)のたか通信つうしんが、ボーレートや周波数しゅうはすう(Hz)のひく信号しんごう可能かのうなとき、スペクトル効率こうりつ(bps/Hz)がいと表現ひょうげんする。

定式ていしき

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ボーレート  [baud]は、ビットレート  [bps]をかくシンボルで表現ひょうげんできるデータりょう  [bit]でったであり、 ける。このとき、 ビットの表現ひょうげんには最低さいていでも   種類しゅるいのシンボルを使つか必要ひつようがある。この2しきから  消去しょうきょするとられる関係かんけいしき

 

ハートレーの法則ほうそくび、物理ぶつり信号しんごう特性とくせいによる通信つうしんデータりょう限界げんかいあらわしている[4]

用例ようれい

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ベースバンド伝送でんそう

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ベースバンド伝送でんそうシリアルポートなどで使つか方式ほうしきで、一般いっぱんにパルス信号しんごう電圧でんあつ高低こうていパターン(パルス振幅しんぷく変調へんちょう)によってかくビットけている。その高低こうていレベルすうおおいほど1シンボルでおくれる情報じょうほうりょうえる。一方いっぽうがわは、パターンすうおおいとそれぞれのシンボルを識別しきべつしにくくなり、劣化れっかした信号しんごうではエラーがえる傾向けいこうにある。

信号しんごう電圧でんあつパターンによるシンボルの生成せいせいには一般いっぱん伝送でんそう符号ふごう使つかわれる。ベースバンド伝送でんそうのボーレートはパルスレートやナイキスト・レート[注釈ちゅうしゃく 2]ともばれ、一般いっぱん帯域たいいきはばの2ばいとなる (1 Hzへるつ = 2 baud)[5]

以下いかに、ベースバンド伝送でんそう方式ほうしきにおけるボーレートのれいげる。

  • RS-232 (シリアルCOMポート)では、パルス信号しんごう電圧でんあつ高低こうていがそのままビット1/0として表現ひょうげんされる。おも9600 baud や 115200 baud などで動作どうさし、ビットレート(bps)もおなをとる。
  • マンチェスタ符号ふごうでは、パルス信号しんごう変動へんどう有無うむがビット1/0として表現ひょうげんされる。イーサネット10BASE-T採用さいようされ、10 Mbaud の動作どうさで 10 Mbpsのデータりょう[注釈ちゅうしゃく 3]
  • イーサネット1000BASE-Tでは、5種類しゅるいのシンボル(電圧でんあつ)を使つかって125 Mbaudの動作どうさで250 Mbpsのデータりょうふくむ。1baudあたり2bpsであれば本来ほんらいは4種類しゅるいのシンボルで十分じゅうぶんであるが、エラーがきにくいシンボルを選択せんたくするために余裕よゆうたせている。これをLANケーブルうちで4並列へいれつおくることで全体ぜんたいとして1Gbpsの通信つうしん達成たっせいしている[注釈ちゅうしゃく 3]

モデム(位相いそう変調へんちょう)

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モデムなどに採用さいようされた位相いそうへんうつり変調へんちょうでは、正弦せいげん位相いそう変動へんどうパターンとしてかくビットけている。前述ぜんじゅつれい同様どうように、そのパターンすうおおいほど1シンボルでおくれる情報じょうほうりょうえる一方いっぽうがわのエラーもきやすい。

位相いそう変動へんどうパターンは、以下いかのような信号しんごう空間くうかんダイアグラムかくてんにビットられており、そのてんにおける原点げんてんからの角度かくど距離きょり正弦せいげん位相いそう振幅しんぷくをそれぞれあらわしている。

変調へんちょう方式ほうしき シンボルすう
(種類しゅるい)
1シンボルの
ビットすう
信号しんごう空間くうかんダイアグラム
BPSK 2 1  
QPSK 4 2  
8QAM 8 3  
16QAM 16 4  
32QAM 32 5  
64QAM 64 6
128QAM 128 7
256QAM 256 8
1024QAM 1024 10
4K-QAM 4096 12
16384QAM 16384 14
32768QAM 32768 15

これらの変調へんちょう方式ほうしきでは、一般いっぱん帯域たいいきはばはボーレートとおなとなる (1 Hzへるつ = 1 baud)[6]

以下いかに、パソコン通信つうしん時代じだいひろ普及ふきゅうした代表だいひょうてきモデムれいとしてげる。

  • 通信つうしん速度そくど1200bpsのモデム(V.22)では、QPSK によって1かい変調へんちょうで2ビットが処理しょりされ、600ボーで動作どうさする。
  • 通信つうしん速度そくど9600bpsのモデム(V.32)では、16QAMによって1かい変調へんちょうで4ビットをおくり、2400ボーで動作どうさする[7]
  • 通信つうしん速度そくど14400bpsのモデム(V32.bis)では、64QAMによって1かい変調へんちょうで6ビットをおくり、おなじく2400ボーで動作どうさする[8]

スペクトラム拡散かくさん通信つうしん

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スペクトラム拡散かくさん通信つうしんは、GPSCDMA携帯けいたい電話でんわ無線むせんLANなどでもちいる方式ほうしきで、変調へんちょうしたQAMなどのシンボルをさらに変調へんちょうしている。この変調へんちょう信号しんごうチップ(chip)とび、その速度そくどチップレート(chip rate)としてチップ毎秒まいびょう(chips/sec)の単位たんいあらわ[9]

この方式ほうしきではひろ周波数しゅうはすうたいにチップとしてよわ信号しんごうりばめるため、チップの個数こすうはシンボルのすうばいすうひゃくばいとなるものがある。おおくの信号しんごうをチップとしておくることで、おな周波数しゅうはすうたいほか信号しんごうによる電波でんぱ干渉かんしょうえられるようになっている[10]。この結果けっか全体ぜんたいスペクトル効率こうりつひくくなるが、多数たすう同時どうじ接続せつぞく可能かのうとなっている。

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ ボーレート - IT用語ようご辞典じてん e-Words” (2022ねん11月17にち). 2023ねん11月22にち閲覧えつらん
  2. ^ Review: Intelligent Multiport Serial Boards; "Baud vs. bps"”. Linux Journal (1995ねん6がつ1にち). 2023ねん11月22にち閲覧えつらん
  3. ^ David S.Lawyer (原著げんちょ) (2000-1-4). 『The Linux Modem-HOWTO』 v0.08. Linux Japanese FAQ Project日本語にほんごやく. http://archive.linux.or.jp/JF/JFdocs/Modem-HOWTO-20.html. "20.付録ふろくB:``ボー と ``bps" 
  4. ^ D. A. Bell (1962). Information Theory; and its Engineering Applications (3rd ed.). New York: Pitman 
  5. ^ Nyquist theorem”. TechTarget: WhatIs.com (2022ねん5がつ). 2023ねん11月19にち閲覧えつらん
  6. ^ Andrea Goldsmith (Standford University) (2020-3-3). Wireless Communications. 5.3 Amplitude and Phase Modulation (p.157). https://web.stanford.edu/class/ee359/doc/WirelessComm_Chp1-16_March32020.pdf 
  7. ^ 16QAM”. 通信つうしん用語ようご基礎きそ知識ちしき (2007ねん3がつ11にち). 2009ねん2がつ27にち閲覧えつらん
  8. ^ 64QAM”. 通信つうしん用語ようご基礎きそ知識ちしき (2007ねん3がつ11にち). 2009ねん2がつ27にち閲覧えつらん
  9. ^ 入門にゅうもんしょ WiFi:802.11の物理ぶつりそうとトランスミッタ測定そくてい. テクトロニクス. (2013-12). https://download.tek.com/document/MDO4000B_Primer_37Z_29447_0.pdf 
  10. ^ 電波でんぱ情報じょうほうおくれる仕組しくみ 2 - しお田紳でんしんのモバイル基礎きそ講座こうざ だい6かい”. ITmedia ビジネスオンライン (2005ねん6がつ15にち). 2023ねん11月22にち閲覧えつらん

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ フランス語ふらんすごではauを「オー」や「オ」と発音はつおんするので、bauは「ボー」である。フランス語ふらんすごでは最後さいご子音しいんまないパターンもおおいのでbaudといて「ボー」とむ。「Baudot」の最後さいごの「t」も発音はつおんしない。
  2. ^ ナイキスト周波数しゅうはすうとはことなるてん注意ちゅうい
  3. ^ a b ただし、イーサネットの共通きょうつう仕様しようとしてイーサネットフレームもちいるため、10M・1Gビットのデータにはフレームあいだギャッププリアンブルなどのしゅデータでないビットがふくまれている。

外部がいぶリンク

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