マルコ (福音ふくいん記者きしゃ)

聖ひじりマルコ福音ふくいん記者きしゃ（イタリア語ご: San Marco Evangelista、英えい: Saint Mark the Evangelist）は、新約しんやく聖書せいしょの『マルコによる福音ふくいん書しょ』の著者ちょしゃとされる人物じんぶつ。ギリシア語ごではマルコス。マルク。イタリア語ごではサン・マルコ。英語えいごではセント・マルコ、スペイン語ごとポルトガル語ごではサンタ・マルコとも表記ひょうきする。

聖ひじりマルコ
福音ふくいん記者きしゃマルコのイコン（キジ島とう、18世紀せいき初頭しょとう）
福音ふくいん記者きしゃ
崇敬すうけいする教派きょうは	カトリック教会きょうかい、非ひカルケドン派は、正教会せいきょうかい、聖せい公会こうかい、ルーテル教会きょうかい
記念きねん日び	4月がつ25日にち(カトリック)、5月8日にち(正教会せいきょうかい)
守護しゅご対象たいしょう	弁護士べんごし、ヴェネツィア、エジプトなど

マルコスというのはギリシャ名めいとしては一般いっぱん的てきなものであり、また同書どうしょの中なかには筆者ひっしゃの名なは直接ちょくせつには記しるされていないが、伝承でんしょうは『使徒しと行ぎょう伝でん』からパウロの書簡しょかんにたびたびあらわれるマルコなる人物じんぶつを同どう一人物いちじんぶつと考かんがえ、福音ふくいん記者きしゃとみなしてきた。聖人せいじんの概念がいねんを持もつ全すべての教派きょうはで、聖人せいじんとして崇敬すうけいされている。カトリック教会きょうかい・正教会せいきょうかいでの記念きねん日び（記憶きおく日び・聖名せな祝日しゅくじつ）は4月がつ25日にち（ユリウス暦れきを使用しようする正教会せいきょうかいでは5月8日にちに相当そうとう）。

記録きろくと伝承でんしょう

『福音ふくいん記者きしゃマルコ』カルロ・ウルビーノ（Carlo Urbino）によるフレスコ画が（イタリア・ミラノ）

エルサレムの住人じゅうにんであったマルコの名前なまえがはじめて現あらわれるのは『使徒しと行ぎょう伝でん』であり、天使てんしによって牢獄ろうごくから解放かいほうされたペトロが「マルコとよばれるヨハネ」の家いえに行いったという記述きじゅつである。

ヨハネ（マルコ）はパウロの最初さいしょの宣教せんきょう旅行りょこうにバルナバと同行どうこうしたが、パンフィリア州しゅうから一人ひとりエルサレムへ帰かえってしまった。そのため第だい二に回かい宣教せんきょう旅行りょこうではパウロがマルコの同行どうこうを拒否きょひしてバルナバと別べつ行動こうどうをとることになる。マルコは結局けっきょくバルナバと共ともにキプロス島とうへ向むかった。これは西暦せいれき50年ねん頃ころのことと推定すいていされる。使徒しと行ぎょう伝でんではマルコについての記述きじゅつはここで終おわっている。

一方いっぽう、『フィレモンへの手紙てがみ』では協力きょうりょく者しゃの一人ひとりとしてパウロはマルコの名前なまえをあげている。獄中ごくちゅう書簡しょかんである『フィレモン』の成立せいりつ時期じきは一般いっぱんに上述じょうじゅつの事件じけんより後こうと考かんがえられており、ある説せつでは、決別けつべつとフィレモンへの手紙てがみの間あいだに、パウロとマルコが和解わかいしたと考かんがえる。また、パウロの書簡しょかんかどうか説せつが分わかれている『コロサイ人じんへの手紙てがみ』では、「バルナバのいとこ」マルコがパウロの協力きょうりょく者しゃとして挙あげられている。

またマルコは伝承でんしょうによればアレクサンドリアの教会きょうかいの創建そうけん者しゃであり、正教会せいきょうかい（ギリシャ正教せいきょう）とコプト正教会せいきょうかい（非ひカルケドン派は）の両派りょうはで初代しょだいアレクサンドリア総そう主教しゅきょうとされている。

また、最後さいごの晩餐ばんさんの会場かいじょう（使徒しと言行げんこう録ろく1：15で使徒しとが集あつまっている場所ばしょも同一どういつであろう）の家主やぬしがマルコの両親りょうしんであるという説せつや、マルコによる福音ふくいん書しょ14:51にある裸はだかで逃にげた青年せいねんというのがマルコであるという説せつもある。

『マルコ福音ふくいん書しょ』とその筆者ひっしゃ問題もんだい

詳細しょうさいは「マルコによる福音ふくいん書しょ」を参照さんしょう

教会きょうかいの古ふるい伝承でんしょうはマルコがペトロの通訳つうやくであり、ペトロから聞きいたことをまとめて福音ふくいん書しょを記しるしたとしていた。伝承でんしょうは『ペトロの手紙てがみ一いち』および『テモテへの手紙てがみ二に』などを根拠こんきょに、晩年ばんねんのペトロおよびパウロとマルコが一緒いっしょにいたと伝つたえている。

この福音ふくいん書しょが誰だれによって書かかれたものであれ、古代こだいから『マルコによる福音ふくいん書しょ』は『マタイによる福音ふくいん書しょ』の要約ようやく版ばんとされるなど4福音ふくいん書しょの中なかで最もっとも軽かるんじられてきた。これが激変げきへんするのは19世紀せいき前半ぜんはんで、カール・ラハマン（1835年ねん）、クリスティアン・ヴァイセとクリスティアン・ヴィルケ（1838年ねん）、ハインリヒ・ホルツマン（1863年ねん）等とうの研究けんきゅうで『マルコによる福音ふくいん書しょ』が最古さいこの福音ふくいん書しょであることが明あきらかになった。エルサレム神殿しんでん崩壊ほうかいの明確めいかくな言及げんきゅうがないことから、一般いっぱんに成立せいりつ年代ねんだいは70年ねんより前まえの60年代ねんだいと考かんがえられているが、それよりさらに早はやい時期じきのものとする説せつもある。

崇敬すうけい

ヴェネツィアのサン・マルコ広場ひろばのライオン。福音ふくいん記者きしゃマルコを象徴しょうちょうする。

ヴェネツィア共和きょうわ国こく国旗こっき

マルコは正教会せいきょうかいでは七なな十じゅう門徒もんとのひとりとされ、「使徒しと・福音ふくいん者しゃ」と称しょうせられる。また初代しょだいアレクサンドリア総そう主教しゅきょうに数かぞえられる。

マルコおよび『マルコの福音ふくいん書しょ』はしばしばライオンのシンボルであらわされる。これは『エゼキエル書しょ』に登場とうじょうする四よっつの生いき物ものに由来ゆらいし、それぞれ四よん人にんの福音ふくいん記者きしゃと福音ふくいん書しょにあてはめられている。

828年ねん、ヴェネツィア商人しょうにんはアレクサンドリアにあったマルコの聖せい遺物いぶつ（ないしそうみなされていたもの）を、ヴェネツィア共和きょうわ国こく（現げんイタリアのヴェネツィア）に運はこんだ。そして聖ひじりマルコはヴェネツィアの守護しゅご聖人せいじんとなった。ヴェネツィアの国旗こっきは聖ひじりマルコを指さす聖書せいしょを持もった有ゆう翼つばさの金かねのライオンであり、ヴェネツィアの大だい聖堂せいどうはサン・マルコ大だい聖堂せいどうと名なづけられている。その前まえのサン・マルコ広場ひろばをはじめとして、ヴェネツィア共和きょうわ国こくの勢力せいりょくの及およんだ各地かくちには今いまも有ゆう翼つばさのライオン像ぞうが残のこっている。

関連かんれん項目こうもく

• 聖ひじりマルコ聖堂せいどう（同名どうめいの聖堂せいどうの一覧いちらん）
• マルクスブルク城じょう

外部がいぶリンク

• 聖せい使徒しと福音ふくいん記者きしゃマルコのイコン - 大阪おおさかハリストス正教会せいきょうかいのページ