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マグネトー - Wikipedia

マグネトーえい: magneto)は、永久えいきゅう磁石じしゃくもちいてこう電圧でんあつ交流こうりゅう電気でんき発電はつでんする機構きこうで、内燃ないねん機関きかん点火てんか装置そうち構成こうせいする部品ぶひんひとつとして点火てんかプラグへの点火てんか電圧でんあつ供給きょうきゅうするためにももちいられる[1]。なお、発電はつでん装置そうちたいする名称めいしょうのため磁石じしゃくマグネットえい: magnet)とはことなり「マグネトー」が正確せいかく日本語にほんご発声はっせいである。

ルノー 190馬力ばりき 航空こうくうエンジンようマグネトー

概要がいよう

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マグネトーは、内燃ないねん機関きかん点火てんか装置そうちとして利用りようされるほか、自転車じてんしゃ自動車じどうしゃのホイールにけて照明しょうめい装置そうちへの電力でんりょく供給きょうきゅうにももちいられている。ホイールにけるマグネトーしき発電はつでんはホイールの回転かいてんりょくもちいて発電はつでんするため、ホイールが回転かいてんちゅうのみ照明しょうめい装置そうち発光はっこうさせる。

マグネトーをはじめとするこうあつ磁石じしゃく発電はつでん最初さいしょ考案こうあんしたのは Andre Boudeville であったが、かれ設計せっけいではコンデンサ概念がいねんく、実用じつようせいとぼしいものであった。そのフレデリック・リチャード・シムスロバート・ボッシュ共同きょうどう実用じつようてきなマグネトーを開発かいはつした[2]

火花ひばな点火てんか機関きかん点火てんか装置そうちとしては1899ねんゴットリープ・ダイムラー開発かいはつした「ダイムラー・フェニックス」にてはじめてもちいられた。そのベンツ、Mors、Turcat-Mery、Nesseldorf[3]などの黎明れいめい自動車じどうしゃメーカーは次々つぎつぎにマグネトーしき点火てんか装置そうち採用さいようした。1902ねんドイツボッシュはダブルコイルしきマグネトーを開発かいはつし、1903ねん実用じつようてき点火てんかプラグ登場とうじょうしたことで完成かんせいされた。1918ねんなまり蓄電池ちくでんち点火てんかコイルもちいた低圧ていあつバッテリーしき点火てんか装置そうち出現しゅつげんしたのちおも小型こがた内燃ないねん機関きかん点火てんか装置そうちとしてひろもちいられつづけた。

また、マグネトーは電気でんき医療いりょう器具きぐとしていくつかの精神せいしん医学いがくでももちいられた。フランスの医師いし、Duchenne は1850ねん磁石じしゃくもちいた発電はつでん発明はつめいし、医療いりょう分野ぶんやもちいていたという。[よう出典しゅってん]

エンジンの点火てんか装置そうち

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マグネトー点火てんかコイル

マグネトーをもちいた点火てんか装置そうちマグネトーしき点火てんか装置そうちあるいは磁気じき点火てんか方式ほうしきばれ、バッテリー搭載とうさいしなくても点火てんかプラグ電源でんげん供給きょうきゅうできるため、機器きき重量じゅうりょうかるくすることができる。こうした利点りてんから、草刈機くさかりきチェーンソーなど内燃ないねん機関きかん動力どうりょくげんとする搬式の作業さぎょう機械きかいや、オフロードレースようオートバイなどでひろもちいられている。

マグネトーのうち「シャトルしき」とばれるタイプは、2つの磁石じしゃくはさまれたコイル回転かいてんさせて発電はつでんおこなう。「インダクタしき」のマグネトーの場合ばあいはシャトルしきとはぎゃくに、コイルは静止せいししたままで磁石じしゃく回転かいてんすることで発電はつでんおこなう。いずれも今日きょうでも用途ようとおうじて使つかけられている。

マグネトーで発電はつでんされた電力でんりょく点火てんかコイルおくられて点火てんかよう電気でんきとして使用しようされる。このときエンジンが1回転かいてんすると、カムシャフトコンタクトブレーカーかならず1かい以上いじょう断続だんぞくするようになっている。コンタクトブレーカーの断続だんぞくにより、点火てんかコイル内部ないぶいちコイル(ソレノイド)の電流でんりゅう断続だんぞくされ、ファラデーの電磁でんじ誘導ゆうどう法則ほうそくしたがってコイル(こう電圧でんあつコイル)ない電圧でんあつさそえおこされる。コンタクトブレーカーがひらとき、コンタクトポイントにはアーク放電ほうでん発生はっせいするため、この放電ほうでん抑制よくせいするためにコンデンサ設置せっちされる。

コイルはいちコイルとおなてつしん共有きょうゆうしながらも、よりおおくの巻数かんすうっており、変圧へんあつとして作用さようしている。このいちコイルとコイルの巻数かんすうは、電圧でんあつ増幅ぞうふくりつおおきな影響えいきょうあたえる要素ようそとなる。巻数かんすうおおきくなればなるほど、増幅ぞうふくりょうおおきくなる。

近代きんだいのマグネトー点火てんか装置そうちでは電気でんきてきなロスのおおきいコンタクトブレーカーわって、イグナイターつフルトランジスタしきディストリビューターCDIしき点火てんか装置そうちわされ、より効率こうりつ信頼しんらいせいすようになった。

点火てんか電圧でんあつなまり電池でんちからの供給きょうきゅうたよバッテリー点火てんか方式ほうしきよりも信頼しんらいせいたかいことから、航空こうくうようエンジンでももっと一般いっぱんてき使用しようされている。

航空こうくうエンジンのツインマグネトー

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マグネトーはバッテリーなどのほかのエネルギーげん必要ひつようとしないので、コンパクトで自己じこ充足じゅうそくせい信頼しんらいせいたか点火てんかシステムを構築こうちくできる。そのため、現在げんざいでも航空こうくうようレシプロエンジンではマグネトーによる点火てんかシステムがひろもちいられている。

マグネトーしき点火てんか装置そうちそなえる航空こうくうエンジンは、通常つうじょう2系統けいとうのマグネトーと1シリンダーたり2つの点火てんかプラグち、エンジン性能せいのう向上こうじょうしながら故障こしょうそなえた冗長じょうちょうせい確保かくほしている。2つの点火てんかプラグは燃焼ねんしょうしつないに2かしょことなった位置いち火炎かえん発生はっせいさせることができるため、シリンダーない混合こんごう完全かんぜん燃焼ねんしょうするまでの時間じかんをより短縮たんしゅくすることが可能かのうとなる。これにより、だい排気はいきりょうのシリンダーの場合ばあいでも火炎かえん伝播でんぱおくれによるノッキングおさえられる。

2系統けいとう点火てんか装置そうちつことはエンジンの燃焼ねんしょう効率こうりつ改善かいぜんするだけでなく、オクタン価おくたんかひくガソリンでも利用りようできる。また、太平洋戦争たいへいようせんそうだい東亜とうあ戦争せんそうちゅう戦闘せんとうようエンジンの場合ばあい、シリンダー1気筒きとうたりの排気はいきりょうおおきかったため、重要じゅうようなことであった。

大戦たいせん終結しゅうけつ、1970年代ねんだいはいガス規制きせい対策たいさくとして、いくつかのメーカーから航空こうくうエンジンの概念がいねんおなじツインプラグしきのエンジンが発売はつばいされたこともあったが、点火てんか装置そうちそのものの性能せいのう大幅おおはば向上こうじょうした現在げんざいではこうしたエンジンは少数しょうすうとなっている。

自動車じどうしゃでのツインプラグ

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いくつかの旧式きゅうしき高級こうきゅうしゃには2ほん点火てんかプラグのうち片方かたがたはマグネトーしき点火てんか装置そうち点火てんかされ、もう片方かたがたオルタネーターバッテリーおも電源でんげんとするバッテリーしき点火てんか装置そうち点火てんかされる構成こうせいのツインプラグをつものがあった。コスト増大ぞうだい最小限さいしょうげんおさえ、信頼しんらいせいそこなわない手法しゅほう模索もさくされた結果けっか、こうした方式ほうしきされた。いちくみのマグネトーと点火てんかプラグで構成こうせいするよりは信頼しんらいせいたかいと期待きたいされたが、実際じっさいには現代げんだいほど点火てんか時期じき制御せいぎょ精確せいかくではなかったため、マグネトー点火てんかとバッテリー点火てんか点火てんか時期じきがごくわずかにずれる不具合ふぐあい発生はっせいしやすかった。この不具合ふぐあいこう回転かいてんとく問題もんだいになりやすく、航空こうくうエンジンとしては早期そうきすたれる原因げんいんとなった。

自動車じどうしゃ場合ばあいはバッテリー点火てんか装置そうち主体しゅたいとなって点火てんか時期じき決定けっていされ、マグネトーしき点火てんか装置そうちはあくまでも補助ほじょてき位置付いちづけであった。そのため、のちにバッテリーしき点火てんか装置そうち制御せいぎょ技術ぎじゅつ向上こうじょうし、装置そうち全体ぜんたい性能せいのう向上こうじょうすると、ツインプラグしきのエンジンであってもマグネトーが点火てんかシステムの補助ほじょ系統けいとうとして搭載とうさいされることはほとんどなくなった。近代きんだいてき設計せっけいのエンジンは、これらのツインプラグシステムがもちいられていた時代じだいのエンジンよりもシリンダー容積ようせきちいさく、効率こうりつてき燃焼ねんしょうしつとバルブ配置はいちっている。こうしたこう効率こうりつのシリンダーヘッドは燃焼ねんしょうしつはいねつ効率こうりつ寄与きよし、吸排気はいきながれがスワールやらんりゅう意図いとてきこすように設計せっけいされているため、かつてのように、オクタン価おくたんかひくいガソリンでも確実かくじつ動作どうさすることを目的もくてきとしたツインプラグは必要ひつようとされなくなった。

手動しゅどうしき電話機でんわき

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1896ねんスウェーデン電話機でんわき右側みぎがわにマグネトー発電はつでんのクランクハンドルが存在そんざいする。

黎明れいめい手動しゅどうしき電話機でんわきおおくは、使用しようしゃ発電はつでんするためのマグネトーしき発電はつでんっていた。こうした電話機でんわきおも電気でんきかれていない地域ちいき配電はいでん事情じじょう極度きょくどわる地域ちいきなどで、交換こうかんだい待機たいきする電話でんわ交換こうかんしゅすベルをらすこう電圧でんあつるためにもちいられた。クランクまわして交換こうかんしゅしたのち通常つうじょう通話つうわは、電話機でんわき内蔵ないぞうされた亜鉛あえん-炭素たんそ電池でんち電気でんきまかなわれた。日本にっぽんでは磁石じしゃくしき電話機でんわきばれる。

なお、軍用ぐんよう現在げんざいもちいられる有線ゆうせん電話機でんわきには現在げんざいでもこの構造こうぞうもの採用さいようされている。ふるくは太平洋戦争たいへいようせんそうなかアメリカぐんもちいていたEE-8がた野戦やせん電話機でんわきField telephone)や、きゅう日本にっぽん陸軍りくぐん採用さいようしていたきゅうしき野戦やせん電話機でんわき現在げんざい陸上りくじょう自衛隊じえいたいもちいる70しき野外やがい電話機でんわき JTA-T1代表だいひょうれいとしてげられる。

日本にっぽん一般いっぱん加入かにゅう回線かいせんにおいては2002ねんまで日本電信電話にほんでんしんでんわが4ごう磁石じしゃくしき電話機でんわき加入かにゅうしゃけにしていた。ただし、1979ねん完全かんぜん自動じどうを以ってきょく給電きゅうでんのない一般いっぱん加入かにゅう回線かいせん廃絶はいぜつされており、事実じじつじょう着信ちゃくしん専用せんようともでんしき電話機でんわきとして使つかわれていた。くろ電話でんわ

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Selimo Romeo Bottone (1907). Magnetos for Automobilists, how Made and how Used: A Handbook of Practical Instruction in the Manufacture and Adaptation of the Magneto to the Needs of the Motorist. C. Lockwood and son 
  2. ^ Kohli, P.L. (1993). Automotive Electrical Equipment. Tata McGraw-Hill. ISBN 0074602160 
  3. ^ Georgano, G.N. Cars: Early and Vintage, 1886-1930. (London: Grange-Universal, 1985).

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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